三津芽ステアはじっと見ない   作:聖成 家康

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プロローグ②

 ヘリに乗り、ユウカ達を率いて、先生と共にシャーレの部室がある建物へと向かった。

 

 下を見下ろせば、一つのビルの前に、大量の不良生徒らしき存在が塵のように集まり蠢いている。

 

「うぅ……こんな事になるなんて」

「むしろ、これを終わらせればサンクトゥムタワーを取り戻せるのですから、私達の問題も解決するかもしれませんよ」

 

 ユウカとチナツが銃火器を取り出し、戦闘準備を整えながら言った。一方はサブマシンガン、一方はハンドガンを。彼女らのみでなく、この世界の人間は当たり前のように銃を持ち歩いている。

 

「私が、指揮をとっても良いかな」

 

 先生が彼女らに向けてそう言った。

 

「……先生が戦術指揮をですか?」

「せ、先生がですか!? まぁ……先生ですし」

 

 スズミが聞くと、先生は頷く。その横でユウカが驚いた。

 

「分かりました。これより、先生の指示に従います」

 

 先生の提案を真っ先に了承したのはハスミ。それに続いて、あとの三人も快くそれを受け入れた。

 

 ステアは、端からそのつもりである。

 

「……あなた銃は? もしかして、戦闘には参加せず後ろでふんぞり返るタイプなのかしら?」

 

 早瀬ユウカが厭味ったらしく言ってくるために、ついムキになって反論した。

 

「いつもはそうだが、事態が事態。私も先生の指示のもとで戦闘しよう」

「い、いつもはそうなのね」

 

 そして腰の警棒を取り出して展開すると、一同は何とも微妙な表情を見せた。――頼りない、とでも言いたげである。

 

「……相手は銃を持っているからね、それでは、いくら君と言えど心許ないよ」

「ならどうしろと? 先生」

 

 先生は少し苦笑し、ステアへ告げる。

 

()()、使ってもいいから。君の安全が第一だ」

 

 先生にそう言われた為、彼女は警棒を仕舞った。

 

「先生がそう言うのなら、仕方が無い」

 

 ヘリは、それより降下を開始した。

 

 

 

 地上に着き、私達は次々に上陸。

 銃声、爆発音、キャタピラの音などが絶え間なく響き渡る聴覚にとって地獄のような空間がそこには広がっていた。

 

「うぅ、なんで生徒会の私がこんな目に……」

「ユウカさん、諦めましょう」

 

 肩を落とすユウカを、チナツが慰める。

 ハスミ、スズミは不良生徒たちを見据えながら、先生の指揮を待った。

 

 そんな彼女らを差し置き、ステアは最前線に立つ。

 

「下がってください。銃もないのに最前線に立たれたら、こちらだって――」

「いや、いいよ。スズミ。彼女は――大丈夫だから」

 

 引っ込ませようとするスズミを、先生が制する。銃火器もなにも持たぬ、警棒一本の者が確かに前線に出るべきではない。ごもっともな意見である。

 

 ――本当にそうであれば。

 

 

 

 【ZILLION DRIVER!!】

 

 

 

 荒々しい声と共に取り出されたバックル型のデバイス。ベルト帯を腰に巻き付けて固定すると、表面が金色に光り輝いた。

 

 生徒たちは、その異様な存在に驚愕の意を示す。

 暴走を続けていた不良生徒たちも、思わずその手を止めるほど、異質な気迫が辺りに漂った。

 

「な、なによ……あれ!」

 

 ユウカの問いなど気にも止めず、ステアは親指をバックルの――ジリオンドライバーの認証ボタンに押し付けた。

 

 

 

【REGAD!! ACCESS!!】

 

 

 

 彼女の認証を承認し、変身シークエンスへと移行する。

 

 

 どこからともなく飛来する目玉――オーディエンスアイ。彼女らはそれに追いやられ、後方へと後退りする。

 

「目玉……?」

 

 ハスミは思わず標準を構えるも、瞳孔がギロリ、と睨みつけてきたためにすぐさま止めた。

 

 

 シリウスカードを取り、指で挟んで、神へ上納するかのように掲げた。

 

「変身」

 

 その一言と共に、カードはドライバーにスキャンされる。

 

 

 

【GENERATE!!】

 

 

 

 彼女のヘイローを模した幾何学模様が上空に現れ、オーディエンスアイがステアを取り囲むよう、高速で飛来する。

 

 

 

【ENFORCEMENT OF VIOLENCE!!】

【REGAD!!】

 

 

 

 幾何学模様が彼女の身体に漆黒のスーツを纏わせ、光の粒子と化したオーディエンスアイが、その上から装甲を形成する。

 

 眩い光と共に現れた存在に、一同は寒気までも覚える驚愕を与えられた。

 

