野望も抱けずにひたすら生き残ろうとしてる畠山政頼さんの転生物語   作:区星

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8話 かくして金ヶ崎は終わる

 和睦の使者が来た、カンカンに怒っている織田信奈の元へと、それは俺や信奈の想定していた人物とは違い、朝倉軍総大将である朝倉景鏡だった。

 

「や、信奈公。久々だな」

 

 ヘラヘラと笑って居るがそのオーラは結構本物というか、戦場で戦って来た武士特有の感じがする。

 

「…………デアルカ、あんたのせいでサルはまだ帰ってこないし散々なんだけど、一体何しに来たのかしら」

 

「サル?ああ相良良晴か。相良はもうすぐ着くはずだ。ウチの忍びが若狭街道を通って撤退してるところを発見した、あの位置なら二刻もしない間には着くはずだ」

 

 まじ?

 

「!?」

 

「まあこれは手土産だ、こちらとしても偶発的ならともかく態勢の整ってない状態での開戦はできれば避けたい」

 

 叡山は守りに弱い、過去にもそれなりに焼き討ちを許して来た、例えば6代将軍足利義教は叡山の呪詛を理由に焼き討ちを実行して、支配下に追い込んだ。今だから言えるがおそらくこの世界なら本当に呪詛を行ってキレられてたのだろう。

 

「二つ条件があるわ、一つは、叡山の武装解除、そしてもう一つは…………」

 

「和睦の調印を行う場所は━━叡山の根本中堂!わたし自身が直接叡山に乗り込んで印を押すわ!」

 

 朝倉景鏡は少し驚いたような表情を見せてから、もとの胡散臭い、信用ならないタイプのイケメンに戻ってこう切り出した。

 

「俺としても和睦は必要だ、相当叡山には無茶を通すことになるがこのまま進めたい、がこれは正覚院豪盛がどういうかわからんな」

 

 本来ならここで姫巫女さまのご綸旨を今川義元が取ってくるんだが、今の将軍は足利義栄、俺が擁立した傀儡将軍である、参ったなこれ。

 

〜〜〜〜〜〜

 

 相良が帰還し、盛り上がりも落ち着いた陣中のこと。

 

「勝正さん、俺をわざわざ陣中まで呼び出して、何の用事なんですか?」 

 

「フハハ、相良よ、見事に生きて帰ったな。我からの報酬である、ありがたく受け取るが良い」

 

 勝正は相良をそっと抱き寄せる。

 

「勝正さ」んっ。と相良の唇を勝正が奪う。

 

 しばらくの静寂の後。

 

「我の役割はここで終わりよ、であれば少しぐらい報酬を貰ってもいいだろう?日輪の子よ。貴様の初めての接吻は我とのものだ」

 

「それは……」

 

「貴様も未来人なら知っているだろ?私の活躍は、もうないと」

 

(たしかにそうだ、勝正さんの活躍は金ヶ崎での奮戦の後、家督を奪われて没落する)

 

(でもそれは……)

 

〜〜〜〜〜〜

 

 翌々日早朝、御所

 

「それでは和睦のご綸旨を賜ります、姫巫女様におかれましてはご多忙の中お時間を割いていただき誠に「よい。あしかがよしひで、これもちんのせきむであるがゆえ、きにするひつようはない」はい……」

 

「えいざんのてんだいざすをつとめるあににはちんじきじきにはなしをしよう」

 

「おそれおおくも姫巫女様直々にご配慮いただき誠にありがたき幸せでございます」

 

「おだだんじょうのけがのぐあいは、どうじゃ」

 

「は、はい。織田弾正は松永さまの薬にて立ち直りましてございます、今は元気そのもののようでございます」

 

 …………

 

 ……

 

 乱入して来た近衛前久がボコボコに論破されるなど、信奈が見ていたら爆笑しそうなシーンもありつつ、お飾り将軍足利義栄の謁見は終わった

 

「ところで、関白近衛前久様、先程の態度恥ずかしくありませんか?」

 

「足りない知識を披露したばかりか、姫巫女様に補足させるなど藤原氏の氏の長者が泣いて呆れますよ」

 

「私なら腹を召したくなりますが…………」

 

 足利義栄の恥ずかしくないんかオメー攻撃、効果は抜群だ。

 

「うぐぐ、でおじゃる」

 

 足利義栄は先程の鬱憤晴らしから一転して、将軍の顔に戻り、こう囁いた。

 

「…………前久様の姫巫女様と朝廷の伝統と秩序を想う気持ちは理解いたしております、ですが私達のような古き時代の遺物が信奈様のような新しき時代を作る人たちの足を引っ張ってしまっては時代は一向に進んでいきません」

 

「おじゃ?そちはまさか……」

 

