これはハジメ・香織・和真・クスハの4人がユエと出会い、5人で最下層にいるヒュドラを倒した日に地上で起きていた事件である。
ハジメ達の転落事件からだいぶ時間が経過したのだが、現在の王国の王宮内では勇者である天之河光輝に対しての不信感が高まっていた。
本来の歴史ならハジメを奈落に落とした犯人が特定されなかったのと、ハジメ自身の天職が錬成師であるのもあり、落ちたハジメが悪いとした自業自得の事案のようにし、更に無能者であるハジメにも優しいとした評価を受けていたが、この世界ではそうでは無い。
ハジメを奈落に落とした犯人がこの世界を救うために呼ばれた存在として、この世界の神であるエヒト様によって遣わされて召喚された面々の一人である檜山大介であり、しかもハジメを落とした理由も、治癒師である白崎香織を自分の女として欲しかったという身勝手過ぎる理由であった。
恵里が後々を考えて檜山に対しての箝口令と嘘の報告をするようにメルド団長やイシュタルにも話をしていたのであるが、実は檜山が受けた罰をバラしたのは勇者である天之河光輝本人なのだ。
天之川光輝本人の正義感で、恵里がした檜山に対して行った宦官の刑はやり過ぎたとし、王宮内で知らない人がいないと言える程の大きな声でほぼ毎日のように恵里を糾弾し続けた。
こうなると流石に国としても真偽を調べる必要があるとなり、今回の事件における調査が開始されたのだ。
調査期間の間、エヒト様によって呼ばれたクラスメイトの面々の大部分は、死ぬかも知れないと言う恐怖を理解してして部屋に引きこもる事態となり、戦闘訓練参加もまばらになったりした。
そして調査結果が王宮内で報告されたのは、勇者パーティーがオルクス大迷宮に再度進み、ベヒモスを撃退して凱旋する前日になった。
調査結果で言えば、恵里と雫の行いはやり過ぎとも言えるが、後々での同じ同郷の女性達への配慮等や、事件の主犯である檜山の主張等を吟味しても、檜山に対して行った宦官の刑は過剰ではなく正当性が高いとなり、逆にこれを非難した勇者の天之川光輝本人に対しての不信感が高まってしまう結果となったのだ。
更にその檜山が謝罪をしたから許してほしいとしたのが勇者である天之河であると言うのは、国の重鎮にも知られてしまった。
国の人間達からしても檜山の犯した事案に関しては看破できず、しかもそれを庇った勇者の言動を知った面々は呆れを通り越しており、勇者である天之河に対しては本当に魔人族からこの国を救えるのかと疑問視する人達も出てきたのだ。
こうなると頭が痛いのは教王のイシュタルと帰って来て話を聞かされた恵里と雫で、元凶である天之河本人は自分は悪い事をしたという認識が無いので、流石に恵里と雫ですら頭を抱えてしまった程である。
「ほんと本気で死んでくれないかな、あのバカ!」
「こっちも同じよ。本来なら檜山は日本の法律でも殺人罪が適用されて、オマケに殺人の理由を考えたら身勝手すぎるから、最悪の場合死刑宣告されてもおかしく無いのよ?それを命をとらないであの刑にしたし、トータスの法は知らないけど、檜山のやった事を考えたら即座に死刑案件は確実なのに、何考えてるのよ、あいつは」
「全くだよ。それにだよ、日本の法律でも普通なら僕達のやった事は相手への傷害罪やらの罪で非難されるだろうけど、あんな状況下で仲間を殺した相手と一緒にいたいだなんて思うわけ無いし、悪かったら僕等が性的被害を受ける可能性が高過ぎるんだし、それ等を考えたら十分酌量の余地があるとなるから、罰則とかは少ない系列か、良くて無罪放免なんだけどね」
2人は天之河光輝との付き合いを考えるようになってから、少しだが日本の法律を勉強したからだ。
これは和真とハジメの両親が天之河光輝が原因で息子のハジメが死ぬかも知れないとなった事件の後に、天之河への制裁の1つとして十分に調べて裁判ものの漫画やゲームを出し、その際に和真・恵里・香織・雫・クスハも資料等や本物の弁護士からも話を聞いて調べる為に手伝ったのもあり、この関係で2人も少しだが法律に関しては知っているのだ。
