野望も抱けずにひたすら生き残ろうとしてる畠山政頼さんの転生物語 作:区星
24話 四国攻め 上
京、二条城。足利義昭からの無駄に長くて特に意味のない偽将軍認定の書状が届いていた。
「言うに事欠いて姫巫女様に将軍宣下を受けた私を偽将軍扱いとは、よく言えたものですね…………。とはいえ自称将軍とはいえ前将軍足利義輝の妹、影響力は高いはず」
彼女の父、足利義維は堺において堺公方と呼ばれ、将軍に等しい扱いを周囲から受けたが、足利義輝の父、足利義晴が将軍の座にいた為、姫巫女から将軍宣下を受けられなかった。世代が一つ下になってもこの争いが繰り返されるのは、因果応報と言うべきだろうか。
足利義輝、義昭兄妹と現将軍足利義栄は従兄弟に当たる、原作における今川義元よりはよっぽど正当性のある将軍ではあるのだが、こういった筋道を重視する姫武将は上杉謙信ぐらいで、武田信玄は自分で武田幕府を開こうとしてるし、織田信奈は傀儡同然の扱いをしているのでまあはい。
「なんらかの手を打つ必要は大いにありますね、とはいえ足利義栄としてやれることは決して多くはありません。私は神輿であり傀儡、信奈様と政頼様がいなければ戦に出ることも難しいでしょう」
「朝倉義景を呼んで相談しましょうか、彼女なら然るべき策を練ってくれるでしょう」
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さて、こちらは高屋城。四国遠征のための準備を整えている段階だ。
「おおよそ畠山家と三好の内通してきた武将を合わせると動員できる兵力は一万九千、長宗我部勢が一領具足もあって石高以上に動員出来るとしても二万前後、勝負にはなる」
何より長宗我部家のこれ以上の阿波方面への伸長はどうしても止めないとまずい。要衝である一宮城や勝瑞城を抑えられると手がつけられなくなる。
「君らしくないね、ここまで真剣に考えるなんて」
様子を見にきた土居清良にこう声を掛けられるが仕方ない、こうやって一勢力と対決するのは初めてで。この戦いは原作にも存在しないものだ、手は打てば打つほどいい。
「さて、そんな君にいい知らせと悪い知らせがある。どちらから聞きたい?」
「まずは悪い知らせから聞きたいが……」
おおよそ長宗我部が動いたとかそんな感じだろう。
「じゃあ悪い知らせから、篠原長房と赤沢宗伝、一宮成相が乱行の多い主君、三好長治を幽閉して異母姉妹に当たる十河存保を当主にしたよ、これによって長宗我部家に付け入る隙を与えてしまったね、早晩阿波出兵が決まると思うよ」
三好長治の乱行はある程度知られた話ではあったが、まさか篠原長房が死なずにかえって長治の方が幽閉されるとは。
「いい知らせの方はね、讃岐の塩飽水軍の長、宮本伝太夫から恭順の書状が届いたよ」
これにより、淡路水軍だけでなく塩飽水軍もこちらに従ったことになる。村上水軍は怖いが地の利、と言う点をある程度活かしやすいようにはなったのではないだろうか。
どのみち阿波讃岐の攻略に掛けられる時間は一ヶ月あるかどうか、今後長宗我部を相手に死闘なんてやってられないので和睦は必須となかなかに厳しい。南阿波の割譲ぐらいは飲まざるを得ないだろう。
ある程度長宗我部の動きをコントロールできるようにしたいところである。
というわけで三好義継の兵力も岸和田城に集結させて、淡路水軍に迎えに来させる。真鍋の船も借りれば一万二千ぐらいは動かせるだろう。
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所変わって、土佐、岡豊城。
「阿波で変事が起きたよお姉ちゃん。三好家の重臣達が三好長治の乱行に耐えかねて幽閉、主君に十河存保を担ぎ上げたよ」
「伊予も南予は切り取り終わったし、次は阿波、と思っていましたら鴨がネギを背負ってきましたわよ、親泰ちゃん。おわかり?」
長宗我部元親はすでに南予の西園寺を降伏させ、阿波南部の妹の仇、海部氏を攻略し終えている。
「姉上、それは重畳、といいたいところでしたが、まずい一報も入ってきました」
「親泰ちゃん、どういうこと?三好家の救援に動ける大名家などいないはず、毛利は上洛中、織田は対毛利や対上杉に集中していて四国まで遠征には来られない。宗麟はキリスト教の普及に夢中。動ける大名家などいないわよ、おわかり?」
「畠山政頼が三好三人衆追討のために一万二千の兵力を準備して渡海遠征を行うとの報が」
三好三人衆を狩るために、一万二千?どうやってその数を輸送するんだろう、お姉ちゃん。と信親が呟くのを聞くなり、元親は立ち上がってこう叫んでいた。
