異世界から召喚した悪役令嬢?のお嬢様をメ○堕ちさせるだけの話 作:白樺の木
「さあ、まずはコイツからだ」
そう言われて置かれたのは、ツヤツヤな狐色の衣を纏ったカボチャの天ぷらだった。
「出来れば最初は塩で食って欲しい。それから醤油でもマヨネーズでもかけても言わねえからよ」
その言葉通り、二個置かれた皿の一つに天ぷらを置くとパラパラッと塩を掛ける。フワッと似合う揚げたての天ぷらの良い匂い。最高だ。食欲が無限に湧いてくる音が聞こえそうだ。
準備が終わったので、熱々をそのまま齧る。サクッと優しい歯ごたえの後、熱さが襲ってくる。
あちっ、やっばり熱かった。が咀嚼すれば分かる。カボチャの甘み。甘い、そして美味い。ジャガイモのようなホクホク感。あぁ、スーパーのかぼちゃの天ぷらとも、専門店の味とも違う。此処だけの味。
間違いなく言い切れる。俺はこれを食べに来たんだ。
気づいたらあっという間に一個目を食べ終えていた。
『美味しい……かぼちゃの天ぷらでしたっけ、最高です。揚げ物なのに甘い、不思議な感じですが嫌じゃない。言葉にするのは難しいのが悔しいです』
「良いさ、言葉の壁は何処の世界だってあるしな。大事なのは美味しく食べて貰える事だ。その点、嬢ちゃんはそれをしてくれるから俺らは嬉しいよ」
おっとこうしちゃいられねえと店主は厨房へと戻る。
その後俺達は再びカボチャの天ぷらを食べる。二個目の天ぷらは良い感じに冷めていたが、それでも味は変わらず美味かった。サクサクっとした軽い食感でいて、俺の胃をずっしりと掴んだ。恐ろしい天ぷらだ。
「ほいっ、おっ綺麗に食うねぇ!カボチャの煮物と、カボチャのスムージー。それからカボチャのチーズ焼き」
そして、怒涛のカボチャラッシュ。皆、元は同じカボチャなのにそれぞれ違う顔を見せてくれる。そんな美味しさに俺もお嬢様も思わず、ニッコリと笑ってしまう。
カボチャを食べながらカボチャを飲み、そして休憩がてらカボチャをつまむ。我ながら何を言ってるか分からない。ゲシュタルト崩壊も良いところだ。此処はカボチャの楽園だ、そう思っていると。
「お前ら食うなぁ、そろそろ腹もいっぱいになってきた所じゃねえか?さぁそろそろメインディッシュと行こうか」
店主はニヤリと笑い、大きな皿と共に置かれたのは……
「出たな、パイ」
『パイ?そんな、チョコパイの何倍ですか?パイの実の数百倍じゃないですか』
驚くお嬢様を尻目に、巨大なカボチャのパイが姿を見せる。いやぁ、何度見てもデカイな。毎年、このパイだけは変わらない。美味さは俺のお墨付きだ。
大きく切り分けられたパイを小皿に置き、湯気が出る中焼きたてのパイの匂いを口いっぱいに感じる。うんっかぼちゃが詰まっている。ぎっしりとかぼちゃの味が詰まったフワフワのパイは最高に美味い。
たまに角切りのかぼちゃが入っており、その食感が良いアクセントになっていってそれもめちゃくちゃ美味い。
何とか二人で食べきり、ご馳走様と言って店を後にした。風船の様に膨れ上がった腹をさすりながら、俺達は歩く。
『今日の料理も美味しかったです、本当にこんな日々がずっと続けば良いのに』
続くさと、無責任で軽いセリフを俺はなぜか吐けなかった。彼女の吐いた言葉が軽いとは思えなかったからだ。
結局それに合う言葉は見つからず、一日が終わった。
カボチャの煮物、スムージー、チーズ焼きを書いてしまうと投稿が来年のハロウィンになってしまいそうだったのでやむなくキャンセルです。