テイムした魔物達を魔道具で武装させることにした俺達の話 作:電脳図書館
「6層でもこのレベル帯なら問題はなさそうだな」
大皇帝が領地に戻って少し、俺は6層、7層に挑む先行隊に落胤英雄ネキから誘われ参加している。集団訓練は少し面倒だったが未知の探索は俺としても興味をそそられるからだ。
「クラフターニキが好きな素材は魔石や魔結晶くらいしかないね、退屈してない?」
「程々戦っているから大丈夫。落胤英雄ネキこそ装備は大丈夫か?」
「専用装備も作ってくれたから絶好調!でも素手だから目の前で血が出るから良く掛かっちゃうんだよね。何か良い魔道具とかない?」
「うーん、意外と売れそうだし考えて見るか。今は使い道がない琥珀や骨も利用法も考えてるし」
「おお、言って見るもんだね!」
俺が彼女に作ったガントレット型専用魔道具『マジックキャンセラー』。
効果は読んで字の如くこのガントレットに触れた魔法を無効化、正確には魔法そのものを強制キャンセルさせることだ。ただ魔法には属性があり、この魔道具の使用者が無効化する魔法と同属性を行使出来る適正が必要になる。しかも魔石換算の燃費もものすごく悪く、一般の魔道具とは違い魔石に魔力をチャージするのではなく魔石そのものを消費する消費型に分類されるので猶更だ。
しかし、転生者兼勇者である俺達は得意不得意はあれど適正だけは全属性を扱っている。其の為この魔道具のフルスペックを発揮できる。
燃費問題も魔結晶がある程度ダンジョンから得られるようになったことで、実用できる範囲に収まった。それでも消費型だからある程度使用すれば交換の必要はあるけどな!
「とはいえひとまずは紅玉のことだけどな」
「あー確かに"進化"したしね。色々装備の調整が必要だよね」
「私がどうかしたか?」
「カメー」
俺と落胤英雄ネキが駄弁りながら素材採取しているときに周囲の警戒をしてくれてた紅玉と亀吉が戻って来る。先の戦争もあって俺達は大きくレベルは上げ、俺は60、亀吉は57、紅玉に至っては68に到達している。そしてレベル60に至った時にハイピクシーがクィーンピクシーに進化したように2段階目のランクアップによる進化を迎えた。現在は歴戦の称号はそのままに種族が『ドラゴニュート』になっている。実際その容姿は翼や角、尻尾一部残っている鱗を除けばかなり人に近く、長髪の赤髪、整った顔立ちにキリっとした進化前より済んだ赤色の眼、豊満な胸と一見スレンダーに見えてかなり筋肉が付いている身体などかなり美人になっている。
今世では聞き覚えが無い種族だと思ったが、大皇帝の臣下であるご隠居の魔法使いの爺さん曰く、人化の魔法で外見を人間に変えたドラゴンと人間が交わって産まれた種族であり、種族としては人間の利点とドラゴンの利点を併せ持った上位種族とのこと。ただこの種が生まれて来る確率は限りなく低く実際そういうケースで子を産む場合ドラゴンを産む可能性があるドラゴン側が母体だった場合、人間6割、ドラゴン3.5割、ドラゴニュート0.5割、母体が人間の場合でも人間9割、ドラゴニュート1割というとんでもない確率の低さである。
ただでさえ人間とドラゴンが交わるなどレアケースなのにこの確率の一つから彼らが歴史に登場するのはそれこそ最新でもこの国の建国王時代よりも前らしく、学者の中にはそんな種族は存在しないと言っている奴もいるらしい。まぁドラゴン側は明確にいたと証言してはいるらしいのだが。
とはいえ現代では全くドラゴニュートの姿を見ないのは事実。いる派の学者達の間では何処かに隠れ里があるとか、迫害された記録もあることから魔族側に下ったのではないかと議論されていたらしいが・・・紅玉がランクアップ時に獲得した幾つかのスキルの中にこの種族がどうなったのかを表すものが存在した。
絶滅種
嘗てこの世界に存在し、絶滅した種族を進化により復活させた証。
このスキルの所有者は過去の同胞の記憶と知識、技術の一部を引き継ぐ。
そうドラゴニュートはもう既に絶滅していたのだ。紅玉曰く明らかに自分のものではない記憶や知識、体得した覚えのない技術を進化した後いつの間にか備えていて違和感なく使うことが出来るらしい。このスキルの他にはドラゴニュートの基本的なスキルと思われる『火炎ブレス』『竜化』など分かりやすいものが並ぶだけに少し物悲しく思うのは俺だけだろうか?
