この湖で能力の練習をしだしてもう数週間。きっとこの湖の生態系はボロボロだろう。
この数週間は、能力を使い霊力切れで倒れる。をひたすらに繰り返していた。なんとも効率の悪いことをやっていたものだ。
しかし、その間に幻想郷に来て初めての知り合いもできた。湖の周りをフラフラ歩いていると、氷でできたカマクラの様なものがあり、なんだろうかと見ていたら、中からいつかの妖精が出てきた。
その妖精の名前はチルノと言い、曰く最強らしい。そんななんとも残念な頭の持ち主ではあったが、見ていて此方が嬉しくなるほど元気の良い妖精。頭は残念で、一言で言えばバカだけど、一緒にいて楽しい奴ではあった。
チルノも氷を作ることができるため、そのコツを聞いてみたが――
「こう……パキーンってやればいいの!」
なんて言われた。意味わからん。そんなチルノからコツを聞くことは諦めた。仕方無いね、お前バカだもん。
そして、どうやら俺にはチルノと遊ぶ義務があるらしく、よく遊びに誘われた。息抜きにはちょうど良かったため、俺も断らなかったが。まぁ、曇り一つないチルノの笑顔を見ると此方も元気になる。有り難い存在だ。
そうやってチルノと遊んでいるとき、はたと気づいた。自分で水を創造し、それを凍らせれば良いと。
この抑えの効かない能力を使えば、全ての水を凍らせてしまう。けれども、自分で創造した水ならば創造した分の水しか凍らせられない。それならば、別に能力を抑える必要などはない。どうして気づかなかったんだろうね。
一升ほどの水を創造してから、能力を使用。
するとピキリなんて言う音をたて、まん丸の氷ができた。うむ、上出来上出来。
今が何時代なのかはわからないが、きっと製氷機などはないはず。これならば人里でこの氷も売ることができるだろう。
それじゃ、人里とやらへ行くとしますか。
歩いて行くのも億劫だし、そもそも人里の場所を知らないため飛んで移動。なんとも薄気味悪い森を越え、大きな山を横目に飛んでいると、周りを壁で囲まれた人里らしき場所を見つけた。
幻想郷のルールはよくわからないが、この程度の壁など妖怪には意味がないだろう。だって、だいたいの妖怪が飛べるもん。まぁ、それでも形と言うのは大切か。こうやって壁を築き、守っているように見せることが大切なのだろう。
門らしき場所もあったが、一々其処を通るのも面倒くさい。壁を越え、直接人里の中へ。上からお邪魔しますね。
人里の中は、お昼時と言うこともあってか、なかなかに賑やかな声が響いていた。それほど大きな里ではないけれど、悪い場所ではなさそうだ。違う視点から見れば、此処に住む人間は皆、妖怪の家畜なようなものだと言うのに。
並んだ露店や飯屋の客引き、人間同士の話し声など、この人里には明るい雰囲気が溢れている。うん、良い里だ。
さてさて、俺は何処で商売を始めれば良いんだろうか? てか、そもそも商売をしても良いのか? 商売を始めた途端、怖いお兄ちゃんが来て、『おい所場代出せや』とか言われたらどうしよう。
うん、そうなったら穿突を決めて逃げよう。この里に怖いお兄ちゃんがいるとは思えないが……
気にしていて仕方が無いため、髪飾りの様な物を売っている露天の隣で氷を売ることにした。
お隣、失礼します。儲かってますか? ダメですか、そうですか。
宣伝のために水を創造し、能力を使ってそれを凍らせ龍の氷像を両脇へ2体設置。ただの氷柱にしか見えないが、誰がなんと言おうとこれは龍の氷像だ。名前は『たかし』と『けんた』にしよう。
本当なら鑿などで削れば良いだろうが、生憎そんな道具はないし、そもそも俺には芸術センスがない。大丈夫、大切なのは愛なのだ。見た目など関係ない。
商売を始めた最初のうちは、何を売っている店なのかわからなかったらしく、幾人から此処は何の店だ? とか、その氷の柱はなんだ? なんて聞かれた。
そんな質問へ此処は氷を売る店で、コレは龍の氷像だと教え続けているうちに、漸く氷を買ってくれる人が現れ始めた。
材料費は只なのだし、お値段はかなり安くしたおかげか、多くのお客さんが訪れてくれた。やはり、この季節に氷を手に入れるのは難しいらしい。これなら、かき氷とか作っても売れそうだ。かき氷へかけるシロップが見つかればだが。
別に今はお金も必要ではなかったため、その日は2時間ほど氷を売ったところで店を閉めることに。うむうむ、この売れ具合なら問題はなさそうだ。まぁ、冬になったらまた違うものを考えないといけないんだけどさ。
