『アーカディアン計画』が始動して暫くし、主要メンバーの顔合わせがあると招待された真壁史彦は真壁紅音、溝口恭介と待ち合わせをしていた。
「紅音ちゃん!久しぶり〜」
「相変わらずね溝口君。私上官なんだけど」
「失礼致しました。真壁紅音少佐殿!」
「全く。調子良いんだから」
にこやかな紅音に安堵する史彦。
「息子さんは元気?」
「えぇ元気よ、今度遊びに来てよ。ねっ史彦?」
「あぁ」
「なんだ〜相変わらず家だと尻に敷かれてるのか〜?」
「ッッ!!うるさい!さあ待ち合わせの時間だ。行くぞ」
目的の場所は広大な屋敷であった。
「これまた大層な建物なこった〜」
(…………この造り。この計画には武家も関わっているのか?)
門番に自分達の照会をさせる。
「貴女は!?」
「……………」
「…………御三方確認が取れました。どうぞこちらへ」
(……………紅音を知っている。やはりこの屋敷の所有者は……………)
「紅音…………」
「大丈夫。ここは他家の所有地よ」
「そうか」
「なんだ?なにかあったか?」
「なにもないわ。さぁ行きましょ」
案内された屋敷の部屋の中では既に幾人かが集まり談笑していた。
「やぁ真壁君。溝口君よく来てくれた」
「どうも」
「御無沙汰してます」
「…………そちらの女性がもしや」
「えぇ、真壁紅音………少佐です」
「初めまして皆城さん。日本帝国本土防衛軍第11戦術機大隊所属の真壁紅音少佐です。以後お見知り置きを」
「『アーカディアン計画』責任者の皆城公蔵です。ご無理を言って本計画に参加して頂きありがとう御座います。」
「いえ、私も再びこの国の為に役に立てる機会を頂き感謝しています」
「元日本帝国大陸派遣軍のエリートのお話しを伺いたいですがそれはまたの機会にとして今回の集まりは『アーカディアン計画』に現時点で携わる事が確定している主要メンバーの懇親会となります。是非親睦を深めてください」
「わかりました。」
「それで………早速ですがこちらが妻の『皆城鞘(みなしろさや)』です。彼女も研究員でして私の助手をしてくれています」
皆城鞘のお辞儀にお辞儀で返す3人。
「確か紅音さんは、お子さんを生まれて退役されたと聞きました」
「えっ、えぇ………」
「実はうちにも5歳になる息子と4歳の娘がいるんです。」
「あら………うちと同学年ですわ」
「おぉ!そうですか!!」
「鞘さん?堅苦しい話しはこっちに任せて、子育てについて聞かせてください!」
目を輝かせて鞘を見る紅音。鞘が目配せすると公蔵は小さく頷き、2人はその場を離れた。
「君が真壁史彦君かね」
紅音が鞘と離れると1人の男が話しかけてきた。
「貴方は、日野………洋治さん」
「マジかよ!?富嶽重工の戦術機開発技師の主要メンバーで、噂じゃ帝国斯衛軍ともパイプを持ってるって言うエリートじゃないか!?」
その男を見て溝口恭介が興奮する。
「ハハハ。そんな大した男では無いさただの戦術機開発のエンジニアに過ぎないよ」
「いいんですか?噂では帝国斯衛軍の最新の次期主力戦術機開発計画に携わってるとも伺いましたが」
「本流からは外れてるからね。問題無いさ。………ところで史彦君。紅音君もこの計画に参加していると聞いたが?」
「えぇ、さっき皆城さんの奥様と席を外しましたよ」
「そうか。また改めて挨拶するとしよう。なにはともあれこれからよろしく頼むよ」
「こちらこそ。よろしくお願い致します。」
握手する真壁史彦と日野洋治。手を話すと溝口恭介が耳元で尋ねる
「真壁………紅音ちゃん日野さんと知り合いなのか?」
「あぁ。富士教導団の頃からの付き合いがあるとは聞いている」
「マジか!?やっぱりスゲーな紅音ちゃんは。…………良かったな玉の輿に乗れて」
「………余計なお世話だ」
「公蔵!ここにいたのか!?」
皆城公蔵を呼ぶ洋風な男と日本人の女性という珍しい組み合わせが近づいて来た。
