ここはとある豪邸。
そのリビングにて。
「……なんですのこれ」
「きゅうり」
「いえそれはわかってますわ、ですからなんですかこの量」
この豪邸に住む少女、若葉睦と彼女が所属しているバンドのリーダーである豊川祥子がそんなやり取りをしている。
彼女、祥子の前には机の上に大量に置かれた多種類のきゅうり料理、数はざっと15種類を超える。
「作りすぎちゃったから、みんなでって」
「わたし達が用意したんだ」
「初華に八幡さんまで……3人で料理を?」
「そう、それで私は見てただけ」
「……そんなとこだろうと思いましたわ」
おおよそ睦の通っている学校、月ノ森で栽培していたもので、作りすぎたというのも常に彼女が面倒を見ていたからという理由で納得出来る。
それで、バンドの集まり以外で招集されたらこうなっていた。
作りすぎたというのにも無理がある、そう言いたい気持ちを抑えてメンバーの三角初華と八幡海鈴が調理したということの驚きともう1人、祐天寺にゃむが何もしてないことに対する納得を飲み込んだ。
「こうして料理を完成させるとやっぱり多いですね」
「うん、作ってる時はそうでもなかったけどこんなに多くなるなんてね」
「ごめん、予想外に増えちゃって」
最初は5品で済ませるつもりがそれでも余ったから……と睦のあとに続いて状況を説明した初華に対して小さくため息を吐いてテーブルに置かれた料理を見渡す。
「まぁ作られてこうして卓に乗った以上、捨てる訳にも行かないですわね」
「それならさ、オブ……じゃなくて祥子も来たことだし食べよう」
「何もしてないのによく言いますねにゃむこ」
「だから私はにゃむち!」
「……さ、早く座ってください」
毎度集まると必ず発生するやり取りへの反応に困りながらもメンバーを席に座るよう催促して自分も座ると改めて目の前の大量な料理に圧倒される。
メンバーもそれぞれ座りながら「やはり多いですね」など各々が感想を述べた。
「……いただきます」
そう祥子が口にしたことでほか4人も手を合わせて個々で食べ始めた。
浅漬け、キムチ漬け、塩漬け、スティック……きゅうりだけで済ませられるものから他の食材とあわせたものまでなるべく飽きのこないように工夫されている。
「……美味しい」
「うん、我ながらすごい美味しい」
「ですね」
浅漬けを食べた祥子、初華、海鈴が順に感想を口にする。
漬物ということは少し前から準備していたんだろうけど、それでもちゃんと手を抜かないあたり初華らしいと心の中で呟いた祥子は箸を伸ばす。
「これも、これも美味しいですわね……」
「……さき?」
「睦……いえ、すみません少し……」
他の料理を食べ進める中、祥子は突然涙を流した。
いち早く気づいた睦がそばに行って背中をさする。
「久しぶり、久しぶりにこうやって誰かと食卓を囲んだものでしたので……」
「……うん」
「さっちゃん……」
「みなさん、ありがとうございます……本当に、とても美味しいですわ」
前のバンドを解散してから今までの環境で過ごしていた中で睦以外とご飯を食べる、そんな当たり前のようなことすらまともに出来なかった祥子は泣きながらも感謝を伝えた。
無理言ったり無茶で誘ったりしたメンバーが、AveMujicaの4人とこうして過ごせることに。
「さ、まだ残ってますわ」
量は多いけど、それでもこうやって卓を囲める時間がもう少し続いて欲しい、そんな思いを胸に秘める。
これでよかったのか
どこで間違えた
Twitter(X)にて頂いたネタを描いてみた。
AveMujicaメンバー5人同時操作はかなり厳しいね
今回の登場人物
豊川祥子(とがわ さきこ)
ドリンクバーにはしゃぐ女、だった。
お嬢様キャラですわ。
三角初華(みすみ ういか)
短編1つ目のメインを飾った裏がボクっ娘のアイドル。
料理は頑張って作る方だと思ってる
八幡海鈴
「あぁ、ヤキモチですか」
多分そう。
若葉睦
きゅうりの妖精、公式公認
バンド楽しいと思ったことないって嘘つかないでね、楽しくない人ギターあんなに鳴らさない。
祐天寺にゃむ
「こんばんにゃむにゃむ〜」
だけで界隈がざわついた女