超絶美少女は夢を見る   作:秋元琶耶

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昨日も今日も明日も明後日も未来永劫ずっとハチャメチャに可愛くて驚くほど賢い上に心が空より広い美少女がやっと全部自覚する話です。超ウルトラアルティメットハイパー最強ハッピーエンドです。


未来の海賊女王の到着点

赤髪海賊団は現在グランドラインのとある島に停泊中だ。

ここでは船のメンテナンスや息抜きも兼ねて、いつもよりかなり長めに滞在の予定である。

もちろんエンは初めて訪れる街だが、ほとんどの仲間たちは以前にもこの島を訪れたことがあるようで、次の目的地がここだと決まったときから随分と浮かれている様子だった。

ウォーターセブンほどではないが造船で有名なこの街は、人の往来が多く栄えている。船という海賊とは切っても切れないものを主な収入源としている以上海賊も多く訪れるが、だいたいここに来る理由は船の修繕等だから、下手に街で騒ぎを起こすと職人たちにへそを曲げられて船を無事に受け取れなくなる可能性がある。なのでたいていはトラブルを避けて静かにすごしているそうで、大きな街にしては比較的治安が良いそうだ。

 

初日、特に仕事の分担がなかったエンはホンゴウと一緒に早速街に降りていた。街中を一通り簡単に案内する予定だったのだが、街の中心地に向かう前にひときわ目立つ建物をエンが発見した。それが図書館だった。

エンが興味があるというし、ホンゴウもあとで来る予定だったので順番が変わっただけだと思うことにしてまず図書館に足を向けた。

そして結局その日は一日中図書館で過ごした上に翌日も開放時間に合わせて船を出て、仕事がある日以外はすべて図書館で過ごすエンが出来上がったのだった。すっかり図書館常連である。

夜、船に残っていた幹部メンバーとわいわい食事を摂っている途中、そういえばと思い出したようにベックマンが訊いた。

 

「エン、どうだこの街は」

「最高。あの図書館、何時間でもいられる!」

「この街の目玉の一つだからな。気に入ったようでよかった」

「今までの街でも図書館はいくつか行ったけど、規模が全然違うよね。欲しかった資料も見つかったしほっくほく」

「それはいいけどちゃんと飯も食えよ~」

「う、気を付けるよぅ……」

 

何かに夢中になると飲食を疎かになりがちなのはとっくの昔にみんなにバレている。以前朝から晩まで執務室に引きこもって働いて、夕方に衰弱して意識を朦朧とさせているところを発見されて医務室に緊急搬送されたことがあるからだ。その日はたまたまベックマンが別件で執務室にいなかったということもあり、この日を境にエンは一人での執務室の利用を禁止にされた。また同じことがあってはたまらない。

からかうようなルウの言葉でそのことを思い出して苦い顔をしたエンに、どこかそわそわと落ち着かない様子で身体を揺らしていたシャンクスが口を開いた。

 

「そういえばな、明日の夜は海岸沿いで花火大会があるらしいんだ」

「へー、花火。私、見たことないなぁ」

「ここの花火は見ごたえあるぞ。腕のいい花火師たちが毎年競い合ってるうちに、どんどん豪華になってってな」

「切磋琢磨のいい例だねぇ」

 

競い合って技術が進歩するのはいいことだ、とのんびり笑うエンは可愛い。

エンの人の良さにほっこりしつつ、ゴホン、とシャンクスはひとつわざとらしい咳払いをする。シャンクスが何を云いたいのか察した幹部たちは一斉に下を向いた。口の内側を噛んで笑わないように頑張った。

エンは怪訝そうにそんな幹部たちを見てから、何か云いたげなシャンクスに首を傾げた。

 

「それで、昼間から祭りで出店が出るんだよ」

「うん」

「だから……」

「うん?」

 

いけ、頑張れ。下を向いたままの仲間たちの心は一つだった。

でも出来れば自分たちがいない場所でやってほしかった。

そんな切実な仲間たちの心のうちを気遣う余裕などないシャンクスは、意を決して口を開く。

 

「い、一緒に回らねぇか?」

「いいよ~」

「え!?」

「お祭りとか久ぶりだなぁ」

 

思ったより軽い返事があって、シャンクスも幹部たちもずっこけそうになってしまった。

シャンクスとしてはデートに誘う一大決心だったのに、いいよ~のたった一言。

まじまじとエンを見れば、ニコニコと笑っている。幻聴ではなかったらしい。

 

「いいのか!? 図書館は!?」

「ここんとこ毎日行ってたし。考えてみたら私、島についてから図書館と船しか往復してないから、少しは街中も見て回りたいな~って。それにせっかくお頭が誘ってくれたんだもん、断らないよ」

 

この島に着いて数日が経っているが、確かにエンは船にいるか誰かと図書館に出かけているかの二択しかなかった。船にいるときは分担された仕事をこなしているときで、図書館にいても仕事と趣味が半々だ。蔵書量がかなり多岐にわたる上、特に歴史関連の本が非常に豊富なので、暇さえあれば図書館に足を運ぶのが日課になっていた。

それなりに長く歴史があるので街並みにも建造物的な意味でも興味があるのだが、どうしても本のほうに興味が向いてしまい今日まで機会がなかった。こんなことなら最初にホンゴウと一緒にいるうちに街を回っておくんだった、と思ったが、今更過ぎる。

初めての街を一人で歩くのもまだ抵抗があるし、そのうち誰かを誘ってみようかと考えていたので、シャンクスの誘いはエンにとって願ったり叶ったりなのだ。

それに、自身でも云っていたようにお祭りも二年に一度地元の島で開かれていたもの以来で、しかもエンはお祭り開催の少し前に赤髪海賊団に加わったので、ほとんど五年ぶりくらいのお祭りだ。エンももともと賑やかな場が好きだから、当然お祭りも大好きだ。花火も気になるし、盛り上がるお祭りならばなおさら行ってみたいと思う。

エンが嫌々付き合ってくれる感じではないとわかり、シャンクスはパァッと表情を明るくした。

だってこれは、実質デートだ。

 

「じゃあ明日! 昼から! な!」

「う、うん」

 

身を乗り出して念押すように云うと、すでに食事を終えていたシャンクスはご機嫌そうに食堂をあとにした。外で何人かが酒を飲んでいるので、それに混ざりに行くのだろう。

鼻歌でも歌い出しそうなほどの浮かれっぷりに、エンは未だに口の中を噛んだままいろ変な顔をしている幹部たちを振り返る。

 

「……何あれ?」

「浮かれてるんだろ」

「たかだか一緒にお祭り回るだけで?」

「そう云ってやるな。エンと一緒だから楽しみにしてんだよ、あの人は」

「……ふぅん」

 

少しからかうようなベックマンの言葉にやや納得出来なさそうな顔のエンは、シャンクスが姿を消したドアの方を見ながらボソリと零した。

 

「私だって、楽しみだもん」

 

それはなんだか拗ねた子供のような云い方だった。

シャンクスが浮かれる理由はわかったが、じゃああっさりと返事をした自分が楽しみではないのかと思われたらつまらない。

誘ってもらえて嬉しかったし、実際明日は楽しみなのだ。

どうもシャンクスはいつまでも自分の一方通行でエンを好きだと思っているようだが、エンだってちゃんとシャンクスを特別に想っているということを忘れているような気がする。心外だ。