「管領家の名門である畠山政頼が血ではなく実力で実権を取り戻したように、古き時代の権威に囚われた治世は私と共に終わりを迎える……いえ私が信奈様に終わらせられることによって終わりを迎えるでしょう」

 

「新しき世の権威にはやはり姫巫女様は欠かせません、それを理解して居るからこそ。信奈様は姫巫女様を蔑ろにはしないはずです、どうか信奈様を信じてもらえないでしょうか」

 

〜〜〜〜〜〜

 

 一方そのころ、叡山。

 

「うむむむむ、織田信奈めそのような条件を突き付けてくるとは」

 

 正覚院豪盛はとんでもない条件をつけられて困惑していた。

 

「正直厳しい条件だが三好も六角も動きが鈍い以上飲まざるを得ん、わしも不本意ながら賛成じゃ」

 

「特に三好が遅い、大方阿波勢と三人衆の連携が取れていないのだろうが。これ以上時間は稼げないし力攻めされるよりは申し訳ないがこれを飲む方がマシだ」

 

「うぐぐぐ、おなごなんぞにこの尊い聖堂を踏み荒らさせるわけには。しかし御二方は和睦に賛成、ぐぬぬ」

 

 葛藤を続ける豪盛を尻目に浅井久政に急報が飛び込んで来た。

 

「将軍足利義栄が和睦の綸旨を取り付けたそうだ、これで一旦水いりになるのう」

 

「姫巫女様のご綸旨であれば仕方ない、が土御門に暴れさせるぐらいは許してもらおう」

 

「まあそこが手の打ちどころか、池田勝正に翻弄される程度の陰陽師に期待はできんが」

 

〜〜〜〜〜〜

 

 かくして和睦は成った。土御門が半兵衛にボコボコにされたり、豪盛が姫武将たちにボコジャカにされたりというところはあったが。

 

「貴女が織田信奈、天下人に最も近い姫武将。わたしは貴女のことを宗滴おじいさまから聞いているわ、次の戦ではわたし自身が出る。朝倉と織田の決着をつけるために」

 

 ………和睦の場に現れた朝倉義景の決意は本物だった。

 

「姫様、そこまでにしておきましょう。和睦が成った以上次の話をするのは無粋だ」

 

 朝倉景鏡が止めに入る、しかし横の景恒も喋り出す

 

「畠山政頼、金ヶ崎では首を取り損ねたが次はない、私の全力を持って貴様を討つ」

 

 おーこわ。ってことは次は姉川か、流石に切り札を切らないとまずいな。

 

 畠山と松浦、三好義継で集めたとしても九千、二万に近い朝倉軍を考慮すると流石に全く足りていない、畿内兵の強さを鑑みるともう無理。

 

 今から動かして間に合うかつ強力な援軍、まあいないわけではないのでなんとか引っ張って来なければまずい。

 

 まあこれを動かすには多額の費用がかかるが仕方ない、必要な犠牲だ。

 

「よう、お前があの畠山政頼か!あんまり強くなさそうで安心したぜ!」

 

 誰だよ、このクッソ無礼な姫武将は、という目で見ると名乗り直して来た。

 

「俺は富田長繁、朝倉家家臣だ!」

 

 あー、あの越前の狂犬ね、はいはい。というかこいつが居る以上朝倉家を安易に潰すとこいつが暴れ出しそうなのでこえーよ、俺にはあんまり関係ない話ではあるけどさ。

 

「礼儀ぐらい気を使った方がいいんじゃないか?目上の大名だろ?」

 

「あ?俺がお前に頭下げるなんて願い下げだね、たかだか河内の半国しか持たないのに」

 

 舐められてんなぁ……とはいえ、ぶっちゃけ武将としては意味不明なレベルで強いから困る。本当に酷いことに戦で負けて死んだわけではなく愛想尽かされて背後から撃たれるとかいうオチなのもそれに拍車をかけてる。

 

 …………

 

 ……

 

 信奈は岐阜へ、俺は高屋城へ戻って今後の展開を思案する。

 

 次の原作は5巻、武田信玄の上洛か。少なからずこちらから軍を動かすというのはやりづらい。今回のように三好が動く予兆を見せるだけで岸和田城の松浦や若江城の義継が身動き取れなくなるというのは戦略的にも厳しいものがある。

 

 伊勢の北畠家は大人しくしているが、これも無人斎に煽られて和睦を破棄されると死ぬほど厄介だ、鎮圧に使える戦力も出せない。今大人しくしていても、今後本猫寺に呼応して〜とかもあると本当に厳しくなる。今のうちに手を打って置く必要があるよな。

 

 とはいえ北畠家は史実から見ても一枚岩とは言いがたい。そこを突いていけば今のうちに身動き取れなくすることは可能だろう。

 

 




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10話終わったら人物一覧とか現実世界の畠山政頼とか投稿したいけど要る?

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