スタンドオフ大海戦 作:統合幕僚長パンダ
発射から数分後
グラ・バルカス帝国海軍
司令偵察飛行隊
月光の光る夜の空に、一機の美しい偵察機が飛行していた。
深い緑色に覆われ、グラ・バルカスを象徴する赤丸に白の十字を印す機体。機上レーダーを搭載し、上空から数百キロ単位を監視するそれは、彼らの目であり警告を発するアラートでもあった。
アルナイル型司令偵察機は、陸軍が保有していた高速の戦略偵察機を改造し、早期警戒機として運用されている機体だ。
空母での運用にも対応しており、正規空母からならカタパルトを用いて発艦が可能。着艦、整備のための改修も既に行われている。
第1先遣艦隊には、4機のアルナイル司令偵察機が目を光らせていた。うち2機は常に上空に展開し、艦隊周辺を監視する。先ほどグローバルホークを遠距離から見つけたのも、この機体だった。
「機長、このままではニホンの防空圏内に入りますが……」
「分かってるさ」
二人乗りのアルナイル司令偵察機の機内にて、レーダーを監視している
「ニホンの対空誘導弾が飛んでくるかもしれませんが……」
「俺たちの役割は偵察と早期警戒だ。そんなことで臆してどうする、艦隊が危険に晒されるのを防ぐんだぞ」
「…………」
「しっかりレーダー見張っとけよ。もう相手の目には見つかってるんだ、何が来るのか……」
機長は任務に忠実であるため、艦隊の危機を知らせるため危険を顧みない飛行を続けている。
しかしコパイの方は、航空機関士の候補生から転身してきたので、危険な偵察任務に慣れていない。日本が未知の兵器を持つ以上、正直に言えば引き返すべきだと思っていた。
だが操縦桿を握っているのは機長の方だ。前の席であるためあまり強く言えない。レーダー員はただならぬ不安を抱える中、レーダーの画面に注目する。
その時だった。
レーダーが上空に急速に上っていく何かの飛翔物体を探知した。
「ンッ!」
「見つけたか?」
「は、はい。高度10万に何か飛翔する物体があります」
「飛翔? 上ってってるのか?」
「はい……」
コパイはありのままの報告を行う。
「高度10万って……ロケットか何かか?」
「ッ──! 待ってください、飛翔体が二つに分離! 艦隊へ向かって急降下しています!」
「なんだと!?」
彼の言う通り、レーダー上では飛翔体から何かが分離されたかと思うと、それは艦隊へ向かって急降下して行っている。
だがその反応は、すぐに消失することになる。
「飛翔体は滑空しています……あ、消えました!」
「は? 消えたのか?」
「は、はい……いきなり反応が」
はっきりと見えていた飛翔体が、いきなり消えたことに機長はただならぬ予感を感じた。そして素早くコパイに指示を出す。
「反射角度の問題か……? とにかく通報しろ、艦隊への攻撃かもしれん」
「は、はい!」
コパイへ最低限の指示を言い放ち、彼が急いで艦隊へ向かって連絡を入れようとする中、機長の方は機体を翻して進路を変更する。
「一度引き返すぞ。艦隊周辺をカバーした方がいい」
「しかし、こんな肝心な時に故障でしょうかね。映らないなんて」
「原因は後でいい」
「実はさっきも変なのが映ってました。こっちに向かって鳥みたいなのがいくつか……」
と、コパイが何か不審なことを言うので機長は詳しく聞き出す。
「鳥みたいなの?」
「あ、いえ……1000ノット以上でこちらに向かっていますが、反応が小さくて鳥か故障かと思います」
その言葉を聞いた機長は、青ざめた。
例え故障だとしても、このだだっ広い海上でこの機体のレーダーがノイズを見分けられないわけがない。
そして鳥だとしても、そんな馬鹿げた速度で飛んでいるはずがない。
機長は声を荒げる。
「……なぜそれを早く言わない! 鳥が1000ノットで飛ぶわけがないじゃないか!」
「ッ──!!」