「いや、お前の事で少し話していただけだ」
「そうか、休憩中に出た魔物は薙ぎ払ったから安心するといい」
「流石素でドラゴンをタイマンで倒せる奴が言うと安心感が凄いな」
本人はこの世で唯一のドラゴニュートだというのに全く気にしていないみたいだけど。恐らくドラゴニュートに進化できる個体はそうそう現れないと思うが寂しくないのだろうか?
因みに戦闘力に関しては竜騎士ニキのドラゴン達に協力して貰った。
結果はドラゴン達のレベルは紅玉より少し高かったが互いに装備無しの状態で叩けば紅玉がタイマンならどの個体が相手でも勝つ、両者とも装備ありな場合だと装備の質の差もあっただろうが、3体までなら優勢、5体くらいで五分五分という結果になった。
正直想定よりも遥かに強かったのだが、竜騎士ニキはドラゴンが20体いるので全員と戦ったら精々1体2体道づれにしてボコられると紅玉本人が発言していた。
この強さは人間の種族的利点とドラゴンの種族的利点を併せ持つドラゴニュートだからというよりも『絶滅種』と『歴戦個体』としてのレベルに見合わないステータスとスキルの強さや固有スキルである『歴戦赤竜人の学習』(『歴戦赤蜥蜴人の学習』が紅玉の進化に合わせて変化したスキル。戦闘技能に関するという縛りが無くなり常時学習能力大幅向上の恩恵を受ける)による影響もあるので一概にドラゴニュートが皆このレベルとは言えないだろう。
「確か紅玉ちゃんは炎を得意とするレッドドラゴンの系譜なんだっけ?」
「私がというか、私の氏族がそうなのだろうな。恐らく過去にダンジョン産のリザードマンとその系譜のドラゴニュートが交わった子孫なのだろうな」
「そうなるともしかして外のリザードマンとダンジョン産のリザードマンはもう別の種族になってるってこと?」
「ご隠居の魔法使いも同じ考察をしていたな。実際他の氏族で青や通常の緑より濃い緑の鱗を持つ個体も見たことがある。あれもまた別の系譜のドラゴニュートと混じり合った子孫だろう。実際ダンジョン産のリザードマンの上位種は地上のリザードマンの上位種とは異なり耐性も持たない」
「そう考えると紅玉は偶々先祖返りみたいにドラゴニュートの血が強い先祖返りだったのかもな。成長限界も他のリザードマンより高いみたいだし」
「よもや家出もそれが原因で?」
「・・・ドラゴンは一定の期間を終えたら独り立ちするらしいから関係ないとは言えないな」
家出と言われ、少し気恥ずかしそうにしている紅玉を見ながら多分ドラゴニュートになったことで俺達はあとあと厄介事に巻き込まれるんだろうなと溜息を付く。
「血統ってのも面倒なもんだな」
俺はまだ分かりやすい血統で良かったぜ。
「あ、貴方私達と同じ魔女の気配がしますね。ご先祖に魔女がいるのでは?」
「ふぁ!?」
「なるほど主従揃って厄ネタだったか」
「友人の私の血統も厄ネタと言えばそうだしね!そういう縁なんじゃないの?」
7層に先行した班から魔女の話を聞かされ、興味本位で7層で合流してみたらこれだよ!!開口一番に魔女の族長である9代目モルガンから言われた一言に俺は思わず叫んでしまった。
「あんたらダンジョンに逃げたんじゃないの!?」
「それが王国が建国した時代に次代のモルガン候補の魔女の一人が『ダンジョンの中つまらないです!あと私が次期モルガンとか無理!』とか言って地上に家出しまして」
