俺達は《オルクス大迷宮》に入り、そして色んな魔物達と交戦した。
俺の武装はメルドさん達が使っているタイプの剣で、宝物庫にあった武器は何か自分に合わない気がしたので、結果的に錬成師でもあるハジメに頼んでメルドさん達が使う剣の中から俺専用に貰った剣を、俺用に使いやすいようにカスタマイズしてもらったのを使うことにした。
後は念の為としてメルドさん達が使う剣と同じ工房で作られた短剣2つを貰い、基本は剣をメインにし、短剣2つを予備にしておいた。
とは言っても、短剣2つに関してはどちらも戦闘と魔物の解体の両方ができるタイプにしている。
ハジメに関しては試作したボーガンと、俺と同じタイプの短剣2つを持ち、大迷宮を進んで行った。
恵里も同じタイプの短剣2つを装備してある。
そして俺達は騎士団の力を借りているとは言え、二十階層まで降りてきた。
実はこのオルクス大迷宮で一流の冒険者か否かを分けると言われているのが二十階層なのだ。
現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしいのだが、それは百年以上前の冒険者がなした偉業であり、今では超一流で四十階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いになるらしい。
まぁ大半がチートなステータスである俺達は、楽々とこの場までやって来たのだ。
とは言っても、俺に関しては戦闘職でないハジメの護衛をしており、騎士団の近くにいることにしていた。
これは大迷宮に行くと決まった時に事前にメルドさん達騎士団の面々には非戦闘職である弟の護衛をする事を話しており、同時に天之河光輝のいる前線付近に行きたくないのも理由である。
二十階層の敵である《ロックマウント》と言う岩に擬態していた魔物の咆哮を受けて前衛にいた面々が動けなくなり、更に投げられた岩が後衛にいた部隊に投げられたのだが、その岩もロックマウントだったのだが、この投げられたロックマウントの体制がどう見てもル◯ンダイブと言える体制で、しかもその体制で香織や恵里のいる場所に突っ込んで行き、しかも鼻息なども粗く、幻聴だが『か・お・り・ちゃ〜ん!』と言う声が聞こえそうなものであった。
流石の姿に後衛部隊にいた女子達も迎撃しようとした魔法を中断する羽目になったのだが、俺はダイブ中のロックマウントに短剣を、ハジメがボーガンを放ち、少しだけダメージを与え、メルド団長があっさりとダイブしていたのは倒すのであった。
だがしかし、天之河光輝が暴走した。彼からすればどうやら気持ち悪さで青褪めているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたのだろうが、彼女達を怯えさせるなんて! と、なんとも微妙な点で怒りをあらわにする天之河に、それに呼応してか彼の聖剣が輝き出した。
そして大技を使ったのだが、すぐさまメルド団長に拳付きで怒られた。
何しろ場所的に崩落するかも知れない可能性も考えずに高い威力のある技を使用したのだから、怒られても仕方はないだろう。
因みに俺はその間に投げた短剣とハジメの使った矢を回収しておいた。
そんな中で香織が声を上げ、彼女が指差す方向に目を向けると、先程の攻撃で崩れた壁から青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。
まるでインディコライトが内包された水晶のようで、女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。
「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」
グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなもので、特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしく、このトータスにおいて求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ3に入る鉱石なのだ。
それを檜山達小悪党組の馬鹿が取りに行こうとしたのだが、まだ安全確認も何もしていないのでメルド団長からお叱りの声があったが無視し、同時にこのグランツ鉱石が恐ろしさ罠であったことが判明したのだが、その時には檜山が鉱石に手に触れてしまい、俺達がこの世界に召喚された時のようになり、メルド団長が撤退を指示するのだが、俺達は何もできずに光に飲まれてしまった。
転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。
ざっと百メートルはありそうで、天井も高く二十メートルはあるだろう。
橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。
橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものもなく真っ逆さまだ。
俺達はその巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。
それを確認したメルド団長が、険しい表情をしながら雷のような号令と共に指示を飛ばし、この場から撤退をしようとしたのだが迷宮の罠は続き、橋の両サイドに現れた赤黒い光を放つ魔法陣が現れた。
通路側の魔法陣は十メートル近くあり、階段側の魔法陣は一メートル位の大きさだが、その数がおびただしい。
小さな無数の魔法陣からは、骨格だけの体に剣を携えた魔物〘トラウムソルジャー〙が溢れるように出現した。
空洞の眼窩からは魔法陣と同じ赤黒い光が煌々と輝き目玉の様にギョロギョロと辺りを見回している。その数は、既に百体近くに上っており、尚、増え続けているようだ。
しかし、数百体のガイコツ戦士より、反対の通路側の方がヤバイと感じていた。
十メートル級の魔法陣からは体長十メートル級の四足で頭部に兜のような物を取り付けた魔物が出現したからだ。
もっとも近い既存の生物に例えるならトリケラトプスだろうか。ただし、瞳は赤黒い光を放ち、鋭い爪と牙を打ち鳴らしながら、頭部の兜から生えた角から炎を放っているという付加要素が付くが、どう考えても今の俺達のレベルで勝てる相手では無いというのが一目で分かるような相手であった。
目の前の魔物の咆哮を上げただけであったが、メルド団長も正気に戻り、矢継ぎ早に指示を飛びしていくが、この状態でも天之河の馬鹿は状況を理解していなかったのもあり、恵里の知る歴史と同じになってきていると思ってきていた。
実は今日の朝早く、まだ夜が明ける少し前の時間に俺達のいる部屋に色々と焦った様子の恵里から話があると言って入って来て、そこでハジメが檜山によって奈落に落ちる話を聞いたのだが、その際にこのベヒモスの事を聞いたのだ。
何故こんな時になったのかと言うと、恵里自身が前世とも言える過去に自分が経験したトータスでの出来事を全て覚えていないのが理由である。
俺達と出会った時はトータスでの部分で覚えている所もあったのだが、ハジメの姿が再開した時には変わっていたのを覚えていたが、ハジメに関して何があったのか覚えていなかったのだ。
序にこの世界の神であるエヒトに関しても全く覚えておらず、この迷宮に入る直前に恵里がこの時に何が起きたのかを思い出したのだ。
恵里から話を聞いてすぐさま俺とハジメはそれからすぐに香織・雫・クスハの3人を起こして俺達の部屋に呼び、恵理から聞いた話を話した。
そして香織にはハジメが奈落に落ちる時に、ハジメと一緒に奈落に堕ちて行けと言ったのだ。
「で、でも大丈夫なのかな?恵里ちゃんの知る歴史と変わるよね?」
「恵里からはハジメがお前と付き合ってるのはこのトータスからって聞いていたから、今の時点でもう歴史は変わってる。だから多分大丈夫だろうと思うし、人として越えたら行けない一線を越えた檜山の近くにいる方が危な過ぎる。雫には悪いが、俺達と再開するまで色々と耐えてくれ。再開したら、一緒に旅をしよう。約束する」
「・・・分かったわ。私としても、そんな殺人鬼とあの馬鹿とずっと一緒に行動するなんて嫌だし」
「あとクスハには黙っていて悪いが、お前の称号が最悪エヒト様の巫女でないなら、教会がお前を異端者扱いして殺される可能性が高いと判断してる。だから、檜山の野郎が恵里の知る歴史と同じ真似をしたら、俺はハジメと香織の後を追おうと思ってるんだが、その時に一緒に来てくれないか?」
「僕からもその方が良いと思う。このトータスの事を調べた限りでも、もしも文字化けしてるのがエヒト様の関係じゃないなら、どうなるか分からないからね」
俺とハジメがそう言うと、クスハも色々と迷った挙げ句、俺と一緒に行動することを決めてくれた。
「恵里には悪いが、俺ができれば大迷宮から出る前に檜山のクズ野郎に制裁を加えたいが、お前から聞いた話だけじゃその時の状況が分からない。最悪の場合はお前がメルド団長達に頼んで檜山に対して《宦官(かんがん)の刑》を行え。俺がするのもそれだからな」
流石の檜山への制裁内容に、この場にいる全員が引いていたが、この刑が存在していて行われていた当時は《死刑の次に重い罰》とされているのを知っているので、檜山のやるかも知れない行為を考えれば妥当だとこの場の全員が納得した。
「序に天之河の奴が檜山に罰を与える事が間違っているみたいな事を言ったら、その際はしっかりと周りに対して正論つけて言ってやれ。それでも反論したら、あいつは俺達に死んでほしいって事になると言ってやれ。何しろこの戦争に巻き込んだ時に、あいつは俺達の前で宣言したんだぞ?『人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!』って。この宣言通りなら、檜山は元の世界に帰っていい人間で、俺達は帰ったら駄目って事になるからな。自分の言った発言を反論理由にしたら、下手にあいつが何言っても信用を失うだけだからな」
