前世の記憶を使って夏油傑を絶対に幸せにしようと思います!   作:秋元琶耶

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いつものタイトルがあらすじシリーズで巷で噂の『愛してるゲーム』するやつ。勝者は誰だ!
n番煎じだろうが気にせず書いていく所存。ただただ勢いだけのギャグとちょっとラブコメです。
夏油少年が可哀想なようないい夢見てるような


『愛してるゲーム』しようぜ!

◆五条と。

 

 

「愛してる」

「愛してる」

「愛してる」

「愛してる」

「愛してる」

「愛してる」

 

「え、怖……」

「真顔で云い合ってる……」

「一応訊くけど夏油、あの子が五条にあんなこと云ってて妬かないの?」

「まぁ悟と彼女がどうこうなるわけないから割と。他の男なら消す」

「うわ強火担ヤバッ」

 

「愛してる」

「愛してる」

「……なぁ」

「何」

「このままだと一生決着付きそうにねーじゃん?」

「そうだね、私があんたにときめくなんて絶対ないし」

「俺もだよくそが。かといって引き分けも癪だし、お前には絶対に負けたくないと俺の魂が叫んでるわけで、奥の手を出そうと思う」

「ほぅ、その心は?」

「秘儀、グラサン解除! 素顔を晒してターンエンド!!」

 

「な、何ぃ!?」

「悟が素顔を出したらただのイケメンになってしまうじゃないか!!」

「ゲームの性質上悪態は吐かないし、これにはさすがに分が悪いか!?」

 

謎の腹立つ決めポーズでサングラスを外した五条は、何故かすでに勝ち誇った顔で私の前に座っている。

「……確かに五条は顔だけならイケメン。それは認める。グラサンしててもオーラは隠せてないし、外したらもうキラキラすぎて目が焼けるとも思う」

「はーっはっは! そうだ俺の顔は国宝級!! くらえ!!」

ターンエンドしてねぇじゃねーか。

百年の恋も冷めそうな凶悪な顔で笑った五条は、次の瞬間打って変わった優し気で穏やかな笑顔を作った。そうしてメレンゲを掬うような優しい手つきで私の手を取って真っすぐに私を見つめて。

 

「愛してるよ」

 

……ほほぉ。

なるほど、破壊力はすごい。

これなら大抵の人が照れのあまりその場で蒸発するだろう。

だがしかし、この私を舐めてもらっては困る。

五条がイケメンなのは知っているが、あいにく私が世界で一番好きな顔はお前ではない。

よって、そのイケメンキラキラビームは私には無効である。

「……私はね、五条」

小さく息を吐き、五条に握られた手を、逆に握り返す。

予想外の展開だったのか、びくり、と五条の肩が震えたのがわかった。

 

「なっ、素顔の五条に云われてもときめかないだと……!?」

「さっきから硝子のその反応、少年漫画のモブザコみたいなんだけどどうしたの?」

「こないだジョジョ一部から読み返してた」

「なるほど」

 

うしろの二人のやり取りが気になるが、今は私は五条に勝ちたい。

普段いろいろと負けっぱなしだからこういうときは絶対に勝ちたい、勝負で勝って勝ち誇りたい。

今の私を動かすのは、勝ちたい、ただそれだけの強い気持ち。

そう、私は勝つのだ。

そのためには、使える手段は何でも使う。

 

サングラスを外した五条の目と私の目が合う。

怯んだように瞠目する五条に、私は云った。

 

「綺麗な目だね。まるで海と空の一番綺麗な部分を閉じ込めたみたい。その目の美しさを例えるのには宝石なんかじゃ役不足。サファイアもブルートパーズもタンザナイトもアクアマリンも、この目の前だと脇役にもならないわ。その目に映っているのが今は私だけなんて、ふふっ、すごく贅沢だね」

 

そうして最後に、五条が自分で外したサングラスをゆっくりと私がかけてやり、一言。

 

「愛してるよ」

 

――次の瞬間五条の顔は、真っ赤になっていた。

 

