野望も抱けずにひたすら生き残ろうとしてる畠山政頼さんの転生物語 作:区星
さて、彼女たち──特に義継には軍勢を動かす準備だけしておくよう伝えたあと。
新味たこ焼きの準備をするために、色々と支度を進める。屋台もこっそり運び込む。
必要なのは、たっぷりのネギ、塩、そして適当なたこ焼きの材料。個人的には焼き加減は“フワトロ”が至高。揚げたこ焼きは邪道──というか、大阪人はそもそも食う機会があまりないよね、アレ。
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「なんで政頼も勝負に参戦してるんだ?」
「俺もたこ焼き作りたかったからだが?」
「まあいいか。いいたこ焼き作れば織田家のためにもなるし、一緒に頑張ろうな!」
相良はこう言っているが、ちゃんとしたものを作ったらこのあと後ろから刺されるのである。かわいそうに。
っと、予熱を忘れずに……危ない危ない、出遅れるところだった。
『勝負のお題は、たこ焼き! 制限時間は半刻! ついでに堺の新代表まで決まっちゃう天下の大勝負よ! はじめっ!』
「ほう。てきぱきと、うまい実況やわ」
「声もよう通っとる」
「えらく、めんこい子やのう」
「うちの看板娘に雇いたいわあ」
信奈の評判が鰻登りである、それはそうである。
そうこうしているうちに鉄板も温まったので、油を入れる。ちなみに荏胡麻油ではなく、最近取り扱いが始まったばかりの菜種油である。淡路でも栽培が始まったとか。京の油座に関係なく油を扱えるのは、普通にありがたい話である。
ぼむっ!!!!!
大爆発。
ん!?……ああ、相良の忍びが爆発させたのか……。
ともかく、こちらはこちらで普通に焼いていく。こだわり部分は“焼いてから”だが、下ごしらえを手を抜くとまずいたこ焼きが出来上がるので、タコを刻んでぽいぽい入れてから、くるくる……
相良の方は……?
「いいんだ! ここまで焼いちまったものはしょうがねえ。いっそ『揚げたこ焼き』に仕上げてやらあ!っていうか、もうそれしか方法がねえ!」
まあ、それでいいんじゃないの?
………………
…………
……
相良の揚げたこ焼きが好評を博してるが、想定内である。俺は俺で作りたいたこ焼きがあるので。
さて、焼き上がったところで──
ネギドーン!!!!!!!!!!!!!
塩ふぁさー!!!!!!!!!
終わり!!!!!!!!
やりたかったのはこれである。たこ焼きにネギトッピングがない? ありえない。大阪のたこ焼きにネギがないなど、塩の抜けた珍味みたいなものである。なお今井宗久の“たこ焼き”にはなかった模様。
塩とネギと出汁の生地が織りなすフワトロ・シャキシャキの食感は、一度食べたらやめられない。ネギ最高。お前もネギ最高と言うんだよ。
「美味いわ、ネギを乗っけることで新しい食感になるんやな」
「薄いわね、もうちょっと塩気が欲しいわ!」
「塩だけだからあっさりしてて、生地の味わいが引き立ちますね」
「ふむ、載せる具材と味付けの変更だけとはいえ今までのソース主体の味付けとは一線を画す味わい、さすがですね」
うーん、悪くない反応……?
いや信奈の味覚はおかしいだろ。アレで薄いはないわ。
「これが食べたかったからな、最高!」
「そそそソースは中止です!かくなる上はあのネギ塩やらマヨネーズやらに勝てる必殺の調味料を使うです!」
あ、嫌な予感。
逃げよ。
「八丁みその中でも特に熟成した最高級品を使ったです! 松平元康どのに頼んで取り寄せたのですっ! さあさあ、遠慮せずにどうぞ召し上がれですっ♪」
光秀がどどんと持ち出したのは八丁味噌を乗っけたたこ焼きだった。
「すまんちょっとお手洗いに行きたいんだが失礼していいかな」
逃げるなという視線を浴びながら、全速力で退避。
3分後、戻ったら──会場は死屍累々。
「確かにこのみそは高級品。たこ焼きも完璧な仕上がり。料理じたいの完成度は、相良はんのものよりはるかに高みにある。そやけど、素材同士の調和がとれとらん。高級な素材がみな台無しや。どないかしておひぃさまに気に入られたいという焦りがそのまま、料理の出来にあらわれとる」
宗久が容赦なく斬り捨てていた。まあ、それはそう。ソース塗っとけばまだ何とかなったろうに。
「あーそうそう、会合衆の皆様。今回のねぎ塩たこ焼きの権利は宗久さんに帰属するのであしからず、買いたかったら宗久さんに言ってくれ」
俺が食べたいもののためにレシピを公にして、自分でも作りやすくするため……であって、会合衆に売って信奈の稼ぎに足したいとか、そういうわけではない。
個人的にはネギのないたこ焼きは塩のない珍味のような物である。
なお結果は──光秀が大差で。
勝った。
やっぱり不正じゃねーか、草。
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「左衛門督どの、少々宜しいでっか」
「宗久殿、どうした?」
