異世界から召喚した悪役令嬢?のお嬢様をメ○堕ちさせるだけの話   作:白樺の木

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長くなってしまった、前置きが。


5.5話

 

「ありがとうございましたー!」

 

店員のマニュアルを会釈で聞き流していれば、袋のカサカサと言う音と外から吹く風が冷たい。それが少し嫌で小走りになりながら家へ向かう。

 

帰ったらゆっくり……出来ねえな。明日も早いし、早く寝ないと。何の為に生まれて、何の為に生きるのか。社畜に対する問いにも当てはまるなと思いながら信号を乗り越える。

 

ちょっと鬱ってるかもしれない。まあ気にしたら負けだ。それよりもおでんだ。そう意識を逸らし、透ける袋の中のプラスチックのカップに目を移す。

 

おでん。お前も可哀想だよな、茹でられて、つつかれて、喰われて、それでも頑張ってるんだもんな。第二のピ○ミンだろ。色々種類いるし、全員火に強いけど。

 

 

 

 

……ははっ、何言ってるんだろ俺。これは本格的にやばいかもしれない。こんな時にお酒を呑めれば良いんだろうな。下戸の自分を恨みながらそう結論をつける。

 

そんなことを考えていて顔を上げれば、もう家に着いていた。後はただドアを開けるだけだったのだが。

 

視界の端に、鎧の一部が入ってしまった。

 

そのまま無視すれば良かったが、どうしてもチラついて離れない。諦める様に俺は女騎士と目を合わせた。

 

『お前、ニアの知り合いだろ』

 

鋭い目つきでこっちを睨み付け、ぶっきらぼうにそう言う。それに対して俺はさぁ?と返した。ニアと言う少女など知らない。だが、もしかしたら……と言う予感はしていた。って言うか女騎士の喋り方じゃないな全然と思ってしまった。

 

『この家にニアがいる、私には分かるんだ。幼い頃からあの子と一緒にいたから匂いを覚えている』

 

そんな事を言われても真偽は分からない、本人はそこにはいないのだから。が、気になるので本人に聞いてみる事にした。

 

「もしもし」

 

『……はい。どうしました?』

 

「あー、あのさ。突然変なこと言ってごめん。お姉ちゃんっている?」

 

『お姉ちゃん。血の繋がった姉はいません。ですが、隣国に姉に近しい関係の方がいました。その方をお姉様と慕っていた事がありました。随分昔の、まだ私が幼い時の話ですが。それが何か』

 

「……ちなみにお嬢の名前って名前なんでした?」

 

逸る鼓動を落ち着かせて、飽くまでも冷静に尋ねた。

 

『私ですか?言ってませんでしたっけ、申し遅れました。ビアンコ国ペスカトーレ教の()()。名をラザーニャ・アル・フォルノと申します。仲が良い方にはニアとも呼ばれてます、以後お見知り置きを』

 

「おっけー。じゃ、もうすぐ帰るわ。うん多分。はぁい」

 

電話を終え、暗い画面を睨み付ける。

 

クロじゃん。

 

「アンタが言ってた"ニア"は俺の知り合いだったらしい。今は俺の家にいるけど来るか?」

 

険しい顔でそう呟きながら頭を抱える彼女に聞いてみる。

 

『いや、それは。生きてるなら良い。()()()って聞いたから。いやまさかここが天国なのか?ニアは死んで……そりゃあそうだよ。人々は皆見た事ない格好してるし。小型の箱を皆持ってるし、此処は死後の世界か。それで貴方は死神?』

 

混乱している様子の彼女に、俺は否定も肯定もせずそのまま家へと連れて行く。思い返せばニアも同じ反応をしてたな。

 

「ただいま」

 

『おかえりなさ……あれ?何でクルお姉様が此処に?』

 

扉を開けた音に気づいて玄関までやってきたお嬢はそう聞いてくるが、口も開くのが面倒でさぁ?とジェスチャーを返す。

 

取り敢えずおでんと騎士を渡すと、俺はそのまま必死の思いでリビングに向かう。

 