しかしそれを口に出来るほどしっかり自分の気持ちの言語化が出来ずにいじけるエンは、長い海賊生活でただれて荒んでしまった幹部たちの目にあまりに眩しい。

 

「な、何なに。みんな無言で頭撫でないでよ!」

「おじさんたち涙出ちゃいそう」

「青春、甘酸っぺ~!」

「あーもう、お前は本当に可愛いなぁ」

「だから、知ってるってば! ありがとね!?」

 

その場にいた全員がかわるがわるエンの頭を撫でまくるので、鳥の巣みたいになってしまった頭を直しつつ、エンはぷんすか怒りながら部屋に戻った。今船に乗っている仲間の中でエンが一番年下なのは知っているけれど、あんまりにも子供扱いされるのは面白くない。しかし可愛い自分を可愛がりたい気持ちはよくわかるので、ほどほどにしてほしいと思う。

そうして翌日、出かけるのは昼からなのでそれまでは久しぶりに自室でのんびりしようかと思っていたエンだったが、出かける準備のために鞄を開けて思わずアッと声をあげてしまった。

しまった。

やってしまった。

はー、と大きくため息をつき、エンは身支度を整えた。朝ご飯を食べたら、一度外に出なければならなくなったのだ。

自分のおっちょこちょい具合にうんざりしつつ朝食を摂り甲板に出ると、丁度シャンクスと出くわした。予定の時間までまだかなりあるのにすでに出かける様子のエンにちょっと首を傾げたシャンクスに、エンは肩を竦めながら云う。

 

「出かけるのか?」

「うん、昨日図書館から間違えて一冊本持って帰ってきちゃったみたいで、返しに行ってくる。貸し出しの手続きしてないから早い方がいいと思うし。だからさ、お昼に図書館前で待ち合わせしない?」

「ああ、いいぞ」

 

にこやかに了承しつつ、実はちょっとだけしょんぼりしてしまったシャンクスである。せっかくたくさん二人で出かけられると思っていたのに。

とはいえ、仕事熱心なエンがうっかり本を持ってきてしまったことを咎めるつもりはないし、考え方を変えてみれば、ずっと同じ船で生活している自分たちが外でデートの待ち合わせをする機会なんてそうそうない。これはこれでデートを堪能できるのではないか、と思い直すことにした。こういうポジティブさはやはりエンの影響だろう。

それじゃあとで、と連絡橋に足を載せたエンは、思い出したようにシャンクスを振り返った。そうして。

 

「楽しみにしてるね」

 

――ズキュン

 

肩越しに笑顔を見せたエンが可愛くて、あやうくシャンクスは死ぬところだった。

照れくさそうなエンが連絡橋から降りて街中に消えていくのを見送った後、心臓を押さえてその場に倒れたシャンクスは、頼れる仲間たちに『邪魔だ』と蹴り飛ばされながらエンとの待ち合わせの時間までを過ごした。とてもじゃないがこんな姿は他海賊団には見せられないな、と幹部たちが頭を抱えたのは紛れもない事実だった。

 

さて、いよいよ約束の時間である。

いつもより気持ち髪を整えて、格好も身綺麗にしたシャンクスはウキウキ気分で図書館へ向かった。

これまでの島でも何度かエンと街に出たことはあったけれど、どれもエンの買い出しに付き合うだとか、何かしら用事があって純粋なデートというのは今回が初めてだ。

しかも、エンも楽しみにしてくれているという。

これはもう全力で楽しませる以外に選択肢がない。評判のいい出店の情報は前もって仕入れたし、花火の場所もよく見える場所を確保しているので抜かりはない。

 

というわけで改めて気合を入れて図書館前でエンを探すが、周囲にはエンの姿が見つからない。もしや気が急きすぎて時間が早かったかと思って確認したが、約束の時間丁度だ。

一瞬嫌な予感が頭をよぎったけれど、この街でそんなことはありえない。前と違ってそこかしこに赤髪海賊団の誰かがいるし、そもそも事件が少ないこの街で誘拐なんて起きたら街中大騒ぎにになっているだろう。

改めて周囲を見渡してもやはりエンはいない。ふむ、と考えて、外にいないなら中はどうだと図書館に足を踏み入れた。

読書が嫌いなわけではないが、静かに読書よりも仲間たちとどんちゃん騒ぎをしているほうが性に合っているシャンクスがわざわざ自分の意志で図書館に足を運ぶことはあまりない。普段エンやベックマンがこもっている執務室すら出来ればあんまり行きたくはない場所なのだ。紙とインクの独特なにおいはくしゃみが出そうになる。実際くしゃみを連発したことがあったが、二人にものすごい顔で見られたので用事を済ませて早々に退室した。あのときの視線はちょっとしたトラウマものになっている。思い出して悲しくなった。

 

島に着いて何か調べ物がある場合でも、そのへんはベックマンやホンゴウに丸投げして、自分では飲み屋などでの情報収集くらいしかしない。そんなシャンクスが久々に足を踏み入れた図書館は、思ったよりもずっと清潔感のある場所だった。

紙とインクのにおいはするけれど、それ以上にどこか清涼感がある。おそらくそれは至る所に置いてある観葉植物のおかげなのだろう。椅子や机も随分と凝った作りになっているし、カウンターや本棚を含め、座席のレイアウトもお洒落だ。ただ机と椅子を置いて本が読めればいい、という考えはもはや過去のモノらしい。

また、足音さえも憚られるような独特な静寂さも、賑やかを体現したようなシャンクスにとっては苦手な要因だったのだが、ここはかすかに音楽も流されているようだし、うるさくない程度に会話をしている人も散見出来た。

他の図書館はどうか知らないが、少なくともシャンクスにとってここは思ったよりも嫌な場所ではない。

が、感心している場合ではないのだ。ここにはエンを探しに来たのだから。

本来の目的を達成するために受付前を通り過ぎようとすると、受付係の女性と目が合ってにこりと笑顔を向けた。基本愛想のいいシャンクスにとっては反射だったが、ポッと頬を赤らめられてしまった。そういうつもりではないので慌てて目を逸らしてエンの姿を探した。あと、万が一エンに目撃されて勘違いされては困る。

ざっと見渡してみたところ、入り口から見える席にはいないようだ。案内図を見ると座席は何か所かに分かれてあるようなので、近場から覗いてみることにした。

 

そうして一番奥、背の高い本棚に囲まれた秘密基地のような場所をそっと覗いたとき、漸くエンを発見した。

近くに他の利用者もいないようなので、小さくエンを呼ぼうとして、やめた。

気配と足音を殺して、静かにエンの目の前の席に腰掛ける。

集中しているようでまったくシャンクスに気付かないエンは、ページを捲ったりメモを取ったりと忙しい。

客観的に考えると現在シャンクスは約束をすっぽかされているわけだが、不思議と苛立ったり怒ったりする気にはなれなかった。

机に肘をつき、頬杖をつき。

しばらくシャンクスは、黙ってエンを見つめていた。

 

