短編まとめ(ワンピ)   作:秋元琶耶

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と思ってたのに向こうから近寄ってきて終わる話です。拙者両片想いのもだもだ期大好き侍と申す。
クザンさん好きです。


うわ海軍だ近寄らんとこ(クザン)

物心がついたころには海賊船に乗っていて、気付いたときにはそれなりに世間に名前が知れていた。

どうしてこうなったのかは覚えていないけれど、私は私の人生に一度も後悔したことはない。まぁそりゃ多少失敗して痛い目見たこともあるけど、それは勉強だと思ってるし、成長の糧に出来ていたと思う。

元々乗っていた海賊船は、なんとなく気分じゃなくなったので独立したのは数年前。一人で気ままにやろうかな~なんて思ってしばらくは適当にいろんな場所をうろうろしてるうちに妙に懐いてきたのが今の仲間たちだ。

最初は私が女で一人でいるから興味本位で声をかけてきたんだろうけど、いろいろあってなんやかんやで仲間になった。男も女も魚人もいる、アットホームな海賊船です。いつ頃誰が、とかいうのはあんまり覚えてないくらいあやふやだ。なんかいつの間にかみんな仲間になってた。不思議。あと、別に私が船長だなんて云った覚えはないのに、気付いたら船長として担ぎ上げられていた。いいけどさ。

海賊とはいえ、私たちは民間人とか民間業者を襲ったり、無駄に他の海賊団に喧嘩を売ったりはしない主義だ。売られた喧嘩を買うことはあっても、こっちからは理由がなければ喧嘩なんか売らない。めんどくさいし。かといって義賊だなんて名乗るつもりもない。まぁ、呼び方なんてどうでもいいよね。

 

で、一応今私たちは新世界に拠点を持っている。

四皇のナワバリは面子がなんだでうるさくて近寄れないので、海賊を毛嫌いはしてなさそうで四皇のナワバリにもなっていない適当な島を目指してたら、たまたま立ち寄った先でアホな海賊が大暴れしていた。気分が悪いのでそいつらを叩きのめして島から追い出したら、頼むからここを拠点にしてくれと町長一同に頭を下げられてしまい、断るに断れなくなったのだ。

下手にナワバリなんか作ったら面倒くさいなぁと思っていたのだけど、何も新世界は四皇だけの海じゃない。それなりに他の海賊のナワバリもあるようで、私がこの島一つをナワバリにしたところで何も問題はなさそうだった。一つくらいなら管理とかも大変じゃなさそうだし、まぁいっか、と気楽な気持ちで拠点にしている。

というかこの島、割といい場所なのだ。

いわずもがな四皇の息はかかってないし、海流が穏やかな場所にあるから割といつも安定した航海が出来るし、何よりそもそもエターナルポースがないとたどり着けない。磁場の関係らしい。詳しいことは知らん。私たちがここに来たのも、喧嘩吹っ掛けてきた馬鹿が持ってたエターナルポースを奪ったからだったし。

 

そういうわけで、特に海賊王になりたいだとかでっかい夢も掲げてない私たちは、ここのところはこの島を中心にふらふらと航海を続けていた。

いやー、気ままな海賊業、いいね。楽しい。

ただ困るのは、私が妙に名前が売れてしまったせいで、海軍に追われることが多いってところ。別にそこまで悪いことしたつもりはないんだけど、なーんか追いかけられるんだよね。

ちょっと前にモモンガ中将に追いかけられたときはさすがに年貢の納めどきかと思ったけど、何故か途中で追撃の手が止まったので、その隙に急いで逃げてきた。あの人強いししつこいし顔怖いし苦手なんだよなー。THE海軍! って感じ。

