「まったく不思議なことだ」
「このリットリオに誓いの指輪を差し出す人なんているはずがないと思いきや」
「こうして貴方が目の前に現れて」
「そして私の心まで奪ったとは...」
「...教えてくれ」
「貴方はどうやって私を攻略したのだ?」
俺には嫁がいる。
....OK、どこからともなくシャドーの風切り音がするが気にせず話を続ける。一応、嫁について語る前に俺自身についてのプロフィールも公開する。
アズールレーンに務める指揮官、以上だ。
....うるっせえ!野郎の経歴なんて興味ねえだろお前ら!あと言えんのは家が軍人一家で立派な重桜男児ってだけだ!
そんなことよりも嫁についてだ、嫁の名前は「リットリオ」だ。
知ってる奴も多いかも知れんが、そう地中海有数の大国、サディア帝国所属のヴィットリオ・ヴェネト級二番艦の「リットリオ」だ。
正直、俺でも、俺が付き合うには似合いの人間ではないと思ってる。
彼女を一言で表すならキザ、いや嫌味は一切ない。彼女の対応は紳士的だし、その言葉の端々に仲間への気遣いを感じる。
彼女自身では無いらしいが、サディア本国で艦隊運営に携わっている彼女も居るからか、事務仕事に抜かりはなく、儀礼式典おいての礼儀作法は完璧だ。
そしてなにより彼女は自身と自身を生んだ祖国を愛し、誇りに思って行動している。
その姿は自分にとって、とても眩しい。
ある日、なにが狂ったか自分は昂った勢いのまま告白。そこで我に帰り、ヤバい振られると思ったが何故か彼女は了承。
あれよあれよと言う間に『ケッコン』まで行き着いたのだった。
....いいじゃねえか爆発しろって?いいや、相談はここからだ。
....彼女の態度が変わらないのだ。
いや、そうだな、変わったこともあった。
まず、秘書がリットリオ固定になった。
前までは各寮、ユニオン、ロイヤル、鉄血、重桜、サディアの代表者の持ち回りだったが、今はこの基地唯一のケッコン艦ということもあって彼女がいつも秘書の仕事をしてくれている。
いやー、いいぞ。事務作業が楽だ。
それにいつもあの魅力的なふともm...、いや!なんでもない。ただの失言だ。
しかし、逆に言えば俺と彼女の関係にそれ以上の変化はない。
近隣の指揮官から聞く嫁の惚気話のような事も、
同期から聞く見せかけ苦労の惚気話のような事も起こっていない。
....いかん、同僚に殺意が。
一応、婚約指輪を付けてくれてはいるが、式から3日も経とうというのに普段の様子は一切変わらない。
やはり....
(やはり、ケッコンによる性能向上。それこそが本当の目的だったのか....?)
執務室で事務作業を手伝ってくれている彼女、リットリオさんを眺めながらそう考えに至る。実務を開始してから一時間、昼というには早すぎる、勤務に飽き...慣れてきた時間帯だ。
そんな自分に対して彼女はただ黙々と仕事をこなしている。普段の彼女とのギャップも相まって何度眺めても新鮮に思える。
「指揮官、このリットリオに見惚れる気持ちはわかるが。ほら、手元が動いてないぞ」
そう、ふと目があった。
「ああ、そうですね、すみません」
「ま、このリットリオから溢れる魅力を前にいつも通り仕事を行うというのは、無理な話かもしれんな」
「それは確かに、無理なことですね」
「......指揮官、貴方という人はどこまで本気なのか分からなくなる時があるな」
失敬な、本気だぞ。
と、彼女の調子は通常通り。ならばやはりケッコンによる性能向上が目的だったと考えるべきか。
彼女の行動原理は自身とサディアの威光を広めることだろう。艦船らしくそれ行うならば武威....力を示すこと、
そのための性能向上、そのための『ケッコン』となるだろう。しかし、それは
(納得は出来るが、男として見られてないと考えると、とても惨めだな...)
「ところで指揮官、今日の午後の予定は何かあるか?」
「あー、そうですね今日中にやる事として、日々(デイリー)の任務への指示は終わりましたから、.