「なぜ、たこ焼き勝負に参加されはったんですか?おひぃさまに恩を売るわけでもなしにただそれがしに儲けさせる判断をするというのは左衛門督どのらしからぬご判断、何か思惑でもあるのかと思うとります」
「まあ、ネギたこ焼きが食べたかったのが一つ。それと、京にいる時に新興商人に信奈への矢銭の口利きしてやったろ。畿内屈指の豪商に何もなし、ってわけにもいかないからな」
「なるほど……」
「宗久、お前と同様に俺も織田信奈に身代の全部をぶち込むつもりだからな、その誼だと思ってくれればいい」
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とりあえず高屋城に戻り、出撃する。公算が正しいなら即座に動かないと間に合わない。事前に準備はしていたが……。
間に合うかは知らん。急いで高屋城を出立する。
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「十兵衛ちゃん。信奈。みんな……ごめんな」
「援軍よ!」
「だああああ、間に合ったぁ!」
思ったより追い詰められていて草も生えない。だが、どうにか間に合ったようだ。
「これより信奈様の救援を行います、わたしは信奈様に逆らうつもりなどありませんから」
義継も来ている。情報が届くのが遅れたが、ほぼ同時に到着したらしい。
「ヨシハルさん! 畿内のキリシタンの方々をお連れしました!」
知ってはいたが、キリスト教徒が一丸となって信奈の支援に動くなど、戦国の常識からすればあり得ない光景だ。さすがは織田信奈……いや、相良良晴と言うべきか。
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俺と久秀が知り合ったのは、三好家の同盟者であり、畠山家の実権を握り、俺に諸国を回る許可を出してくれた親のような存在であった遊佐長教が亡くなってからしばらくしてのことだった。
当時の畠山家は紀伊にこそ確固たる勢力を持つが、畿内では吹けば飛ぶような小勢力。三好家との関係が崩れれば即座に征討される立場だった。
だから俺は三好家へのパイプ役を積極的に担い、その過程で久秀と会うことが多くなった。今思えば、あの時すでに姉とは不和になっていたのだろう。
そして月日が経ち、十河一存の死をきっかけに姉は完全に反三好へ傾いた。
俺は何度も説得したが、彼女は応じなかった。結局、信教の助けを借りて高屋城を脱出し、三好長慶を頼ることになった。
その結果、教興寺の戦いと久米田の戦いという大決戦が起こるなど知る由もなかったが……いや本当に、そこまで予想できるか。
三好家を頼った俺を長慶は優しく迎え入れ、高屋城を奪い返したら俺に与えると約束し、それを教興寺の戦いのあと、きちんと守ってくれた。
俺は長慶に返しようのない恩がある。だから、あの日──。
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久秀と知り合い、秘密を共有するようになった日々を思い返す。
あの時から俺と久秀はある種の運命共同体と言えるだろう。
深夜──。 半ば焼け落ちた清水寺。
床几に腰掛けた信奈の前に、一人の武将が平伏していた。
「この松永弾正久秀、今度こそ心より信奈さまに降伏いたしますわ」
「うおおお! エキゾチック美人っ! オリエンタル美女っ! すげぇ色気っ……! 胸が……胸が、ぷるるんと揺れて……おうっ!?」
「…………」
猿らしい反応である。
「俺としても松永弾正には恩義があるのでな、降伏を許してやって欲しい」
「サルときんかんは気にしないでいいわよ、弾正! よくぞわたしに帰順したわ。今度こそは本気のようね。頭がいい武将は好きよ!」
後ろで交わされる会話を聞き流しながら、今後の方策を練る。
三好家はもはや簡単には戻ってこない。朝倉はそもそも引きこもって動かないだろう。織田家は対武田に専念できる。川中島の戦いが起きていない以上、十分な戦力を有する武田軍と正面衝突することになる。
もし史実通り朝倉攻めを行うなら、織田家は金ヶ崎で止まる。朝倉景恒は宗滴の武門を継ぐ武将で、金ヶ崎城自体は堅城ではないと言われるが、守将が守将だけに簡単には落ちないはずだ。
「ただし弾正。いいこと、織田家の家臣に一服盛ったら許さないわよ! サルにもね! わたしの家臣はみんなわたしのものなの、あんたが毒殺してもいい謂れはないわ!」
「はい、御意です。これからは、〝白弾正〟として生まれ変わりますわ」
ぼさっとしていたら、信奈と久秀の会話が終わっていた。久秀の表情が浄化されたいい表情すぎて、逆にちょっと怖い。
10話終わったら人物一覧とか現実世界の畠山政頼とか投稿したいけど要る?
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要る
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いらない
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まだ早い