おでんを温めているのを待ちながら、俺が知っている事を説明する。

 

『成程、お姉様がここにいた理由は分からないと。でも、恐らく私と同じ感じじゃないんでしょうか?何か現場にあったりとかはしませんでした?』

 

……そんな事聞かれても知らない、確かにお嬢の時は召喚して呼び出したけど。考えても分からないし、トイレ行こ。

 

トイレから出て、ふと玄関の方を見ると何かが落ちていた。何だろう?と拾うと見覚えのある魔法陣の紙だった。いや?細かい所は違うか?まぁどっちにしてもこれが原因なのには間違いない。

 

まあ良いや。こんな謎解きミステリーやってる場合じゃない。メシ食わせろ。

 

 

 


 

 

 

 

 

リビングに戻ると騎士が目を覚ました様でお嬢に抱きついていた。なのでそっとドアを閉めた。

 

 

 

よし、そろそろ良いかな?もう一度ドアを開けると普通に話していた。そして俺に気がつくと騎士がこっちに来て、頭を下げた。

 

『先程までは失礼した、初対面の人物に対する態度じゃなかった』

 

そう深く頭を下げる騎士を見て俺は大丈夫だと言って場を諌める。もうそんな事ぐらいにしか思ってないので気にしていない事を伝える。

 

それから騎士が腹を鳴らして顔が真っ赤になったので、一緒にご飯を食べて貰うことにした。

 

『本当に済まない!何と言ったら良いか……』

 

『まぁまぁ、そんなならなくても良いじゃないですかクルお姉様』

 

『お前なぁ、ちょっと馴染みすぎじゃないか?もう少し遠慮をだな』

 

そう言ってる姿はまるで本当の姉妹みたいだなって思いながら、おでんを小皿に移す。明日の分のメンチカツを買っといて良かった。これも出しちゃおう。

 

電子レンジにメンチをセットして温める。その間におでんをつまむか。空腹は最高のスパイスって言うけど何でも適量が大事だな。

 

「ご飯は?」

 

『○トウさん温めましたよ〜』

 

よし食べよう。

 

沢山あるおでんの中で選ばれたのは、おでんと言えばまずは欠かせないと思ってる。大根、それからつくねも好き。ロールキャベツも美味いし、白滝、こんにゃく。それから卵、ウィンナーと多くなってしまった。まあ人数が増えたから結果オーライとしよう。

 

「お嬢……ラザーニャ様、騎士さんドラフト会議を始めましょう」

 

『どらふと、とは?』

 

「言った後に気づいたけど俺も分からない。なんか選ぶ奴だろまあ適当に食べたい物選んでくれ」

 

「ちなみに早い者勝ちだ」

 

そう言って俺は大根を手にしようとして、止められた。

 

『私も食べたいです』

 

強い力で止められ、やむなく半分こにした。いやあ美味そう、もう満足しちゃいそうだ。

 

「つくねは?」

 

『どうぞ』

 

『私も遠慮する』

 

やった。俺はウキウキしながら、自分の皿にしまった。

 

「白滝〜この白いワシャアってしてる奴」

 

表現がむずい。

 

……私行ってみようかな?いきます!』

 

後は適当に各々食べたい奴を取っていく、何だった今の時間はって言うのは言わないお約束。

 

楽しく食べたいじゃん?食べるなら。

 

「『いただきます」』

 

『いただきます?』

 

騎士が不思議そうな顔をしてるけど、まあ置いておきおでんに意識を向ける。

 

あっ、その前にメンチカツ回収しないと。

 

戻ってくると先に食べていた様子で、二人とも驚いた顔をしていた。

 

『大根……フワフワでジュワジュワで美味しいです!』

 

『卵?も美味しいぞ、何と表現したら良いんだろうな。む、何だこれ!?口の中でずっと残る!こわい』

 

いつもより少し騒がしい食卓。思えばつい少し前までは、一人で食べる事が多かった。こう言うのもたまには良いのかもしれない。

 

そう思いロールキャベツを一口、口に運ぶ。ロールキャベツの難点ってキャベツが上手く切れない所だと思う。何層にも巻かれてるから。え、ナイフ?独身男性の家にそんなものがあるとお思いで?