あとは要請されてた重桜寮の修繕は....」
「それはこれだな、重桜から来てる工兵部隊への仕様書を纏めておいたぞ、確認してくれ」
「....うん、これで大丈夫です。となると次は前々から要望があった鉄血向けのビールの取り寄せか....、まず酒保委員に話をつけて」
「それなら昨日うちに酒保委員、鉄血本国、酒造会社にも話を通してとおいた。後は指揮官が確認するだけだ」
「........昨日の明石の発明品で起こったと思われる騒ぎについては」
「報告書に纏めておいた。これも確認してくれ」
報告、俺の嫁が有能で立つ瀬がない。
「これを確認し終わったら今日は出撃もありませんし、午後の仕事はありませんね。ははは...、まるで貴族様にでもなった感じです」
「ならばちょうどいい!午後からロイヤルのシニョリーナたちを招いてお茶会を開くんだ。指揮官も参加しないか?」
うげ、お茶会か....。
「急に参加するなんて他の参加者に迷惑をかけませんか?」
「ハハハ、指揮官、気遣ってくれるのはありがたいがこのリットリオには急な来客も想定内だ。もしこの基地にアズールレーンの重鎮達が来ても十二分に満足できるお茶会にしてみせよう」
クソっ、頼もしすぎる...。
しかし、これではお茶会を断る理由がなくなってしまったではないか。
「....じゃあ、お言葉に甘えて参加しようかな。お茶会は久しぶりだから不作法なのは許してね」
「大丈夫だ指揮官、私が主催するお茶会で貴方に恥はかかせないよ」
こうして、俺はお茶会に参加することになった。
この基地ではサディア本国とほど近いこともあって、サディア出身の艦船が多い、そのためか他の基地と比べてサディア寮は大きく設計されている。
大理石をふんだんに使用した建物に、どこかで見たことある彫像のレプリカ、ロイヤルに負けじと整えられたバラ園、そして何処からともなく建てられた大浴場と湯くみ場、さらにテルマエとなっている。
....まあ、ここまで語ったが流石に寮の規模では四大国に負けているのはご愛嬌だ。
そんなサディア寮の庭園にてお茶会は開かれていた。
この庭園にはバラ園がありそれぞれが四角に整えられた生垣によって区画分けされている。そんな生垣を辿っていくと円形の噴水広場にたどり着く、広場には大きな日除けと純白のテーブルクロスが敷かれたテーブルが設置され、その上には食器や茶菓子といったお茶会の準備が既に用意されていた。
彼女、リットリオに案内されている俺はあることを心のなかで唱えていた。
(お菓子は一番下の段から取る。お菓子は一番下の段から取る。お菓子は一番下から取る。お菓子は下の....)
いや、言い訳をさせて欲しい。
確かに自分は重桜でも有数の軍人家系出身だ、しかし自分はお茶会などの高貴な方々の社交文化は勉強してこなかった。
むしろこういうのが一番勉強させられて得意なのは俺の兄貴だった。
家の跡取りとして期待されていた兄貴は早くからお茶会やら舞踏会に参加していて礼儀作法も完璧だった。
次男の俺はそんななことはせず。将来は後方士官、もしくは適当な公務員になれればいいかなと考えていたのだ。
しかしまぁ、なんやかんやで指揮官をやっている。
当然ながら様々な晩餐会やら祝賀会やらパーティに参加してきたが、未だに煌びやかな場には慣れない。
というわけで余程重要な会合でなければ軍務の多忙を理由に多くを断っていた。
だが、慣れるというのは場数を踏まなければ良くなるはずもなく、社交に対する苦手意識を放置した結果生まれたのが....