「はい五条の負け~! 私の勝ち~!」

「え、何今の。怖……ガチじゃん」

「し、しっかりしろ悟、傷は浅いぞ!!」

「なんっ、なんだよお前!? ずるくね!? 反則じゃね!?」

「先にサングラス外して手ぇ握ってきたのはそっちでしょ。私は同じ土俵で戦っただけ。そして勝っただけ」

「くっそ、悔しい…こんなん相手に照れた自分が恥ずかしい……」

「今後あんたは私相手にときめいた男だと自覚して生きていくがいいわ」

 

 

勝者、主人公。

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

◆硝子と。

 

 

「硝子、愛してるよ!」

「ほんと? ありがとう、私もだよ」

「ぐっ……いやまだだ、まだ耐えられる……」

「ははっ、あんたほんとかわいいね」

「んんんんんんんんんんんん」

 

「うわぁ硝子怖ぁ……」

「煙草のオプションはずるくないかい?」

「でも硝子だし……」

「そうか、硝子だからしょうがないか……」

 

「さて、それじゃ私の番かな」

「あれ、硝子煙草消しちゃうの? まだ吸い始めたばっかりじゃん」

「愛を伝えるのに小道具を使うのは野暮でしょ?」

「…………。」

「はは、真っ赤になってもかわいい。そういうあんたを愛してるよ」

「もう、硝子、硝子、硝子~~~!!!!!」

「私の勝ち~」

 

「これはしょうがない」

「文句なしで硝子の勝ち」

「やばい……新しい扉開きそうになった。硝子はやばい。ふたりもはやく硝子とやってほしい」

「え、俺らもやんの!?」

「逆になんで私だけ総当たりでやらされてんのさ」

「硝子には勝てる気がしないから、気が進まないなぁ……」

「いいのいいの、あんたらの勝ち負けなんてどうでもいいの。私はただ照れようが何だろうがその顔を写真に収めるだけだから」

「許可取れよボケ」

「ちっちゃいこと云わないでよ国宝級イケメンさん。私に負けたくせに」

「表出ろブス」

「だから五条に比べたら世界の九割がブスになるっつってんだろ言動気を付けろ!!」

「なんでいちいち喧嘩になるのかなこのふたりは」

「仲良いからじゃない?」

「「良くない!!!」」

「いやハモッちゃって仲良しじゃ~ん」

「ほら、もう騒がない。まったく、今時中学生でももっとましな喧嘩するよ」

「五条のおつむは中学生以下だってさ。ははは、いいね夏油もっと云っちゃえ」

「何ぃー!?」

「私を巻き込まないでくれ。そしてしれっと写真を撮るな」

「えー、駄目?」

「ぐっ……(かわいい!) 駄目とかじゃなくて、別に写真なんて撮らなくてもいつも傍にいるだろう?」

「そういうのいいから。任務で疲れた時の癒しが欲しいだけだから」

「……………………。」

「す、傑、生きろ……」

「いや、もう手遅れじゃないのこれは」

「お、珍しい顔してる。写真撮っとこ」

 

勝者、家入硝子。

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

◆主人公以外で。

 

 

五条 vs 夏油 … 主人公戦の五条の顔を思い出してしまった夏油が噴き出したので、五条の勝ち。

 

夏油 vs 家入 … 当たり前のように家入の勝ち。

 

家入 vs 五条 … 当然の如く家入の勝ち。

 

結果、家入、全勝。

 

 

 

◆夏油と。

 

 

「不戦敗で!!」

「え!?!?」

 

主人公の敵前逃亡で夏油の勝ち?

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

「させねーよ」

「く、くそぉ! 卑怯だよ五条、術式使うなんて!!」

「使ってねぇし、お前がぽんこつなだけだし」

「う、うわーーーーん!!!」

「あのなぁ、お前わかってただろ」

「何が!?」

五条に羽交い絞めにされながら半泣きで叫ぶと、ぽん、と肩に手が乗った。

硝子だった。

硝子は慰めてくれるんだ、と思ったのも束の間。

「私らは、面白いことが大好きなんだよ」

「うわああああああああん!!!」

ちきしょう硝子も敵だった!

