テイムした魔物達を魔道具で武装させることにした俺達の話 作:電脳図書館
大皇帝の領地にやって来て少し経ち、実家の店に比べれば簡素だが自分のお店を持つことが出来た。第一ダンジョン村で開業し、店舗名は「クラフト工房」実家と同じ名前だ。
「いやー、今までの貯金とダンジョンでコツコツ金貯めて店建てよう!と思ったら建設費割引してくれたのは助かったな。その代わり魔道具の備品を結構作らされたが、リターンは十分十分」
「それでもダンジョンに潜ってるよね。お店はそこそこ繁盛してるのに」
「依頼も受けてるぞ?素材の買取もいているが、自分で取りに行った方が安く上がるしレベルも上がるから、せめてゴールドランクにはなって置きたいからな」
ダンジョンに挑む人達があらかた仕事に向かいダンジョン村自体が比較的静かになる時間帯、店の会計を行うカウンター席に座って紅茶を飲んでいる俺と話している女性はコテハン勢と呼ばれる落胤英雄ネキだ。
彼女とはダンジョンの講習で一緒の組になっときからの付き合いで、良くこの店を利用してくれている。
ヤタガラスには冒険者ランク制度が存在しブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ(俺達限定)の四段階に分かれていて、コテハンはゴールドランクになった者に与えられる。
彼女はある意味同期だが、俺がヤタガラスの魔道具備品制作に勤しんでいる間にシルバーに上がり、俺がシルバーに上がるのとほぼ同時期にゴールドランクに上がっている。
これほど短期間にゴールドに上がる辺り俺達の中でも有能なのは間違いないだろう・・・性格はちょっと変わっているが。因みに俺達は現在3層の攻略を完了していて、準備を終えたら俺達も挑むつもりだ。
「ありゃヤタガラスの魔道具備品って大体がスティーブン君が作ったんだよね?」
「ああ、でもさっき言ったようにこの店舗の建設費の割引を条件に受けたからな。ゴールドランクの条件はギルドへの成果や貢献だから今回のはそういうのにカウントはあんまりされてないんじゃないか?実際材料費とか諸経費分しかお金貰ってないし、まぁ全く何もない訳ではないと思うけど」
「そういうものなのかな・・・あれ、そもそも何でスティーブン君が一手に引き受けなきゃならなかったの?他にも魔道具職人はいるよね?」
「あーまぁ幾つか理由があるが一番は王国の通例で"魔道具のプロ"に該当するのが今の所俺しかいないからだな」
「どういうこと?他の魔道具職人も腕はいいはずでしょ?それとも本当なら資格とかいるの?」
「いや、あくまで通例、世間一般的にプロとみなすか如何かだな。それを話すにはこのフレデリック王国の魔道具職人に対する制度について話さないとな」
制度と言っても別に魔道具職人になることに制限自体はない、この国でも役人の登用には流石に試験を行うがそれは役人という仕事が読み書き出来ることが前提で一定以上の教養と国の運営の関わるので、しっかりした身分の者でないといけないからだ。
それに対して職人という職業は役人より教養は必要なく、身分が低いものでも修行を積み身を立てる数少ない手段の一つとして門戸は幅広く開いているのだ。
「というのがまぁ表向きの理由だ」
「表?ということは裏もあるの?」
「裏って言ってもリスクヘッジに近いがな。身分の低さはこの際考えないにしても身元が定かじゃない奴らを対象に国家試験みたいなことして、国がその立場を保証したら万が一そいつがやらかしたり、実は他国のスパイでしたとかだったら責任の追及は国まで及ぶからな」
「前世みたいにある程度教養や良識の平均が高かったり、身分というか身元が戸籍とかではっきりしてないとそうなっちゃうんだ」
「前世の現代がいかに時間を掛けて成り立っていたか良く分かるな。ただこれは他の職人系職業全般に言えるんだが、魔道具職人になるともうちょい色々あるんだ」
「魔道具職人だけ?」
「魔道具職人だけ別枠なのは魔道具そのものが本人の実力関係なく使えるものが多いからな。
テロや反乱起こされたときの被害が普通の武器の比じゃないし、魔道具職人そのものが悪行に手を染めてその手の組織や敵国に魔道具を横流しされたらしゃれにならない。
これが個人ならまだ収集は着くかもしれないが、魔道具を多数取り扱い、販売する魔道具の店の場合店そのものだけじゃ無くて、商売で繋がった悪い奴らと組織的やられるとか面倒なんてもんじゃないだろ?
