野望も抱けずにひたすら生き残ろうとしてる畠山政頼さんの転生物語 作:区星
摂津、とある城。
「フハハ、東海の覇者は生き延びたか。織田信奈に仕え、天命を覆す者……興味深い。我も顔を見てみたいものだ」
「我が魔眼で、その命運、推し量ってみたいものよ!」
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色々やっているうちに川中島の戦いが始ま……らなかった。
川中島で対陣まではいったものの、蘆名盛氏が上杉領の新発田城に攻め込んだという情報が入り、撤退せざるを得ない状況になったためだ。
これにより上杉謙信は川中島を放棄し、武田信玄と和睦のうえ対蘆名に全力を注ぐこととなった。
歴史壊れる〜…………本当に壊れてんじゃねーかよふざけんな。というか、蘆名盛氏にそこまでの余力あったのか……下野や常陸に圧迫を加えているという話は聞いたが、軍神を敵に回す余力があるとは。
とはいえ上杉謙信は小田原攻めから川中島まで連戦している。ここを突けば相当苦しくなるのも事実。そう考えると合理的な戦略ではあるのだろうが。
…………
……
それはそれとして、桶狭間と川中島が“発生した”以上、織田信奈の美濃攻略は近い。美濃攻略が終われば、その後は今川義元を将軍にして上洛するはずだ。
これをそのまま放置すると、織田信奈に従うだけの家臣に封じられる。生殺与奪の権を信奈に握らせるのは、いささか怖い。
その対策のため、いくつか札を用意しなければならない。まずは平島公方の庇護者である篠原長房と連絡を取る。
彼女は阿波の事実上の家宰であり、同時に三好家でも影響力の高い人物だ。そこに借りを作るのは嫌だが……これはもう仕方ない。
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阿波、平島館。ここには足利将軍家の分家に当たる、先の将軍の弟・足利義維、その長女・足利義親と一族が暮らしていた。
三好長慶の治世下では、足利将軍家との協調路線を辿っていたため、彼らが推戴されることは特になかったのだが……。
「失礼致す。足利義親殿はいらっしゃるだろうか」
着物を着た姫武将風の将らしき人物が、義親に声をかける。
「私です……」
「失礼」
彼女は義親を担ぎ上げ、そのまま屋敷の外へ連れ出した。
「な……私を足利家の者とわかっての狼藉なのです?」
「当地を治める篠原長房殿からは許可を得ております。警備の兵も動きませんよ」
姫武将にしては大柄な彼女は、義親を軽々と担ぎ、待機させていた船へ運び込む。
「そして私は根来衆の長、津田算正。以後よろしくお願いします」
「根来衆……? ということはまさか畠山政頼……」
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篠原長房に話を通し、将軍候補が手に入った。もっとも、今のままでは「候補」に過ぎないので、きちんと“使えるところ”へ売り払う──もとい提供する必要がある。
さらに言えば、将軍候補が必要になる状況自体が訪れなければならない。後者は三人衆(四人)と久秀の動向次第だろう。
前者については織田信奈の美濃制圧待ちになる。原作ではいい感じにまとまっていたが、これは原作ではないことは川中島の件でよく分かる。心配するに越したことはない。
つまり今は、やることがない。
「算正、足利義親を連れてきてくれ」
「承知」
しばらくして、将軍家とは思えないほどしょぼくれた衣服を着た、十四歳ほどの少女が連れて来られた。
「あ、あなたが畠山政頼……私をここまで拉致してきた……」
「まあそういうことだ、足利義親。というわけで、さっそく状況説明だ」
義親には、三人衆がいずれ義輝と対立するであろうこと、自分は三人衆ではなく久秀に近い立場であること、次の天下人が将軍を必要とした場合には彼女を“売る”ことなどを説明した。
「それにしても、どうして篠原長房は私を売ったのでしょう? 三人衆の味方では?」
「ところがそうもいかない。あの女は“三好長慶の家臣”というより“三好実休の家臣”だった。三人衆は畿内に本拠を置き、この阿波とは必ずしも利益が一致しない」
篠原長房は阿波の事実上の国主格であり、場合によっては動員できる兵数は三人衆以上だ。
「まあ、俺や久秀のような外様、あるいは長慶に従って出世した連中と、利益が一致するわけでもないがな」
「つまりあなたは、私を売って高い地位を得たいのですか……」
「そうだな。お前が傀儡として従順であり続けるなら全力で守る。だが……義輝のように勝手な真似をするなら覚悟しておけ」
俺が擁立する以上、足利義昭みたいに不要な綸旨や御内書を乱発し、織田信奈に迷惑をかけるなら、この手で斬るしかなくなる。信奈に手を汚させるわけにはいかない。
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『織田信奈の野望』原作によれば、二度半兵衛に追い散らかされた織田信奈は、相良良晴に半兵衛の調略を命じる。