それからおよそ、30分後。

キリがいいところまで書き物が終わったエンが、ふと視線を感じて顔を上げる。

すると、いつの間にか目の前の席にシャンクスがいた。

 

「え!!」

「お、やっと気付いたな」

 

思ったより大声が出てしまい慌てて口を押え、エンは申し訳なさそうにあたりを見まわした。幸い、近くには人がいなかったので迷惑にはならなかったことにホッとしつつ、時計を確認すると約束の時間を30分も過ぎていた。

ざぁ、と全身から血の気が引いた。

本日二度目の、やってしまった。

そんなエンを見てからからと面白そうに笑うシャンクスに、エンは両手を合わせて頭を下げた。

 

「ご、ごめんお頭、ちょっと読んだら外に出るつもりが、私すっかり夢中になっちゃったみたいで」

「そうだろうなぁと思ってたから気にするな」

「うううごめんね……」

「本当に大丈夫だ。それにおれ、エンが仕事してる姿見てるの好きだし」

 

え、と驚いたように目を見開いたエンに、シャンクスは指折り数えながら云う。

 

「書類見てるときの視線とか、読みやすい字がすらすら書けるところとか、考え事するときにペンで額を掻く仕草とか、全部好きだ」

 

唖然とした。

そんなところを見られているとは思わず、エンは驚いた。

そうして、自分でも気付かなかった癖まで知られていることにものすごく恥ずかしい気持ちになった。考え事をするときにペンで額を掻くなんて、意識したことはなかったのに。

シャンクスが自分のことを好きなのはもうわかっていたけれど、思ったよりも好きなんだな、と改めて感じてエンは自分の顔が熱を持つのを自覚した。

 

「ソウ、デスカ」

「片言」

「て、照れるからそういうの」

「わは、可愛いやつ」

「それはいつもだもん」

 

とにかく、待ち合わせの時間はとっくにすぎているのだ。時間を巻き戻すことは出来ないけれど、巻き返すくらい楽しめばいい。

急いで荷物をまとめ、返却する本を指定の場所に纏めて置く。この図書館のいいところは、指定の場所に置けば返却は職員がやってくれることだろう。これなら間違えて違う本棚に戻してしまって所在不明になることは少ないし、利用者の手間も省ける。特に今のエンのように急いでいるときはありがたいシステムだ。

分厚い本を戻して、準備を整えて二人は図書館を後にする。通りかかった受付で、行きにシャンクスを見て顔を赤らめていた女性がが再びシャンクスの姿を見つけてパッと顔を輝かせ、しかし隣にエンがいることに気付いてシュンと肩を落としていた。

幸いエンはそのことに気付かなかったので内心ホッとしつつ歩いていると、向かいからやってきた男性職員がにこやかな笑顔で会釈をした。もちろんシャンクスは彼に見覚えもないので反射でへらりと笑顔を返したが、どうやら彼はエンに挨拶をしたらしい。すれ違いざまに今日もご利用ありがとうございました、今日も充実した時間をいただけました、と軽く会話をしていた。知り合いなのだろうか。

二人とも特に足を止めたりはしなかったが、なんというか、とても自然に会話をしていたのがシャンクスは気にかかった。

 

「今のは?」

「ここの司書さん。本探すの、何度か手伝ってもらったんだ」

「……へぇ」

「あ、何、やきもち?」

「そうだけど」

 

エンは人見知りではないし、この通りとても可愛くて愛嬌もあるので基本的に誰とでも仲良くなれる。そんなことはシャンクスも知っているし、そういうところもエンの魅力の一つだとわかっている。白ひげに紹介した時だって打ち解けるのは秒だったし、気付いたらマルコともサッチともイゾウとも仲良くなっていたのは驚いたけれど。

まぁ、いいのだ、彼らは。マルコはいろんな意味であんまりよくないが、シャンクス個人的にマルコのことは好きなのでまだいい。

が、さっきの彼はなんとなく嫌だった。

多分だが、彼はエンに気がある。勘だし何の根拠もない。しかしシャンクスもエンほどではないが勘は鋭いほうだ。きっとこの勘は当たっている、と確信した。

しかも彼は若く、おそらくエンと同世代くらいだろう。今さら自分とエンとの年齢差を気になどしないけれど、『エンに好意を向ける』『エンと同世代の男』、という存在には警戒心が働くのだ。

早い話、面白くない。

わかりやすくぶすくれた顔になったシャンクスを唖然として見上げたエンだったが、次の瞬間には口をへの字に曲げて眉間にしわを寄せた。

やきもちか、なんて冗談のつもりで云ったことだけれど、冗談じゃない。

 

「……馬鹿」

「え」

「そんなの必要ないから。あの人は仕事で対応してくれたんだし、私も仕事で必要な本を探してただけ。やきもちなんて、妬かないで」

 

やきもちを妬かれて嬉しいと感じる人も一定数いるらしいのは、いくつか読んだ物語の中で知っていた。

例えば自分が異性と仲良く話しているのを意中の人に見せつけて嫉妬心を煽り、そうすることで自分はその人に愛されているのだと実感するだとか。

物語の進行としては必要なのかもしれないし、他人事ならば笑っていられるけれど、エン自身はそういうことを考えたことがない。

むしろ、そんなことをして意中の人を傷つけるのは嫌だし、利用される異性にも申し訳ないと思う。というか純粋にそれって性格悪くないか、とエンは思う。

 

そもそも、なんだ、やきもちって。

ちょっと異性と話したくらいでシャンクスへの想いが揺らぐとか、簡単に他の人にエンの想いが向くと思われているのだろうか。

そんなわけがないのに。

エンが云ったように彼は図書館の職員で、エンは利用者。ここ最近で一気に通うようになったからお互いに顔がわかるだけのビジネスライクな単なる顔見知りを相手にやきもちを妬くなんて、逆に失礼だとは思わないのか。

確かに、ちゃんと自分がシャンクスに向ける特別さを伝えきれていない自分も悪いかもしれないけれど、ちょっとくらい信用してくれてもいいのではないか。

もちろんエンは通常運転で、彼が自分に向ける好意はエンが可愛いからであってそれ以上の意味はない、と思っている。相変わらずの鈍さである。

 

やきもちなんて妬かないでほしい。

そんなの、全然必要ない。

必要があれば誰とでも話すけれど、そんなの話すだけだ。話せて嬉しいだとか、ドキドキするだとか、手を握りたいだとか、抱き締めてほしいだとか、そういうのは全部シャンクスだけなのだから。

 

「ほら、はやくお祭り行こ、お頭」

「お、おう」

「私本当に……楽しみにしてたんだから」

 

エンはシャンクスの左側に立ち、マントに寄り添って云う。

もうこれ以上話を蒸し返すのは野暮だ。それにエンがこう云うのだから、本当にエンと彼は何もない。心配は心配だが、何よりシャンクスはエンの言葉を信じたかった。

 

