僕のサムライヒーローアカデミア   作:すしさむらい

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すまんな、かっちゃん推しなんや……。


第三話 緑谷出久の中学生時代2

 

 

 緑谷出久はすべての木人を矢で射抜き、動かなくなった木人に礼をする。

 将門がよきよき、と褒めながらスーパーで買ってきたセール品のミタラシ団子を食べている。

 

「神域の霊気と神水のせいか、大きく育ったでござるなぁ」

 

 中学二年生になった緑谷出久は、体が更に大きくなっていた。今や180を超えつあり、その体躯は金剛力士像の如し。

 

 学校での体育の授業など児戯であり、もはや学校に期待するのは内申点のみとなっている。

 それとて出久は平和を愛し、正義を尊び、学を成す男。

 内申点が低くなる理由を探すほうがムリであった。

 

「師匠、掛り稽古、お願いします」

 

 木人討伐だけではすでに出久は満足しない。始めたころは木人相手にノされて気を失っていたものだが、今やライフル弾のごとき初速で放たれる矢と、竜巻の如く振るわれる太刀により、木人たちでは相手にならぬようになってしまった。

 

 木人を動かす式神たちまでもが将門に『もうちょっとこう、手心というか……』などと緑谷出久の振るう狂暴な武威に対して苦情を申し立てる始末。

 こうなった以上は、将門自身が掛り稽古に付き合うほかない。

 

「イズク殿、今日は趣向を変えるでござる。いざ、真剣勝負」

 

 いつものように袋竹刀に持ち替えていた出久に、将門は得物を変えよと命じる。

 兜の面頬の向こうに見える出久の瞳に、色濃く恐怖が浮かぶのを将門は見逃さない。

 

「し、師匠、ちょっと今日は腹の調子が……」

「ヒィロォというのは、かような言い訳が通じるでござるか?」

「……通じる、日もあればいいなと思います」

 

 将門が日光江戸村(※観光地)で買ってきた土産物の模造刀をすらりと抜く。

 その様に、出久が戦慄し、膝が震え始める。

 

「そう怯えるでない。真剣勝負と申したでござるが、これは模造刀。いわばハッタリでござるな」

「師匠、こないだハリセンで鬼滅の〇ごっこして、御神岩砕いて式神様に怒られてましたよね?」

「ちゃ、ちゃんと謝ったでござるよ? あれは神域の岩が脆すぎたでござる」

 

 ダメだ、通じていない!? と出久は自らの足りぬ舌を恨んだ。

 ハリセンごときで岩をも粉砕する師匠の本気の一撃を、もし模造刀なんぞで食らった場合、出久はこの世から成仏することになってしまうと理解していた。

 

 人の体というのは、ミンチになっても生きられるほどタフではない。

 ゆえに──出久は将門師匠の初太刀をどう回避するかに全集中する以外打つ手が残されていない。

 

「くっ……」

 

 出久が身を低くし、半身に構えながら大鎧の大袖(両肩に垂らしている盾)を向ける。

 顎を引き、兜の鉄鉢を相手方に向けながら、上目使いで睨む。

 こうすることにより、鎧で防御を固めつつ切りかかる、鎧受け太刀が可能となる。

 じりじり、とすり足で近づく出久。

 対する将門もまた、出久と同様の鎧受け太刀の構えでじりじりと迫る。

 同様の条件となった場合の古武士の果し合いはこうなる、という良い事例であった。

 

「疾っ!!」

 

 先手は将門。

 鎧受け太刀の姿勢のままの突貫。

 イノシシ武者、の語源となった鎧の防御力頼みの突撃である。

 ただし、将門のそれはイノシシというよりは隕石であった。

 

「キェェェッ! 喝っ!!」

 

 出久も甲高い猿叫を発しながら、示現流のごとき最速かつ渾身の振り落としに切り替えて対処する。

 正面から鎧受けの型で受け止めると、確実に出久の喉元に模造刀が突き立てられるイメージが見えたため、出久はとっさに受けを変えたのである。

 

 いわゆる、振り落とし。

 突撃してきた将門の兜ごと頭を砕くべしっ! 