その言葉を聞き、コパイの方もようやく自分の過ちに気付いた。機長はさらに叫ぶ。
「他の偵察機にも緊急連絡! これは敵戦闘機だ! 俺たちの目と鼻の先に迫っているぞ!」
「は、はいっ!」
機体は速度を上げ、まだ見えぬ敵戦闘機から逃げようと進路を変更する。探知圏が狭まるのもお構いなしに、艦隊の方へ向かって退避する。
「一体どこから現れたんだ。まさか、映らないとでも言うのか……!?」
「警告! 三時方向より新たな反応! 小型目標を探知、二機がこちらに向かっています!」
「と、捉えられた!? 回避行動!」
だが敵のミサイルは待ってくれなかった。
どこからともなく放たれたAIM-120空対空ミサイルは、アルナイル偵察機を捉えて離さない。
「デコイ射出! 全て使い尽くせ!」
「ダメです、まだ追ってきます!」
「クソッタレ……!」
新装備のデコイ──フレアとチャフを打ち尽くすまで使っても、ミサイルは目標を逃さなかった。
即座にアルナイル司令偵察機はミサイルを被弾。機体の左エンジンに突入したAIM-120は、爆発の威力で機体の主翼を丸ごと削いで、撃墜した。
飛行能力を失ったアルナイル司令偵察機は、そのまま夜の海原に落ちていく。
彼らを撃墜したのは、グラ・バルカスのレーダーに映らない最新鋭ステルス戦闘機、F-35Aだった。
敵艦隊の目をつぶすべく先行した2機のF-35Aは、グローバルホークが捉えた艦隊の目を撃墜すると、すぐさま別目標への迎撃へと向かった。
同時刻
グラ・バルカス帝国海軍 第1先遣艦隊
旗艦〈バルサー〉 第一艦橋
謎の飛翔体を警告された旗艦の方では、将校たちが集まる艦橋が大騒ぎになっていた。
最後の報告と警告の後、早期警戒網が次々と撃破され破壊されているのも、その混乱に拍車をかける、
「早期警戒機部隊、壊滅!」
「対空迎撃用意! 飛行物体はセクターBより急速接近中! 繰り返す、対空迎撃用意!」
旗艦〈バルサー〉では、艦長が突入する飛行物体への迎撃準備を進めていた。各対空砲、および主砲に人員が取り付いて、対空戦闘に備える。
そんな様子を見据えながら、参謀のデルンジャは日本側が有する未知の兵器にむしろ感心していた。
「超高高度からの突入とは、ニホン人は考えましたな……!」
「感心している場合じゃない! 来るわよ!」
デルンジャにミレケネスが注意を促すと、同時に旗艦のレーダーでもその飛翔物体を捉えることができた。
「レーダーコンタクト! 飛行物体は超音速で接近中、速力3000ノット以上!!」
「さ、3000……!?」
異次元の速度に艦橋は絶句する。
戦闘機どころか、戦艦主砲の初速よりも遥かに速い。圧倒的な速度を持つ飛行物体は、そのまま艦隊へ急速に接近している。
「……デルンジャ、これを迎撃できる確率は?」
「空中戦艦の時と同じくらいかと」
「絶望的ね……やるしかないわ」
確率は低いが、迎撃しなければ旗艦が危ない。
艦長は未知の不安と恐怖を押しつぶしながら、懸命に指示を続けていた。
「聞いてる通りだ! 飛行物体に対し、タイミングを合わせて主砲対空射撃!」
その間にも、レーダー上の目標が急速に接近する。突入されるまであと30秒もない、
飛翔体は全く速度を緩めることなく、艦隊防空圏へと侵入。艦隊が持つ戦艦の主砲、その最大射程に突入した。
「今だ! 撃てっ!」
「全艦射撃!」
第1先遣艦隊の戦艦達が、一斉に主砲での迎撃を開始した。主砲には時限信管付きの三号対空弾が装填され、それを各艦がタイミングを合わせて投射した。
対空弾は数百個もの小型弾を抱えながら、空中に壁を作るように散布される。そして迎撃ポイントに到達すると、一斉に爆発して小弾をばら撒いた。
「砲弾炸裂! 目標は……よ、避けたぁ!?」
「なにぃっ!?」
「目標は降下し、対空迎撃を避けました! 2時方向より本艦に真っ直ぐ突っ込んできます!!」
しかしターゲットは迎撃できなかった。