それから昼はお祭りで出店を満喫し、夜は花火を堪能し、船に戻ってみれば甲板で酒盛りをする幹部メンバーに混じってひと騒ぎし。

すっかり夜も更けたころにそれぞれの部屋に引き上げて行き、エンとシャンクスは一緒に眠った。

楽しくて、幸せで、満たされる。

珍しく先に寝入ってしまったシャンクスの緩んだ寝顔を見ながら、今日という忘れられない思い出が出来たことをエンは喜んだ。

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

「昨日の方はどういったお知り合いなんですか?」

 

翌日。

二日酔いで起き出せないシャンクスをベッドに置いたまま、いつも通りの時間に起きたエンは図書館に来ていた。

もはや馴染みとなっていた受付係に軽く挨拶をして、道すがら目当ての本を手に取りながら定位置になりつつある一番奥の席を陣取る。この席は入り口から一番遠いせいか、ほとんど誰も利用しないのでエンの特等席になっていた。

しばらく黙々と仕事をこなし、もう少し詳しい史料を探そうと席を立ったときに司書の彼は現れた。

 

「えーと」

「随分と親密そうに見えましたが……」

「そ、そうでした?」

 

傍から見てもそう見えるというのはなんとも照れる。

頬を掻きながら誤魔化すように笑うが、彼は追及の手を緩めなかった。

 

「ごめんなさい、とても堅気の方には見えなかったもので、心配になってしまって」

「あー、なるほど」

 

納得した。

確かにお世辞にもシャンクスは堅気には見えない。よくてチンピラ、悪くて盗賊である。さすがに街中では帯剣していないが、黒いマントと左目の傷はどうしたって目立つのだ。

逆にエンは自分がまったく海賊らしくない見た目だという自覚があるので、二人で並んでいると異様な組み合わせに見えるのは無理もない。

可愛すぎて海賊に見えなくてごめんなさい、と誰にともなく心の中で謝りながら、へらりとエンは笑顔を浮かべた。

 

「お気遣いありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。あの人が私に危害を加えることはあり得ませんから」

「……そうなんですか?」

「はい。私が一番信頼してる人です」

 

きっと彼は見た目の通りとても優しい人なのだろう。困っている人がいたら考える前に手を差し伸べられる、誰かのために何かが出来る、そういう人。

エンは自分を悪い人間だというつもりも、損得勘定だけで動くだけの人間だというつもりもないけれど、善人ではないと思っている。少なくとも、赤の他人の海賊団が赤髪海賊団に壊滅させられても心は全く痛まない。むしろ馬鹿だなぁ、頭が可哀想だなぁ、この人たちに勝てるなんて万が一にもない妄想をして実行しちゃうなんて、と哀れに思う。

彼の目には、もしかしたらか弱い美少女であるエンが、危ないシゴトをしているシャンクスに何か弱味でも握られて傍にいるのでは、と映ってしまったのかもしれない。まぁある意味惚れた弱味ではあるが、そう、悪い意味ではないのだ。

彼に悪気はなく、純粋に自分を心配してくれたということはわかるので、そうではないのだということが伝わるように笑顔で返すと、何故か彼は表情を曇らせた。

 

「……羨ましいですね」

「へ?」

「彼が、あなたにそこまでまっすぐに好意を向けられることが羨ましい」

 

ぱちくり、と目を瞬く。

彼の云わんとすることがわからなかった。

そんなエンの反応は予想出来ていたのか、男は小さく笑ってから表情を引き締めて腰を折った。

 

「こうして何度かお話ししているうちに、あなたの笑顔に心を奪われました」

 

――いけない、と咄嗟にエンは思う。

 

これは最後まで聞いてはいけない話だ、と。

けれど思考に身体がついていかず、次に息を飲んだ瞬間に。

 

「あなたのことが好きです」

 

目を合わせて、告げられてしまった。

ごくりと息を飲むと同時に、こめかみに冷たい汗が流れた気がする。

何か云わねばと思うのに、こんなふうに正面から好意を伝えられることに慣れていないので頭が回らない。酒の席だとか、街中でされるナンパならばあっさりと対応できるのに。

 

「最初にお話ししたとき、船に乗っていると云っていましたよね。だから近いうちにいなくなってしまうと思って告げずにいるつもりでしたが……あなたが彼と並んでいるのを見たら、無理でした。ぼくは、あなたの隣に並びたいと思ってしまった」

「え、あの、」

「返事は、次にお会いしたときにでも頂ければと思います。ぼくは明日からしばらく分館勤務なので、ここに来ても当面顔を合わせる心配はありませんから」

 

笑顔のまま続けた男に、エンは何も云えない。

けれどそれが失敗だった。

なんとしてもこの場で断るべきだった。

何故なら、エンが今さらシャンクス以外の誰かに靡くことはない。エンはシャンクスが好きなのだ。ただその特別さを言葉に出来なくてやきもきしているだけで、今も実質恋人同士のようなものなのだ。

だから、どれだけ想いを告げられても、どれだけ時間を与えられても、断る以外の選択肢はない。

それなのに。

 

「その間、少しでも、あなたがぼくのことを考えてくれたら嬉しいです」

 

笑った男は、それだけ云って姿を消した。

エンはしばらくその場から動けなかった。

 

やはり、すぐさま断るべきだった。

例えそれが彼を完膚なきまでに傷付け打ちのめす結果になったとしても、可能性など微塵もないことを伝えるのが誠実さであり優しさだった。

それなのに、エンは衝撃のあまり何も云えなかった。

よく回る口は金魚のように開いたまま音を発することはなく、せめて身振り手振りと思っても身体は強張ったまま。

その結果、彼は去ってしまいエンは断る機会を先延ばしにした。

けれど、じゃあなんと云えばよかったのかわからない。

あなた以外に自分を好きなってくれた人がいるからごめんなさい?

それはあまりに心無い気がする。

自分はここに留まれないから?

じゃあ留まる理由があればいい、というわけでもない。

ぐるぐると、男の言葉が頭を回る。目を閉じてもあの目に見つめられている気がする。

落ち着かない。

 

「エン、どうした?」

 

不思議そうなヤソップの声にハッとして顔を上げる。

そこはすでに図書館ではなく、レッド・フォース号の甲板だった。

 

「……あれ」

「寝ぼけてんのかぁ?」

「働きすぎだ。たまにはゆっくり休めよ」

 

いつの間にか、エンはレッド・フォース号に帰って来ていた。

咄嗟に確認した時間的にも開放時間いっぱいは図書館に滞在していたはずだが、あのあと自分が何をしていたのかさっぱり思い出せない。

ベックマンの云う通り、疲れているのだろう。

いくら楽しかったとはいえ連日の図書館通い、船での仕事に昨日のお祭りと花火。自分では平気だと思っていても、身体に疲れは蓄積していたに違いない。休養も仕事の一部だし、明日はゆっくり休もうか。

食欲もなかったので、今日はこのまま休むことにしたエンが自分の部屋に足を向けようとして、ふと考える。

二日酔いから復活したシャンクスはこの酒盛りにも当然参加していたので、そちらに足を向けて。

 

「お頭」

「ん?」

 

首を傾げたシャンクスに、手を伸ばして一言。

 

「え、え?」

「……ぎゅってして」

 

