敵とか味方とか関係なく可愛い子って可愛いよねと言う艦これ二次   作:水代

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前回のあとがきにも書きましたが、この小説は艦これのようなナニカでしかない原作崩壊しまくった作品です。
そんなの嫌だって人は素直に読むのを止めておきましょう。
私は一向に構わん、って人は本分をどうぞ。

一応作者は止めたからな? 文句言うなよ?


三話 ご冗談を、北上様

 

「うーん?」

 視界の先、どこまでも広がる海を見ながら、少女、重雷装巡洋艦北上は首を捻る。

 昨日の晩の突如決まった出撃だったが、北上にとってはなんら問題はない。少しばかりかったるいな、なんて思ったりもしたが、提督が出撃しろ、と言うのならそこに是非は無い。

 例えそれが後ろからついてくる駆逐艦たちのお守りのとうなものだとしても、それを多少鬱陶しいと思うことはあっても、それでも同じ艦隊の仲間だ、そして北上は旗艦だ、つまりリーダーだ、部下を、仲間を守ること自体に不服は無い。

 ならばどうして、先ほどから北上が首を捻りながら唸っているのか。

 

 答えは出撃からまだ一度も使われていない魚雷発射管が示している。

 

 そう、一度も、だ。

 

 重雷装巡洋艦は軽巡洋艦を雷撃に特化させた艦である以上その攻撃は魚雷が主体である。

 だと言うのに、未だ一度も魚雷を撃っていない、つまりまだ一度も敵に遭遇していない、それが答えだった。

 

 南方海域、現在日本海軍が奪還に成功し、最侵攻をかけてくる深海棲艦との激しい戦闘が起きている文字通りの最前線。そのはずの海域で、どうしてまだ一度も敵に出会わないのか。

 北上自身、これまでに何度となくこの海域に来たことはあるし、その度に最低三度、多くて四度、五度は戦闘をこなした。

 だが現状はどうだろうか? 出撃から一時間、未だ敵影一つ見えないこの現状は。

 

 だからこそ、首を傾げる。口から唸りが漏れ出す。

 

 異常、そう、異常なのだ。敵に出会わない、それ以外があまりにも異常がなさ過ぎて見逃してしまいそうになるが、おかしいのだ、あり得ないのだ、これだけ長時間海域をさ迷って敵に出会わないなんてことは絶対に無いのだ。

 つまりあり得ない事態が起きるだけの理由がどこかにあるはずなのだ。

「もしかして…………提督が私を出撃させたのはこのため?」

 本来なら今日の出撃の旗艦は時津風がするはずだった、それは一週間以上前から決定されていたはずなのに、昨日急遽自身が代わりに旗艦とされた。

 実を言えば北上の所属する鎮守府ではそう言ったことは意外と多い。しかもその大半が同じ理由だったりする。

 即ち、提督の勘だ。

 あり得ない、あり得ない、あり得ない。他の鎮守府の人間ならそう言うだろう。

 だが外れない、提督の勘は外れない。ことこれに関してだけはあの提督の元で戦った艦娘全員の意見の総意だ。あの堅物の磯風すらもそれは認めている。

 北上は駆逐艦嫌いと言う私情を抜きにしてもあの堅物が嫌いだが、自身の提督に対する意見だけは憎たらしいほどに一致する。

 

「ま…………だからこそ、余計に嫌いなんだけどね」

 同属嫌悪、と言う言葉が一瞬浮かぶがすぐに頭から振り払う。あの堅物と同属なんて冗談ではない。

「北上さん? どうかしましたか?」

 そんな北上の様子をいぶかしんでか、巻雲が尋ねてくるが、北上はそちらに顔を向けることなく、なんでもない、とだけ答える。

 

 巻雲、長波、浦風、舞風、初風。後ろに並ぶ彼女たちの名前を列挙してみるが、見事に駆逐艦ばかりでげんなりする。南方海域は最前線と呼ばれるだけあって、現在確認されている海域の中でも特に強敵が集まっている海域だ。そんな場所で、駆逐艦ごときをずらずらを連れて進んでいるのは、さすがに北上でも危機感を覚える。

 そもそも北上は駆逐艦と言うのが好きではない。火力は巡洋艦に劣り、雷装は特化型の北上のほうが圧倒的に上、回避だって練度(レベル)を考えれば北上のほうが高い。全てにおいて自身に劣る駆逐艦にメリットなど、この場において何も無いと言っても良いと考えている。

