雨が降る度、ふとフラッシュバックする記憶。
桜を見ると、あの時の思い出が瞼の裏に映る。
楽しかった、そんな思い出。
忘れるはずのない、CRYCHICで過ごした短くて長い大切な時間。
一緒に歌って、カラオケに行って、バンドの練習をした、かけがえのない時間。
──『CRYCHICを辞めさせていただきますわ』
その言葉で、壊れてしまったけど。
私が、壊してしまったから。
謝りたい、でもその言葉は届かない。
諦めたくない、でも手を離してしまったから。
バラバラになってしまった、もう交わることの無い2つの道を。
私は、
外は雨、最近ずっと大雨が続いてる。
そんな中、私たちはRiNGでライブをするために待機している。
「雨……ライブ、お客さん来てくれるかな」
「大丈夫でしょー、わたしたち今すっごい人気だし!」
「そう……だよね」
止む気配のない空模様を眺めているとあのちゃんが私のとなりに来て励ましてくれた。
あのちゃんの変わらないいつもの明るさは私の胸にあるこの気持ちを少し晴らしてくれる、気がする。
「ともり、元気ない?」
「えっ、と……うん、ちょっと」
「燈、無理しないでとりあえず深呼吸して落ち着こう」
「う、うん……」
楽奈ちゃん、立希ちゃんがリハーサルを終えてステージ袖に戻ってきて私の心配をしてくれた。
立希ちゃんの言う通り深呼吸するとざわついてる気持ちがすっと落ち着く。
「みんな……ありがとう」
「ともりんが不安そうだと私達も演奏不安定になるからねー」
「は?それはお前のせいでしょ」
「違いま……いや違わないけど違うから!」
「はぁ……あ、燈、こいつの言ったこと本気にしないでね」
「う、うん……」
楽奈ちゃんは差し入れの抹茶を食べて「うまい」って言ってる。
そんな楽奈ちゃんの横であのちゃんと立希ちゃんのいつもの口喧嘩、あのちゃんが励ましてくれてるってわかるから落ち込まないしむしろ「いつも通り」になってるから少し楽しい。
「最終リハ終わったよー」
二人の口喧嘩を止めるようにそよちゃんがスタジオから戻ってきた。
差し入れのお茶を飲みながらそよちゃんは私へ何かを手渡して「中身は見てないから」と言って口喧嘩してる二人を止めに行った。
「手紙……」
誰からの手紙かは書かれていない、ただ「燈へ」と私の名前だけが書かれている封筒を開けるとただ一文。
『今日のライブ、がんばれ/頑張って』
とだけ書かれていた。
でも、その文字は──
「ともり、なにみてる?」
「あ……ううん、何でもない」
「ふーん」
隠す必要は無いけど楽奈ちゃんに覗かれそうになったのをそっと隠して綺麗に畳んでから衣装の右ポケットへ押し込んだ。
「……ライブ、始まるよ」
「うん……行こう、みんな」
ステージの入口に待機してる香澄さんが手招きしてるのを確認して5人で円陣を組んだ。
「聞いてください──『音一会』」
見てくれているかわからない、それでも手紙を書いて渡してくれた、
感謝も、謝罪も届かないかもしれないけど。
私は、歌でしか思いを伝えられないから歌うよ。
ありがとう、と。