困ったような泣き出しそうな顔をしたエンの言葉に驚いたシャンクスだったが、すぐにエンの手を取って引き寄せた。簡単にシャンクスの胸に傾いたエンは、ぐずる子供のようにシャンクスの胸に額をぐりぐりと押し当てる。

この光景を幹部たちは呆然としながら眺め、当のシャンクスは喜びに震えながらぎゅうぎゅうとエンを抱き締め返した。

 

「おれはもう死ぬのか?」

「死なないで」

「嬉死する……」

 

悪いことは何もしていないはずなのに、エンは罪悪感で頭がいっぱいだった。

どうして断れなかったのだろう。

どうして何を云うのか困ってしまったのだろう。

自分にとってたった一人の『好き』が向いているのはシャンクスだけなのに、ただ彼が誠実だったからという理由で何も云えなかった自分が情けなくて仕方がない。

 

まだしばらくこの島には滞在するし、調べたいこともあるから、エンは図書館に通うだろう。しばらくは彼は別の場所で働くと云っていたけれど、あの口ぶりではまた会うことになるに違いない。

考えなければ。

少なくとも答えは『ごめんなさい』しかないのだから。

 

とにかく、今日はこれ以上考えても意味はない。疲れを取るためにゆっくりお風呂に入ってさっさと寝てしまおう。最近はやっと一人でも眠れる日が増えてきたし、昨日はシャンクスと眠ったからきっと今日は一人で眠れる。

 

「……よし、寝る。おやすみ!」

 

パッと顔を上げたエンはもういつも通り可愛らしい笑顔を浮かべており、シャンクスの手は行き場を失くして空を切った。

そうして振り返ることなく船内に姿を消したエンに、シャンクスは。

 

「エンに弄ばれた……!」

「ニヤつくな、気持ち悪ィ」

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

「で、何があった?」

「何かあったの前提なの?」

「お前があんな風にお頭にくっつくなんてどう考えてもおかしいだろ」

「ひ、日頃の行いのせいで……」

 

ゆっくりすると決めたくせに、基本的に社畜根性が刻み込まれているエンは、結局昼過ぎにはベックマンの手伝いに執務室にやってきた。

本当なら一日と云わず数日は休んでもらってもいいと思っているが、仕事が立て込んでいるのも事実。働かせすぎないよう自分が気を付ければいいか、と諦めてベックマンはエンに仕事を振った。

とはいえほとんど休暇も兼ねている今回の滞在は、普段よりは余裕がある。比較的、という悲しい違いではあるが。

ある程度終わりの目途が付いたタイミングで、同じように書類を片付けたエンにベックマンは問うた。

エン自身も今思い出しても昨日の自分の行動はおかしかったと自覚しているから、誰かに何かは云われるだろうな、とは思っていた。正直自分だけで抱え込むキャパはとっくに超えているので、問い質してくれてむしろありがたい。

口にしてみたら何か新しい発見がある可能性を信じて、すっかり冷え切ったコーヒーを一気飲みしたエンは、ぼそぼそと答える。

 

「実は昨日、図書館の司書さんに、告白、されまして」

「……ほぉ」

「私が返事するまで、少しでも自分のことを考えてほしいって云われて」

 

紫煙を吐き出しながら続けろ、と視線で促すベックマンに、思わずエンは顔を両手で覆って大きく吐き出した。

 

「なんで私、すぐに返事が云えなかったのかわかんなくて、へこんでた」

 

迷ったわけではないと断言できる。

何度考えようが答えはノーだし、考えるまでもない。

それなのにどうして、断る、たったそれだけのことが出来なかったのか。

 

「答えは出てるんだろ?」

「うん。申し訳ないけど、気持ちには応えられないよ。私は赤髪海賊団の一員だもん」

「なら、次に顔を合わせたときにはっきりそう云えばいい」

「うん……」

 

それはわかっている。

次もまた同じ失態をするつもりはない。

エンは基本的にポジティブを突き抜けているが、それは根拠がある場合だ。

今回のように自分の行動に自覚もなく意味もわからない場合、同じことを何度も考えてしまう。

ベックマンの言葉に肯定の返事をしつつもまだ考え込んでいる様子のエンに、ベックマンは首を傾げた。答えが出ていることに何を迷うのか、とこの手の問題は即断即決な男にはエンの繊細な気持ちが理解できないのだ。

 

「まだ何か問題が?」

「問題っていうか」

 

問題といえば問題で、問題でないといえば問題でない。

エンの気分の問題なのだが、好意は受け取るものだと思ってこれまでそうしていたエンにとって、真摯な気持ちに応えてあげられないというのは申し訳ないことだった。

そして、ハッとする。

なるほど。

そういうことだった。

だから自分は咄嗟に断ることが出来なかったのだ、と今さら気付いた。

やはり口に出して考えるのは大切だな、としみじみ思いつつ、エンは云う。

 

「人のまっすぐな好意を断るのって、しんどくない?」

 

だからすぐに返事が出来なかった。

悪意も裏もなく、純粋に好意を寄せてくれた彼に対して申し訳なく思うのと同時に、受け入れてあげられないと突っぱねることがエンにとって一種のストレスだったから。

ある意味で心の防衛本能だったのだろう。随分と自分本位な本能だ、とエンはちょっと自分に呆れた。

しかしやはり百戦錬磨のベックマンにはエンの気持ちは理解できず、再び不思議そうに首を傾げた。

 

「そうか? 全部受け入れるなんて無理な話だし、ある程度は仕方ねぇだろ」

「うわー。さすが女の人をとっかえひっかえしてる人の言葉は違うねぇ」

「おれよりお前の方がひどいだろうが」

「な、なんで!?」

「自分は好かれるのが当たり前だと思って実際その通りで、でもその好意の度合いを勝手に自分で決めて無下にしてきた想いがいくつあるんだろうなぁ?」

「え、待ってベック怒ってる? 怒り方怖くない?」

「別にスケコマシ扱いに怒ってるわけじゃねぇよ」

「怒ってるじゃん!!」

 

無駄にきらめいたエフェクト付きの笑顔を浮かべたベックマンに必死で頭を下げるエンである。モテ男だと褒めたつもりなのに、言葉選びをしくじったらしい。仕事のしすぎで怒られるときとは違う怒られ方に、もうこの手の話で怒らせるのはやめようとエンは心に決めた。別に今も怒らせたかったわけではなないけれど。

 

ベックマンとエンがそんな話をしてから数日後。

エンが司書に告白されてから、丁度一週間が経っていた。

この日もエンは朝から図書館に詰めていた。彼がいないのはわかっていても若干挙動不審になってしまったのは数日だけで、今は今まで通り穏やかに図書館生活を満喫している。

次に彼と顔を合わせたときにはきちんと伝えなければならないが、会ってもいないのにその時のことを考えて神経をすり減らすのは馬鹿々々しい、と少しだけ開き直ったのだ。

エンもずっとこの島に滞在するわけではない以上、時間は限られている。滞在中に出来るだけ多くの資料を集めたいし、折角の陸生活を苦い思い出にしたくない。

そういうわけで今日も山ほどの本と格闘していたエンは、今は昼休憩中だ。近くの軽食スタンドでサンドイッチとカフェラテを購入し、図書館の裏にある公園のベンチの木陰で食べる。海での生活に何も不満はないが、もともと自然豊かな島で育ったエンにはこういう景色も捨てがたい。