(カップの取っ手は添えるように持ち、テーブルが高い場合はカップの皿は持たない、あとなんだっけ....お菓子は一番上の段から取って....いや、ちげぇ下の段から取るんだよ。)
この礼儀作法過剰ビビりモンスターである。
「お待たせしたね、シニョリーナたち。指揮官が珍しく今回は参加できそうでね。お招きしたのにお待たせすることになって申し訳ない」
「まあ、そんなに畏まらなくても大丈夫ですよリットリオ。私たちも指揮官さまが参加なさるのを楽しみにしてましたわ」
そう返事をしたのはロイヤルの空母、イラストリアスさんだ。
彼女はこの基地におけるロイヤルのまとめ役であり、基地設立時から所属する艦船のひとりでもある。
当然、彼女とも面識があり、まだ艦船が少なく陣営ごとに艦隊がまだ組めなかった頃には貴重な大型空母として海域の制空権確保に尽力してもらっていた。
彼女の特徴として、やはりその艤装甲板に施された装甲が挙げられる。彼女、いやイラストリアス級は、その可憐な見た目とは裏腹な頑強さによって、セイレーンとの連続戦闘に晒されても耐え抜き航空優勢を保つことができ、常に数の面でセイレーンに劣る艦隊において頼れる存在だ。
ちなみに装甲のせいか何がとは言わないが、すげえでかい。正直重心が心配になるほどのものを有しているのだ。
「イラストリアス姉さま、慈悲の心は美徳だと思いますが.... 彼女に対しては少し苦言をこぼすぐらいがちょうどいいですわ。指揮官の前では特に」
そしてイラストリアスさんの隣で座っているのは、イラストリアス級三番艦、つまり彼女にとって妹であるフォーミダブルさんだ。
黒と白を基調としたゴスロリ衣装の彼女は、紅茶を嗜む姿と相まってロイヤル淑女らしい女性と一見思えるが、姉のイラストリアスさんと比べてすこしどこか抜けている、それが親しみやすさに繋がっていて良いと思うのだが、姉であるイラストリアスさんを目標にしている節がある彼女にとってそれは恥であるのだろう。指摘するのはヤボだ。
イラストリアス級ということもあって姉譲りの頑強さも持ち合わせているが、性格もあってかどちらかといえば「攻」が得意なタイプであり、攻撃機を次々と発艦させる姿に油断なく、その気迫は艦隊後方で指揮を行っている自分の所へも空気を通して伝わるほどだ。そんな彼女もイラストリアスさんと同じように艦隊にとって頼りになる存在だ。
「フフ、痛い所を突かれてしまったわね。その貴女の時に鋭い性格もまた薔薇の棘のように魅力の一つだと私は思っているよ、フォーミダブル?」
「ほら」
「まあ」
うん!リットリオさん平常運転!むしろ安心感すら感じる!!
「それならばまず謝るべきは自分です、元はといえば参加したいと無理を言ったのですから」
「...そう指揮官が謝ってしまいますと、わたくしが悪者になってしまいますわ」
「え、いや、ごめん?」
そういうつもりはなかったのだが....、ものすごく余計なことをした気がする。
「まあまあ、このままではせっかく沸かしたお湯も冷めてしまう。とりあえず飲み物の希望を聞いてもいいかな?」
リットリオの提案をイラストリアスさんは、ええ、と短く賛同を返した。もちろん自分も同じく頷いた。それを見たフォーミダブルさんは、少し溜息をついたがちいさく頷いてくれた。
えっとその、本当にごめんね?
「とりあえずエスプレッソと紅茶を用意したわ。紅茶については不安があるかもしれないが、本場であるロイヤルのお嬢さま方に満足いただける腕前だから安心してくれよ、指揮官?」
お茶会というからには紅茶しかないものかと思っていたが、リットリオのお茶会は選択式らしい。エスプレッソ....?たぶん珈琲のことだろうか?しかしどんなものか想像できない、紅茶のときと作法が異なるのか?聞くことも考えたが、もう二人は紅茶に決めたようだ、予想はしていたがエスプレッソを選んでいない。自分だけが注文を決めていない、この自分が場を待たせている感覚が苦しい、紅茶にしようか、リットリオも安心してくれと言ってくれていたからたぶん大丈夫だろう。
紅茶でお願いします、そう口から出た。
「む...そうか、わかった紅茶だな。...このリットリオが万国に通用する腕前であることを魅せようじゃないか!」
そう言ったのちリットリオは少し離れた臨時の台所に歩いていく。
イラストリアスさんとフォーミダブルさんの二人は視線を交わし、そしてこっちをみた。二人の表情はどちらも異なるが、あちゃー、と書いてある気がした。
な、なにかやってしまったか?まったく身に覚えがないのがいっそう不安感を掻き立てる。このお茶会でさらにやらかさないか不安になってきた...。
お茶会は滞りなく進んでいった。違いがわからず知識も少ない男なので申し訳ないが、リットリオの淹れてくれた紅茶は香りが良かったし、その後出てきた檸檬の香りがするクッキー?との食い合わせもとても良かった。
その旨をリットリオにも伝えたが、良かった美味かっただけで、如何せん自分の語彙力のなさが恥ずかしくなってくる。
このままだと会話が弾むかも心配になるが....