 

「遅いでござる」

 

 払いあげ打太刀!? と気づいた出久だったが、いまさら振り落としを止められぬ。

 出久が振り下ろした渾身の太刀は、将門の下方から地面を擦るように振り上げられた刀身によって受け止められ──いや、破砕された。

 それなりのお値段がする現代刀が砕け散り、その破片が飛び散る。

 目をヤられる、と判断した出久は直ちに顎を引き、兜のヒサシで破片をいなす。

 だが、一瞬、ほんの一瞬だけ視界を損なってしまった。

 

「っ!!」」

 

 びたり、と首筋に冷たい刀身を感じる出久。

 将門がそのまま振り抜いていたら首がちぎれ飛んでいただろう。

 

「うむ。よき判断でござる」

 

 将門が模造刀を出久の首筋から離して、鞘に納める。

 その納刀姿すら出久からすればまだまだ至らぬ高みであった。

 

「あ、ありがとうございました」

 

 出久はそのまま頭を下げる。

 いま、一度死んだな、という恐怖感を無理やり落ち着けるべく、大呼吸を行う。

 大呼吸とは呼吸法の一つであり、徐々に吸う空気の量を大きくしていくだけの単純な呼吸法なのだが、深呼吸よりも早く丹田の乱れに効くのだ。

 

「イズク殿、あそこは籠手を挟んでもよいでござるよ」

 

 首を刎ねられかけた時に、鉄板でおおわれている腕を差し込め、と指導が入る。

 たとえ腕に刀がめり込んだとしても、それは隙を作ったということ。

 それを活かし、組手に移行してでも相手をへし折るべきなのだ。

 ──あきらめないならばそうすべきだった、と出久は未熟さを恥じる。

 

「ヒィロォたるもの、格上の敵と対峙するときは、まず生きねばならぬでござる。生きあがくための小技も磨いておかねば、ダメダメでござるよ?」

「はいっ!」

 

 出久は深く反省した。

 その通りであった。たとえ将門師匠に勝てぬことが分かっていたとはいえ、最後まで勝負を捨ててはいけないのだ。もしこれが実戦で、相手が格上過ぎるヴィランだったとする。

 そこで自分はあきらめるのか? と出久は胸に手を当てて考える。

 

 断じて、否である。

 

 将門流の教えに則り、戦場に最後まで立ち続けなければならないのだ。

 自分が倒れれば、後に控える弱きものたちが狙われる。

 それはヒーローが守るべきものをあきらめるのと同義。

 ゆえに、出久は倒れてはならぬし、戦いを諦めてもダメなのだ。

 

「それにしても、よき真剣勝負でござった。ほんのちょっぴりでござるが、拙者、本気の殺気を向けたでござるよ?」

「師匠の……本気?」

「よく意識を保ったでござる。胆力のない者であれば気に中てられただけで、死んでいたでござるよ」

 

 いやいやいや、そういうのはやめてくださいよ、と出久は心中で将門を罵倒する。

 じゃあ何ですか? もし僕の胆力が足りなかったら死んでたってことですよね? と当たり散らしたくなるところが、まだまだ出久が中学生であることを示している。

 

「このまましっかりと鍛錬を積むでござるよ。イズク殿は中学二年生。あと一年もすれば雄英の受験でござるし」

「はいっ! 僕は絶対、ヒーローになりますっ!」

 

 その日、出久は師匠に頼んでさらに木人を増やしてもらった。

 木人を操る式神の強さも変えてもらい、限りなく手を抜いた将門レベルから、指に力を入れた将門レベルへと変えてもらう。

 当然、その日はさんざんに木人にボコボコにされたが、出久は磨くべき己の課題を数多見出すことができて、大変充実した稽古日となった。

 

 

 

 

 さて、ある日の午後。出久は地元の公立中学校でいつも通り授業を『見学』していた。

 体育の時間、とくに、必修科目である武道は教師および生徒たちの懇願により、隅のほうで型稽古をすることに費やされる。

 