 

「さて、ゲームを始めようか」

「だから私の負けでいいってば」

「悟とも硝子とも文句云わずにやったのに、どうして私だけ逃げるんだ」

「絶対負けるのわかってるもん」

「なぜ?」

「だって私、夏油の顔好きだから」

「は」

 

「おっ?」

「待て五条、まだだ。もっと面白くなるはずだからまだステイ」

 

「これはっきり直接云ったかどうかもう覚えてないけど、私、ずっと前から夏油の顔好きなんだよ」

「え」

「タイプなの。好みなの。正直初めて会った日は理想を固めた顔が目の前に出現した衝撃で口から心臓飛び出るかと思ったくらい緊張したの。まぁあの時はそれどころじゃなかったし、次の日も自分の状況把握したり術式発現したりでいっぱいいっぱいだったから、はしゃいでる暇なんてなかったけど」

「えっ、えっ」

「高専に来ても一年はあの通りだったから気まずくて顔なんてまともに見られなかったけどさ、一応こうやって馬鹿なこと出来る程度には仲良くさせてもらって改めて思うんだよね。あ~夏油の顔マジかっこい~って。もちろん五条もかっこいいと思うよ、めちゃくちゃ整ってるしあの顔だけでも一生食べるのに困らないだろうね。でも私は圧倒的に五条より夏油派なわけ。まつげバサバサでキラキラきゅるんなイケメンの暴力より、一目見ただけで心臓鷲掴みにされてそのあとじわじわ感情揺さぶられるような夏油の塩顔がいいんだよ。つり目がちな細い目も、薄い唇も、通った鼻立ちも、それを綺麗にまとめてる輪郭も、これは顔とは違うけど特徴的な福耳も含めて全部たまんないくらいストライク。今は五条がいるから一瞬目が五条に行くだろうけど、夏油も絶対モテるよね。五条と違って割といつも笑顔だし、比較的穏やかな性格だし、外面いいから初対面から好感度が高いもん。五条はステータスがチートになった代わりに性格だけクズになっちゃった残念系イケメンで、それを取り繕おうとしてないから、一目ぼれはされやすいけど冷められるのも早いけど、夏油の場合はある程度踏み入った仲になるまでクズ具合がわかんないんだよね。だから本気になっちゃう子が多そう。この辺は偏見だけど、とにかく夏油の顔が私は大好きで仕方ないってことで、まぁ中身はミジンコほどもリスペクト出来ないクズ野郎だなとは思ってるんだけどやっぱり顔は本当に好きなのよ」

「…………。」

「だからそんな夏油に例えゲームでも『愛してる』なんて云われたら精神崩壊起こすから、無理~!!」

 

「おい、ストップ、ストップ」

「え、何?」

「どうするお前ら、夏油、脈ないぞ」

「な、なんで!?」

「あー、やっちゃったな。特級術師殺人事件だなこりゃ」

「だ、だからなんでよ!? ちょっと夏油、夏油くん!? もしもし!?」

「待って、ガイシャが何か云ってる」

「ガイシャ喋るの!?」

「ふむ、何々? 『ちゃんと愛してるって云ってくれないと生き返れない』?」

「意外と余裕のガイシャだな」

「だそうだが、どうする?」

「よくわかんないけど愛してるっていえば夏油復活するの?」

「まぁそういうことだね」

「俺にやったみたいな熱いの一発かましたれ」

「じゃあみんなでいっせーので云おうか」

「なんでだよ」

「だって愛してるが生きるパワーになるんだったら、私一人よりみんな一緒の方が大きな力になるでしょ」

「理屈はわかった。だが断る」

「な、何ィ!?」

「この家入硝子が最も好きなことの一つは、ゲームをダシにして愛してるなんて云われようとする馬鹿を笑ってやることだ」

「硝子がジョジョに影響されすぎてて笑う」

「いやでもこのままだと夏油復活できないんでしょ!? 可哀想だよ、復活させてあげようよ! それかドラゴンボール集めに行こうよ!」

「よし、わかった。じゃあ傑を助けるかどうかは桃鉄で決めよう」

「乗った」

「何もわかってないしふたりとも放置する気満々じゃん!!」

 

そうしてふたりは本当に桃鉄をやりに五条の部屋に行ってしまった。

うそでしょ。

取り残された私と、放置された夏油。

「……夏油くん」

「……息の根止まってます」

喋ってんじゃん。

ねぇフローリングに五体投地、痛くない?