あと何度ここに来られるか、と考えながら最後の一口を飲み込んだとき、すぐ近くから芝生を踏みしめる音がした。そちらを見ると、司書の彼がそこにいた。

 

「エンさん」

「!」

 

何故ここに、と思ったが、一階の大部分がガラス張りになっているこの図書館の裏手は職員通路になっているようだ。どうやら、昼休憩のためにここに来る姿を目撃されていたらしい。

 

「こんにちは」

「こ、こんにちは」

「…………」

「…………。」

 

沈黙。

鳥の声と風の音がやけに響く。

エンは返事をしなければ、と思うのだが、会ってそうそういきなりごめんなさいをするのはあまりにも礼儀がないのではないかと思う。かといって世間話なんてする余裕もないし、どうしたものか。

すると彼の方が照れくさそうに口を開いた。

 

「……すみません、緊張しちゃってうまくしゃべれなくて」

「あ、いえその、私の方こそ……」

 

考えてみれば、マルコに告白したときの自分もそうだったと思い出す。

あのときのエンは振られることを確信していたからこそ緊張していたが、彼はどうなのだろうか。

立場はあのときと逆だ。

今度はエンが、彼を振る側。

 

「お返事を、頂けるんでしょうか?」

 

きた、と思う。

ただでさえ先延ばしにしたのだ。もうこれ以上は先延ばしになんて出来ない。

エンは深呼吸するように大きく息を吸ってから、立ち上がり彼に身体を向けてからゆっくりと頭を下げた。

 

「……ごめんなさい。お気持ちは、嬉しいんですが」

「…………」

「私は、あなたと同じ気持ちを、返せません」

 

云ってから、気付く。

マルコに告白をしたとき、同じことを云われて自分は振られたのだ。

同じ言葉で誰かを振ることになるなんて、ひどい因果だと思う。

彼に対して少しだけ申し訳ない気持ちになりながら、あのときマルコもこんな気持ちだったのだろうか、なんて考えながら顔を上げると、男はきつくこぶしを握り締めながら悲しそうに口を開いた。

 

「理由を、訊いてもいいですか?」

「え……」

「直せることがあるなら直します。努力ならなんでもします。ほんの少しの可能性も、ぼくにはありませんか?」

 

真剣なその瞳に射抜かれて、エンはまた身動きが取れなくなる。

今更ながらに、この人は本当に自分を好いてくれているのだと思って居た堪れない気持ちになった。

図書館の中で初めて出会ったときから柔らかい笑みを浮かべていたこの人は今、何かを堪えるように歯を食いしばっている。

そうさせたのは自分だ。

真摯に自分を想ってくれる人を、自分は悲しませている。

申し訳ないと、思う。

 

――だけど。

 

「だって、あなたは」

 

きっと優しい人なのだろう。

きっと素敵な人なのだろう。

この人に愛してもらえることは幸運で幸福なことで、これから先の未来を幸せに過ごせることなのだろう。

 

――それでも。

 

「あの人じゃ、ないから」

 

そう。

たった、これだけ。

どれだけ優しくても素敵でも、シャンクスじゃないというだけでエンは誰からの愛にも応えられない。

 

――だって、私が好きなのは。

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

気付けば私は船に帰って来ていた。

ハッとしたら目の前に船の連絡橋があってびっくりした。最近こういうこと多くないか、私。夢遊病だとしたら困るのでホンゴウに相談した方がいいのかもしれない。

そう、ホンゴウ。

今更ながら、司書さん相手に自分が云った言葉の意味を実感して血液が顔面に集まる。顔が熱い。

これはホンゴウに報告しなければ。

私は急いで連絡橋を駆け上り、一目散に医務室に足を向けた。甲板では何人かが酒盛りをしていたような気がしたけれど、そんなの今はどうでもいい。

そしてノックもせずに医務室のドアを開け、思いっきり閉めて。

幸いなことに患者は一人もおらず、一人で書き物をしていたホンゴウに迫り、混乱のあまり私は驚いたように目を見開くホンゴウの胸倉を掴んでいた。見た目は完全にカツアゲだ。

 

「なんだなんだなんだ」

「ど、どどどどどうしようホンゴウ」

「何が」

「わ、私――……」

 

なんでホンゴウは両手あげてんの、降参のポーズなんかやめてよ。

しかし今の私にそんなツッコミを入れる余裕はなく、頭から湯気が出そうになりながら勢いよく云った。

 

「――お頭のこと、好きなのかもしれない……!」

 

顔が真っ赤な自覚がある。

どうしよう。

なんでなんで、直接お頭に伝えたわけでもないのに、ただ好きってわかっただけでなんでこんなに顔が赤くなるのかわからない。

マルコに告白したときだってこうはならなかったよ。まぁあのときは振られるのがわかってたから逆に冷静だったっていうのもあるかもしれないけど。

しかし、目の前のホンゴウはいかにも『はぁ?』と云いたそうに片眉を上げてあっさりと云った。

 

「いやそれは知ってるけど」

「そ、そうじゃなくて、だから、その」

「男としてってことだろ?」

 

いや改めてそう云われると本当に恥ずかしい。

別に今までお頭を同性だと思ってたわけじゃないんだよ、ちゃんと男の人だってわかってたよ。なんてったって力勝負で一回痛い目見てるからね。あ、これ現実逃避の自虐です。もう云わない。

 

「なんで今気付いたんだ?」

 

もっともな疑問だろう。

私はホンゴウに洗いざらい話した。それはもう、全部話した。図書館で初めてあの司書さんに話しかけられたことから、告白されたときの状況も、ついさっきお断りしてきたことも。

私が話している間、最初ホンゴウは難しい顔をしていたけれど、徐々に頭を抱えて、最終的にはため息をついて頷いた。人の話聞いてその態度はなくない?

 

「はー、なるほど」

「な、納得するの?」

「まぁな。そいつにゃ悪いが、いい仕事してくれたぜ」

 

どういう意味。

よくわからなくて首を傾げると、ホンゴウは肩を竦めるだけだった。私が知る必要はないって、どういうことなの。私のことなんですけど?

 

「元からエンにとってお頭は特別だってわかってただろ。そんで、やっと自覚したって話だよな」

「うぇ……」

「照れんな。こっちまで照れる」

 

真顔で照れるなんて云われても信じられないよ、ホンゴウ。

うわーこれ本当に照れる。

私ってお頭のこと好きなんだってよ。マジ? マジなんですよ。

考えてみたらそれこそ最初から好きだったんだよ。なんでそれをいつも通りの軽い好きの一部だと思ってたのか、今となっては鈍すぎる自分をぶん殴りたい。いや可愛い私の顔は殴れないので、過去に戻れるならデコピンをお見舞いしたい。

 

「つーかなんでおれに云うんだよ? お頭に直接云えばいいだろ」

「無理無理無理!!」

「なんで」

「か、顔見らんない……!」

 

だって自覚しただけでこんだけ照れるんだよ? 直接顔見たらどうなるかわかんないよ。噴火だよ。人体発火するに違いないよ。

かといってずっと顔合わせないなんて無理な話だけど、少なくともこの照れが落ち着くまでは部屋に引きこもりたい気分だ。

 

「可愛いな、お前」

「知ってるけど!?」

「キレ芸すんなって。でもどうすんだよ、今後お頭と顔合わせないなんて絶対無理だぜ」

「だからどうしようって相談してるんだよ!!」

「えええ……でもなぁエン」

 

困ったように息をついたホンゴウが、ちょいちょいと指をさす。私の後ろ。医務室のドアがある方。え、何?