 出久とて不用意に同級生を傷つけるなどあってはならぬことだし、もし仮に感情に任せて己の武威を振るうことがあれば、直ちに将門師匠に首胴(※物理的に首と胴を断ち切られること)されることが分かっている。

 

 ゆえに、出久は心を鎮めつつ、武道場の隅で一人、型稽古を進める。

 手刀を振るえば空気が泣き叫び、足さばきをすれば旋風が巻き起こるその様を、教師と生徒は『絶対立ち入り禁止エリア』と呼んで、決して近づかない。

 

「おいデク」

 

 ただ、一人だけそんなエリアに踏み込む剛の者がいる。

 柔道着に着替えたかっちゃんが、珍しく声をかけてきた。

 出久はすっと姿勢を正し、呼吸を整える。

 

「なに? かっちゃん」

「稽古つけろ」

 

 出久は先生のほうを見る。

 武術の時間において何か同級生に技をかけるときは絶対に許可をとれ、と教員にしつこく念押しされていたからだ。

 

「先生、爆豪くんと組手をしてもいいですか?」

「え、あー……よしっ! みんな、爆豪と緑谷の組手を見学して学ぼうかっ」

 

 うわ先生ヒヨったなぁ、などという生徒たちの言葉が飛び交うが、結局生徒たちは先生の指示に従い、武道場の壁面に移動していく。

 

 中央に立つは二人のみ。

 出久と爆豪が互いに見合い、礼をする。

 生徒たちは二人から放たれる闘気に中てられ、言葉少なくただ見守る。

 

「かっちゃん、稽古の手心は?」

「本気でこい、デク」

「わかった」

 

 コオォォ、と出久が大呼吸を行う。

 丹田の底に力が溜まっていくのを感じながら、出久が大熊の構えをとる。

 両手を大きく広げ、半身に構え、いつでも相手に絡んでいける組討ちの態勢。

 一応、柔道ということなので打撃技を封印し、組打ち術のみで相手をする、と出久は決めていた。

 

「……クソがっ」

 

 爆豪が仕掛ける。

 柔道らしく袖や襟を狙ったのだろうが──爆豪の腕は振り下ろされた出久の腕によってはじかれる。

 そのまま腕部に絡みついてくる出久をどうにもできぬまま、爆豪は畳に激しく打ち付けられる。

 ミシリ、と畳が歪む。

 

「かはっ!?」

 

 呼吸ができないままだった爆豪だが、出久に助け起こされて背中を叩かれることで、呼吸が戻った。

 

 生徒たちが「いやいやいや……容赦ねぇな緑谷さん」とあきれている。

 

「かっちゃん、どうする?」

「……チッ、稽古にならねぇ。1割でいい」

「わかった」

 

 それでもなお──爆豪は出久に畳に放り出され、叩きつけられ、関節を決められ、そしてついには足腰が立たぬほどまで追いつめられる。

 

「いやいや、そろそろ──」と教員。

「さぁーせん、先生、もう少し……もう少しなんスよ」

 

 内申点への悪影響を回避すべく、爆豪なりの丁寧語で先生を制する。

 

「ラス1だ、デク」

「応」

 

 今度は出久から仕掛ける。

 態勢を崩して投げを狙うべく、素早く足さばきを行いかっちゃんを翻弄する。

 だが、爆豪も負けじとその足さばきに食らいついていく。

 周りから見れば残像しか見えないのだが、二人には互いが見えている。

 

「疾っ!」

 

 一瞬の爆豪の足崩れを見抜いた出久がさっと踏み込み、相手の帯をとる。

 そのまま腰投げを狙う。

 

 だが。

 爆豪勝己は天才である。

 この短時間の間にも、急成長を遂げる才能が人の形をしている男である。

 

「ここだっ! オラァ!」

 

 誘いの崩しに乗ってきた出久の力を利用する。

 もとより出久は大きく、重い。

 爆豪がどれだけ飯を食い、体を追い込んでも、遺伝子の差なのか、いまだ彼ほどの巨体へと至ることはなかった。

 ゆえに、小兵としての戦術を組み立てた爆豪は、モーメント──物理学に従い、腰投げを狙う出久に内股払いでカウンターを決める。

 