俺がそう言うと部屋にいた全員が納得し、そして時間をずらして部屋から出ていったのだ。
そして現在、ベヒモスが咆哮を上げながら突進して来たが、騎士団が何とか防いだものの、その際の衝撃時に凄まじい衝撃波が発生し、ベヒモスの足元は粉砕され、石造りの橋が大きく揺れる程で、避難しようとしていたクラスメイト達は恐怖心で完全に我先にと言った感じになってしまった。
騎士団のアランが何とかしようとするも、完全に恐怖に飲まれたクラスメイト達をどうにもできず、その際に1人の女子生徒がトラウムソルジャーの剣で殺されそうになったが、ハジメがこの土壇場で錬成の範囲等が大きくなった為、殺されそうになった女子生徒の前にいたトラウムソルジャーの地面を隆起させ、更に複数体を纏めて橋の端へと向かうようにし、橋の外へと出したのだ。
「兄さん、この場をお願い!」
「くっ!任せろ!クスハ!!」
ハジメはこの場を乗り切るための火力を持つ天之河の所に行き、俺は棒術を使うクスハと一緒に周りのトラウムソルジャーを倒しつつ、少しでも退路を確保できるようにした。
だがしかし、ほんの少し前に橋側の様子を見ていたが、天之河の現状最強の攻撃で相手のベヒモスが無傷なのを遠目にだが確認したので、さっさとこの場から撤退しないとヤバい事は理解しまった。
そしてメルド団長が気絶した天之河を担いで運んでこちらに来たのだが、ハジメは頭を橋にめり込ませたベヒモスを相手に錬成魔法で動けなくしていた。
同時に香織の回復魔法で回復した天之川がトラウムソルジャー達を一掃し、上階へ逃げる準備をしつつ、こちら側に逃げるハジメの援護をする準備が整いつつあった。
だがしかし、基本的に遠距離系の技を持たない俺とクスハだけは素早くハジメの元に行けるようにと、上ってくるトラウムソルジャー達を蹴散らしながらハジメに攻撃魔法による援護をする為の準備の手伝いをしつつ、檜山の様子も確認していた。
同時に香織も俺達に少しだが回復系の魔法を使用し、雫も香織を手伝ってくれているおかげで、ハジメの元に行けるようにはしている様子であった。
そしてハジメがベヒモスのいる場所からこちらに向かって走って離脱すると同時にあらゆる属性の攻撃魔法が行われ、ハジメは拘束されているベヒモスから30メートル程は離れた距離になった時に、檜山が放った火球がハジメに誘導し、当てたのを俺は確認した。
同時に恵里とも顔を合わせ、俺達が見たものは間違いでは無いことを確信し、俺は恵里に後を頼むように頭を少しだけ下げ、ハジメの元にクスハを連れて走った。
ハジメはベヒモスの近くにまで飛ばされた上に、拘束から外れたベヒモスの3度目の怒りの攻撃で、これまでのダメージを受けていた橋が倒壊していくのであった。
先にベヒモスが落ちていき、その後にハジメが落ちようとしていた時に、俺とクスハよりも先に走り出した香織がハジメと共に落ちて行き、俺達は二人を助けようとして一緒に橋から落ちたようにして、先に落ちた二人を追うように倒壊していく橋から奈落へと落ちるのであった。
そして落下の途中で俺はクスハをしっかりと抱きしめ、そのまま落ちて行ったのだが、途中で光に飲まれるのであった。
橋が崩落し、更にはクラスメイトの4人が橋の崩落しに巻き込まれて落ちた事で、残った面々はメルド団長の指示で上に上がって行った。
雫は当初は呆然とした様子でいたが、同時にこの事態を引き起こした元凶に対しての怒りがあり、メルド団長の指示で皆が上に上がる際にも、無言になっていた。
流石に4人も仲間が死んだとも言える事態な上に、元凶となったのはハジメを援護する為に放った攻撃魔法なので、クラスメイトの大半は
【自分が放った魔法があんな事態を引き起こしたのでは】
と口に出さないが、大半の心の中にあるからだ。
その間に雫と恵里は合流し、雫は檜山がした行為を見たと恵里に周囲に聞こえない程度の声で話をし、恵里も同じくらいの声で返事をかえした。
そして自分達が当初いた二十階層まで戻って来ると、クラスメイト達が次々と安堵の吐息を漏らす。中には泣き出す子やへたり込む生徒もいた。天之河光輝ですら壁にもたれかかり今にも座り込んでしまいそうだ。
雫も恵里も精神的に座り込もうと思うほどであったが、ここは迷宮であり、メルド団長が声を上げ、疲れている生徒達に入口に向かって行くように指示をだした。
大半の面々が休ませてほしいという思いであったが、メルド団長が目を釣り上げて無言で封殺したので、トボトボと歩こうとしたその瞬間であった。
雫がハジメに魔法を当てた犯人である檜山に対して罰を与える事を宣告したのだ。
次に関しては檜山への制裁になります
同時に勇者も周りからヤバいダメージを受ける羽目になります