無人の飛行物体が勝手に迎撃を避けるという、彼らの常識では考えられないその性能に、艦橋は凍りつく。
しかも主砲の有効射程ギリギリで迎撃されたはずの飛翔物体は、僅か数十秒で〈バルサー〉の目と鼻の先にまで迫っていた。
「万事休すね……艦長!」
「総員衝撃に備えっ!!」
艦長の判断は素早かった。
残りの対空砲での迎撃を諦め、飛翔物体の着弾に備える。それからわずか数秒ほどで、旗艦〈バルサー〉に大きな衝撃が響く。
「ぐわっ!?」
「ぐはっ……!」
掴まりきれなかった士官達が、その衝撃に艦橋を転げ回る。艦内がひっくり返ったのではと錯覚するくらいの、激しい揺れと耳を貫く爆発が、旗艦〈バルサー〉に襲いかかった。
飛翔物体は右舷側から突入し、最も目立つ艦橋の基部に命中した。そこの周辺にあった対空砲座を多数壊滅させ、逃げ遅れた要員は蒸発し、艦全体を巨大な爆炎が包む。
衝撃が終わった後、ミレケネスは掴んでいた固定テーブルから手を離し、デルンジャもなんとか立ち上がる。艦長もよろよろと立ち上がりながら即座に歩き出し、艦内電話で状況を確認させる。
「損害報告!」
『右舷艦橋基部に被弾! 対空砲座壊滅、被害集計中!』
『装甲貫通されました! 艦内のあちこちから火の手が……!』
『戦死者、負傷者共に多数発生! 救護を要請します!』
『第一副砲、バーベットに重大な亀裂発生!』
損害の大きさに、艦橋では戦慄が走った。仮にも帝国最大のグレード・アトラスター級戦艦が、たった一発の攻撃によって大損害を受けていた。
「たった一発で、グレード・アトラスター級が大破しただと……!?」
「威力が高すぎる! なんだこれは!」
他の参謀達が怪我を抑えながら喚く中、ミレケネスは冷静になって艦長に問いかける。
「……艦長、今ので"ここ"が倒壊する可能性は?」
「基礎構造の方には損傷はありません。エレベーターも使えますし、艦橋の倒壊はないでしょう」
艦長の言葉に、ミレケネスはひとまず安心する。
状況は全く安心できるものではないが、ひとまず艦橋の倒壊と艦橋要員全滅という事態は回避された。
だが、敵は待ってくれない。
二発目の物体が、艦隊のレーダーに映り込む。
「レーダーコンタクト! 二発目が来ます! 目標は再び本艦!」
「馬鹿な、まだあるのか……!」
参謀達が絶望する中、ミレケネスは艦長に向かって叫ぶ。
「艦長! 無事な左舷を向けてちょうだい! 諦めて衝撃を吸収するわ!」
「了解です! 面舵いっぱい、左舷乗組員は急いで退避を!」
艦長が素早く指示を送ると、旗艦〈バルサー〉は右へ転舵して飛翔物体を受け止めようとする。
僚艦からも迎撃の対空砲火が撃たれ、夜の闇に光が灯されるものの、迎撃には至らない。飛行物体はまたも旗艦〈バルサー〉に突入する。
「僚艦の迎撃失敗! 来ます!」
「総員衝撃に備えっ!!」
「神様……」
艦橋内に絶望が走る中、二発目の飛翔物体が旗艦〈バルサー〉に命中した。
左側から突入した滑空体は、まだ無傷の区画があった左舷の装甲を貫き、その炸薬と威力を解放した。
被弾した船体は衝撃により、地面が跳ね上がるように大きく揺れた。上から突き落とされたように、艦橋の要員達が宙に浮き、そして床に叩きつけられる。
艦橋の要員達の多くは、この衝撃で怪我を負った。艦長も頭から血を流しつつ、それを抑えながら状況の把握に努める。
「くっ……またやられた、損害報告を!」
『左舷甲板上に被弾! 対空砲群壊滅! 大穴が空いています!』
『爆発で火災発生! 火の手が止まりません!』
『測距儀に異常発生しました! 現在修理班が急行しています!』
『煙突にも亀裂発生! 煙が漏れ出してます!』
『今の衝撃で機関室の壁面が破れました! 機関士五名が負傷!』
帝国最大のグレード・アトラスター級の二番艦たる〈バルサー〉も、二度にわたる超高速滑空弾の威力には耐えられない。
