「承太郎はどんどん大きくなるね」
「お前もだろうが」
「あー、また姉さんに"お前"って言った」
「フン」
雪香はむっと頬を膨らませて不満げに言うが、承太郎はどこ吹く風といった感じで鼻を鳴らしてそっぽを向く。雪香が己のスタンド、O.E.を認識して早くも数年。説後承太郎は高校生になっていた。別に意識したわけでも、どちらかが約束したわけでもないのだが、同じ高校に通っている。承太郎はかなりの美形に育った。もちろん幼い頃から顔立ちは整っていたし、可愛らしい容姿だったが、成長するにつれてその容姿は男らしく色気のあるものに変わっていった。それに伴ってか、性格は少々きつめのものになっているが、それでも女子からの人気は高い。結局のところ女子は少々の乱暴者を好きになる傾向があるのだ。
同じように雪香も他の女子と比べて高身長で承太郎と一卵性の双子ということもあり、こちらも色気のあるスタイル抜群な美人になった。が、少々の幼さ、あどけなさが残っており、それが逆に人を惹きつける要因になっているようだ。だが、やはり男子から人気なのは変わらないようで、告白された回数は両手両足の指の数では足りないほど。しかし、雪香は全て断っている。それは何故か? 簡単だ。今まで一緒にいた承太郎の顔面偏差値が高すぎるからだ。それに加えて自分のことも気遣ってくれる。承太郎以上の優良物件はないだろう。
「そういうの興味ないから、ごめんね」
そう断られてきた男子たちの中には、承太郎に負けず劣らずの顔立ちをしている者もいる。承太郎と比べてしまうとどうしても見劣りしてしまうが、整った顔であるはずだ。だが雪香はそれらを一刀両断し、承太郎にべったりとくっついて離れない。それを見た承太郎は何も言わずに肩をすくめるだけだ。
「ねえ承太郎、私一週間くらい家を空けるけど、大丈夫? 寂しくない?」
「高校生の野郎に聞く質問じゃあねぇぜ。いいからとっとと準備しな」
「はーい」
雪香は素直に返事をすると、荷物をまとめてキャリーバッグに入れると、それをゴロゴロと引きながら玄関へと向かう。
「雪香ちゃん、パパによろしくね」
「うん!」
「それじゃあ、いってらしゃいのキスよ」
そう言ってホリィは雪香の頬にちゅっとキスをする。
「じゃあ私もいってきますのキス」
雪香もそれに応えるようにホリィの頬に軽く口づけた。そんなやり取りが一通り終わってから、のっそりと承太郎が現れる。
「承太郎もお出迎え?」
「いや、空港まで送るぜ」
「相変わらず過保護~……」
承太郎が言い切る前に雪香が言うと、承太郎はふんっと鼻を鳴らす。それから半ば強引に雪香が持っていたキャリーケースを承太郎が持つと、そのまま歩き出す。これから雪香が行くのはアメリカにいる祖父母宅だ。承太郎も誘われていたのだが、承太郎自身が突っぱねたため、雪香一人の訪問となる。『一緒に来ればいいのに』と雪香自身が言っても承太郎は結局乗り気にはならなかった。
空港に着くと、雪香は搭乗手続きのためにカウンターへと向かった。
「それじゃあいってきます! 承太郎!」
「あぁ」
承太郎はそう短く答える。
雪香はそれを聞いて満足そうに微笑む。そしてくるりと踵を返すと、颯爽とその場から去って行った。承太郎はその後ろ姿が見えなくなるまでずっと見ていた。
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「おじいちゃーん!」
「雪香!」
ニューヨークの空港、そのロビーで待っていた祖父ジョセフの元へと駆け寄る雪香。勢いよく抱きつく孫娘を優しく受け止めた。
「久しぶり! おじいちゃん元気そうでよかった!」
「おお、雪香も元気そうだな。大きくなって……それに綺麗になったのう。目元なんかホリィにそっくりじゃ」
「ふふふっ、本当? 承太郎も私よりもずっと身長が高くなったよ。おじいちゃんと同じくらいかな?」
「あいつももう17歳か……早いもんじゃな」
「本当にね。ところでおばあちゃんは?」
「スージーなら家におるよ。まっすぐ家に向かうか?」
「うん!」
こうして二人は久々の再会を果たし、家へと向かっていく。家につき、玄関を開けると祖母であるスージーQが出迎えてぎゅうっと歓迎のハグをしてくれる。雪香も負けじと抱きしめ返し、二人して笑いあう。
「今昼食の準備をしているから、先にお部屋で荷解きをしておいてくれるかしら?」
「うんわかった。部屋はいつものところ?」
「そうよ」
雪香はキャリーバッグを持って一週間過ごす部屋に入り、キャリーバッグを開ける。
『雪香、少し良いですか』
「O.E.? どうしたの?」
『気づいたことがありまして、よろしいでしょうか』
白い布の向こう、淡々とした声音でO.E.は語る。雪香が続きの言葉を促せば、O.E.は雪香に近づき、耳元で囁くようにして言葉を紡いだ。
『雪香の祖父君、スタンドが発現しております』
「えっ!?」