 使いどころがある、とは思っている。それは認めている、事実自身では行けず、駆逐艦には行ける場所があることは分かっている。だがこんなところに連れて行く必要性はまるで無いだろう、と思ってしまう。

 そんな駆逐艦の中でも、彼女らは陽炎型、夕雲型と最新鋭の高い性能を持った駆逐艦だ。だがそれでも所詮は駆

逐艦だ。戦艦の火力には届かず、雷巡(じしん)の雷装にも届かず、空母ほどの対空能力も無く、装甲も薄い。

 

 どこぞのロリコン提督ではないのだ、毎日キス島の主力艦隊に殴りこみをかけて練度を稼ぐどこぞの変態の艦隊ではないのだ。

 

 敵の攻撃が当たればあっさりと装甲を抜かれる、戦艦の砲撃など直撃すれば即死することだってある。

 なのにどうしてそんなやつらを連れて行かなければならないのか。もし自身の目の前で沈まれたら気分が悪いなんてレベルでは無い。

「………………はあ、マジでうざっ」

 後ろには聞こえない程度の声で呟く。

 結局、嫌なのだ。目の前で仲間が沈むのが。()()()()()見たくないのだ。だから弱いやつには一緒に来て欲しくない。

 守るなんて自分の柄じゃない。だから旗艦なんて嫌なのだ、自身の後ろにいる彼女たちは、北上にとって重しでしかない。

 そしてそれを理解しておきながら、北上に旗艦の任を任せるのは提督なのだ。だから渋面を見せる。どうせ反論したって無駄なのだから、否、そもそも提督の命令を断るなんて選択肢は北上の中には無いのだから、せめてもの反抗である。

 

 まあそんなことを考えつつも、艦隊は海域を進んでいく。今回の出撃は海域の警備と敵の間引きが主任務なのだが、こうも敵に出会えないとなると、一旦帰投したほうが良いかもしれない。

 そんなことを考えながら、どこか感じる嫌な勘に、頬をかく。

「どうしたものかねぇ」

 呟きつつも、艦隊の足は止まらなかった。

 

 

 * * *

 

 

 眠い。

 体に鉛でもへばりついているかのような重さを引きずりながら巻雲は欠伸をかみ殺す。

 巻雲は現在練度30になる。先週ようやく改造を終え、性能的にもさらに強くなった実感があり、だからこそ、実戦で自身がどこまでできるか、と言うのを早く試してみたかった。

 それは隣で同じく欠伸をかみ殺す妹の長波も同じような心境だっただろう。

 巻雲と長波はほぼ同時期に建造された艦娘だ。姉妹でありながら、お互いを好敵手とし、互いに切磋琢磨してきた。強くなって早く姉の夕雲のように司令官の役に立てる艦になりたかった。

 そうしてようやく改造可能練度と言う一つの区切りを超え、とうとう自身たちの鎮守府の受け持つ最前線海域、南方海域への出撃を命令された時はそれは喜んだ。認められた、と言う気持ちが抑えきれず、その前夜である昨日は長波と二人で話が盛り上がってしまい結局姉に怒られるまで遅くまで話し込んでしまっていた。

 そうして肝心の出撃の日に、朝から姉に起こされ、眠い目をこすりながら出撃へと臨むことになってしまったのだった。

 心配そうに自身たちを見送る姉に大丈夫と返しながら出てきたが、正直言えば不安もあった。

 何せ南方海域と言えば、戦艦レ級の出現する超高難易度海域だ。歴戦の提督たちですら踏み入れることには二の足を踏む現状の激戦区。まだその入り口とは言え、出てくる敵の強さは他の海域とは格が違うことは簡単に予想できる。

 まだ改造を終えたばかりの自身たちで本当に大丈夫なのか、と言う不安があったのも確かだ。だからこそ、それを吹き飛ばすように騒いできた。だが実際に出撃するまでは言い様の無い不安が積もる。姉も本当はそれを察していたからあんなに心配していたのだろうことは、姉妹だからか簡単に分かった。

 だがいざ出撃してみれば些か肩透かしを食らった感が否めなかった。

 何せ出撃から二時間、海域をさ迷っているが、敵に出会わないのだ。

 張り詰めていた緊張の糸が緩み、巻雲も長波も先ほどから欠伸が止まらない。

 と、そんな時、旗艦を勤めている少女が停止を合図する。

 

 重雷装巡洋艦北上。それが少女の名。

 

