夏といえば。
この時期になると妙にテレビとかで取り上げられる話題。
知らん、熱中症をゆっくり言わせてキスを誘う今思えば意味わからない行為のある季節、それぐらいの認識でいいだろ。
あとはほら、スイカの種飲んで腹から生えてくるとかいう噂が広がるのもこの時期、あれ信じる人いるのかな。
なんて、端末の記事を適当に読み漁りながら暑さから思考を逸らしていると軽快な足音がこちらに近づいてくる。
「待たせたかな」
「いんや、今来て小一時間ネットニュース見てたとこ」
「小一時間前には来てたってことじゃん、嫌味?」
「違うと思う」
「思うってなに……ま、そんなことはさておき、行こっか」
目の前で止まった彼女は三角初華、僕のクラスメイトで時折「仕事」で学校を抜けることがある今を生きる高校生。
そんな彼女はこの暑い中黒い帽子をかぶり自身の金髪と顔があまり見えないようにしている。
そうでもしないといけない理由ってのがあるけど、それはこちらだけの秘密ということで。
話を戻してそんな初華と僕は今日、買い物に来た。
買い物だけなら1人で行けって?僕はともかく彼女は帽子かぶって行動するぐらいには顔を知られちゃいけない状態、ならボディーガードの一人ぐらい必要でしょ?
まぁ、ボディーガードに男子を選んだのはスキャンダルの方面で心配ではあるけど。
「今日はデートだからね、思う存分楽しもう」
「はいはい……えっ?」
滅多に見ないハイテンションな彼女は僕の手を引きながらそんなことを呟いた。
聞き間違いだと信じて彼女のハイペースについて行く。
買い物、と言いながら来たのはショッピングモール。
その中でクラスで最近はやってるちょっと可愛い文房具を売ってる店に。
「流行りはこれ……似合わないかなぁ」
「初華なら似合うと思うけど」
「そう?ペンギンは私じゃなくて前に見たあの子の方が……」
「じゃあこっちのパンダ……は椎名だな」
「私も思った」
シャーペン、ボールペンそれぞれに色んな動物がプリントされている、そういう文房具を見てる中、数種類のペンギンのイラストが描かれた消しゴムを手に取っていた。
初華がそれを使ってる光景、中々可愛いと思うけど、さすがに直接それを伝える勇気はなかったため、隣のパンダ柄のメモ帳を手に取ったが、これはうちのクラスの椎名立希の方が似合う、というか好きそう。
そんな会話をしばらく続けたあと、動物以外のコーナーにあったカシオペア座が描かれたボールペンを彼女は購入した。
その後、ショッピングモール内にあるゲームセンターで初華が欲しがっていたぬいぐるみを取ってあげたり、モグラ叩きで勝負したり、ビートセ〇バーを模したVRゲームで初華が無双したり、1時間だけカラオケ行って、『sumimi』を歌ったりして、時間はあっという間にすぎていった。
「ビートセイ〇ーみたいなやつ、上手かったな」
「私が武器持つなら剣かもね」
「敵対しないようにする」
「賢明な判断だね」
なんて話しながら向かったのは初華がたまに来るというプラネタリウム。
色々で疲れた時に来ては心身を休ませてるらしい。
「ねぇ」
「んー?」
「……やっぱなし」
「ちょっ、きにな──」
開演直前になにか言おうとした初華は気になる言い方だけして椅子に座った。
気になって仕方がないが、そのままプラネタリウムが開演したので意識をそっちへ移す。
終わったあと、プラネタリウムのある建物の外周にある階段とスロープが合わさったとこに2人で腰かけて空を見上げる。
「意外と見えるよね」
「プラネタリウムに比べたら少ないけどな」
都会の街の明かりでほぼ見えない夜空の星は、さっきまで見てたプラネタリウムには劣るものの、それでも煌めいている。
「少なくても、ああやって光って
初華はそう言うと立ち上がり僕の前に立つ。
帽子すら取った初華はいまさっき横に座ってた彼女とは雰囲気が違う。
「ねぇ、プライベートの時間ぐらいは
「それって、どういう……」
「初華じゃなく、『────』として君と話したいんだ」
突然の事に頭が追いつかない。
前に立つのはどう見てもクラスメイトで、ちょっとした秘密のある三角初華だ。
でも、彼女から出てる雰囲気は、初華では無い別人のようで。
「じゃあ、質問」
「……なんだ?」
「君は……
「……は?」
初華からのそんな一言に変な声が出た。
いつも話してる初華か、目の前にいる
「さぁ、選んで?」
彼女はそう言いながら距離を詰めてくる。
人通りも全くない訳じゃないのに、どうしてこうも大胆なことが出来るのか疑問だが、それ以上に質問への回答が出てこない。
「……どっちかを選べと?」
「うん」
「即答かよ……」
普段の初華からは見れない表情を出す
ここは──
「どっちも」
「……え?」
「初華と
なんて答えてみた。
もちろん、本心で。
「そ、そうなんだ……」
そうしたら初華は急に俺から距離をとって俯いて。
聞かれたから答えたのにね?
「意地悪しようとしただけなんだけどなー……」
「イタズラでしていい質問じゃないだろ」
どうやら向こうは本気で聞いたわけじゃないみたいで、それにしてもイタズラって、本気で答えた俺が恥ずかしいやつじゃん。
いやまぁ、本気で聞いてきたとしても俺の答えって……あれ?俺もしかして……やった?
「今のは無かったことにしてね」
「はいはい、明日からはクラスメイトな」
「……そう、だね」
「まだなにかあるのか?」
「ううん、なにも……」
急に大人しくなった初華は落ち込んだ様子で空を見上げる。
イタズラならそこまで落ち込むことないと思うんだけどな……なんて言ったらさらに落ち込みそうだったから言わずに心の奥にしまっておく。
「……じゃ、もう遅いから私は先に帰るね」
「送ってくよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
この場から逃げるように帰ろうとした初華を家まで送る提案を出した。
さすがにこの時間に一人で帰らせることはしたくない、何が起きてもおかしくないのが都会ってもんだし。
断られるかと思ったけどYesを出して貰えたから俺も立ち上がり駅の方へ向かう。
帰り道、今日楽しかったとかそういう話はしたものの、他の会話は全く出てこない。
さっきの一件で俺も向こうも何話せばいいのか分からなくなって。
そんな複雑な気持ちのまま初華の自宅前まであっという間に着いた。
「じゃあ、俺はこれで」
「……待って」
挨拶を短くして早く立ち去ろうとしたところで初華に腕を掴まれた。
振り向くと初華は手を離してくれたが、それと同時に帽子を取って真剣な目でこっちを見る。
「
その時彼女が見せた表情は、その言葉は、星空のように煌めいていた──。