その際、半兵衛と浅井長政、そして相良良晴と犬千代(前田利家)が斉藤家の面子を追い出してしまい、良晴と犬千代が指名手配されるはずだ。
なので、この二人が指名手配されたタイミングで尾張を目指せば、ちょうどいい時期に織田信奈と面会できる……はず。
「算正、美濃へ諜報網を張ってくれ。変事が起きたらすぐ動けるようにしたい」
根来衆の長であり同盟相手でもある津田算正に依頼する。
「了解致しました」
さて、どれほどで動くか……。
…………
……
一週間後。美濃で竹中半兵衛が謀反騒ぎを起こした──という報が入った。同時に三好三人衆が摂津に集結し、京を目指しているという。これはおそらく原作・史実どちらでも起こった“将軍襲撃”だろう。
少なくともこの状況なら本拠・高屋城を空けても問題ない。というわけで、行くぞ織田家。
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「何よハズレじゃないのよ。サルの芸無知識も、当てにならないわねぇ」
「そんなはずは……」
「当たらずとも遠からずですが、我が者顔で畿内を支配する松永久秀と三好一党が時の将軍足利義輝公を暗殺しようとしたところまではその通りでございます。
だがしかし、賢明なる義輝公は勝ち目なしと見て『他日を期す』と言い残し、義昭姫ら妹君たちを引き連れ敦賀の港から大明国へと逃げてしまいました」
「ほう、そうなっていたのか、ならもう少し高く売り付けられそうだ」
「誰よ、あんた。名を名乗りなさい」
織田信奈は傲岸不遜な態勢を崩すことなく、俺に問いかけた。
「俺は畠山政頼、河内守護。この度は織田信奈公と取引しに参上した」
「畠山政頼………って誰だ?」
「畠山政頼といえば三管家の一つ、畠山家の尾州家の当主、三好長慶と親しく、姉と対立した際には三好長慶の元に出奔し、教興寺の戦いのきっかけとなったお方です。その後は松永久秀の同盟者として高屋城主として動いているはずですが……」
同盟者というか、共犯者ともいうか。少なくとも俺と久秀は同じ秘密を隠し持つ二人だ。
「それで、あんたの隣の姫様は誰よ」
「平島公方、といえば伝わる人には伝わるかな? 足利義親という将軍候補を連れてきた」
「待ってください、平島公方は三好家が保護しているはずです。そう易々と連れて来れるはずが……」
「三好家は一枚岩でもなんでもない。長慶の死後は寄合世帯みたいなものだ。そこを突けば容易い。さらに言えば、三人衆は畿内にいたせいで、この手の謀略への警戒が薄くなっていた」
「ふうん、であんたは私にこれを買い取って欲しいわけね、同盟?婚姻同盟?」
「流石に“これ”で婚姻同盟は無理だろ、信奈公に妹がいれば別だが」
「残念だったわね、今ひとり出荷したところよ」
あー、察し。信澄が送り付けられたのってこのタイミングだったな。
「まあそうだな、欲しいのは名目上だけ対等な同盟関係だ、国力的には河内半国と尾張・美濃二国では釣り合わんしな」
「信奈様が承諾されなかった場合、継承権の観点からおそらく義元様を将軍に擁立することになります。
もし私が三好三人衆に渡ると、今川将軍と足利将軍で“将軍が二人立つ”ことになる。信奈様にとって、私を擁立する利益は小さいですが、擁立しない損失は大きいはずです」
義親が、自分を擁立するメリットを説明する。
「ふーん、万千代。どう思う?」
信奈は丹羽長秀、もといみなさんご存知採点お姉さんに話を振った。
「将軍として擁立するのであれば、義輝様の従姉妹である義親様は、義輝様が義昭様ら妹君共々亡命した現状、最有力候補です。
義元様に比べれば正当性は“わずかに”増す程度ですが、この機会を逃しますと、義元様より正当性のある将軍候補が三好家に渡ることになります。……3点です」
「信奈様。しかしこの者は三好長慶に取り入り、姉を追放して大名の座を得た“不義の輩”とも呼ばれています。このような者を同盟相手とするのは……」
光秀からはこう言われた。散々な言われようである。しかも事実に基づく誹謗なので反論しづらい。
「別に変なことしたら河内半国ぐらいなら今の国力ではすぐに滅ぼせるわよ、気にしなくていいのよ」
それはそう。現状動かせる戦力で三千がいいところだし、義継や光は三人衆から切り離しただけで、俺の家臣や同盟者になったわけではない。
…………
……
ともかく同盟交渉はうまくいったので、とっとと帰ることにする。ちなみに義親は置いてきた。
上洛か……上洛……たこ焼き……八丁味噌…………うっ、頭が。
生粋の大阪人だったので、アレを食べさせられると考えると少し吐き気がする。なるべく審査員側には回らないようにしたい。アレはちょっと……。
10話終わったら人物一覧とか現実世界の畠山政頼とか投稿したいけど要る?
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要る
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いらない
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まだ早い