 まだ巻雲たちが建造される前からずっと司令官の下で戦い、雪月の十、とまで呼ばれた存在。

 

 海軍提督雪月(ゆきづき)紗代(さよ)少将。

 若干二十五と言う若さで少将の地位にまで上り詰め、その後、最前線目の前のこの鎮守府に左遷されたと言う波乱万丈な来歴を持つ若き提督。

 彼女がその若さで少将の地位にまで上り詰めることが出来たのは、彼女の元でだけ起きるとある不可思議な現象が原因である。

 建造事故。そうとしか呼称できないその現象は、他の提督と全く同じレシピで全く同じように建造を行ったはずなのに、通常よりも十倍近い時間のかかる建造が行われることがある。そうして生まれてきた艦娘は、同じ姿、同じ兵装を持ちながら、けれど他の同一個体の数倍近いポテンシャルを秘めていたり、一体どうやっているのか説明できないような不可思議な能力を持っていたりする。

 現在までに建造事故で生み出された十の艦娘を指して、雪月の十と呼ぶ。

 

 そして目の前にいる北上と言う少女。建造時間10:30と言う長時間の建造によって生み出された彼女を指して人はこう言う。

 

 雪月の二【七本槍】北上。

 

 そのコンセプトは――――――――――――

 

 

 * * *

 

 

 脳裏に走る嫌な予感に、思わず艦隊を止める。

 周囲に敵影は無い。だが見えないからと言っていないとは限らないのが北上たちが戦う敵、深海棲艦と呼ばれる化け物だ。

 いつでも戦闘が出来るように全員に警戒を促す。もうここまで来れば予感ではない、確信である。

「何かいるよ」

 その言葉に呼応するかのように、ぬるり、と海の中から突き出すように現れるソレ。

 

 化け物と人が融合したような醜悪な容姿、そして体に同化している自身たち艦娘と同じような兵装。けれどその全身は白く、そしてその目は金に輝いていた。

 

 戦艦ル級、それもフラグシップ。敵としては最も出会いたくない部類だろう。

 

 少なくとも、当たりどころが悪ければ後ろの駆逐艦たちを一撃で殺せる程度の火力はある。

 姫種や戦艦レ級などの例外中の例外を除けば、現在確認されている深海棲艦の中でも最強と呼ばれる存在。

 それが三体に、取り巻きに雷巡ホ級フラグシップと駆逐イ級フラグシップが二体。

 

 今まで一度も遭遇しなかった分をまとめたような凶悪な艦隊に、さすがの北上も眉根をひそめる。

 こちらは雷巡が一に駆逐艦が五。戦力的には圧倒的不利。

 

 まともな艦隊ならかなり絶望的だったかもしれない、まともな艦隊ならば。

 

「距離計算、波浪弱、潮流も問題無し………………投射角修正…………一番から七番まで魚雷発射」

 

 呟き、同時に魚雷発射管から魚雷が飛び出し、海中へと潜る。

 

 一

 

 遠く、戦艦の砲撃すら届かないその間合い。

 

 二

 

 けれど魚雷がぐいぐいと進み、

 

 三

 

 酸素魚雷は雷跡を残さないまま海の彼方へと消えていく。

 

 四

 

 そして、

 

 着弾

 

 遠方に見える敵の足元から巨大な水柱が上がった。

 逃げ遅れた戦艦ル級三体がまとめて吹き飛ぶ、一体につき一発、それならばまだ耐えられたかもしれない。

 だが固まっていたせいで他二体からの余波にまで曝されてしまい、ほぼ三発分の威力にはさすがに耐え切れなかった。

 一瞬にして主力たる戦艦ル級三体が轟沈する。

 そして残りのホ級、イ級二体へも魚雷が伸び、爆発する。酸素魚雷と言うのは雷跡が非常に見えにくい。それ故、気づいた時にはもう遅い、と言うのは良くあることであり、ホ級とイ級一体が魚雷に直撃され、即座に轟沈した。

 だが残ったイ級はどうやらギリギリで回避していたらしい、余波で小破しているがまだ動くことはできそうだ。

 けれど北上はそれを確認してもなお表情一つ動かさない。

 

 着弾した魚雷は全員に一本ずつで計六本。

 

 だが忘れてはならない、北上の異名を。

 

 雪月の二【()()()】北上。

 

「着弾確認」

 

 呟いた瞬間、魚雷を避けたはずのイ級が水柱に飲み込まれる。

 ()()()の魚雷がイ級の真下で爆発したのだ。

 超遠距離よりの先制魚雷。

 