 

「手遅れだぞ」

 

私はハッとしてホンゴウの指の先を振り返った。

そして、ヒュン、と息を飲む。

 

だって、そこには。

 

「お、お頭……」

「エン」

「は、はい」

「まずちょっとホンゴウの上から降りような」

「ハイ」

 

そういえば私、来たときに身を乗り出してホンゴウの胸倉掴んだままだった。ホンゴウが何も云わないから、ずっとこのままだった。慌てて手を離し、両手を上げてホンゴウから距離を取る。ごめん、襟がしわっしわ。

どうやら、甲板で酒盛りをしているメンバーの中にお頭がいたらしい。今考えたらいないほうがおかしいのだ。酒がある場所にはお頭がいる。なぜこんな当たり前なことを失念していたのか。

そして、挙動不審全開で帰ってきた私にお頭が気付かないはずはなく。

何かがあった場合、私が相談に行く人はたいていの場合決まっている。

お頭か、ベックか、師匠か、そうでなければホンゴウ。

多分あの場にはベックも師匠もいて、となると消去法で私がホンゴウのいる医務室に向かったとあたりをつけて追いかけてきたのだろう。

 

どこから聞かれていたのか。

ワンチャンついさっき。

いやでもホンゴウは『手遅れ』と云った。

ということは、つまり?

 

――私がお頭のこと好きだっていうのも、聞かれてた?

 

「ホンゴウ。エン借りるぞ」

「はいはい。つーか今日はもう返さなくていいから」

「ホンゴウ!?」

「いやー、今日は祝宴決定だなぁ。ルウに赤飯焚いてもらわにゃ」

「ななななな何云ってんの!?」

 

勝手に祝わないでほしい。

私は混乱で赤くなったり青くなったりしながら口をパクパクさせていると、お頭が真顔で云った。

 

「行くぞ、エン」

 

拒否権はなかった。

手は繋がれなかったし担がれもしなかったけれど、これは逃げてはいけないってことくらいわかる。

私は半泣きでホンゴウを振り返ったけれど、ホンゴウはわかりやすく涙を拭う仕草をしながらハンカチに見立てたガーゼを振った。味方がいない。

そうして気分は出荷される牛のようになりながら、さっさと医務室から出てしまったお頭の背中を追って、向かった先は当然のようにお頭の部屋だった。このまま隣の自分の部屋に駆け込みたい衝動は堪える。だってそれやったら壁ぶち破られる確信があったから。

ドアを開けて先に入ったお頭に促されるまま一歩部屋に足を踏み入れ、ことさらゆっくりドアを閉めて振り返った私の目の前には、お頭。

 

「え、あの、お頭」

「うん?」

「なんで、この体勢……」

 

いわゆる壁ドン。今私の背中にあるのはドアだけど。

お頭には左腕がないから、かわりに左足で遮られている私の右側。

いや事案。

恐喝現場にしか見えないってこれ。実際似たようなものだし。

 

「エンが逃げないように」

「に、逃げないよ……」

「どうだか」

 

ひぃ。

この人普段はニコニコがデフォルトだから気付けないけど、真顔になると怖いんだよ。人付きのする緩んだ笑顔と全方位に壁作ってそうな真顔の温度差で風邪ひきそう。

 

「さて、話してくれるか?」

「何、を」

「今日、図書館で何があったか」

 

声は笑っているようだけど、冷たい。いや、冷たいというか、平坦というか。

おそらく、ベックからある程度の話は聞いていたのだろう。あの人、黙っといてって云わないとマジで全部お頭に情報流すんじゃないか。

これはもう言い逃れは出来ない。誤魔化せない。

そう悟り、私は俯きながらもごもごと口を開いた。

 

「ちょっと前に、司書の……お頭とお祭りに行ったときに見かけた人がいたでしょう? あの人に、その、告白されて」

「……続けて」

「う……。きょ、今日、お断りをしたんだけど、どうして自分じゃ駄目なんだって訊かれて」

「それで?」

 

ぐいぐいくる。

いや、わかってるんだけど。

このことを知ったらお頭がどんな反応するかなんかわかってたけど。

だから出来ればお頭にはバレたくなかったのに、多分お祭りの日にお頭があの人を見てしまったこと、やきもち云々の話、告白された日に私が人前でお頭に抱きしめてもらったこと、そして今日の挙動不審さで気付かれないでいるほうが無理だった。

私、結構ポーカーフェイスなつもりでいたんだけど、もう二度とポーカーフェイスぶるのやめます。めちゃくちゃ顔と行動に出ます。赤裸々ですよろしくお願いします。

言葉に詰まって黙ってしまった私に、お頭は何も云わない。代わりに、視線で促してくる。すごい圧に押しつぶされそうになるのをなんとか堪え、震える声を絞り出す。

 

「あの人は、お頭じゃないから」

 

云ってしまった。

お頭が息を飲んだ気配がした。

私は、ぎゅっと目を閉じて一気に云う。

 

「どんなに誰かに『好き』をもらっても、お頭じゃないと意味がないって思って」

 

心臓が大暴れで、声が震える。

やばい、どうしよう。

 

「私は」

 

息を吸う。

云うぞ。

云うんだ。

握り締めた拳が震えるのをもう片方の手で押さえつけて、私は意を決して口を開いた。

 

「お頭のことが、――好きなんだって、気付きました」

 

ずっと探していた気持ちをようやく見つけることが出来た満足感と、けれど思い出しただけでも身体が熱くなるような視線を自分に向けていたお頭と同じ気持ちを自分が持っているのだと自覚した戸惑いと、純粋な照れ。

やばいこれ。

みんなに大好きって云うのと全然違う。マルコに告白したときだってこんなにドキドキしなかった。

今までお頭にだって大好きだ~なんて云ったことあったはず……いやあったか? 直接云ったこと、もしかしてないかも。熱で朦朧としてたときは夢だと思ってたし。うわ。やばい。もう尋常じゃないくらい恥ずかしい。手汗がやばい。

お頭が何も云ってくれないから、私はこの沈黙に耐えられなくて慌てて口を開いた。

 

「あの、この『好き』ってホンゴウとかベックとかみんなに対する『好き』と違くて、その、あの、お、お頭にだけの『好き』で、なんていうかその」

 

だから特別の意味がやっとわかりました、恩人だからとかそういうのじゃないんですって云いたいんだけど、伝わるだろうか。本当に自分の気持ちを口にするのが下手で申し訳ない。

 

「お、遅くなって、ごめんなさい。私、お頭が私にくれた『好き』と同じ意味で、お頭のことが好きです」

 

改めて云っても顔が赤くなる。やばい、普段気軽に云ってる好きがどれだけ軽いかこんなところで思い知っちゃった。というかもう誰にも好きなんて云えないよ。今のこと思い出しちゃう。ていうかもしかして今までの私ってものすごく軽い女に見えてたんだろうか。誰にでも気軽に好き好き云ってたんだもん。恥ずかしいし申し訳ない。

 

そんなことをぐるぐる考えていて、ふと気付く。

お頭の反応が一切ない。

お、無視?