 ドンッ! と大砲の発射音のような轟音とともに、出久が背中を畳に叩きつけられる。

 むろん、畳は二つに割れて、床板をもバキバキに破砕する。

 

「ハァ……ハァ……みたか、デクっ! 調子乗ってんじゃねぇぞっ!」

 

 渾身のガッツポーズを決める爆豪。

 口こそ悪いが、その目にうっすらと涙が浮かんでいる。

 届かない、と思ったものにわずかながら届いた、という歓喜。

 それを感じ取った周りの教員と生徒たちも、思わずもらい泣きしてしまう。

 

「すごいよ、かっちゃん!」

 

 出久は背中を払いながら立ち上がり、かっちゃんを讃える。

 うるせぇ、とそっぽを向く爆豪。

 だが教員も生徒たちもワッと集まってきて爆轟を讃える。

 間違いなく、その瞬間の爆豪は皆のヒーローだった。

 

 

 

 放課後、今日は休息日だから家で戦術ノートをまとめるぞっ、とやる気をたぎらせて駆け足で帰路についていると、爆豪がとなりに駆け足で並んだ。

 

 出久は礼儀作法に反しない限り、基本的に歩くことをしない。

 どこに行くにしても駆け足。

 

 たとえ家でトイレに向かい糞をひり出すときであったとしても、座面に体重を預けることなく、大腿を鍛えている。

 隙あらば鍛錬せよ、という師匠の教えを忠実に守っているのだ。

 

「おい、デク」

「なに?」

 

 デクは走るのを止めない。

いつ何時助けを求める人がいても駆け付けられるよう下半身と心肺を鍛えねばならぬゆえに、たとえかっちゃん相手と言えども歩むわけにはいかぬのだ。

 

 これが同級生の女子であったり、老人や子どもであったなら『優しくなければ生きている意味がないでござる』という将門師匠の教えに従い、歩みを合わせるであろう。

 

 しかし、相手はかっちゃんだ。

 頂を目指す者同士であるならば、足を止める必要すらない。

 

「オレぁ、昔、個性がないお前をバカにして見下してた」

「――それは違うよ。かっちゃんはそもそも他人を見下してるし」

「……チッ」

 

 何も言わず、互いにひたすら駆け抜けていく。

 出久が下校時間になったら商店街を駆け抜けていくのが日課になっているため、商店街を歩く人々も、あらそろそろ夕方なのね、といった雰囲気だ。

 

「デク、テメェは頭おかしい」

「かっちゃんのほうがオカシイよ。いつも切れ散らかしてるし」

 

 出久は最短の下校ルートを離れて、いつもの山の修験道を走って登る。

 いきなり山岳走を始めた出久にドン引きしつつも食らいついていく爆豪。

 

「そんなそびえ立つクソみてぇなテメェを、いつか倒す……ハァ、ハァ、なんだこれ!?」

 

 山にある河原沿いの大岩をジャンプしながら乗り越えていく障害走に、かっちゃんがキレ散らかしはじめる。

 

「怒るくらいならついてこなければいいのに」

「うるせぇっ!」

 

 個性の不適切使用は取り締まりの対象になるのだが、爆豪は問答無用で流した汗を利用して岩場を跳躍して乗り越えてくる。

 無論、出久は脚力と体幹を連携させた筋肉のバネで乗り越えている。

 筋肉の力に追従するかっちゃんの個性はさすがだな、と出久は感心する。

 

 そして山の中にある大きな池にたどり着く。

 この湖畔周りを一周してから、帰宅コースへと向かうのが出久の日課だ。

 

「んだよこれ、湖畔まで走るのかよ……」

「無理についてこなくていいよ。僕だってキツイんだから」

 

 そう、出久にとっても日課であるとはいえ楽ではないのだ。

 トライアスロンを毎日やるくらいの根性はさすがにないので、ハーフマラソン程度で妥協してしまっている己の未熟さを、出久は情けないとすら思う。

 

「……デク、テメェ師匠か何かいるだろ?」

「えっ!?」

 