 雪月の二【七本槍】北上。

 

 そのコンセプトはスナイパー。

 

 実を言えば、先制魚雷攻撃の手段として有名な甲標的を、北上は持っていない。

 正確には最初は装備していたが、外した。

 甲標的は潮流に左右される部分が大きく、狙えても一体程度だ。また回収にも手間がかかる。

 だから外した。そんな手間は取っていられない。

 

 魚雷と言うのは近距離で使うものだと言われているが、その実、射程自体はそれなりに長い。

 極論を言って、砲弾と違って速度を威力に変えているのではないので、潮に流されて敵に当てるだけでもその威力を発揮できるのだ。まあそこまで行くと機雷と大して違いも無いのだが。

 だが射程は長くても実際には近距離で使うための兵装だ。何故か? その理由は簡単だ。

 

 当たらないからだ。

 

 とかく当たらない。そもそも弾丸と違って、海中では水の抵抗の上に、さらに潮流で左右からも力が加わる。

 結果的に距離を伸ばすほどに左右にブレて、狙ったところからはズレていく。

 かつて軍艦として作られた重雷装巡洋艦は、遠距離より数十発の魚雷を一度に発射したが、当たったのは一発だけだったと言う悲惨な結果に終わったほどに魚雷での狙撃は難しいのだ。

 

 そして、だからこそ、それをこともなげに成し遂げる北上は異常なのだ。

 

 考えてみて欲しい。砲撃戦が始まる前に、七本もの魚雷が正確無比に敵へ向かって伸びていくのだ。

 それがどれほどの戦果を生むか。今回のように砲撃戦が始まる前に敵が全滅することだってざらなのだ。

 

 雪月の十のうち、最も多くの敵を屠ってきた、最強の矛、それが北上と言う少女である。

 

 

 * * *

 

「冗談…………きついよ」

 目が点になる、と言うのはこう言う時に使うのだろう、と長波は思った。

 眠い目をこすりながらの出撃、最初のうちは緊張感で誤魔化していた眠気が緊張の糸が緩んできたことによって再び睡魔が襲ってくる。と、そんな時に停止の合図。同時に発せられた周囲警戒の合図。

 直後現れたのは最強の戦艦三隻にその取り巻き。振り返って自分たちの艦隊は雷巡一隻と駆逐艦五隻。

 絶望にも似た空気が駆逐艦の中に漂う。正直勝ち目は無いと言っても良い。北上の退却の合図を今か今かと待ちわびる。

 だが……………………結果だけ言えば、退却の合図は無かった、否、それどころか勝利すらしてしまった。

 

そう、勝ったのだ。目の前の少女たった一人の力で。

 

 鎮守府最強の一人、北上。

 雪月の十が一人。強いのは知っていた、規格外だとも聞いていた。

 だが目の前で見せ付けられて、あまりにも現実離れしたその光景に唖然とする。

 そうして次に思ったのは……………………仲間で良かった。

 心底そう思った。こんなことができる敵がいたならば、自分たちは何もできないまま死ぬだろう。

 そこにあるのは練度の差だとか、性能の差だとかそんな程度のものではない。

 

 ただただ圧倒的な格の差だった。

 

 こんなのがあと九人もいる。考えれば考えるほど自身の鎮守府の異常性が分かる。

 

 ふと隣の巻雲に視線を向ける。巻雲もまた目を見開き、目の前の光景に釘付けだった。

 さらに視線を移す。全ての中心、北上へと。同時に北上も振り返る。

 面倒そうな表情を隠そうともせず、けれどにへら、と笑いながら。

「帰投するよ」

 そう言った。

 

 

 




雪月の二【七本槍】北上
重雷装巡洋艦は雷撃に特化した艦である。
だが装甲は薄いので雷撃の距離に入るまでにやれれることも多い。
甲標的と呼ばれる兵装により、砲撃戦より先に魚雷を叩き込むこともできるが、攻撃できる数は少ない。
だからこそ、彼女は考え出したのが、魚雷による狙撃。後に七本槍と呼ばれるようになる、超遠距離雷撃の始まりである。
元の艦とのステータスの違い→雷装150(素)、運70、回避80



雪月の十の存在はちゃんと二話時点でほのめかされてます。

中二っぽくね? 雪月の十って。この小説けっこう中二成分、と言うか、ロマンを追い求めて作ってます。
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