いただいたお金を手に持って、雑貨屋へ。鑿でも買ってみようかと思ったが、ふと煙管が目に止まった。煙草、か。そう言えば吸ったことなかったな。
煙管の似合う男になりたかったため、迷わずソレを購入。売上金はなくなってしまったが、まぁ、また氷を売れば良いのだ。
煙管を購入し、今はホクホク気分。買ったばかりの煙管を口に咥えると、テンションが上がる。そして、其処で気づいた。刻み煙草も、火種も何も買ってない。これじゃあ、何の意味も無いね。まぁ、今は咥えているだけで満足だ。
煙管を咥えながら、フラフラとお散歩。人里の中を歩くのも良いが、今回は飛んでいる時に見えた、あの大きな山へ向かうことにした。山の中ってはやはり落ち着く。渓流でも見つかれば、魚を捕まえてみよう。
人里から飛び山の中へ入ってはみたが、道などはなくなんとも歩き辛そうな山だった。木々の隙間から溢れる日の光が、なんとも幻想的な雰囲気を醸し出す。こう言う雰囲気は嫌いじゃない。
魚を捕まえるため、渓流を探しフラフラと山の中を歩く。そう言えばせっかく幻想郷へ来たというのに、妖怪にはまだ会っていないな。もっと、こう……可愛い女の子が沢山いると思っていたのに……
「止まりなさい。其処から先は山神様の地よ。人間が入って良い場所ではない」
そんな言葉を上からかけられた。む、少女の声だ。漸くエンカウントですか。
声のした方を見上げると、半袖のシャツにミニスカートの女の子が木の上に立っていた。おお、あとちょっとで中が見えそうだ。
「山神様?」
できるだけ自然な流れで、仰向けに寝転がる。
クソが! これでも見えないのか!!
「……山神様を知らない? そもそも此処は妖怪の山。人間が勝手に入ることは許されていないわよ」
あと数センチで見えるため、また自然な流れで仰向けに寝たまま声の主の方へゆっくりと近づく。
あと、ちょっと、あとちょっとなんだ!
「そりゃあ、失礼した。幻想郷へは来たばかりだからな。此処のことはよく知らないんだ。んで、君は何者なのかな?」
ああ、クソ。今度は枝が邪魔して見えないじゃないか。
どうなってんだ、責任者呼んで来い。
「来たばかり、ねぇ……私は射命丸文。今は鬼に変わってこの山を管理している天狗の一人よ。あと、その動きキモイからやめて」
「鬼に変わってか……んじゃあ、その山神様ってのも天狗なのか?」
キモイとは失礼な。この動きには、貴方のスカートの中身を見るという正当な理由があるのだ。邪魔はしないでもらいたい。
枝が邪魔にならないよう、次は仰向けに寝たまま自然な動きで横へ移動。
「いえ、山神様は天狗ではないわ。それに、アレを神と呼んで良いのかも……まぁ、とにかくこれ以上先に進むのはやめておきなさい。死ぬわよ?」
「大丈夫、簡単には死なない体をしt……なるほど白か!!」
ものすごい速さで近づいて来た文にぶん殴られた。
反省はしない、後悔もしていない。
「忠告はしたわよ。あとは貴方の好きなようにすれば良い。それと死ね」
そんな辛辣な言葉を残し、文は何処かへ飛んでいってしまった。
確か文は新聞記者だったと思ったが、違うのか? まぁ、良い物も見られたのだし今日のところは良しとしよう。
しっかし、山神様ねぇ。文の言葉もそうだが、どうにも気になるじゃないか。俺が今まで会った神様と言えば諏訪子に神奈子。それと一応、映姫もそうか。
まぁ、いずれにしても皆、可愛い女の子だった。だから、きっと今回だってその山神様は可愛い女の子なはずだ。それならば、是非会ってみたい。
もしかしたら結婚してくれるかもしれない。
いや、まぁ、結婚まではいかないとしても、知り合いくらいにはなっておきたいしな。
世間は狭いと言うし、知っている奴だったりして。流石にそれはないか。
起き上がってから、服についた葉や土を叩いて落とす。
さて、そんじゃその山神様とやらへ会いに行こうかね。文の忠告を無視する形となってしまうが、其処は自己責任だし問題あるまい。
そして適当に歩いていると、木々がなくやたらと開けた場所へ辿り着いた。
その開けた場所の中心には――
「なんで……どうして、お前が此処にいるんだよ……」
ソイツを見間違えるはずもない。
あの熊畜生が其処にいた。
主人公の家はどうしましょうか?
このまま根無し草ってのもありですけど
と、言うことで第59話でした
どうやら、クマさんが帰ってきてくれたみたいです
きっと主人公を追いかけてきたんですね
これも偏に愛の結果でしょうか?
次話はクマさんからスタートっぽいです
では、次話でお会いしましょう