彼からのプロポーズの言葉
場所は確か、例の展望レストラン
彼の両親が永遠の愛を誓った、あの場所
ゲンを担いでその場所を選んだと言っていたけれど
彼の言葉からは、あの二人の影響はまるで感じられなかった
*
「結婚しようか」
「・・・・えらく、あっさり言うのね」
食事を食べ終え、デザートに手を伸ばそうとしていた時新一は志保に唐突にいった。窓から見える景色と店内の雰囲気以外はロマンチックの欠片もないプロポーズだ。
「・・・あなたのことだから、また耳が痒くなるようなプロポーズをすると思ってたわ」
「永遠に愛を誓う。的な?」
「的な」
数日前、この展望レストランに食事に誘われてから薄々プロポーズをされるのではという予感はしていた。もう付き合い出して五年になるし、新一も私立探偵として立派に活動している。それになにより、今日は志保の誕生日だった。プロポーズするのに、これ程うってつけの日はないだろう。
新一のことだから、きっと店の人間に頼んでサプライズのようなことをしてくるかもしれない。プロポーズの言葉も、聞いてて恥ずかしくなるような台詞かもしれない。
だが志保のそんな予想は見事なまでに覆されたのだ。
サプライズもなければ、こっぱずかしい台詞も無い。
至ってシンプルそのものだった。
「いや、俺も色々考えたんだけどさ。やっぱり普通がいいかなって思ってよ」
頬をポリポリ掻きながら新一は言う。
「それに、永遠に君を愛し続けるなんて言葉も、なんか嘘くさいだろ?」
その言葉に思わず志保は目を丸くした。新一からそんな言葉が出るなんて以外だったからだ。
「人間なんて、せいぜい生きて百年だからな。そう考えると、残りはせいぜい七十年ちょっとだろ? そう考えたら永遠なんてとても言えなくてさ」
「そんなんで、よくプロポーズしたわね」
ため息交じりに、半ば呆れたように言う志保。だが新一は別に悪びれた様子はない。
「まあ、永遠なんてとても言えないけど。七十年ぐらいなら、お前を好きでいられる自信はあるよ。」
自信たっぷりにそう言う新一。考えてみればこんなところも新一らしい。
「・・・はぁ。少しでも期待した私が馬鹿だったわ」
なんだかんだ言っても志保もそれなりにサプライズを期待していた。まあ、これはこれで印象には残るかもしれないが。
「・・・・七十年ぐらいなら、私のこと好きでいてくれるって言ったわよね」
「・・・ああ」
「・・・・ちょっと中途半端だから、あと三十年ぐらい割り増ししてくれる?」
今度は新一が目を丸くした。
「・・・ご希望とあらば」
「・・・じゃあ、お願い」
完