因みにこの裁判の漫画やゲーム内では、天之河光輝のような自分勝手な罪人が無実を訴えるのだが、最終的には死刑にされて終わるようになっている。
2人からするとベヒモスを倒して大迷宮から帰って来たその日に、天之河がおこした案件をどうしようかと言う話を教王自らが話をして聞かされ、頭が痛いとしか言いようが無いのだ。
愛子先生に関しては一部から《豊穣の女神》と言われているらしいが、天之河が原因で愛子先生ですら睨まれているらしいとまで言われてしまった。
「(´Д`)ハァ…。あの馬鹿の後始末は私が何とかするわ。これ以上の悪化は何とか避けないとね。でないと愛子先生が哀れすぎるわ」
「ゴメン、悪いけどお願い。僕も手伝うけど、あの馬鹿はこのトータスでの関係悪化が何を起こすのか全く考えてないからね。完全に言って悪いけど、あいつには地球でも、このトータスでも、もう居場所は無いだろうしね。逆にあの性格で居場所があるのかと思うけどね」
流石に呆れるしか無い状況下であり、後で一部の面々と話し合って何とかしようとなったが、王国内での自分達の評価がこれからどうなるのかと思うと、2人は憂鬱になるのであった。
そして3日後に帝国からの使者がやって来た。
この間に天之河光輝本人に対して王国内でも近づこうとする者は完全にいなくなり、王族である十歳のランデル王子殿下ですら天之河に近づかず、雫に早く香織を探してほしいと頼むほどで、リリアーナ王女も天之河との接触を完全禁止になっていた。
リリアーナ王女も香織がいた時から天之河光輝の案件を聞いており、逆に現状の雫を慰めたりする状態になっていた。
帝国の使者が5人ほど現れ、勇者である天之河と話をしていたが、周りのメイド等ですら召喚された時はイケメンと思った天之河光輝に対しても当初はファンクラブのようなものもあったが、天之河光輝の犯罪者を擁護した言動と態度で完全にメイド達ですらも天之河を見限っており、王国内での天之河光輝の信用や信頼はほぼ無くなっていた。
それでも天之河光輝だけが勇者の天職を保有していると言うだけで、何とかいけるのでは?みたいな程度でしかない状態になっていた。
因みに天之河光輝以外のクラスメイトの面々も天之河への信用も信頼もほぼ無くなっており、愛子先生がいるおかげでクラスメイトの面々も愛子先生の元が良いような感じになっていた。
更に雫や恵里等がクラスメイトとも話をし、天之河光輝への協力に関しても、今は奈落に落ちた面々の救出を主にしようと話をし、天之河はそのためだけに利用するだけにしようと言う感じになっていた。
そして使者の1人が天之河と戦いとなったが、その戦っていた使者が変装用の魔道具を使っていたのだが、その人物こそが帝国の皇帝陛下である《ガハルド・D・ヘルシャー》であったのだ。
王国は帝国との協力関係を結ぶ為の言質等をとることができたのであった。
そしてガハルドは自身に与えられた部屋で、部下と話をしていた。
「ありゃ、完全にダメだな。ただの子供だ。理想とか正義とかそういう類のものを何の疑いもなく信じている口だ。なまじ実力とカリスマがあるからタチが悪い。自分の理想で周りを殺すタイプで、事前情報通りのクズ野郎だ。だが《神の使徒》である以上蔑ろにはできねぇ。取り敢えず合わせて上手くやるしかねぇだろう」
「・・・全く、最悪ですね。事前情報で同じ神の使徒の中にいた悪党がいて、その悪党を勇者が庇ったと聞いて、何と言う誤情報かと思いましたが・・・」
「まぁ今は教王達の支持とかもあるが、魔人共との戦争が本格化したら変わるかもな。見るとしてもそれからだろうよ。今は小僧どもに巻き込まれないよう上手く立ち回ることが重要だ。教皇には気をつけろ」
「御意」
「(まぁあの勇者の小僧がこれからどうなるかだが、あのタイプは理想で周りを殺してからが始まりかも知れないな)」
そして翌日は帰るとし、早朝訓練で雫を見たガハルドは、雫を自身の嫁にならないかと誘ってきた。
雫は丁寧に断ったのであるが、ガハルドは不敵に笑って立ち去ったのだが、雫としてはこれ以上の面倒事を持ち込まないで欲しいと思うのであった。
次も外伝の話にします