だから魔道具の店を出すには国からの承認がいるんだ」
更に捕捉するとこの承認は武器などに使える魔道具を扱う店だけでは無く、日用品の魔道具を販売する店にも必要になる。理由は商品として日用品を作れるレベルなら普通に武器としての魔道具を作ることが可能だからだ。因みに魔道具を委託して販売する店も同様に承認が必要だ。
「承認はコネがあるのとないのとじゃ違くて、ここの領地では大皇帝という王族がいるからまだマシなんだけどな。あとはのれん分けされていることもプラスに働く、分けた元の店のお墨付きってことでもあるから。コネが何もない一からだと視察までされるらしい」
「なるほどね、確かスティーブン君は実家からのれん分けして貰ったんだよね?辺境だけど信用とかあるの?」
「おいおい何言ってんだ。俺の実家は建国王時代に計画されて数年で、頓挫した辺境開拓計画の時から店構えているこの王国で現存している魔道具職人の家系並びに店舗では最古だぞ?」
「え、マジで?」
「マジで!だから割と魔道具職人業界とか歴史ある貴族家や王家には知られてるんだよ。まぁ大皇帝は王都出るまで色々動いてたから知らなかったけど。あ、でもご隠居の二人は知ってたな」
「ふーん、ということは王国の通例で"魔道具のプロ"って店持ちのことなのね。確かに個人でやっている人よりも安心感や社会的信用は高くなりそうね」
納得してくれた彼女だが、他の魔道具職人『俺達』もほぼ公爵領専属みたいな立場だから実績を出し続ければ、社会的信用では俺と変わらなくなるだろう。
「でもそれっておかしくない?大皇帝ってそういうので物事考えないと思うのだけど」
「うん、実際今までの話は俺が魔道具の備品を手掛けたことと大して関りは無いからな。これからの説明の必要だっただけだし」
「え?」
「この領地にいる魔道具職人『俺達』の大半は自身のロマンや願望を叶えたいから魔道具を研究しているだろ?つまり実際に魔道具の店に勤めた経験がほぼないってことだ。
その場合今回の魔道具の備品の発注みたいなので大事な"一定の品質の物を量産出来る"こと、特に店の商品の場合は"継続的に"という枕言葉が付くがそれらをやることに慣れていないんだよ」
「そっか前世じゃ機械化、工業化で簡単だったけど今は違うから量産品を作り続けるのも職人技の一つのなのね。それに慣れていないだけじゃなくて、やりたくないって『俺達』も多そう」
「そう、でも俺ならそういった量産する為の技術やノウハウも教え込まれている。家業であったのとちゃんとした師がいた利点みたいなもんだな」
好きな事をとことん追求出来る人物は、基本的に自身が苦手な事や興味のないことになるとモチベーションが下がってしまうことが多い。そういう人間は誰から矯正されない限り変わることが難しい、俺も元々は好きな事にかまけるタイプだったのだが、前世の職場と今世の師であり両親の指導もあって好きな事はは趣味、左程興味が無い事でも仕事として割り切れるようになっている。
「つまり大皇帝的には他の魔道具職人『俺達』より、俺にそういう適性があったからこの仕事を振ったってだけなんだよ」
「色々考えているんだねスティーブン君も大皇帝も」
「そりゃ勿論。今も新しい魔道具を考え中だ」
「どういうのなの?」
「ああ、甲型魔導エンジン(魔法陣型エンジン)を小型化して魔導スクーターみたいなの作ろうかと」
スクーターの様な取っ手と身体が乗る部分は、本来のスクーターよりも広く取ってちゃんと二本足で立てるようにしたものだ。
「領地の移動用だと思うけど舗装とかされてないけど大丈夫?」