「ふたり、桃鉄しに行ったけど、私らも行こ?」

「……君が愛してるって云ってくれたら、行く」

「えええ……」

つんつんと夏油を突いてみても、頑なに動く気配はない。

まじかよぉ。

さすがの私も、こんな状態の夏油を放置して帰れるほど薄情にはなれない。

 

いやまぁ、確かに、硝子とも五条ともゲームしたのに、夏油とだけはやりたくない、なんて私の我儘だとは思うよ。でも、理由はさっき云ったけど、絶対私が負けるに決まってるから、やるまでもないかなって思ったんだよ。

夏油は別に普段そこまで勝負ごとにこだわる方じゃないから、あっさり見逃してくれると思ったのに。

「……これ、ゲームだよ」

「わかってる」

「本当?」

「本当」

にわかに疑わしい態度である。

でも、夏油が復活するというのなら仕方ないか、と思ってしまうのは私がなんだかんだ云って夏油に甘いからだ。わかってます、自覚はあるから白い眼はしないでもらいたい。私だって馬鹿だなって思ってるんだよ。

 

わかった、ここはゲームなのだと腹を括って、さっさと云ってしまおう。そうして桃鉄に合流しよう。

とはいえやっぱり、すぐに口に出来るほどこの言葉は簡単なものではないと思う。

異性の五条にはあっさり云えたのに、どうして夏油にはこんなにも云い淀んでしまうのか。

そんなの理由はひとつだけれど、それを認めるわけにはいかない理由がある。

多分私は、灰原くんにも、ナナミンにも、夜蛾先生にも簡単にこの言葉を云えるだろう。

云えないのは、夏油だけ。

 

馬鹿みたい。

馬鹿みたいで、もう逆に笑えない。

 

ああ、だけど、けれど。

 

ええい私、頑張れ私、いい加減観念しろ。

これはゲームだ、フィクションだ。

だからこんなに躊躇うほうが恥ずかしいんだ。

それに、五条や硝子の時と違い、今夏油は五体投地で寝転んでいるから視線がかち合っているわけじゃない。その分気楽にいけばいいじゃないか。

 

数回深呼吸をし、自分にそう云い聞かせ。

私は心を無にして、小さく云った。

 

「夏油、愛してるよ」

 

瞬間。

がばっと、夏油は顔を上げた。

驚いたように目を見開く夏油と目が合ってしまい、思わず逸らす。

 

うわ。

うわ、うわ。

やばい。

 

「……ちょっと、こっち見ないで」

「……私も、」

じわじわ。

徐々に顔が赤くなるのを自覚して、脈打つ自分の心臓の音がうるさくてたまらない。

耳が痛い、血管という血管に走る血が暴れまわっているみたいで落ち着かない。

 

これは照れじゃない。

照れてるんじゃなくて、恥ずかしいだけだ。

 

何が違うんだと云われると説明には困るけれど、とにかく違う、違うのだ。

誰にともなく心の中でそう言い訳していると、夏油に手を掴まれた。

 

何するの、と。

 

折角一度は逸らしたのに反射的に夏油を見てしまい。

 

――夏油と、また目が合って。

 

 

「 愛してる 」

 

 

次の瞬間、私は夏油の手を振り払い、その場からダッシュで逃げ出し、五条の部屋に駆け込んでいた。

桃鉄にいそしんでいたふたりは、突然現れた私にちょっとびっくりしていたけれど、私は何も云わずに五条からコントローラーを奪う。

「ちょ、何す……ってまじで何すんだ!? 99年でやり直し!? 正気か!?」

「うるさい付き合え」

「私帰っていい?」

「いいわけないでしょ硝子もやるんだよ」

「うへぇ」

これは立派に八つ当たりである。

ふたりが助けてくれればこんなことにならなかったかもしれないという、逆恨みでもある。

 

だって私が夏油に『愛してる』だなんて、――ばっかじゃないの!?

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