「今、戻った。」
暫く皆城公蔵から『アーカディアン計画』の概要を聞いた真壁史彦はようやく帰路についていた。
「父さん。おかえり」
「ただいま一騎。母さんいるか?」
「うん。母さん…………」
息子の『真壁一騎(まかべかずき)』が母を呼びに駆ける。
「……………」
「おかえりなさい。お疲れ様」
「ただいま」
「どうしたの?そんな険しい顔して」
「そんな顔してるか?」
「…………一騎。少しだけお父さんとお母さんの2人きりにさせてくれる?」
「うん。わかった」
一騎は自分の部屋へと走って行く。
「それでどうしたのよ?史彦」
「すまん紅音…………すまん」
「ちょっと!?いきなりどうしたのよ!?」
突然涙を流す史彦に妻の『真壁紅音(まかべあかね)』は動揺した。
「落ち着いた?」
お茶を差し出す紅音。史彦は礼をすると1杯啜る。
「すまない。ありがとう」
「『アーカディアン計画』ね……………」
「君の夢を守ると誓ったのに…………すまない」
「……………5年」
「5年?」
「一騎を生んで5年。最前線で戦う衛士でもある私が我が子を育てる事に5年間専念させて貰えた。それってとても恵まれた事だと思うの」
「…………」
「一騎も1日中付ききっきりでなきゃいけない年頃は過ぎたし。私は私の夢…………いや私の我が儘を受け入れてくれたこの国に感謝してるし、また恩を返せるのなら返したい」
「我が儘って…………息子を育てる事のどこが我が儘なんだ!?」
「ありがとう史彦。いつも私の我が儘に真剣に向き合ってくれて」
「!?」
「家の役割に縛られ、求められた役割に縛られ、自分の思考を持つ事を諦めていた私を。貴方は受け止め、私が成りたいと思う私を見ようといつも向き合ってくれた」
「…………」
「だから私は夢を少し叶えられたし、今の私を認めて挙げられる。貴方がいるから」
「紅音…………」
紅音が史彦をそっと包み込む。
「1人で背負い込まないで史彦。また一緒に戦いましょ?成長した一騎が戦いと無縁の世界にいられるように」
「あぁ…………そうだな」
「…………さぁ、一騎を待たせてるわ。夕飯にしましょ?」
「わかった」
「一騎。ご飯にしましょ?用意するの手伝って」
「わかった。今日はなに?」
「今日はね。…………カレーよ」
「この前もカレーだったょ〜」
「あら?そうだったかしら」
「まぁいいや、母さんのカレー美味しいし」
「ありがと。一騎」
「そういうのいいから!?」
「あらあら、ついこの前まで嬉しそうにしてたのに」
「!?」
「フフフ」
最愛の妻と息子の仲睦まじいやりとりをじっと眺める真壁史彦。
この2人を必ず守ると決意を新たに『アーカディアン計画』と向き合った。