「うん?あぁミツヒロかすまんな」
「この2人が帝国軍の代表な訳か…………『遠見ミツヒロ(とおみみつひろ)』だ。公蔵と共に国連で『G元素』の研究に関わっている。こちらは妻の『遠見千鶴(とおみちずる)』」
「よろしくお願いします」
「ミツヒロ!お前国連に移ったのか?」
「洋治。久しぶりだな『曙計画』以来か・・・・・まだ戦術機に拘っていたとはな」
「『マクダエル・ドグラム』が『ボーニング』に吸収されたとは聞いていたが『ボーニング』で戦術機開発には関わってないのか?」
「あの国は戦術機に替わる対BETA戦略兵器を開発中でな。私はそちらに移り、国連にその有用性をアピールする・・・・・その先鋒と言ったところか。戦術機開発などもはや息抜き程度さ」
「そうか・・・・・だがまたお前と働けて嬉しいよ」
「あの頃はお互い端くれだったが、今回はメインでやるんだ。存分に私達の価値を知らしめようじゃないか」
「相変わらず野心家だな。お前は」
「・・・・・私としたことが少し話し過ぎたな。真壁と溝口だったか・・・・よろしくな」
「よろしくお願いします」
遠見ミツヒロがその場を離れると溝口恭介が不満を吐き出した。
「なんなんだあのいけすかねー野郎は」
「皆城さん。大丈夫なのですか彼は?彼は恐らく・・・・・」
「承知の上さ、しかし我々の計画のベースは第5計画だ。それを知る彼の情報は必要だし『G元素』研究での彼の成果は無視出来るものではないからな」
「・・・・・・」
「すみません遠見さん。身内の批評に付き合わせてしまって」
「!?」
日野洋治の気遣いがあるまで3人は遠見千鶴のことを忘れていた。
「いえ・・・・・あの人は敵を作ることを気に止めない人なので」
「しかし身内である貴女には今の話は酷でした。申し訳ありません」
「あっ、いえ!?真壁さん・・・・・でしたよね。気になさらないでください」
深々と頭を下げる真壁史彦に困惑する遠見千鶴。
「しかしあのミツヒロが内縁者を持つとは驚いたよ」
日野洋治の驚きの表情に皆城公蔵が畳みかける。
「遠見さんは第4計画の関係者なんだよ」
「本当ですか!?」
「関係者に当たるのかはわかりませんが、私の遺伝子と肉体の研究がその計画に流用させていると主人は言ってます」
「では第4計画の全容はご存知ないのですか?」
「えぇ・・・・・私の研究がその計画のどの部分に貢献しているのか。よくわかりません」
「恐らくサイボーグの類だろう。BETAは人類には全く反応しないと聞く、だから第4計画の連中はサイボーグに疑似人格を与えて諜報活動をさせようと画策しているというのがもっぱらの噂だ」
「サイボーグに疑似人格・・・・・」
「人体の一部をサイボーグ化した例は聞くが完全なサイボーグとなると完成の目途すら経ってないからな。そこへ疑似人格など・・・・・第4計画がお伽話と皮肉られる所以だよ」
皆城公蔵がこれまで得た『オルタナティブ計画』の情報を開示し、沈黙に包まれる。
「だからこそ我々は第5計画推進派の協力を漕ぎ着け『アーカディアン計画』を達成させなければならない。皆の尽力に期待するよ」
「・・・・・・」
「まあまあ、そういうお堅い話はまた今度にしましょうや皆城さんよ」
「溝口君」
皆城公蔵の肩に腕を回す溝口恭介。
「懇親会なんでしょ?もっとリラックスした会話にしましょうや」
「溝口・・・・・」
「確かにその通りだ。悪かったね真壁君、日野君、遠見さん。今更なんだが楽しんでくれ」
「そうだな」
「そうですね・・・・・真壁さん」
「はい?」
「奥様を紹介してはいただけませんか?」
「えぇ、構いませんよ。今あちらで皆城さんの奥様と談笑しています。行きましょうか」
「はい」
遠見千鶴をエスコートする真壁史彦。それについていく溝口恭介。懇親会はこうして賑やかに開催された。