海軍といえば、私は変な奴に目をつけられている。

妙によく顔を合わせるってだけなんだけど、行く先々に現れる変な奴。でもこっちを捕まえようと躍起になってるって感じじゃないから対応に困る。

敵対心むき出しってわけでもないし、しかもなんか知らんうちにうちのクルーと仲良くなってて意味が分からん。あれでも海軍本部のお偉いさんなはずなのに、普通にうちの船で宴に交じってるときとかあるからね。初めて見たときは普通に二度見したし、お前さんも飲みなよ、なんて肩組んで云われたときは眩暈がしたけど、突っ込んだら負けだと思って黙って飲んだ。

というかうちの部下に海賊としてのプライドはないのか。何海軍と仲良くしてんの。宴が解散してあいつが帰った後にそう苦言を呈したら、『でもあいついい酒持ってきてくれるんですよ』だって。もう好きにしてくれ。

ああ、でもそういえば、今回の航海中は一回も顔見なかったなぁ。

 

ちなみに今日私たちが島に戻ってきたのは数か月ぶりだった。ちょっと気になるお宝の情報を手に入れて、遠出していたのだ。結局その情報はガセだったので、代わりに帰りがけに私たちにつっかかってきた海賊から根こそぎお宝を奪ったので良しとする。

なんだかんだでこの島にも愛着わいてきたし、港に船を着けると帰ってきたって感じがした。でも、町に入ったときにみんなに『おかえり』って云われるのはちょっと慣れない。むず痒い。嫌ではないけど、照れるというか。

どうやらここの島の人たちはもともとかなり人との距離が近い人たちだったらしく、私たちがここをナワバリにすると決めてからは距離の詰め方がエグかった。そら仲良くなるための宴だなんだと連日連夜大騒ぎで、逆に罠にでも掛けるつもりなのかと警戒したのは一瞬で、単にお祭り騒ぎが大好きな人たちで、私たちはそのダシにされただけだった。

今では島の人みんなが顔見知りみたいな感じだし、少なくとも向こうは私のことを知っていて、町中を歩いてるとそこかしこで声をかけられる。やれこれ持ってけだのこれ食べてけだの、飲みに行こうだの。一応云っとくけど私海賊なんだよね。控えめにそう主張してみたことはあったけれど、『知ってるよアッハッハッハ』で終わった。うん。いいんだけどさ。うちの海賊団のナワバリ、愉快な人たちばっかりです。

 

で、今回も町長に帰還祝いの宴だって云われたわけだ。

島で一番大きな酒場を貸し切って飲めや歌えやと大盛り上がり。私らより町長たちのほうがはっちゃけてるような気がするのは気のせいじゃないと思う。いいけども。

とはいえ私も賑やかな宴は嫌いじゃないので楽しんでいる。しかもここの島、結構いい料理人がいるから何食べてもおいしいんだよね。航海中はどうしたって栄養重視の質素なご飯になりがちだから、島に帰ってきてからのご飯はうちのコックも含めてみんな楽しみにしている。正直胃袋を掴まれていると云っても過言じゃない。

そんなわけで今回もおいしい料理に舌鼓を打っていたところで、隣で飲んでいたクルーに肘で突かれる。何。

 

「なぁ船長、あれ」

「何」

「あいつ」

「あいつって」

「ほら、いつも船長のこと追いかけてくる、あの」

「はぁ? あいつがここにいるわけ……」

 

あった。

振り返った先には、でかい図体を隠すこともなく、うちのクルーと乾杯して町長と肩を組んで笑っているのは海軍大将、青キジの姿。

いやいやなんでお前がここにいるんだよ。

 

「え、あいついつの間に?」

「つーかなんでおれらが今日帰ってくるって知ってたんスかね」

「確かに。こっわ」

 

青キジ。

海軍本部大将。

部下の云った通り、ことあるごとに私の前に現れる海軍将校だ。

 

実はこいつ、私が無名の頃からちょっとした因縁がある。

私は元居た海賊船から独立したって云ったけど、実はそれはちょっと違う。正確には、私がいた海賊団は壊滅したのだ。ほかならぬ、この青キジの手によって。当時はまだ中将だったのかな? よくわかんない。

