ガンダムビルドアサシン.s外伝 ナキモヲオモウヒト 作:龍玖
惰性と願望と想像で書きました。
都会の川沿い。夜は繁華街となり、酒臭い嫌な大人も歩いているが、まだ陽が登り始めて3時間後と言った所だろう。昨日、店を閉じた後、後片付けをして部屋に戻ろうとしたが、カウンター席で少し強いショットを呑んだからか、春先にも関わずカウンター席で寝てしまった。
狭い路地特有の少し陽の刺す硝子は、店の中を早朝かと間違うようなぐらいに感じた。店の中にいる女性は、上の自宅に戻り、来ていた服を下着ごと洗濯機に入れて、朝風呂に入った。
鏡に映る少し痩せた背姿は、服を着たら男と見間違われても可笑しくはなかった。女性は風呂から上がると、体を拭き、パンツを履いて、テレビをつけ、冷蔵庫から缶ビールと茹でた鶏ササミをひとつ皿に出して、テレビの前のテーブルに皿と缶ビールを置き窓を少し開け、胡座をかいて座り込んだ。
テレビは桜の開花速報だったり、国会議員の不祥事、天気予報だけだった。女性は軽く呆れた様子でビールのタブを「カシュッ」と音を立て、空きっ腹にビールを流し込んで昨日の疲れを誤魔化していた。
昨日の客は、酒が入って回り出すと、泣き上戸になるし、若いのが2人来て、度数の強い酒をショットで対決してたり。少し面倒だった。客のことを面倒というのはあれだが、実際泣き上戸の相手も大変でタクシーを回して貰う程だったりもする。ショット対決の馬鹿はある程度飲んだ時点で喉が焼けて帰って行った。もちろんお代はしっかり払ってもらった。
女性は昨日の客を思い出してため息をつきながら窓際に缶ビールと煙草とライター置いて、外の空気と背景に浸っていた。煙草に火をつけ、ため息を交えて吸うと、変な所に入ったからか、むせた。
閑静な住宅街とは行かないが、夜より明るいからか、鳩がぽーっぽーっと鳴くし、カラスが少しうるさいなぁと感じるぐらいに鳴く。
昼下がり、一息ついてきた午後の1時。テレビをつけても対してつまららないマダム層の見るような番組だけなので、女性、いや、茂神柊華という女性の1日が始まる。
柊華はお仏壇に手を合わせ、「行ってきます」と一言告げた。
仏壇には幼い頃の柊華と柊華の祖父、健三が写っていた。茂神健三は柊華の憧れでもあり、柊華がバーテンダーになる理由の1つでもあった。それは「柊華の作った酒が飲みてぇな」その一言だった。
柊華は昨日の片付けと店内の設備点検、酒の在庫とつまみを確認していた。母親から送られてくる燻製のチーズと燻製の鮭、鱒を確認し、在庫があと2日で切れそうと思い、母親に燻製のオーダーをした。母親は温燻の方が美味しいと言うが、お酒と合わすなら冷燻がいいという持論で、冷燻にしてもらってる。氷もまだストックがあるから安心したが、明日、予約客がいたのを思い出した。
店にはホワイトリカー、ブランデー、レモンジュースとあったが、ひとつ足りない物があった。それを確認し、ほかの元も買わないとないので、買い出しに出た。
まずいつもの酒屋、ではなく別の少し変わった隣町の酒屋まで行く。柊華はそこにならあると思い、足を伸ばすことにした。
店から出て、大きな通りに出てると、ドーム会場の情報掲載版にあった「君の挑戦を待つ!」という看板があったりする。
電車に乗り、隣町の変わった酒屋に行くとガタイのいい50代半ば優しいおじちゃんが居た。
「おぉ!柊華じゃねぇか!」
「おじちゃん、久しぶり。」
「柊華がここに来るってことは、変わり種をオーダーされたか?」
「Between the sheetsをね……難しそうな訳じゃないんだけど、私も燃えちゃってね。らしくないけどやる気が出て……」
「寝酒か……」
「それなら多分あるっすよ〜」
店の会計口からひょこっと顔を出して来た不思議ちゃんは私より4歳年下の百鬼萃香。
「萃香、久しぶり。」
「萃香、会計は終わったのか!?」
「終わったから柊華姉の方にいるんすよ……」
「萃香、早速だけど、コアントローってある?出来れば安酒じゃないのを。」
「多分奥にあるから取ってくる。」
そう言って萃香は店の奥に向かった。
