野望も抱けずにひたすら生き残ろうとしてる畠山政頼さんの転生物語 作:区星
「原昌胤って武将、俺そんなに聞き覚えがなくてさ。確か陣奉行だったはずなんだよ」
「昌胤さんは知勇兼備の名将です、鬼美濃と呼ばれた原虎胤さまの嫡子で次郎様付きの家老です」
「……原昌胤は常に殿として……多くの将兵を救ってきた。信玄さまの負け戦を常に後で支えてきた」
「原さまは元々信繁さまが当主になった暁には、筆頭家老として引き上げられるはずでした。ですが信玄さまが信虎さまから家督を奪って追放して以降は私たちのような姫武将が重用されました」
「わたくしから見れば新四天王に彼を凌ぐ指揮能力を持つ将はいない、旧四天王ですら敵わないほどの将よ」
「昌胤は昔はよく次郎様を天下人にしたいと言っていた……と長坂光堅から聞きました。あたしがその話を聞いたことは一度もありません、あたしが昌胤と親しくなったのは信玄さまが家督を継いで以降です、きっと昌胤は夢を夢として諦めたんだと思います」
「…………ちょっと待って、今武田四天王が五人いなかった?」
「ちっ、バレましたか。あたしは小山田信茂。譜代家老で今の小山田家の当主です。以後お見知りおきを」
(小山田信茂というと武田滅亡時に裏切った武将じゃなかったっけ、にしてはやっぱり光秀ちゃんみたいにらしくないな)
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こちらは早雲寺、織田信奈御一行。
「武田信玄も上杉謙信も、氏康を倒せなんだ。なぜか?氏康が、信玄とも謙信とも正面切って戦わなかったからじゃ。小田原城こそは北条家の悲願である関東独立を象徴する『東国の結界』よ。西国の都である京は、霊的防衛・宗教的防衛にのみ特化した町。軍事的防衛を放棄しておる。それゆえに西国は乱れ、いつまでも治まらぬ。しかし坂東武者の都である小田原は、はるかに質実剛健で実利的じゃ。あくまでも軍事的防衛に特化しておる。氏康のもとで小田原はいずれ、千年の防衛をも可能とする東の都になるであろう」
「じゃが、小田原は落とせないと判断した上で他の城を叩き潰すと判断した蘆名盛氏は氏康を倒しうる傑物よ。たとえ千年守れようと領土の全てを食われては意味がない。すでに上野を金上盛備が奪取しておる。北条はあやつを堂々の決戦で打ち倒すかあやつを暗殺せぬ限り関東を制することは叶わぬ」
「小田原城は落とせない城であって、落ちない城ではない。そういうことね、蘆名盛氏。この城を落とすことにこだわって大包囲を如く戦力があれば各城を一個ずつ落としてしまう方が明らかに奪回に苦労するしその落とした城の数だけ奪回しに攻め込んできた北条勢と決戦を狙える」
「そのようじゃ、ある意味では計り難き傑物よ」
その後、幻庵は話に戻り、織田信奈の器を推し測ることを続けた。
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「フーハッハッハ、来てやったぞ小田原城。この魔眼を持つ我、池田勝正がなぁ!」
誰だよ、こいつを呼び寄せたのは。
「悪いが相良はいないぞ、帰った帰った」
「む?相良がここで窮地に陥ると、魔眼が示していたのだが……違ったのか?」
その通りで、相良はここでマジで間一髪で死を回避します。なんで本当に見えてんだよ、オカルトとかあんまり信じないたちだけど見えないはずの相良の運命も見えてんの、宿曜道では占えない人間の運命を計算出来てるの怖すぎるが。
「ま、それは良い。相良ならそうそう死ぬことはないだろう。それより我がここに来たのは運命の決算━━まあ運命の決算でいいか、ともかくそれをするべき人がここにいるのでな、確か、原昌胤と言ったか、暴れすぎだ。川中島の戦いで決算されるべき命運まで歪めるとは………」
「その話は当人が来てからするべきじゃないか?」
「フハハ。そのようだな」
…………
……
「ある意味では貴様は異質すぎるな、原昌胤」
「何が言いたい。自称魔眼持ちの池田勝正」
「自覚がなさすぎる、ということだ。貴様の存在はあまりに武田家にとってあり得ない点にすぎる、まるで一人の魂の………いや、そうか。最初から二人だったのか」
二人?魂?よく分からん、後で教えてくれ。
「それはさておき、貴様は政頼や良晴より遥かに天命を動かす者としての自覚がない。お前には未来の知識は持ち得ないが……あるいはそうだからこそ一挙手一投足が天命をかき乱す」
