テイムした魔物達を魔道具で武装させることにした俺達の話 作:電脳図書館
防衛に成功した俺達は「やられたらやり返す」の精神に基づき、ウッド藩領に殴り込みに行った。
ぶっちゃけ俺は帰りたかったのだが、紅玉の「本拠地ならもっと強い人間がいるかもしれない」という熱い要望に折れ、同行している。俺は前と変わらず芭蕉扇を仰ぐだけ(とはいえ地形の被害を考えて加減したが)だったが、指揮官の号令と共に紅玉が、他の魔物達と魔族達と一緒に攻め上がって行く。
因みにアリシアは同行したがっていたが、留守番を任せた。決して嘗ての仲間を躊躇いなく殺せるとか、言いやがったことにビビったわけではない。ナインデスヨ?
「これ、突っ込む必要あるのかなクラフターニキ?」
「無いでしょ。でもこれからを見据えれば悪い手じゃない、魔物と魔族が俺達の戦争で手柄を立てたって記録は残るだろ?」
「働いた実績作りか、魔族の人達には一つでもそういうのが欲しいだろうしね・・・指揮官が何も考えないでノリでやった可能性は?」
「それもあり得るんだよなー」
亀吉の上で落胤英雄ネキと駄弁りながら双眼鏡を覗いて紅玉達の活躍を見守る。最近分かったことだが進化した亀吉は、自身のHPを微量ではあるが自然回復するスキル『自然回復(微)』があったりするのだが、甲羅の上で休息を取るとその者達もその恩恵にあやかれるのだ。
「うわー、紅玉ちゃんの魔剣と盾型の魔道具がエグい!でも綺麗だねー」
「まぁ盾は兎も角魔剣の方は扱うのにそれなりの技術がいるけどな」
紅玉が振るう青き魔剣『水龍剣』と赤く燃え上がる(ガチ)盾『火竜麟』は、俺が彼女様に調整したオーダーメイドの魔道具だ。
水龍剣は水属性の魔剣で水属性の魔法を補助する触媒になるだけでは無く、一定以上の速度で振ることでウォーターカッターの様に水が噴き出し、近距離だけではなく中距離まで射程を伸ばすことも可能だ。
しかもその水の剣筋は使用者である紅玉が、自由に操れる為通常剣が当てられない死角にも刃が届くその様子は水龍を思わせる程綺麗だ。まぁ水属性無効とかいう耐性持ちがいたら普通の良く斬れる剣になってしまうが、そん時は別の魔剣を使って貰えればOKである。
盾は嘗て使っていたバックラー型で、攻撃を防ぎいなす。更に炎を纏い並みの鉄装備程度なら融解させることも可能だ。当然相手にもダメージが入るし、円盤投げのように投げつけることも出来る。因みにきちんと手元に返るように軌道を変える能力も組み込んでいる。
「うん、戦果は上々だな!」
敵兵の悲鳴をBGMに紅玉の活躍を観戦しているとそう時間を置かずに勝鬨の声が上がったのだった。
その後は戦後処理だったり、大皇帝がいやいや王都に行ったりと色々あったが俺は事後処理の魔道具修理と再生産をやったくらいで、後は上にお任せだ・・・お任せが良かったな・・・。
「何で店に大、ゴホン、ヒムラー公爵のお嫁さん候補の三姉妹が来てるの?」
「この領地の魔道具屋といえばここだからだよ」
「「「おー」」」
この領地の紹介としてここに連れて来た奴に若干キレ気味に対応しながら店の品揃えを見て感嘆の声を上げる三人を見る。
「お嬢様方の領地、いや元領地には魔道具屋がありませんでしたので?」
「私達のことは名前で呼んでくださって構いません。確かにありましたが、ここまでの品揃えではありませんから。コーナー分けされているとはいえ、戦で使われた銃というものと魔剣を初めとした戦闘用魔道具、日用品や家具などの魔道具も豊富でましてやこれが一堂に陳列されている店舗は王都にもないでしょう。流石はクラフト家ご子息にして、本家よりのれん分けされたお方ですね」
「分かったよテル・・・あれ、俺の家を知ってるのか?こっちの国では王族や古参の貴族家くらいしか知らないものかと」
「それはどうでしょうか?王都などの首都近郊は兎も角それ以外の地域でしたら物語を通じて知っている方は多いと思いますよ?」
「物語?ああ、確か大昔に吟遊詩人が各地で語っていた頓挫した辺境開発の話を纏めた歴史学者がいて絵本になったこともあったんだっけか?」
「はい、『辺境開拓伝』大分昔の絵本ですので首都ではもう読まれていませんが、本の入手が難しい田舎などでは今でも親しまれ読まれ続けていますよ」
「マジか」
確かその物語は複数の主人公がいて、その内の一人がうちの初代様だっけか。俺は読んだことはないが今でも読まれているなら今度掲示板で読んだことがあるか聞いてみるか。
「ええ!お兄さんってあのクラフト家の人なの!?」
「ラヴのおじちゃんの子孫なんだ凄い凄い!!」
サキとトキからキラキラした視線を向けられる。ラブ・クラフト・・・某作家を思わせる名前だが特に邪神が、関わっているとかはない・・・はず!にしてもおじちゃんって絵本でどう扱われてるんだ初代様。
「先祖は敬うが職人としては腕を見てもらいたいが・・・これはどうだ?」
カウンターの引き出しから3つほど箱に入った花型のブローチを取り出す。
「これは?」
「装備者に毒の耐性を付加するアクセサリー型の魔道具『抗毒のブローチ』、其処らの毒なら無効化出来るし、強力な毒でも延命出来る代物だ。やるよ」
「いいのですか?」
「店で並んでないのは耐性装備だとバレない様にするためだ。要望次第でアクセサリー自体の変更も出来るぞ。それに貴族には"色々"あるだろ?」
「否定はしません」
妹達に視線を向けると頷いて三つ共受け取って三人で身に着けてくれた。この三人がただ護るべき対象というだけならもっと自衛用の魔道具を渡しても良かったが、冒険者となりダンジョンにも挑戦するらしいので自作なら兎も角低レベルの内に高性能な魔道具は渡さない方がいいだろう。
「似合ってるぞ?他にも魔道具が欲しければいつでもご利用を、お次は御代を頂きますが」
「承知しています」
その後しばらく絵本の話を始め三人と談笑をしていた。彼女達なら『俺達』とも上手くやれるだろう。
「あの三人に甘いねクラフターニキ」
「褒められて嬉しくない奴なんて、そうそういないだろ?」
それはそうと、人間ってつくづく分かりやすい生き物だと思うよ。
読了ありがとうございます!三姉妹とも邂逅したスティーブン、上げたブローチはあれば助かるし、隠しやすいぞ!