二人の短編集   作:来栖胡桃

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花火、あんま関係なくなってしまいました


3・花火大会へ 後編

堤無津川の花火大会に急遽行くことにした新一と志保の二人。新一は比較的ラフな格好だが、志保は博士が買ってくれた浴衣姿である。

花火の打ち上げ開始までまだ一時間はあるが、会場はかなりの賑わいを見せており前に進むのもやっとという有様だった。

 

「やっぱ、凄え人だな」

 

「・・・・そうね」

 

人を避けながらなんとか先に進むと屋台通りに出た。志保は両側の屋台にまるで子供のようにキョロキョロと視線を向けている。こんな祭に来るのは初めてのことだと言っていたから、色々興味が沸くのだろう。

 

「なんか、やるか? せっかく来たんだし」

 

「・・・じゃあ、あれ。」

 

志保が指差したのは射的屋。新一は志保の手を引くと店の前に行き、主人の男にお代を手渡す。

 

「あの立ってるやつを倒せばいいんだぞ」

 

「あのね、馬鹿にしないでくれる? それぐらいわかるわよ」

 

そう言いながらおもちゃの銃を構える志保を見て新一は昔のことを思い出していた。

彼女が初めて自分の前に現れたあの日。まだお互いに借り物の姿をしていたあの日。彼女は自分の目の前で銃を撃ってみせた。組織に居た時に習ったものなのかは知らないが、彼女が銃を構える姿を見るのはそれ以来だ。

 

「なんか、えらく様になってるな。お嬢さん」

 

店の男主人がそう言って志保も思わず我に帰る。たかがおもちゃの射的で、こうも真剣になってどうするのだ。

 

結局志保は、そこから打って変わって素人丸出しの打ち方でゲームを終えた。

 

「店のおやじ、志保の銃構える姿見て、ちょっとビビってたな」

 

「笑い事じゃないわよ。変な人だと思われたじゃない」

 

そんな話をしていると、出店通りを抜け少し開けた場所に出た。そこにはシートをしたに引いて花火の開始を待つ大勢の人がいる。

 

「ここで、いいか。」

 

新一は適当に座れる場所を確保すると志保と並んで腰を下ろした。

 

「・・・ねえ、工藤君」

 

「ん?」

 

「・・・・私、今でもたまに思うの。こんな幸せでいいのかって」

 

彼女が未だに罪の意識から抜け出せていないことは新一も重々にわかっていることだ。新一が志保に思いを伝えた時も、彼女はなかなか首を縦には振ってくれなかった。勿論志保も新一と同じ気持ちだったのだが、彼の幼なじみの存在と、何より新一の運命を狂わせてしまったという意識が志保の気持ちを封じ込めてしまっていたのだ。

結局新一の説得もあり、志保は新一の気持ちを受け入れるにあたったのだが、やはりまだシコリは残っていたらしい。

 

「・・・・私はあなたに相応しくないし、何より自分の罪を償ってない。だから・・・・」

 

「そんなことない。お前が俺に相応しいとか、相応しくないとか、そんなことどうでもいいんだよ。少なくとも俺は、お前とずっと一緒にいたいと思ってる。志保はどうだ?」

 

「・・・・それは、私も同じよ。あなたと一緒にいたい。でも」

 

「だったら、もうなにも言うなよ。そんな顔されたら、俺だって辛い」

 

新一は志保の肩を抱き寄せる。志保は新一の顔を見上げる。

 

「・・・・花火。始まるわよ」

 

「・・・うん。」

 

新一の目線は志保から動かない。志保が目をそっと閉じると、二人の影が重なった。

 

二人の後ろで花火が打ち上がった。

 

 

 

 

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