望んだものを得ることが出来るのは一部の人間だけだ。
たいていの人が望んだもの得ず、望まない物が得たりする。
得た者は受け入れ前に進むか、呆然と立ち尽くす。もしくは後悔して過去ばかり振り返る。
得なかった者は次の機会を目指し進むか、諦め挫折する。もしくは得た者を恨むだろう。
ある日、得たいものは手に出来ず、得たくないものを手にした。
欲しかったものが手に入らなかったことに静かに泣く時間すらなく、欲しくも無い物を手にして与えたモノを恨む。
少年は叫んだ。どうして俺なんだ、こんなの要らない、必要ない!普通が良い、当たり前が良い、特別なんていらない!これなら存在しない方がましだ!!と…
少女が言った。要る要らないじゃない、得たのは運命、得ることが出来なかったのも運命。普通も特別も関係ない。
月明かりの下、涙を流す少年を少女は優しく抱きしめる。
得たモノを否定しても良い、得ることが出来なかったものに思いを寄せても良い。けど、自分の存在を否定するのは駄目。
少女の言葉を受け少年は只々、少女の胸の中で涙を流す。
夜が明けたころには、少年少女はこの街から姿を消した。
自然に囲まれた町、海鳴市。学生が下校し、スーツに身を包む者がガラケー片手に電話、自転車に乗り買い出しする者、ちょっとヤンチャして警察の世話になる青年、道路には車やバイクが走る。いったてどこの町でも見る事ができる光景。
誰もが日常を過ごす町の一角にある喫茶店【翠屋】
この店の店内で一組の男女がドリンク片手に会話を繰り広げる。
「大変よ…」
重々しく口を開くのは、動きやすい服装の上に黒いコートを羽織る黒髪の女性。女性と言うには小学生に見える少女体系だが、凛々しさと可愛さを持ち合わせた顔は誰しもが振り返るであろう。
「…………」
そんな彼女が険しい表情を浮かべる対面の席では、着物風ジャケットを身に着けた金髪の男性がドリンク(オレンジジュース)を口に含みながら、女性の言葉を待つ。
「ここ数日、メロンパンを食べてない!」
深刻な表情とは裏腹に可愛らしい悩みを口にする。そんな彼女の言い分に内心、また始まったと思いながらも男性は言葉に耳を向ける。
「タケル、これは死活問題よ」
まるで世界の終末を告げるかのように言葉を続けているが、話題は好物をしばらく食べていないだけの話。タケルと呼ばれた男性は特に気にせず空になったコップを机の上に置き、目の前の女性の愚痴を何も言わずに聞き続ける。
「……と言う訳でタケル、小遣い頂戴!」
最終的に女性の話はタケルに小遣いの要求。その様子見ていた他の客には兄に小遣いを求める妹の図となっており、先程までの雰囲気はどこかへと飛散していた。
「………シャナ、コンビニので我慢して」
不思議な模様が描かれた長財布の残高を確認したタケルの一言、それを聞いたシャナと呼ばれた女性は膨れっ面でタケルを見つめる。シャナとタケルの睨めっこはシャナが折れるまで続いた…
人通りの少ない道、そこに二人の少女が歩いていた。たわいのない話題で盛り上がる二人の少女。二人が止まっている車の横を通り過ぎようとしたその時、事件は起きる。
突然来るから出た顔を覆い隠した複数の男性によって、瞬く間に車の中に引きづりこまれる。車内で二人を拘束し、車を走らせた。まるでゲームのイベントの如く誘拐を達成した男達の車は廃工場に向けて走り続ける。
だが、完璧に見えた誘拐であったが、彼らは物陰から様子を見守っていた一人の少年の存在に気づいてはいなかった。車が走り去ったのを確認した少年はどこかへと電話し、車を追いかけ始める、その口元はゆがんだ笑みを浮かべていることに自覚することもなく。
メモ
複数の転生者がいる「リリカルなのは」の世界で主人公「タケル」が原作開始数十年前に亡くなった転生者の転生特典であるFateシリーズに登場する15のサーヴァントのアイコンを集めながら原作の事件や転生者が居る事で発生した事件に立ち向かう物語。
サーヴァント達は彼らのマスターが自らの死後、他の転生者達の為に残した忘れ形見。彼らと心を通わせる事で彼らの魂がゴーストアイコンへ(先人転生者がサーヴァント達に力を貸して良いと思える者に会った際、その者にとって一番力を引き出しやすい状態にする魔法をかけていた為)。
シャナは「灼眼のシャナ」に登場する「シャナ」と同じ用紙をしているもののフレイムヘイズとしての力は無い。その正体はタケルの転生特典の一つである「闘魂ブーストゴーストアイコン」。原点の仮面ライダーゴーストでは主人公の父親の魂からなるアイコンであったが本作のタケルとは無縁の人物の為、彼を転生させた神が適当に作った魂。見た目がシャナなのはタケル前に転生した人物が転生特典として挙げていた候補の一つだったから。