「やられたわ、三好長治の幽閉は囮、わたくし達を阿波へ引きずり出して決戦を挑むつもりなのよ。畠山政頼は淡路水軍にすでに渡りをつけているのは濃厚よ、おそらく三好家臣団にもおおよそ手をつけているはず。三人衆を追い出し、阿波讃岐,淡路を完全に領国化して長宗我部に蓋をするつもりなのね、信親ちゃん、親泰ちゃん、これはまずいわ」
「阿波讃岐が三人衆や三好宗家ではなく畠山政頼の領土になれば、攻撃を加えれば天下人織田信奈を敵に回すことに繋がる。姉上これはまずいことになった」
「急いで阿波を抑えに掛からねばなりませんわ、わたくしの四国統一の夢が目の前で鳶に攫われてしまいますわよ」
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阿波、勝瑞城。古くから阿波守護所として機能してきたこの城に、三好家の重臣達が詰めていた。
「僕の予想通り長宗我部が動いたね。三好家を真に安泰にするには三人衆の追討だけじゃ足りない、山を越えて攻め込んでくる長宗我部元親を撃退し、ある程度阿波に手を出せないようにしなければならない」
阿波の名門武将、一宮成相が語ると、重臣の赤沢宗伝も乗じて自分の意見を語り出す。
「とはいえ畠山殿も余裕のある戦力ではございませんなぁ、兵力だけでいえば我らと合わせてようやく五分と言ったところ。毛利が上洛を狙っている以上、そう長い間河内和泉を空けるわけにも行きますまい」
「なるほど、そうなると短期決戦になりそうです。であれば……」
篠原長房が締めにかかる。
「私と存保様、宗伝は勝瑞城に詰めます。成相様は一宮城に篭って長宗我部勢を迎え撃ってもらえないでしょうか」
「了解したよ、どのみち一宮城は要衝になる。…………ところで香川之景はどうする?アレはちょっと厄介だぞ?」
「政頼様に期待しましょう、なんらかの手は打ってくれるはずです」
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岸和田城を出発した畠山勢一万二千は、淡路の洲本城に到着していた。
ここで淡路水軍の他の将、森村春、菅達長、船越景直らと面会する、それぞれ海上の権益の追認や所領の安堵でおおよその妥結は得ているが、それはそれとして実際対面して見たいところなので招集した。
…………
……
「どうだ、今の感じ。信教、清良、どう見る?」
淡路水軍の将との面会を終えて、遊佐信教や土居清良と話し合う。
「そうですね、菅達長は渋々、と言った雰囲気に見えますが他二人は心配ないと思います。どのみち彼女一人でどうこうはしがたいでしょうし」
「うーん、村春については心配ないかな、景直も今の条件ならそうそう寝返ったりはしないと思う。達長は……あやしいかもね、君の言う通りあって見て正解だった」
実際のところ、淡路水軍を完全に支配下に入れる余力も何もあったものじゃないので、内心どう思ってても気にしないことにする。
「それはそれとして政頼様、これからどうしますか。長宗我部軍は牛岐城まで到達、一宮城を伺う姿勢を示しています」
そうか、南部の海部城や日和佐城をすでに抑えられてるもんな。ともかく勝瑞城まで行ってどうするか。
「牛岐城の城主、新開実綱は香宗我部親泰の説得に応じて開城したよ。これで南阿波は長宗我部元親が手にしたことになるね」
「元から海部城は抑えてるはずだから進行速度は想定内だが、牛岐城の開城は想定外だな、一宮城が落ちると勝瑞城まで危なくなる。となると……急ぎ勝瑞城に行くべきだな。あんまり悠長なことは言ってられんぞ」
なんせ織田信奈が率いる軍勢は原作から河内和泉の一万前後が減っている。毛利両川なら無茶な賭けをしないとは思うが、万が一もある。
あまり時間はないと見ていいだろう。
「それから、讃岐の香川之景から書状が届いてる。……よくわからない文面だからどうするかは君が決めてね」
『こんちゃ!あーしは香川之景、天霧城と本台山城の城主だし!あーしは小早川のお嬢とも仲良いから攻めるならそのつもりでするし!てゆーか、あーしに調略とか掛けないのはなんで?これでもあーし讃岐でいちおー顔役みたいなとこあるし、政頼くんが頭下げてくれるなら協力するしー?』
割と省略してるが、こんな感じの文面だった。
ギャルじゃねーか!
「これに関しては迂闊に調略かけると毛利との二方面作戦になりそうだから、相良に塩飽水軍経由で兵糧を運ばせるからその兵糧を出してもらうか」
塩飽水軍と淡路水軍を抑えられたので、岸和田や勝瑞からも相良に支援物資を届けられる。
まあ支援といっても大したことは出来ないが…………