ある日の休日
ショッピングモールに甲高い悲鳴が響いた。
正確には、迷惑にならない場所で、だけど。
「休日にばったり会って第一声が悲鳴は酷いのではないか」
「すみませんすみません、ほんとすみません」
「聞け、そしていい加減慣れろと言ってるのだ」
悲鳴を上げたのは、矢倉蓬咲。
それに対して落ち着いて対応するのは四宮寧月。
二人は同じバンドに所属している大学生と中学生、もちろん紹介順。
「いくら同じバンドでもプライベートに遭遇するのはまだ無理ですよぉ……」
「バンド練習もプライベートの一部だろう」
「否定出来ない!全くもってその通りすぎるっ!」
そして、上下関係はやや寧月の方が上である。
正確には、引っ込み思案な蓬咲の発言に正論を叩きつけることが多いだけだが。
「それで、何を買いに来たのだ」
「私は特になにも買うつもりはない、かな」
「見え見えの嘘をつくな、何もないのに外出するほどのメンタルではないだろう」
「たまには気晴らしに外出ることぐらいしますよぉ……多分」
蓬咲は極度のあがり症で人と関わることを極力避けている。
それを知っている寧月からすればこの場にいること自体が一種の特殊な状態という認識をしている、ということ。
それをいちばん自覚している蓬咲は目を逸らし切り抜けようとした。
「なら買い物が終わるまで付き合おう」
「えぇっ!?」
「なにも買わないのならその反応はおかしいだろう」
ついて行く、という提案に否定ではなく驚きの反応を見せたことでさらなる図星を突かれて蓬咲はハッと我に返る。
「うっ……嵌められたってことですか……」
「バレバレの嘘をつくからだ、それで何を求めている?」
「……筆記用具の予備を買いに」
「ここじゃないか」
二人が今いる場所が蓬咲の求めているものが売っている文房具屋の店前。
実はかれこれ十分近く店前で入るか悩んでずっとウロウロしており、そんな時に寧月が通りかかり小さい悲鳴をあげていた。
「なにをしている、目的地なら早く物を買えばいいのではないか?」
「それが出来れば苦労しませんよぉ……」
「そんなことだろうと思った、ほら行くぞ」
「え、ちょっ、いやぁぁぁ!?」
アワアワしている蓬咲の葛藤を汲み取った寧月は躊躇いなく手を掴み蓬咲を店内に引きずりながら連れていく。
悲鳴にも聞く耳を持たず、ペン等の売り場まで無理やり引いてくると手を離し適当なペンを見繕うとそれを蓬咲へと渡す。
「え、なに?」
「大学生……いや、その年齢がどんなものを使うのかはわかりかねる。だから私の目で違和感の無いものを選んだ」
「えっ、と?」
「他に必要なものはなんだ?」
「それなら……あとノート、かな」
それを聞くと無言でその売り場まで手を引いていく。
再び適当に選んだものを蓬咲に渡すとレジを指して「これでいいなら会計はそっちだ」と誘導する。
何が起きてるのか困惑しながらも寧月の指したセルフレジにて会計を終えると店前で合流した。
「えっと、ありがとう……?」
「なぜ疑問形なんだ、必要なものなんだろう」
「いやその、選んでくれたから」
「気まぐれというやつだ」
店前で待っていた寧月はバッグに入れていたお茶を飲みながら蓬咲の感謝を適当に流す。
「それでも……数少ない仲良い人が選んでくれたから、嬉しくて……」
「ふむ……」
精一杯感謝を伝えている(つもりの)蓬咲の顔を覗き込み何かを納得し頷く。
突然のことにまたキョドり始めるのを眺めながら寧月は静かに呟いた。
「私としても、大切な
その言葉は、蓬咲を正気に戻すくらいの効力はあった。
アワノツが出る前なら何を書いても怒られないの精神
一家Dumb Rock!の上下関係が年齢と反対と噂のふたり