とにかく、ある日私たちの前に現れた青キジは問答無用でうちの船長を捕まえて船を沈めた。あっという間だった。

てっきり私も一緒に捕まって終わりかー、インペルダウンて暗くてジメジメしてそうでやだなぁ、と思っていたのに、何故か私は見逃された。捕まえないのかって訊いたら、そのうちね、と云われた。意味がわからない。

でも見逃してもらえるならラッキーってことで一人で海に出たんだけど、考えてみたら私に懸賞金がついたのってそのタイミングだったわ。絶対青キジの仕業じゃん。最悪だ。

 

思い出してちょっとイラッとしつつ、なんか普通に宴に溶け込んでる青キジにちょっかいかけるのはめんどくさい。なんでここにいるのか知らないけど、やりあう気がないなら放置でいいんじゃないだろうか。私らも航海直後で疲れてるし。

よし、放置。

どこか不満そうに口をへの字にした部下のことは無視しておいしいご飯の続きを楽しもうとすると、不意に私をすっぽりと覆い隠すほどの影が落ちた。

ここは室内、周囲の明るさを鑑みて、停電ではない。

嫌な予感。

そうして、テーブルに向かっていた私を囲むように長い手が置かれて、ほとんど真上から振ってきた声。

 

「ちょーっと、そこのお嬢さん。お兄さんとお話ししない?」

 

わざとらしすぎて吐き気がする。

油の切れたブリキ人形のようなぎこちなさで声のほうを見上げれば、予想に違わず青キジが楽しそうににっこりと笑っていた。手ぇ退かせ。ていうか何がお兄さんだよ、おっさんだろあんた。

 

「こんなところまで何か用?」

「用っていうかぁ、暇つぶしに会いに来ちゃった」

「はぁ?」

 

全然退く気配がないのでみぞおちを殴って無理矢理退かすと、青キジは両手を上げて降参のポーズをしながら身体を起こした。覇気を込めなかった私の慈悲を知れ。

そして許可なんかしてないのに、こいつはしれっと私の隣に腰を下ろした。さっきまでそこに座っていたはずのクルーがニコニコ笑顔で青キジに席を譲っている。何してんだ。

 

「お前さん、最近はこの島拠点にしてんでしょ?」

「そうだけど」

「だから、お前さんに会うにはここに来るのが確実かと思ってね」

 

思わず首を傾げてしまう。

確かに私に会うならいくら新世界に限られているとはいえ広い海を探し回るより、拠点にしているこの島で待ち伏せたほうが確実だと思う。

そりゃそうなんだけど、青キジが私に会いに来る理由って何?

 

「……やばい、私こいつが何云ってるかわかんない」

「嘘だろ船長。乙女回路ぶっ壊れてんの?」

「馬鹿にされてることだけはわかるぞコラ」

 

青キジの奥に座ってた部下が『信じられない』とでも云うように口に手を当てて呟いた。こいつらは船長を敬うということを知らないのだろうか。直接的な言葉を使われない分余計腹立つ。ていうかなんだよ乙女回路って。

抗議をしてやろうと思ったら、今度は別なクルーに急かすように席を立たされた。何なに。私まだご飯食べてるんだけど。

 

「ほら船長、青キジと会うの久しぶりだし、積もる話もあるっしょ?」

「いやない」

「はい青キジの大将、これ酒ね。今の時期なら海岸で飲んでも気持ちいいから、二人で行っといでよ」

「あらぁ、気が利くじゃない。いいの?」

「いくない」

「どーぞどーぞ、こっちの宴はおれらが引き受けるんで」

 

そうしてあれよあれよという間に私は青キジと一緒に店の外に追いやられていた。ねぇ何回も云うけど私船長。あいつら上司を何だと思ってんだ? 全然私の話聞いてくんないじゃん。そのうち泣くぞ。

しかしこの状況でもう一度店の中に入るのも雰囲気悪くなるかなぁと考えていると、隣にいた青キジが堪えきれないように噴出した。

 

「はは、相変わらず面白いやつらだねぇ」

「あんたを私に押し付けただけじゃん」

 