マジ?

それはそれで泣きそう。

遅いって怒られるか、うるさいくらいに喜ばれるか、どっちかならまだ私も対応出来るのに、無視は想定外よ。

 

恐る恐る顔上げてお頭を窺う。

いつの間にか壁ドンは解除されていて、お頭は右手で自分の顔を覆っていた。

表情が見えないから怖い。

 

「……あ、あの、お頭?」

「名前」

「はい?」

「名前、呼んでくれ」

 

懇願するような声だった。

もちろんお頭の名前は知ってるけど、呼んだことはなかった。最初は『船長さん』って呼んでたし、今は『お頭』。いくら距離感が近いとはいえ、仲がいいのと馴れ馴れしいのは違う。普段ちゃらんぽらんでもお頭は赤髪海賊団の船長なんだし、多少はけじめをつけるべきかな、と思っていたから、お頭を名前で呼ぼうなんて考えたこともなかった。

 

いいのだろうか。

私は、この人の、この人だけの名前を呼んでも。

私は、それを許されても、いいのだろうか。

 

どうしようか困ってお頭を見ると、もう一度『呼んでくれ』と重ねられた。

はく、と言葉にならない声が漏れ出て。

一度大きく息を吸い、自分を鼓舞する。

他ならぬ、この人の願いならば叶えたい。

意を決し、私は左手でそっとお頭の頬に触れた。するとすぐに、大きな右手が覆いかぶさる。

安心していいと云ってもらえているような気がして、私は、漸くその名前を口にした。

 

「――シャンクス」

「……ん」

 

嬉しそうに、笑う。

名前呼んだだけなのに。

どうしよう。

これだけで幸せすぎて泣きそうになってしまう。

私はじわりと浮かんだ涙を見られたくなくて、咄嗟にお頭に抱き着いた。首に腕を回して、ぎゅうぎゅうと。すぐにしっかりと抱き締め返してくれる優しい温度が嬉しくて、胸がいっぱいになった。

 

好きだ。

大好きだ。

時間がかかったし、いろいろ、本ッ当にいろいろあったけれど、この人を好きだと気付けたことがこんなにも嬉しい。

涙が零れそうなのと同じくらい笑いたくなって、私はうわごとのように云った。

 

「……好きだよ」

「おれも好きだ。世界で一番愛してる」

「私の方が好きだもん」

「いーやおれの方が絶対に好きだね。負けないね」

 

ムッとして少し身体を離し、至近距離で睨み付ける。お頭も真顔で私のことを見ていた。

が、それもすぐにお互い笑ってしまって全然緊張感の欠片もない。まぁ本気で怒ってたわけじゃないんだけど。

 

ひとしきり笑ってから、私たちはごく自然にキスをした。

いつもはお頭からしたいって云うばっかりで、私からキスしたいなんて云ったことは一度もなかった。

でも今は、ああこの人とキスしたいって、思った。

触れるだけの優しいキスを何度か繰り返したあと、お頭は感慨深そうに呟いた。

 

「やっと手に入った」

「お、お待たせしました」

「おれのエンだぁ」

「……そんなに嬉しい?」

「当たり前だろ。惚れた女がおれを好きになってくれたんだぞ? これ以上嬉しいことなんてあるもんかよ」

 

そう云って本当に幸せそうにお頭は私を抱きしめた。

ああ、やっぱり私、お頭に抱きしめられるの好きだなって思う。

触れた場所全部からお頭が私を大切に思ってくれていることが伝わってきて、私の想いも全部伝わってくれたらいいのにと思う。

 

お頭は、多分わかってない。

私がどれだけお頭のことを好きか。

伝えるのは時間は本当にかかったけど、本当に私、お頭のことが好きなんだよ。

云わないけどさ、多分、もう私はお頭がいなかったら生きていけない。

もしもお頭が私より先に死んだら、追いかけちゃうだろうなって思うくらいには、もう生命線なのだ。云ったら怒られそうだからこれはホンゴウにも云えない。それこそ、死ぬまで誰にも云えない秘密の一つだ。

 

「……ねぇ、お頭。私、他の人のお嫁さんになりたくないからね」

 

バッと勢いよく身体を離したお頭が、まじまじと私を見る。何云ってんだお前って顔に書いてあるけど、この人、初めて会ったときに私に云ったこと忘れたんだろうか。

 

「お頭が最初に云ったんだよ。海賊女王になるには、海賊王の嫁になればいいって」

 

正直に云おう。

ただ島から出て自由になりたかった私が掲げた、海賊女王という荒唐無稽な夢。

これをもうどうでもいいというつもりはないけれど、それ以上に私は赤髪海賊団の一員でいたい。

もし今のタイミングで見知らぬ誰かが【ひとつなぎの大秘宝】を手に入れて海賊王になりました、なんて云われても、じゃあその人に嫁ぎに行ってきます、とは云えない。云いたくない。

今の私にとっては海賊女王よりも赤髪海賊団でお頭の傍にいることのほうが重要だ。

呆けたように口を開いて固まっていたお頭は、ややあって自分の過去の発言を思い出したらしい。思いっきり噴き出して、なんならちょっと涙目になるほど笑ってから云った。

 

「じゃあ、なるしかねぇなぁ」

 

そうよ、私に最初の夢を叶えるためには、お頭に海賊王になってもらわなくちゃ困るの。

一緒に航海を始めたこの数年で、お頭がすぐにでも海賊王になろうと思っているわけではないのはわかっていた。噂に聞く海の果てを目指すにしては同じ海域を行ったり来たりしたり、かと思えば新世界に行ってただの宝探しをしたり、『歴史の本文』を最優先で探している様子はないし、やることに一貫性がない。なんというか、海賊生活を謳歌してるような印象だ。

何かを待っているのかな、と思ったことがある。

少なくとも今のお頭には、すぐに海賊王を目指すだけの理由がないのだ。

まぁ私も別に、急いで海賊女王になりたいってわけじゃなかったのでそのあたりは深く突っ込んだことはない。というかそもそも、島から出られた時点で私の夢は半分叶っていたのだ。思った以上に海の生活は楽しくて充実していたから、まだしばらくはこのままの生活も悪くない、と思っていた。

 

整理して考えよう。

私の夢は海賊女王。

そのために海賊王の嫁になる。

だけど当初の『誰でもいいから海賊王』の嫁ではなく、あくまでお頭に海賊王になってもらう必要があるわけで。

お頭は、なってくれると云った。

それはもう、私の夢の果てだ。

私は右手の小指をお頭に差し出した。するとお頭も、同じように。しっかりと絡めた指の温かさと強固さに、私の胸はいっぱいになった。

 

「これからもよろしく、未来の海賊王」

「まかせとけ、未来の海賊女王」

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