「そうだと知ったら貴様は歩みを止めるか?」
「止めねぇよ、俺は信繁のために戦って、その過程で拾える物は拾い尽くす。たとえ道半ばで倒れたとしても、俺を悲しんで見送ってくれる人間が多ければ多いほどいいからな」
それでこそ、武田の天命を動かす者。たとえどんな運命が待ち構えていても、その在り方は尊敬するべき在り方だ。
「そうだな、貴様ならそういうと思った、だから我から少し助言をしてやろう」
「馬防柵、種子島、撤退戦。三つ揃えば死地と思え、二つ揃えば窮地と思え。前二つは貴様の魂に、後の一個は今の貴様の戦ぶりによるものだ」
…………おそらくは原昌胤の魂の両方ともに長篠で散ったのだろう。馬防柵と種子島で思い浮かぶのはそれだ。
「安心しろ、風魔には聞かれないように観て動いた」
「ちなみにだが、政頼。悪いが貴様の命運はやはり見えんぞ、相良なら多少手間だが見れる」
あーやっぱり?相良の天命、いや未来が見えて俺が見れないのは陰世と陽世では説明つかないよな。陰世を見れてるなら俺は見れてもおかしくないもん。
…………
……
「フーーッハハハハハ!信玄公よ、身体には気を使うことだな!まあ、今さら言ってももう遅いか」
「貴様……一体何者だ?」
「相良良晴家臣、池田勝正。特技は魔眼による人相見」
オメーのソレは人相見って次元じゃねえだろ。限定的な未来視ぐらいはあるだろ、相良によって曲がった未来すら見通す魔眼とかやってられるか。
「貴様の魔眼とやらがどのようなものか、一度見せてもらいたいものだ」
「そのうち機会が来るさ、すぐな」
…………
……
相良に撤退を言い渡されたところを蘆名盛氏に散々追い回され、結局原昌胤に助けて貰った四天王が土下座すると言う異様な雰囲気の中。
「我の魔眼に反応する以上、相良は生きているぞ?」
「再度演算を掛け直して見たが、相良の未来は計算出来た。ワタシの魔眼は生きている人にしか通らない。…………おっと失礼我だったな」
「……本当なのか?相良は生きてると?…………ならば良かったが」
「死んだはずなのに我が魔眼にて未来が見れる人間はもう一人ほど居るが………まあおそらくこれも事情があるのだろう」
あ、ちょ、おい。流石にアレをバラされると色々と困るが、まあ黙っててくれるようなので聞かなかったことにしよう。
「それはそれとして、帰ってこないのはサルのことだから、伊達陣内にでも囚われているのかしらね」
「相良先輩が戻って来られないのが如何なる事情かはわかりませんが戻って来られないのなら力ずくでも連れ戻すまでです!」
「氏康。風魔に、道を作らせなさい」
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「ふむ、貴様が相良良晴か。特に見どころの無さそうな雰囲気だが、これでも織田家の部将なのだろう?」
「君は………梵天丸のお母さん?じゃない、顔立ちの感じが違う。もしかして──蘆名盛氏?」
「そうだ、私は蘆名盛氏。奥州の雄、そして………伊達政宗の弟、竺丸の養母になる姫大名だ」
(そういえばそうだった、蘆名家は梵天丸こと伊達政宗の弟、竺丸こと伊達小次郎を養子に迎えるはずだった、金上盛備が強硬に佐竹から養子を求めていたため成立しなかったが金上盛備以上の発言力のある蘆名盛氏が賛同すれば通るはずだ)
…………
……
帰国したがらない梵天丸に声をかけて帰らせた織田信奈、そこに蘆名盛氏が声を掛けて引き留めた。
「ふむ、織田信奈。このままでは上杉は帰らんぞ。川中島での決戦をするつもりは両者共にないことを見切られている、私が動かなければ上杉謙信は上洛を中断しないだろう」
「それで、わたしに貸しを作ってどうするつもりなの?」
「なに、私ではなく政宗の貸しとして受け取って貰えばいい、例えば政宗が遠い未来にとんでもない功績を挙げて無茶な要求をしてきたら、すこーしだけ思い出してくれるだけでいいぞ?」
「うげ……」
「信奈様、これは長期複利というものです、堺にいたころにこれで小さい額がとんでもないことになった人を散々見ているですぅ」
「まあ忘れてくれても構わん、どうせ武田信玄にも貸しがある。早急にそっちから取り立てないといけない」
蘆名盛氏はそう言うと、相良の背中をどつきながら。
「相良、こんないい女を捕まえたんだ、大事にしろよ」
と言って撤退していった。