「大丈夫、ドラ◯もんみたいにちょっと浮いてるから」
「ド◯えもんみたいにちょっと浮いてるから!?そんなの作れんの!?」
「現状は材料が二種類ほどこの領地にないから無理だな、これからのダンジョン次第だ。素材があれば図面はもう引いてるから実家で扱ったこともあるし、すぐ取り掛かれるんだがな」
「その素材って?」
「『魔結晶』と『ガルタイト』っていう鉱石だ。魔結晶は魔石を結晶化したもので、ガルタイトは重力に反発する性質がある。前者は魔結晶に変えることで魔力の伝達効率の向上し、小型化、燃費の改善、更に電池みたいに取り付けることが出来るからエンジンのオンオフで内部の魔力を温存出来て一個一個が長持ちする。ガルタイトは重力に反発する性質を利用することで、浮力分を魔結晶の魔力に頼らないで済むって所だな。魔晶石単体でも行けなくはないが燃費がちょっと普段使いには現実的じゃなくなる」
「ほうほう!夢が広がるね!早く見つからないかなー」
ふむ、ちょっと煽って見るか。
「あ、そうそうガルタイトは兎も角魔結晶があれば落胤英雄ネキが前に言ってた「魔法だけでもいいから打ち消したいな!」という要望を叶える魔道具が作れるかも知れないからそれをガントレット型にすれば、リアル幻想殺し擬きなら行けるぞ」
「・・・!?」
凄い目をこっちを見つめる落胤英雄ネキ。相変わらずサブカル技の再現には余念がない人だ・・・俺もそのロマンは分かるけどね?
「それ、マジ?」
「俺は魔道具に対してだけは嘘は言わんよ。理論上も問題はない」
「よし、分かった!鉱石の方は兎も角魔結晶の方は意地でも見つけたるわ!!!」
「ガルタイトも頼むなー」
「それは余裕があったらで!!」
うーんこれはちょろいな!別に騙すつもりはないけども。
「こうしては居られん!直ぐ準備してダンジョンに向かうのだ!!」
「いや、今行ったら帰りが遅く・・・行っちゃった。まぁあいつなら大丈夫か」
なおこの後しばらくして5層が発見され魔結晶、ガルタイトが発見されることになる。
因みに最初に5層に向かう権利を得たのは、大妖精使いニキ、露出狂ネキ、すまないニキだったが、その後情報が公開され、真っ先に魔晶石とガルタイトを俺の元に持って来たのは、宣言通り落胤英雄ネキだったと明言しておこう。
あ、そうそう、実際に魔導スクーター作ったら意外と売れたのと魔導エンジンの小型化、魔晶石とガルタイトの基本的な加工法、利用法をヤタガラスに公開したら功績扱いされてゴールドに上がりました。
コテハンは落胤英雄ネキによって半強制的にクラフターニキに決めさせられたけどな!・・・いや、だから俺身体四角くないって!?
読了ありがとうございます!落胤英雄ネキのサブカル技再現と魔道具って相性いいよなと関係性の設定を魔道具業界の設定と共に作らせて貰いました。
時系列的には本家様で言うとコボルトを俺達が雇い出した回から落胤英雄ネキが出て来た音声魔法の回の間の話です。このときはまだネキは大皇帝と血縁関係があることは知らなかった時期ですね、因みにスティーブン達は5層が発見される頃には4層の攻略は終盤になるので、少し経ったら落胤英雄ネキとPT組んで5層に突撃したりする予定です。
魔導スクーター
戦闘を想定していない移動用の魔道具。性能は本編参照、個人で買うには冒険者ならそこそこの貯金がいるが手が届かない訳では無く、組織や団体単位で買う場合は無理なく複数台揃えられるお値段設定。
カートなどのオプションを取り付ければ、荷物運びとかにも便利なので、領地内でよく見かける様になるくらいには流通している。