「....重桜でも後継戦闘機の開発を急いでいるみたいですが、零戦の後継ということもあってなかなか進んでいないようですね。もちろん、なにを行うか、どのような環境で使うか、という条件で最適な航空機は変わりますが、こと制空任務で評価を受けたF6Fを代表とした戦闘機ではユニオンに一日の長があるのは間違いないでしょう」
「確かに太平洋での空戦レポートを読んでいると、ユニオンの航空技術の高さを実感してしまいますね。ここでは私たちロイヤルの艦載機が優先的に配備されていますが、艦隊の対応能力を増やすためにももっと多くの国の装備を幅広く選択すべきかもしれませんわ」
「私からすれば自前の艦載機を作り比較対象になれている重桜、ロイヤル両国が羨ましい限りだ。サディアも世界で輝く技術先進国という自負はあるが....、軍内での空母軽視は駄目ね、彼らは将来ツケを払うことになるよ。恥ずかしい話だ」
「そう悲観しないでください、世界で最初に航空戦力について理論を纏めたのもサディア帝国じゃないですか。航空機研究の蓄積もありますし、なにかきっかけがあれば変われますよ」
「....そうだな、ありがとう指揮官」
_____俺メチャ喋れてる。
自分でも驚くぐらい喋れている、いや話題が艦載機だからか。半分ぐらい仕事の話ということもあるがやはり戦闘機に憧れない男子はいない、帰省の度に集めていた話の種が役に立つ形となった。
....しかし、
「...お菓子がなくなってしまったわね、新しいものを用意するから少し待ってくれ?シニョリーナ?」
そう言って離れる彼女の後ろ姿が、いつもより元気がなさそうに見えるのは気のせいだろうか。
自分がこの場で上手く話せている、だからこそ気づけたかもしれないが相対的にリットリオのテンションが低い。いつもならばサディアの恥話をしても最後には、このリットリオがいるから大丈夫と笑い飛ばし、
さっきの会話も、
『なに?もう茶菓子がなくなってしまったのか? ふむ、時に美味しすぎるというのは罪であるかもしれないな? それも帝国の誇る甘味であるなら仕方ないな』
と歯の浮いた台詞を言ってそうなものだが、あの唯我独尊癖がない。そのせいか、いつもの太陽のような雰囲気がなくなっているような、気がする。
「すみません、フォーミダブルさん。リットリオさんの元気がないようなんですが....? なにか知ってますか?」
これ以上自分で考えても埒が明かないだろう。リットリオのお茶会によく出ているフォーミダブルさんなら何かわかるかもしれない。
「....指揮官、流石に自身の失態に気づかないのは、一族の恥だとおもいますわ」
「
まさか自分の不作法は実家に響くほどなのか、大袈裟に言ってるだけと信じたいが正直その判別は自分にはわからない、ひょっとすると実家どころか重桜まで迷惑かけるレベルの事をしてしまったのかもしれない、そうなったらもうこの基地には...
「フォーミダブルそれは大袈裟よ、指揮官様も気にしない~」
「そ、そうですか」
「そう、 それにあれはリットリオ自身にも非がありますから」
....本当だろうか? あのリットリオが作法の間違いをするとは思えないが。
「彼女が落ち込んでいる原因は、指揮官様が紅茶を選んだことにあります」
「....? この紅茶が?普通に美味しいけれど?」
「いや、紅茶自体には問題ないのですが。指揮官様は紅茶を頼むときもう一つ飲み物を聞かれていたのを覚えていますか?」
「....確か、エスプレッソでしたね。珈琲の一種....のはずですよね?」
「そうですね、詳しくは省きますがコーヒー豆の成分を抽出することで通常よりも深い味わいが特徴ですね」
「なるほど....しかし、それが何故原因に?」
「....重要なのがエスプレッソはサディア発祥の飲み物、そして今もサディアの人に愛飲されています。ある意味、私たちロイヤルにとっての紅茶のような存在、祖国の誇りなのかもしれません。だからこそ多分、
リットリオは指揮官様にエスプレッソを選んで欲しかったのだと思います」
しばらくしてリットリオが茶菓子を用意して帰ってきた。そこまで時間が経っていないからか、あの元気が戻った様子はない。しかし、遠くから見る彼女は足取りや表情におかしな所はなく、平静で覆い隠そうとしているようだった。
今更になって気づいたが俺はリットリオの事をよく知らない。
サディア帝国に所属しているのは知ってる。雄大な戦艦であることも知っている。その主砲と弾幕にへんな癖があるのも知っている。
でもそれは、’’指揮官’’ として知っていることだ。
’’俺’’ としてもっと ’’彼女’’ の事を知ってることはなんだ?
絶妙に気に触るナルシストな台詞? あまり派手でない書類仕事も丁寧なこと? 新しい価値観を受け入れることができる点? 共に戦う仲間には意外と気遣いができること?
そして、自分とは違って心の底から祖国のことを愛していること。
それ以外に知ってることは?
好きな食べ物は?
好きな音楽は?
好きな本は?
好きな景色は?
そしてそれらの反対は?