「建国王時代とか初代の嫁さん!?名前は!「アルトリアです」ぐは!?伝わってる名前と同じだ!得意魔法は!「ある程度幅広く使えましたが、錬金術が得意だったそうです。爆弾作って爆撃も良くしてたとか」ぐは!?得意魔法だけじゃなくて戦闘スタイルも同じだ!!容姿は!「金髪とアホ毛が特徴と」ぐは!?同一人物やねーか!?いやこの場合同一魔物か???」
「え、そうなの?」
「ああ、俺の魔石手榴弾も初代の嫁さんの話を聞いて『あ、そういうことこのファンタジー世界でもしていいんだ』とか思ったのが開発の切っ掛けなんだよ」
「ん、俺は余り生産に詳しくないけど錬金術で作った奴と同じ物が魔道具職人に作れるのか?」
「元々魔道具作成の技術の一部は錬金術だからな竜騎士ニキ、それに俺の家の技術って初代が培った魔道具作りの技術と嫁さんの錬金術を掛け合わせて進化ものだから再現は出来ると思う。まぁ魔石手榴弾の場合は開発の切っ掛けってだけで別に模倣したわけじゃないから中身の構造は別物だ」
「ほう、魔女の技術を・・・血も継いでいることですし私達魔女しか行使できない魔法や技術をスティーブンさんは使える可能性がありますね」
「「「マジで!?」」」
基本的に俺達は才能が勇者なので、本人の向き不向きはあれど色々出来るのだが、種族や特定の部族のみが使える固有の能力や技術などはその条件を満たさなければ使えないので、それらが『俺達』にも使えるのは地味に革命的なことだったりする。
「でもいいのか?」
「勿論です。それにかの魔女は私の遠縁に当たるとか、ならばもはや身内でしょう」
「あ、そうなんだ」
「ええ、ですから私が貴方の師になることは不自然ではありません・・・という訳でこれからよろしくお願いします」
「こちらこそ。ヒムラー公爵に頼んで優先的に住居立てて貰いますよ」
「・・・」
「も、モルガンさん?」
「先ほども言いましたが私達は縁者同士、呼び捨てで構いませんよ?敬語も正式な場以外では不要です」
「な、なるほど。なら俺もスティーブンでいいぜ」
モルガンに不気味な気配を感じつつ互いに気安く会話するが、何故かその間紅玉はモルガン相手に警戒の構えを解くことは無かった。
「こんにちは、今日からこの領地でお世話になります。希望した住居は"ここ"ですので改めてこれからよろしくお願いしますね?」
「いや、ここは俺の店兼住居なんですけど!?」
「縁者同士ですから♪それに・・・いえ、今は信頼を得る所からですね」
「この行動で主の貴様に向ける信頼は地に落ちたと思うのだが?回復したければ帰れ」
「ヒムラー様からスティーブンにテイムされることを条件に出されたので心配する必要はありませんよ?」
「そういう意味ではないわ!!」
「あ、ちょ店で暴れるなあああああ!?!?」
「カメカメ・・・(こっわ、コロコロ鳥達と避難しとこ)」
その後店を半壊させる程魔法と剣で殴り合ったモルガンと紅玉だったが、騒ぎに対する説教をしに来たお嬢様ネキの取り成しで結局モルガンをテイムして同居することになってしまった。
紅玉は不満らしくしばらく俺の傍から離れなかったが・・・所でモルガンの視線が時々縁者や弟子を見る眼じゃなくて捕食者の眼に見えることがあるのは、俺の自信過剰による気のせいだよね?そうだよね?俺前世よりは顔整ってると思うけどヒムラー公爵程じゃないし・・・何でそこで黙るの?ねぇ、ねぇって!?違うよね?そういうことじゃないよな?何とか言えよーーーーーー!?
読了ありがとうございます!え、最後のは伏線かって?・・・まぁ多分モルガンとは将来的にそうなると思いますよ(目逸らし)?頑張れ主人公!