「そういや、柊華。うちから頼みたいことがあるんだが……」
「なんです?」
「実はな……」
酒屋のおじちゃん曰く、息子が最近ずっと「GBN」をやってて家族間の空気が良くないらしい。その息子の性根を叩き直して欲しいとの依頼だ。
「おじちゃんの息子って何歳だっけ……」
「御歳31だよ!!ったく!」
「それは私でも困っちゃうし、萃香に手出されたら困るから何とかするよ、で、依頼代は?」
「店のつまみ10点とブランデー、ホワイトリカーの2本セットだ!」
つまみ……おじちゃんのところのツマミは和風よりではなく洋風なクラッカー、クリームチーズに合う物が多いし、ホワイトリカーとブランデーはいくらあってもいい。
「乗った。依頼代は終わってからでいいよ。」
そんな話をしていると、萃香が中くらいの瓶を持ってきてくれた。
「はい、柊華姉、コアントロー、2300円。」
「ありがとう、萃香。」
私は萃香に2300きっかり渡して、レシートを頼んだ。萃香は梱包するからと行って今度はレジの方に向かった。
「そういやよ、柊華はガンプラ、あるのか?」
「一応あるよ。GBNも垢作って少しやったけどそれ以降は忙しいから離れてただけ。」
「なら、大丈夫か……悪いな……こんな事は親父の俺がやることなのによ……」
普段優しい表情のおじちゃんは険しい表情をしていた。
確かに30超えたらおじちゃん的には身も固めて欲しいのだろう。柊華も祖父の健三が生きてたら同じ様な事を言われただろう。
「柊華姉、ラッピング終わったから、はい。」
「ありがとう、萃香。少しおじちゃん元気ないから、元気分けてね。」
「柊華姉……うん。やれる範囲で……」
萃香からラッピングを終えたコアントローの瓶を貰い、柊華は家路に向かった。
家兼自店舗に着くと、コアントローの瓶をラッピングを解いて冷暗所に置いた。そして、2階の自宅に着くと、テレビ台の下にあった少し小さめの箱を開けて、確認した。そこにあったのは、柊華が学生時代にあったガンプラブームの時に買って、改造を施したガンダムフレーム、ガンダムハーモリックスがあった。そして、部屋にあったもう一つのハイスペックルーターに電源を入れ、ヘッドギアとコントローラーらしき物。そして簡易スキャナーを用意し、電源を繋いだ。ダイバーギア、ガンプラを用意し、パン1の状態になると、もう1つの別店で買った趣味用の辛めのワインをグラス一杯を飲んで、GBNにログインした。制限時間は2時間半と言った所。
久々のログインでアバターに変わって数秒、目を閉じた。周りのガヤガヤした感じ。柊華の苦手とするものだった。
「騒がしい……煩い……」
柊華は柊華ではなく、ここでは「ハナラギ」というダイバーネームにしていた。
華柊=ハナラギという自分の漢字を反転させてちょうど良い感じの読み方に変えただけである。
ハナラギはもしも”あの深い所”に飲まれていたら。そう考え、すぐさま”深い所”に向かう術を取った。
それは、実際の所。道場破りに近いものでしか無かった。だが、私の機体、ハーモリックスは大胆な改修こそしたが、前の機体から機体コードは変わっていない。ならワンチャン、やり込んでいるであろうおじちゃんの所のクソ息子を叩き直すぐらいはやれるだろう。
ハナラギは格納庫からハーモリックスを出撃させ、マップ郊外まで移動した。Zギアを左腕に装備した本機はGBNを超小規模でのDDosからの汚染が出来る。
『どうするんです?』
軽くシステム解析を始めていたハナラギに機体に搭載されていたAI、千刀星〈チトセ〉が話しかけてきた。
「最近、ターゲットが表で動いてない、となると……」
『ターンGBNですか……ですがあそこはカードキーが必要では?』
「偽装キー……っていうか偽造キー」
『随分と図々しいのですね……』
「依頼人の仕事はしっかりやるスタイルなだけ。」
そうして15分程システムに対して奮戦すると、『alternative iNo13』と表記されたカードが出てきた。
「イマジナリーカード、出来上がりっと……」
『わかりましたよ……』
「千刀星、サポートよろしくね」