浸水は発生していないので撃沈には至らないが、この二回の攻撃により〈バルサー〉は戦闘能力のほとんどを失っていた。
主砲などは無事だが、この衝撃で測距儀も破壊され、機関にも損害を被った。この状態ではまともな戦闘は不可能だ。
「ミレケネス大将、大丈夫ですか?」
エレベーターの辺りで倒れ込むミレケネス大将を見つけたデルンジャが、急いで彼女に駆け寄る。
デルンジャが彼女を起こすと、ミレケネスは痛みを堪えながら肩に手をかけ、なんとか立ち上がった。
「くっ……大丈夫よ、背中を打っただけ」
「後頭部はぶつけてませんか?」
「問題ないわ……でも、この船はもうダメそうね」
ミレケネスがそう言うように、この船の戦闘能力は失われかけていた。旗艦の移設をした方がいいかもしれない、と考えたその時だった。
『こちら上甲板、緊急連絡! マストが倒壊しそうです!』
「な、なんだと!?」
甲板作業員からの報告を受け、何人かの士官が艦後方が見渡せる見張り台の方へと急ぐ。
彼らが駆けつけた時、マストはちょうど倒壊した。帝国旗を回収することも叶わず、マストの先が火の手が上がる区画へ倒れ込んた。
「ああっ!!」
帝国旗と海軍旗が、その火災によって無惨にも燃やされる。その様子を見た参謀や軍人達は、怒りと悔しさを滲ませた。
「燃えてる……帝国旗が……!」
「くっ、やってくれるわね……!」
状況を察したミレケネスも、デルンジャに肩を貸してもらいながら立ち上がり、悔しさを滲ませる。
そんな様子を見ていた通信参謀が、恐る恐る彼女に声をかけた。
「ミレケネス長官……こんな時になんですが、ニホン軍から一方的な通信が入っています」
「読みなさい」
「"これは警告である。今の攻撃に懲りたら、今すぐ本国へ引き返せ"……以上です」
艦橋内が無言に包まれる。
悔しさを滲ませるものもいたが、中には悲壮的な表情を浮かべる者もいる。あまりに強力だったこの攻撃は、彼らの士気を低下させていた。
「完全に舐められてますね……」
「だが、この船はもう……」
「デルンジャ、旗艦の移設準備を。この船は後方に下げるわ」
だがミレケネスは、まだ闘志を燃やしていた。
デルンジャに旗艦の移設準備をするように言うと、なんとか固定椅子に座り、救護班の治療と診察を受けながら指示を飛ばし始めた。
その命令には、多くの士官が困惑する。
「ま、まだやるつもりなんですか!?」
「当たり前でしょう? 私たちの作戦目標は達成されていないのよ。そんな警告なんて無視しなさい」
「こ、これ以上進めば、さらに甚大な被害を被ります!」
「そうです!」
「命令が聞こえないのかしら?」
ミレケネスの眼光が変わった。
怪我をして血が滲む目元を抑えつつ、彼女は鋭い目で周りの男達を睨みつける。その豹変ぶりに、士官達はたじろいだ。
「帝国旗を燃やされ、舐められて警告に屈するなんて、とんだタマ無しな連中ね。ここに男は私しかいないのかしら?」
「…………」
ミレケネスからそう言われ、返す言葉もなく黙ってしまう士官達。だがその言葉に乗せられ、彼らは再び闘志を燃やす。
「司令、旗艦の移設準備が整いました。これよりヘルクレス級の〈リカータ〉へ移乗します」
「上出来よ。いい? この中では、デルンジャみたいな奴を男って言うのよ」
そう言いながら、ミレケネスは救護班から絆創膏と湿布をもらうと、ゆっくりと立ち上がった。
そして、士官達に振り向いてこう言う。
「あと、言っておくけど。貴方達を無駄死にさせるつもりはないわ。最後の最後まで、私は貴方たちと戦うつもりよ。ついてきなさい」
そこまで言われた士官達は、顔を見合わせて決意を固めた。そして、ミレケネスに対して付いていく。
「なら行きます!」
「死ぬまでお供しますよ!」
「上出来よ。さあ、一泡吹かせましょう」