 

 血に染まったかの如く紅い凶戦士 仮面ライダーリガド――その名を、彼女らキヴォトスの人間が知ることはない。

 

 

「みんな。最前線は彼女に任せて、残党処理に徹底するんだ」

「え……あっ……は、はい!!」

 

 

 ズカズカと前進を始めたリガドを見て、先生が指揮を出す。

 

 

「な、なんだこいつ!!」

「こんなオートマタ見たことねぇぞ!!」

 

 不良生徒は侵攻するリガドに容赦なく発砲するも、彼女の身体を巡る得体の知れないエネルギーに弾丸を破壊され、マガジンを無意味に消費する。

 

 リガドのパンチが、不良生徒たちの腹を次々と穿つ。

 貫通まではしない。流石はキヴォトス人と言ったところだが、呻き声を上げて一撃にして沈んでしまった。

 

「せ、先生! 彼女は何者なんです!?」

「彼女は、特殊外装を使いこなす生徒だよ」

「あんなの、うちのエンジニア部にだけは見せないでくださいね!」

 

 ユウカとスズミが前進し、ハスミが後方から支援する陣形を組む。

 リガドは取りこぼしの攻撃も顧みず進んでいく。もはや彼女らは不要のように見えるが、不良は全員取り押さえる必要がある。

 

 サブマシンガンを構え、発砲。リガドに気を取られる不良生徒を一瞬の内に沈める。

 

 スズミがユウカの影から姿を現し、空中へ身を投げ出すと同時にアサルトライフルを射撃。敵の反撃が来る前に、放棄された車両へと身を隠す。

 

「ええい! スズミ! 私に構わず撃ちまくって!」

 

 ユウカが演算端末を取り出し、素早く計算。

 すると、彼女の周りを電磁フィールドがコーティングし、飛んでくる弾丸を弾いた。

 

 スズミはこの上ないチャンスを逃さない。

 

 腰のベルトから取り外した閃光弾のピンを咥えて引き抜き、肩を外す勢いで投擲。

 

 不良集団の中に投げ込まれた閃光弾は爆ぜ、目が眩むほどの光が金属の隙間から溢れ出す。

 

 ハスミがその隙に、敵を一人一人、着実に狙撃していく。

 

 総員一斉掃射し、ハスミが取り零した敵を蜂の巣にして、その区画の敵はあっという間に殲滅された。

 

 殆どが、もうどこかへ行ってしまったリガドに釣られて消えたのだが。

 

 

 

「こいつ銃が効かねえぞ!!」

「お前たちには、これがお似合いだ」

 

【READY……!!】

 

 

 ベルト帯の右ホルダーから、小さなバックルのようなアイテムを取り外し、左ホルダーへと装填する。

 

 掌で押し込み、そのバックルに秘められしエネルギーを、ジリオンドライバーが引き出す。

 

 

【PROPERR!!】 【INFINITY!!】

 

 

 前面ディスプレイの奥にある『ジリオンコア』が、鋼の輝きを生み出し、九つのプロペラを形成。

 

 それらは高速回転しつつ、鷹のように敵を蹂躙した。

 

「どけぇぇお前ら!! こんな奴、戦車でぶっ飛ばしてやる!!」

 

 キュラキュラキュラ……不良生徒らの呻き声を掻き消しながら駆動するのは、巨大な巡航戦車。搭乗していた不良生徒はハッチの中へ逃げ込み、すかさず砲身がリガドへと向けられた。

 

 リガドは恐れる事無く、親指を認証ボタンに翳す。

 

 

 

【ACCELERATE!!】

 

 

 

 空気を轟かせ発射される、40mmの主砲。誰もが肌を震わせ、その弾道を見るまでも無く貫かれるであろう弾丸。

 

 リガドはその弾丸を、避けた。

 

 紅き三重線の軌道のみを残し、まるで瞬間移動かのような疾走を見せ、戦車の側面へ瞬く間に回り込み、目にも止まらぬ突撃を装甲へ叩き込む。

 

 大きく揺れた戦車のキャタピラに乗り移り、強烈な拳を捩じ込ませた。

 

 

 重々しき拳と足蹴を叩きつけ、装甲を瞬く間に凹ませてゆくその様を、誰もが目で追うことができなかった。

 

 

 装甲は破損。内部が露出しても尚、リガドの猛攻は止まらない。

 

 

 

【ACCELERATE!!】

 

 

 

 攻撃のスピードは更に速度を増す。

 最早音すら聞こえぬ破壊行為に、恐れる(いとま)さえ与えられない。

 

 

 戦車は爆散。砕けた装甲が、遅れて降り注いだ。

 

 爆炎を背に、リガドは更に侵攻していく。

 

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