思えば彼女が一番愛しているサディア帝国の文化のことも詳しくない。指揮官の仕事として滞在したことはあるのに、任務のことばかりで知ろうとしていなかった。
「待たせたね、シニョリーナたち。今度は新しくアマレッティを用意したよ」
現に俺はあの焼き目がついたドーム状の茶菓子のことすら知らないのだ。
だからこそ、
「....すみません」
俺は自分のティーカップを一気に傾けて、まだ半分以上残っていた紅茶を飲み干した。
「....少し喉が渇いてしまいまして、リットリオさん、お代わりをお願いできますか? 次は、さっき言っていた、エスプレッソをお願いします」
もっと彼女、リットリオのこと知りたいと思ったんだ。
「! ああ!わかった、すぐに沸かしなおそう!」
________と決意するまでは良かったのだが....
ボゴオオオオオオオオオオン!!
「....は?」
「まさかっ!?」
「....まあ」
「....はあ」
それは爆発音だったのだろう、サディア寮から見えるほど大きな黒煙が学園の研究棟の辺りから立ち上がっているのが確認できる。
....正直、心当たりがあり過ぎる。明石だろうか、ダヴィンチだろうかそれとも。どちらにせよ自分で確認しなければいけないだろう。
ええい、気落ちするな!!自分!!
「すみません皆さん、お茶会の途中ですが私は事故の確認のため離席します」
「む...そうか、指揮官、護衛は?」
「いや、いつもの事故でしょう。リットリオさんは私の代わりにお二人とお茶会を楽しんでください」
「...そうだな、わかった」
事故は何故、こうも重要な時に起こるのだろうか、はぁ。
「....リットリオさん、今日はありがとうございました。しかし今後のためにもお茶会について知りたいのですが....明日の休憩時間にでも、エスプレッソを、淹れてくれませんか?」
「...わかった、明日、指揮官のためにこのリットリオが、今日よりも美味しいエスプレッソを約束してあげようじゃないか!」
ああ、その返事だけで明日がもの凄く待ちきれなくなってしまった。
お仕事頑張ろ!!!
指揮官が離れていく。この数時間のために丸一日、問題解決に費やしたのだが、こうもあっけなく崩れ去るとは。ままならないものだ。
それでも、指揮官がお茶会に興味を持ってくれただけでも良しと思うべきか。
「珍しく指揮官がお茶会に参加くださったのに、残念でしたわねリットリオ?」
「仕事が早いだろう? この’’リットリオの’’指揮官は」
この基地は他の基地に比べて陣営の数が多い、帝国と四大陣営。通常であればどこか一つの陣営が基地を独占、もしくはそれに近い寡占状態になるものだが.... ひとえにサディア帝国のアズールレーン内での力不足が原因だ。
今のアズールレーンはセイレーンの撃退が進むごとにその結束が緩みつつある。人類滅亡の危機から遠ざかり、余裕が生まれてしまえば仕方のないことだが、それぞれの陣営は個々の利益を追求し始めている。
そんななか、サディア帝国主導で建てられたこの基地はロイヤルのマルタ基地とアレクサンドリア基地に挟まれるように存在している。
当然、四大陣営の介入を受け、このような状況となってしまった。
どんな人間が纏めても陣営ごとの派閥争いで基地が機能不全になるのは明白だった。
「....ふふふ、お熱いですわ~」
「当然だとも! 指揮官はこのリットリオに並ぶ才覚を持った人間であり生涯の伴侶なのだからな! ハッハッハ!」
「ま、まあ」
しかし指揮官はそれを成し遂げてしまった。遠く離れた重桜出身でありながら、各陣営の不信を確かな戦果で打ち消し、基地を作戦行動可能に。それでいて驕れず、実直な性格で。セイレーンから『我らの海』を解放するために戦ってくれて、
そして私を選んでくれた指揮官。
だからこそ、
「彼は私の、私だけの太陽なのだから」
続く
イラストリアス「今日は結局、リットリオの惚気話に付き合わされましたわ....」
フォーミダブル「まったく、イラストリアス姉さままで巻き込むなんて迷惑な人ですわ」
イラストリアス「ところでフォーミダブル、今日は随分とげとげしていましたね?」
フォーミダブル「...指揮官を招くと聞いた時から、どう転んでもイヤな予感がしましたので」
イラストリアス「そうですか、...てっきり私は指揮官様が盗られて嫉妬しているのかと♪」
フォーミダブル「...............」
イラストリアス「....え、そうなの? いや、だめですよ!不貞は!相手は新婚ですよ!修羅場良くない!NTRダメ!!」
重い娘「.........」