 

あーこの味だ。シナっとして歯応えは無い。ただしそれがおでんの出汁に染み渡り美味さが伝染していく。あーうまい。中の肉も美味い。ロールキャベツで食べるご飯は美味い。

 

ウィンナーも美味い。いつもこんがり焼かれてるからなぁ。どっちにしても美味い。パリッとしてなくても美味い。この時間まで残ってた精鋭達は出汁の味が染み込んでいて、若干食べ頃(ピーク)を過ぎてるけど美味い。

 

おっと、メンチカツを忘れてる所だった。触ってみるとまだほんのり温かい。紙から出してそのままザクっと一口。

 

あぁ〜。良い音、それから肉の大渋滞。詰まってる、これでもかと言うぐらい牛牛に。そして濃いソースがご飯を後追いする。美味い、衣がザクザクッ、良いハーモニーを奏でてくれる。一口、また一口とサクッ、ザクッと良い音が鳴る。どうして揚げ物ってこんなに美味いんだろうな。

 

口一杯に広がる肉。商店街の揚げたてのコロッケも好きだけどコンビニのも美味いな。口に付いたソースを拭い、再び箸を一心不乱に動かす。一度動き出したら止まることは知らない。

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

ふぅ……食べた。ラザーニャもお腹いっぱい……じゃなさそうだな。まぁ、俺もまだ食えるから

 

よし。

 

確かアレが……。そう思って冷蔵庫をガサガサと漁る。お!あったあった。ちょうど三個分。

 

「デザート、食うか?」

 

『食べます』

 

瞬時に振り向いて、目を輝かせるお嬢。その真逆の反応をしているのは騎士だ。って良い加減名前聞かないとな

 

「アンタも食べるか?えっと……」

 

『はっ!申し訳無い。名乗るを忘れてたみたいだな。私はクロケット・オー・クルヴェットと言う。前は姫騎士クルヴエットって呼ばれてたな』

 

「じゃあクロちゃんで」

 

『距離感が近いな!?まあ良いか、好きに呼んでくれ。それにしても凄いなどれも美味かった。素晴らしい食事だ、なのにまだあるのか』

 

そう良いながら幸せそうにお腹をさする。だってメシ堕ち騎士って言ったら怒りそうだし。

 

「食べるか?」

 

『食べないと言う選択肢があるのか?』

 

何でそんな偉そうなんだ。まあ良いや、手にデザートを抱えて俺はリビングに戻った。

 

「プリンと杏仁豆腐。どっちが良い?」

 

『う〜ん……杏仁豆腐。真っ白ですね、まるで雪みたいに綺麗。杏仁豆腐で!』

 

『なら私はプリンで』

 

だと思った。お嬢は前、プリン食べたもんな。お嬢の前にプリンを置き、クロちゃんの前にも置く。

 

そして最後に自分に置くと、ピリッと開ける。変わらない見た目だ。

 

『うん?さっぱりしてますね、味が濃く無いです。何か口がリセットされそうです』

 

 

 

 

だろ?と思いつつ、俺は口に運ぶ。いつもの味だ。それから黙々と食べ下のカラメルに辿り着いた時、静かだなと思ったら、お嬢は横のクロちゃんにプリンの美味しさを布教していた。食べさせてあげようよお嬢様。手が止まれず、震えていた。もう待て状態の犬みたいになってるよ騎士ちゃん。

 

ハッハッと舌を出して「早くくれ」と言う顔をしている犬を幻視しながら、俺はプリンを食べた。

 

 

 

 

 

因みに姫騎士ちゃんの感想は、『フワフワで口の中でスッと消えてしまう。とても美味しい。下のソースと混じわると味が変わりそれもまた違う美味しさを味わう事が出来た。また食べたい』って言ってた。

 

そんな感じでお腹いっぱいになった俺達は風呂入ってそのまま爆睡した。

 

気持ち良い睡魔〜。

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