仕方なく、私は部下が青キジに渡した酒瓶を一本奪い取り、歩き出す。確かにこの時期は外で飲んでも気分がいい。少し暑かったし、夜の散歩もいいだろう。断じて部下に云われたから行くわけじゃない。

海岸までの道のりで、青キジは他愛のない話をした。やれ部下が厳しくて仕事を抜け出すのが大変だとか、どこぞの海賊がマリージョアで暴れて駆り出されて面倒だったとか、私が好きそうな新しい雑貨屋が出来たとか、会議すっぽかしたら元帥にげんこつされてへこんだとか、立ち寄った島で食べたご飯がおいしかったとか、私に似合う服を見つけたとか、そういう話。

へぇ、とか、はぁ、とか気のない相槌を返しつつ、こいつずっとしゃべってて疲れないのかな、とぼんやり思う。マシンガントークではないけれど、ほとんど途切れずしゃべってるのだ。若い女の子でももうちょっとは落ち着いてしゃべるんじゃない? 落ち着きを覚えろよおっさん。

 

でも、腹立たしいことに、ヒジョーに腹立たしいことに、私はこの男の声が嫌いではないので、たとえどんな話であろうとちゃんと聞いてしまうのだ。つまんない話だな、と思いながら、内容はちゃんと全部覚えてる。腹立つ。

重ねて腹が立つのは、多分こいつも私のそういうところに気付いてるってところだ。

絶妙に私が聞き流さないような話題を選んで、ちゃんと私の反応を見ながら話す。自分勝手に好き勝手しゃべるのではなく、私が聞いてることを確認しながら話すから、私もついつい律儀に相槌を打ってしまう。結果、私がほとんど話すことはないのに会話が弾んでいるように見える。遺憾だ。甚だ遺憾だ。

 

それでも話をぶった切る気にはなれず、海岸に着いて流木に腰掛けて部下にもらった酒を飲みながら、しばらくの間私たちはその穏やかな時間を過ごしていた。

冷静に考えると、海賊と海軍が並んで酒飲んでだべってるってどういう状況だよって思うけど、冗談みたいなホントの話なのよね、これ。うん、冷静になったら負けです。つーか私はともかく、職務放棄は青キジの方だし、私が後ろめたく思う必要とかないのでは。

そう開き直って、黄猿とキャッチボールしてたら赤犬の盆栽壊してめちゃくちゃ怒られたというとんでもエピソードに思わず笑ってしまったところで、持ってきたお酒がなくなった。

ふぅむ、飲み足りないような、でも航海終わりで疲れてないわけではないので大人しくここでやめておいたほうがいいような。

青キジのほうはもうちょっと残ってるみたいだし、どうしたものかな、と考えつつ、そういえばと思い首を傾げる。

 

「あんた、今夜はどうする気?」

「え。付き合ってくれんの?」

「違うわ馬鹿。この島に泊まるなら、手配させるって云ってんの」

 

あほかこの男。なんでそう解釈できるんだ。頬を赤く染めるな。

一応ここは私のナワバリなんだし、いくら暖かい季節といえど野宿するには肌寒い。私だって鬼じゃないんだから、宿くらい用意してやるっていう話だ。

半眼になってそう云うと、青キジはあからさまにがっかりしたように肩を落として首を振った。

 

「なーんだ残念。でも、お言葉に甘えたいんだけどねぇ。実は明日本部で外せない会議があって」

「……ここに来てる場合じゃないんじゃない?」

「ほんとはね」

 

じゃあなんで。

ていうか暇つぶしとか云ってたくせに暇じゃないじゃん。

すると青キジは手に持っていた酒瓶を一気に煽った。そして。

 

「どうしてもお前さんの顔が見たくて」

 

そんな、ことを。

……云われたら、なんて返したらいいのか、わからない。

私は青キジの顔を見ていられなくなって、俯いた。

お酒でいい感じにふわふわしていた気分が一気に抜けて途端に冷静になってしまう。

 

「……物好き」

「そうかも」

 

困ったように笑った青キジに、私は笑えなかった。

なんだよ。

なんなんだよ、あんた。

 

出会ったときからずっと、意味が分かんない。

捕まえなかったくせに追いかけてきて、でも結局いつも捕まえないで逃がして。そのくせ、他の海軍が私のことを追ってるときはなんだかんだ理由つけて邪魔しに来る。モモンガ中将の足止めしたのあんたなの、わかってるんだから。一気に温度下がったの、気付かないとでも思ってんの?