こうしてミレケネスは、彼らの戦意に再び火をつけたのである。男は単純だと思いつつも、今は付いてきてくれる彼らに感謝を示した。
一時間後
日本国 横須賀
防衛省 統合任務部隊"実政" 司令本部
横須賀基地にある海上作戦センターでは、統合任務部隊の幹部クラスを集め、常に状況と睨めっこを続けている。
「敵艦隊、活動を再開しました。損傷した旗艦を下げ、残りは進軍中です」
「ほう、屈しないのか」
夜も更けて深夜も近い頃、限定的な攻撃を加えて警告を促した敵の大艦隊が、突如として活動を再開した。
その様子を見て、防衛調整官の三津木一佐は感心した。この後に及んでも彼らの闘志は消えていないように見える。
どうやら敵は士気旺盛なのか、それとも敵の逆鱗に触れたのか分からないが、ここで引かずに再び立ち上がるとは勇敢な敵だった。
「三津木君、君の警告は失敗したようだが……」
「心配ありません、想定内です」
彼の後ろでテーブルを囲む幕僚長達が、この状況の変化に対して三津木に問いかけるが、彼はこの事態も想定していた。
「これより敵先遣部隊に対して総攻撃を仕掛けます。少なくともこの短時間で、敵の早期警戒機はF-35により全て撃墜。最も強固な旗艦も後方に撤退したので、後は残りカスを消化するだけです」
「…………」
「よって、今回の警告は無視されたものとします。統幕長殿、宜しいですね?」
「ああ……やってくれ」
三津木一佐が最終確認を上官に求めると、統合幕僚長は好きにやってくれと投げやりに許可を出した。
「了解です。まずは上空待機中のP-1飛行隊を現場へ急行、射程に入り次第ミサイルを撃ち込ませます。オペレーター、取り掛かってくれ」
「わかりました」
「ロウリア王国領内のハルジン基地からは、F-2をスクランブル。装備はASM-3を二発、東側から回り込む。P-1攻撃開始から100秒後に撃ち込んで横槍を入れてやれ」
「了解です」
「それから作戦区域にEC-2を展開、他の敵艦隊による救援を阻止する。奴らを孤立させろ」
「はっ!」
すると三津木は心底嬉しそうな笑顔を見せると、ウキウキのまま早口で部下達に指示を出し始めた。
そんなえげつない作戦を進める彼の様子に、他の幕僚達は正直引いていた。やり口が徹底的すぎて、鉄屑も残らないんじゃないかと敵を憐れむ。
「えげつないですな……」
「アコギな作戦は奴の本分さ」
「てか、いつの間にかあいつが指揮してないか?」
「あいつが優秀すぎるのが悪い。俺たちはお飾りかもしれんな」
そんなことを口々に言いつつ、三津木の得意な航空作戦は遂行される。勇気ある敵の残存に対し、無数の槍が彼らを追い詰めようとしている。
数十分後
ロデニウス大陸西部海域
日本国海上自衛隊航空集団 第3航空隊
間も無く日時が日を跨ぐ頃。
深夜の月が光るロデニウス大陸西部の海域、その海上に数機の中型機が編隊を組んで現場へ向かっていた。
国産のP-1哨戒機は、主翼と胴体に23式空対艦誘導弾を搭載している。P-1哨戒機の編隊は、これを四発搭載して敵艦隊への打撃任務に挑む。
このミサイルは、かつて91式空対艦誘導弾の後継として"哨戒機用新対艦誘導弾"として開発されていたものの正式採用型だ。西暦2023年に制式化されていることから、23式の名が与えられている。
夜にも関わらず、機体に搭載された強力なアビオニクスにより飛行を続けるP-1の4機編隊は、間も無く攻撃地点へと到達していた。
「アタック・スタンバイ──ナウ、アタック」
海上自衛隊のP-1哨戒機は、発射地点に到達すると、搭載された23式空対艦ミサイルを一斉に投射した。
さらに他の機体からもミサイルが投射され、この編隊だけで16発のミサイルが飛んでいく。放たれた23式は、即座に低空飛行に移って敵のレーダー網を避けて進む。
勇敢なる帝国艦隊の威力偵察は、蜂の巣を突いたような大打撃をもってして、日本に迎え入れられた。