野望も抱けずにひたすら生き残ろうとしてる畠山政頼さんの転生物語   作:区星

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6話 撤退戦は普通に難しい

 

「そう。ボクが土御門家当主、土御門久脩。そろそろ京へ戻ろうかな、不意にそんな気になったのさ」

 

 京を怨霊から守護する土御門家であったが応仁の乱以降落魄し、遂には京から落ちて若狭に逃げることになっていた。

 

「フハハ、貴様が古き時代の亡霊か?よくまあ京から逃げ出しておいて今更戻りたいとのたまえた物だな、滑稽にも程があるわ」

 

「…………君が池田勝正か、噂では聞いていたけどやっぱり織田信奈と気が合うだけあって……サルより先に首を取る必要がありそうだね!」

 

 勝正は相良の方を振り返るとニタリと笑い。

 

「貴様のような過去の遺物など、日輪の子の手間を煩わせるまでもない。良晴、貴様は先に行け、……良いから早く!」

 

「勝正さん……」

 

 …………

 

 ……

 

「未来人か……あの男には我はどう見えているのだろうな」

 

「どうやらサルは逃げたらしいね、殿軍を共にした君を置き捨てることを強要するのはいかがなものかと思うけど」

 

「あの男は日輪の子よ、我とは背負うものが違う。ここで死んでいい人間ではない」

 

「へぇ……そういえば君の瞳を見ていると腹の底まで見透かされているような気がして不愉快だね、一体どんな構造の瞳をしてるのか……」

 

「フハハ、知りたければ我を捕らえて見ることだな。ところで貴様、相良の首を持って行ったところで本当に恩賞がもらえると思っているのか?」

 

「それは……どういうことかな?」

 

「妙に薄い朝倉軍の追撃、追撃軍を引きこもり姫大名である朝倉義景ではなく、朝倉景鏡が率いているのにも関わらず、我々は1割程度しか兵を損失していない」

 

「裏切り者の浅井久政はさておき朝倉は本当にやる気がない、いや……最初から敵対する意思はなかったかもしれんな」

 

 事実信奈の上洛直後には使者を送って敵対の意向はないことを示している、朝倉景鏡がわざわざ京まで出向いて。

 

「ということは、ボクが相良の首を持っていったところで歓迎されない……」

 

「フハハ、この情報をまともに受け取るかは貴様次第だが……見逃してくれるなら我から便宜を図ってもいいぞ?」

 

 久脩が考え込んでいる間に時間は稼いだとばかりに勝正は逃げ出した。奸智に溢れる彼女らしい言動である。

 

〜〜〜〜〜〜

 

 俺、畠山政頼はというと封鎖されているはずの北国街道を強行突破しながら撤退していた。

 

「久政の軍勢を打ち抜いてからは無人の野を行くが如し、ガハハこれは無事帰れそうだな」

 

 ……まぁ久政が戦上手であったら素直に若狭を経由して西近江街道を通って帰還していたが、浅井長政ではなく浅井久政だったので流石になんとかなった。

 

 盛大にフラグを打ち立たところで、密偵が悲報を投げ込んできた。

 

「織田信奈様、雲母坂にて杉谷千住坊に狙撃され未だ意識が戻られておられない模様」

 

 そっかぁ、なるほどね……原作通りというかなんというか……

 

 とはいえ早急に京までもどらんことには色々とまずい、色々と足元は盤石ではないのだ。万が一姉が戻ってきたら本当によろしくない。

 

〜〜〜〜〜〜

 

 朝倉景鏡の陣にて……。

 

「畠山政頼が北国街道から突破を図ったそうだ」

 

「面白い冗談ですね、北国街道というと東近江、浅井のお膝元ではないですか、浅井久政が稀代の戦下手とはいえ通すはずが……」

 

「洒落や冗談ではない、浅井久政から直接使者が送られてきた」

 

「兵力の分散は避けたいが……追撃はしないとまずいな、浅井相手に信用を失いかねん」

 

〜〜〜〜〜〜

 

 朝倉の追撃がこっちに回ってきたんだが、いや相良側への負担が減るのはいいけどさぁ

 

 とはいえそろそろ佐和山城下を通過するところだが、佐和山城から兵が……

 

 …………

 

 ……

 

 来なかった。

 

 なんでやねん、と思っていたら忍びから書状が届いた

 

『大殿の暴挙にはほとほと呆れ返っている、長政殿が城に戻るまで出仕するつもりも浅井家の為に働くつもりもない。織田だろうが畠山だろうが好きに通ると良い』

 

 よくよく考えたら剛勇剛直で鳴る磯野員昌だもんな、そりゃそうなるわ。

 

〜〜〜〜〜〜

 

 退路を開きながら、勝正は独り言ちた。

 

「陰陽術がいまの世でまだあれだけの力を持っていたのは想定の外ではあったが、相良の時間は稼げただろうか」

 

「勝正さんが時間を稼いでくれたおかげでおおよその撤退ルートは作れた!あとはそこを通って京へ戻るだけだ!」

 

「勝正様を置いていくわけにいかないみゃあ」「おいどんも来たでごわす!」

 

 良晴率いる殿部隊である、安全な退路を探りながら移動していたため全員泥だらけ傷を負っている兵も多い。

 

「良晴?!どうしてここに……」

 

「勝正さんを置いて俺だけ逃げるわけにもいかないからさ、全員で帰ろうぜ!」

 

「………仕方ない、日輪の子よ。恩に着るぞ」

 

〜〜〜〜〜〜

 

 まあまあな被害を出しながらとりあえず京までたどり着いた。

 

 なんだが信奈が寝込んでるらしい。

 

「おー……命が無事?で良かったというべきか悩ましいな」

 

「とはいえ意識が戻らんことには軍も動かしづらい。長秀さん、義継と光は動かせそうか?」

 

「三好三人衆が畿内を窺っているため動かせません,3点です」

 

「相良もまだ戻って来ないし,情勢は未だ厳しいか……」

 

 池田勝正がいる以上原作ほどの地獄絵図にはならんだろうが、まあ心配である。

 

 とはいえこの状況で元康と犬千代と光秀を送り出すわけにもいかない、万が一があったら流石に困る。

 

「朝倉景鏡はどこまで進んでる?足並みを揃えてのろのろと追撃なんてあの男がやるはずがない

 

「朝倉景鏡率いる朝倉軍本隊は宇佐山城を攻撃中、京と美濃を通る道を断ちに掛かりました。宇佐山城が落ちてしまえば我々は美濃へ戻ることもままならなくなります」

 

 思ったより百倍早い……坂本すら抜いてるとは……

 

 ただ逆に言えば浅井軍と各個撃破できればだいぶやりやすくなる。

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 場所はガラリと変わり、宇佐山城を攻撃する朝倉軍本陣。

 

「織田軍の本隊が動きました、まずは我々から仕留めにかかるようです」

 

「規模は?」

 

「二万四千前後と見られます、動かせる全兵力を動かしているようです」

 

 斥候の情報を確認して考え込む、現状の宇佐山城をいつ落とせるか、それが本隊到着に間に合うかどうか。

 

「間に合わねぇな、浅井軍と合流してその後の方策を練る」

 

10話終わったら人物一覧とか現実世界の畠山政頼とか投稿したいけど要る?

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