DDos攻撃の範囲を少し広げて、機体1機分のスペースで入り込んだ。
「裏GBN、久しぶりね。」
ハナラギは少し里帰りしたような風貌を見せると、機体のステータスが若干上がった。
そこには、白黒のジェガンが一機。見つけることが出来た。おじちゃんの言ってた話によると「白黒のジェガン。武装は知らない」そう言って丸投げされた。白黒のジェガン。武装はオルトロス高エネルギー長射程ビーム砲。通称ガナーウィザードと無理やりつけたのだろう、スラッシュウィザードが不格好な形で装備されているのも見える。
「チトセ、あのジェガン、距離いくつ?」
『立方で267平方の場合534。直線210と見れます。』
「上等。行くよ。」
『サポートシステム、戦闘システムへ移行します。』
全身に纏っていたマントは右腕の固定兵装の零乃刃ピースメーカーに移って、背部ブースターに点火し、急速接近した。
しかし、その急速接近すらも気づかれてしまった。
スラッシュウィザードのファルクスG7ビームアックスでいなされた。
「やっぱりここは猛者揃いみたいね……」
「な、なんなんだ!お前!」
少し距離を置いた所に移動するも、オルトロスビーム砲で射撃される。
火力は1級品と言った所のあるビームだ。まともに喰らえばやられるが、まともに喰らえばの話である。
「へっ、帰ってったか!」
「なんでそう思うの?」
ハーモリックスはジェガンのはるか上の空に居た。それも無傷で。
「畜生!化け物が!」
しっかり狙わない弾に当たるわけが無かろう。
「やだなぁ……化け物呼ばわりは。貴方の方が化け物でしょ、甘美な匂いに惑わされた貴方の方が。」
そう言いながら、接近し、刀に巻き付けていた布を解き、実体剣で切り伏せた。
しかし、機体は切断されていなかった。正しく言うと、機体の中身を真っ二つにした。数秒すると、機体が真っ二つに切れていた。
「これが、ハーモリックス。これが、私なの。」
そう言いながらログアウトした。
ログアウトし、ゴーグルを外すと、時計は4時46分を指していた。入ったのが2時39分。ざっと2時間ほどで片付けた。一応酒屋のおじちゃんに連絡をし、心事ポッキリ折っといたと伝えた。
柊華はすぐさま軽くシャワーを浴びて、頭を乾かし、バーテンの服に着替え、ヘアセットを始めていた。エクステの色に悩んでいたが、今日は水色と紫。三つ編みを作りながら薄らと紫がかったジャケットと色の淡いチェック柄のチョーカーを探し、髪が整うと、チョーカーを首に巻き、ジャケットを羽織った。
メイクを施した後、1階のお店に向かって、お通しの下準備を済ますと、後はカウンターに座って、珈琲を入れていた。深めのコクと苦味の強い物をコーヒーミルで挽いて、ポットでゆっくりと豆から珈琲を抽出していた。
少しのティータイムを挟むと、1人目の客が来た。
「いらっしゃいませ、カウンターは空いてますよ。良ければ」
そう言うと、自分より若干若い男は、直ぐに、こう言った。
「ビトウィーン・ザ・シーツをお願いします」
若干若い男は、どこか世の中に疲れたようなやつれた顔をしていた。
柊華はオーダー通り、ビトウィーン・ザ・シーツを1杯作っていた。
「お待たせしました、ビトウィーン・ザ・シーツです、お通しの方は、本日。サワーチーズとスモークチーズのクラッカー、自家製鱒のカラスミ風です。付け合せの蒸しキャベツとご一緒にどうぞ。」
若い男は上司からのパワハラとモラハラでごっちゃごっちゃになっていたらしい。自分が自分でいられるうちに酒が呑みたかったらしい。家族と呑むのは気が滅入るからという理由でここ、小確幸に来たらしい。
「別のお客様が来るまで、お話は聞きますよ。辛そうですから。小さな幸せ。作りますよ。」
こうして、茂神柊華の1日。仕事が始まる。大きな幸せを手に入れても、それは誰かに大きな幸せで返せるとは限らない。それならせめて、小さな幸せを小さく分け合う。そんな気持ちの名前、小確幸、今夜も1杯どうぞ。
速いテンポでの更新は難しいですが、ゆっくりと更新していきたいと思います。
駄文製造機ですが、これから楽しんでいって貰えたら、嬉しいです