 

どうしたいんだよ。

なんで忙しい時間を縫ってでも私の顔なんて見たいと思ったんだよ。

わかんない。

青キジという男のことが、私は、全然わからない。

 

「……そろそろ帰るよ。また来る」

 

立ち上がった青キジは、ぽんと俯いたままの私の頭に手を置いた。

ガキ扱い。

そりゃ、あんたからしたら私なんて子供みたいなもんなんだろうけど。

じゃあなんでわざわざ私に会いに来るわけ、って訊いてやりたい。最初に見逃した責任取って監視してるとか? そんな面倒なことするくらいならさっさと捕まえたらいいんだから、めんどくさがりの極みなこの男がそんな余計な手間をかけるわけがない。

だからと云って対等に扱われているわけでもないのだろう。まかり間違っても海賊と海軍が対等だなんてありえない。もしかしたら、四皇なんて呼ばれてる人たちは別なのかもしれないけど、私はあの人たちの足元にも及ばないちんけなただの海賊だ。海軍大将と対等な立場だなんて、さすがに云うつもりはない。そこまで私は思いあがっていない。

 

女扱い、なのだろうか。

青キジが私をとても優しい目で見ていることは知っている。嫌でも、わかる。どんなにつれない態度を取っても笑って、絶対に怒らないで、何度も何度も私の前に現れるこの男は、私のことを好きだとでもいうのだろうか。

そんな馬鹿な。

だって私だよ?

ちょっと名前が知れてるだけで別にボア・ハンコックみたいに美人なわけでもないし、珍しい悪魔の実を食べた特殊能力者でもないし、愛想もないただの海賊。

それを、海軍大将ともあろう男が?

ないない、絶対ない。

 

一瞬でもそんな馬鹿げたことを考えてしまったことを猛省し、私は立ち上がって青キジの手から空瓶を奪い取った。そうして、云う。

 

「次は、おすすめのレストランでも連れてってあげるけど」

 

私はこの島のことが結構気に入っているのだ。

だからまぁ、いいところは知ってほしいし、宣伝できるし。

別に深い意味はないけど、また来るつもりがあるなら、いいお店を紹介するのも悪くないかなって、そう思った。それだけ。一応お偉いさんだし、海軍にゴマすっといて損はないと思うし。

早口にぼそぼそと言い訳がましく云った私の言葉を聞いて、驚いたように目を瞬いた青キジは。

 

「――楽しみにしてる」

 

見たこともないほど穏やかに笑い、私の頬に触れて、……触れただけで何もせず、それ以上何も云わず、するりと手を離し、そのまま近くに隠してあったらしい自転車に跨って島を出て行った。

 

こんな時間に海に出るって正気かよ。

ていうかバイバイとか何も云わないのかよ。

しかもその触り方は、ずるくない?

勘違い、しそうになるじゃん。

せっかく気のせいだって、そんなわけないって思おうとしたのに。

 

私は何も云えないままただ暗い海の奥に消えていく青キジの背中を見送った。

星灯りはあっても、夜の海は闇より暗い。夜行性の海王類だっているのに、きっと青キジにとってはそんなもの取るに足らないものなんだろう。くそ、むかつくな。私だって海賊だし、弱いつもりはないけど、多分、青キジには勝てない。

 

「……ばーか」

 

青キジが触れた頬を、自分で覆う。

なんだか少し熱い気がする。

お酒、飲みすぎちゃったかな。

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