 湖畔の周回を終えて帰らんとしたとき、かっちゃんから思わぬ言葉が飛び出した。

心胆が揺れた出久は、水面で足を止める。

 

「はあっ!? 水の上に!?」

 

 爆豪が驚くが、出久にとってはこれもまた精神集中の修行である。

 水面に浮かぶ枯れ葉の上に立つ――ことは物理的に沈むため、出来ない。

 ただ、足を並々ならぬ速度でバタ足させて直立しているだけである。

 つまり、シンクロナイズドスイミングにてポーズをとりながら水面に飛び出してくるあれの強化版、ということになる。

 出久のイメージとしては、白鳥の湖における超高速足さばき、といったところだ。

 

「――よし、ちょっと落ち着いた。休憩しよう、かっちゃん」

 

 出久は池から戻り、散歩道になっているところの石のベンチに腰掛ける。

 そして爆豪に、カバンから水筒を取り出して投げる。

 彼はそれをぐびぐびと飲み、投げ返してくる。

 出久もまた神水をぐいと一飲みする。

 

「で、テメェの師匠の話だけどよ」

「それそれ、どど、どうして気づいたの、かな?」

 

 出久は相変わらず動揺を隠せていない。

 

「――つけた」

「す、ストーカー……」

 

 出久は貞操の危機を感じ、身を固くする。

 

「バカ野郎っ! とにかく、テメェが異様にカラダでかくしてるし、本格的に武術もならってるから、オレも気になって……調べたんだよ」

 

 爆豪はまず街中の様々な道場を訪ねて回った。

 柔道や剣道などといったメジャーなものから、中国武術やオキナワ空手など、手当たり次第に調べ、体験教室に通い、どれもがデクの身に着けているそれではないことを思い知らされて終わった。

 

「でも見つけられねぇ。だから割り切ろうとしたんだ」

 

 爆豪の場合は体術以上に個性制御――汗を爆発させる、言葉にすると簡単で、実際にそれを使って何かを成そうとするためには努力が求められるそれのために、時間をとられる。

 ゆえに、体術でデクに追いつく、というのはさっさと見切りをつけて個性の制御の緻密化と学力、体力に全振りした。

 

「けどよ、それだけじゃ『最強』が見えねぇ」

 

 一人で山に登り、誰もいないところでひたすら個性制御を磨き、様々な技を編み出してみた。だが、それが対人戦で本当に有効なのかどうかも分からぬまま、ただ悶々とした。

 

 ちゃんとした射程を持ち、確実に岩くらいは砕ける威力を発揮できるが、それが実戦向きかどうかは分からないままだった。

 

 家で他のヒーローたちがヴィランと戦っている動画をみて研究してみたが――イメージだけでは限界があった。

 

「だからつけた。テメェを強くした師匠なら、オレも納得できるかもしれねぇ」

 

 真剣な顔で、握りしめた己の拳を見つめるかっちゃんの姿。

 

 出久はそれに対して一言だけ言いたかった。

 ――たぶん、かっちゃんには合わないよ、と。

 

 かっちゃんは僕以上にストイックで、完璧主義者だ。そんなかっちゃんが誰かの弟子になるのだとしたら、それは同じようにストイックで完璧主義(例えば、ベストジーニストなど)な人のほうが合っている。

 

 将門師匠はハッキリ言って信じられないくらい俗物だし、完璧主義というよりは実用主義的なところが多いからだ。

 強さ、という意味では――下手したらオールマイトくらい強いのかも、とオールマイトマニアの出久ですら恐ろしくなる時もあるが、強いことと師範向きかどうかは全く別の話なので……かっちゃんには師匠は合わないよ、と出久は強く思う。

 

「……わかったよ。かっちゃん、師匠を紹介する」

「うそだろ?」

「え?」

 

 かっちゃんが驚いて目を丸くしている。

 

「いや、テメェならごちゃごちゃ言って秘密にするかと」

「だって、弟子になれるかどうかは、師匠の気分とかっちゃんとの相性しだいだし」

 

 会わせたほうが早いよ、と出久は判断したのだ。

 

 

 

 

 

 

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