クラスメイトだと尚更そうなる。
ある日の花咲川女子学園。
流行りのドラマが面白いだの、あのバンドの新曲がどうだの、そんな他愛のない話で盛り上がる1学年の教室。
騒がしい中、周りの話に乗ることもせずに机に突っ伏しているのは今話題のバンド、MyGO!!!!!のドラム担当、名を椎名立希。
周りがうるさいとか、静かにして欲しいとか、そういう思考すらなく完全に自分の世界に入り込んでいる彼女の思考を即座に現実に引き戻す存在がいた。
「おや、おつかれですか」
「……まぁ」
「最近忙しいようですね、ということで差し入れをどうぞ」
顔を伏した立希の頭に程よい重みが突然乗せられ、混濁とした思考を晴れやかにさせる声が彼女に向けられる。
声の主は立希のクラスメイトで何かと絡んでくる八幡海鈴、そしてそんな彼女が立希の頭と眼前に差し出したのは紙パックの飲み物。
毎日のように行われる行為に立希も突き飛ばすことすらせずに受けいれて疲れた体に流し込む。
「…そういや、毎日くれるけどお金とか大丈夫なの?」
「おや、今更気にしますかそれ」
「……今更で悪かったな」
一応の感謝を伝えながら飲み終えた立希は紙パックを潰しながらふと気になったことを海鈴に質問する。
毎日置かれるうちに全く気にせずに受け取っていた紙パックが海鈴の自腹で渡されているのでは、と疑問を浮かべたのだった。
「責めてないですけど、あと別にお金はいいですよ、善意なので」
「善意、ね……」
嫌がらせの一環だと心のどこかで思っていた立希は彼女の言葉に変な疑いを少し持ったが、海鈴なら嫌がらせならまず置いたあと回収するだろうと考えを改めた。
「えぇ善意ですので、特にお返しなど気にしなくて大丈夫ですよ、それに……」
「それに?」
「──いえ、なんでもありません、では」
「あ、ちょっ……」
海鈴が何かを言いかけて撤回したため聞き返すが華麗に流されてしまいそのまま海鈴は自席に戻っていってしまった。
「……なんなのあいつ」
綺麗に並べられた紙パックのひとつにストローを刺して少し飲みながら立希はそんなことを呟く。
昼食の時間、毎日必ず屋外にある自販機で飲み物を買う立希は自分用のペットボトルひとつと、追加でもう2つの紙パックの飲み物を購入した。
そして、これまた毎日必ず買いに来る海鈴が到着したと同時に買ったふたつの紙パックを彼女に差し出す。
「おや、これは」
「……間違って買ったからあげる」
突然のことに普段クールな海鈴が困惑した顔を見せながら立希に質問をする。
立希の手元に握られた紙パックを交互に見たあと立希の言葉の違和感にツッコミを入れた。
「ふたつも間違えたのですか?」
「そ、そう!ふたつ間違えたんだ……別にお礼、とかじゃないから」
「そういうことにしておきますね、立希さん」
立希の普段見れない照れ隠しに
とあるバンドでもクールな海鈴がこの時だけは柔らかい笑顔を見せた。
解釈違いは受け付けません。