蓮とましろが小さい頃に別れた幼馴染だったら   作:レオ2

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という訳で,あらすじから興味をもって見てくださった人達,ありがとうございます。
今回のお話からはましろと蓮の再会編でございます。pixivからの転載の名残でページが変わる時にnewpageと出ていますので参考にしてください。
ではでは!


蓮とましろの再会編
見つけた


 懐かしい夢を見ていた

 

『アンコール! アンコール!』

 

 北の大地で行われた何かの野外フェス,まだ小さかった私は幼馴染のお父さんに連れられて見に行った。最初は何なのか全く分からなかった。どうせつまらないものだろうって思っていた。

 それは当時私の右手を握ってくれていた人も同じだったと思う

 

 だけど

 

 つまらないなんて事は全くなかった。寧ろそれは,まだ小さかった私の中に入り込むように熱を灯してくれた。

 爆発寸前のエネルギーは,力強い歌声で解き放たれた

 

「すごい……! 私も……いつか!」

 

 そんなことを言ってた熱は何時の間にか冷めてしまっていた。

 その熱を育てる前に,親の急な用事で私はこの北海道という大地を離れる事になってしまったから

 

 [newpage]

 

 重たい瞼を開くと,私のお部屋の天井が見える。カーテンから差し込む光は既にそれが朝だと知らせてくれていて,眠たい眼を擦りながらベッドの横に置いてあるぬいぐるみに内蔵されている時計を見ると時刻は朝の7時,目覚まし時計が鳴る前に起きてしまったのは何時ぶりだろう。

 

 取り合えず目覚まし時計を先に切り,布団から這い出ると目に入るのは自分が大好きなぬいぐるみたち。その中にはバンド活動を通じて出会った友人からもらった大切なぬいぐるみもある。

 そして私の学生鞄に付けているぬいぐるみ……小さな熊のぬいぐるみを見てふとそのぬいぐるみを手に取る。

 自分が初めて家族以外の人から貰ったプレゼント,もう11年くらい前だと言うのに私はこのぬいぐるみを大事にしている。このぬいぐるみを見るとあの色づいていた日々を思い出せるから

 

「あ,学校準備しないと」

 

 少し昔の事を思いだしていたら時間が過ぎている事に気が付いて慌ててぬいぐるみを元の場所に戻し,制服に着替える為に動き出した。

 

「あら,ましろちゃんおはよう」

「おはようお母さん」

 

 急いで諸々の準備を済ませてリビングに降りるとお母さんがもう朝ご飯の準備をしてくれていてトーストにかじりつく。

 既に学校に行く準備は終わっているので少し時間に余裕がある。しばらくかじっているとトーストは既に無くなったので「ご馳走様」と手を合わせて食器をシンクに持っていく。

 

「ありがとう,ましろちゃん。もう行くの?」

「うん,それと今日モニカの練習でちょっと遅くなるね」

 

 中学までの私なら絶対に出てこなかっただろう言葉。お母さんはモニカの事を聞いたら何が嬉しいのかよく分からないけどとても嬉しそうに言った

 

「そうなの? モニカの皆にもよろしく言っておいてね」

「も,もうお母さん。もう子供じゃないよ」

 

 少し恥ずかしくてほっぺに少し熱が灯る。お母さんはそんな私を見るのが楽しいのか笑みを崩さない。

 

「もう……行ってきます」

「いってらっしゃい」

 

 お母さんのお見送りを受けながら私は学校に向けて家を出た。夏休みが終わってまた高校生活が始まった。多分,何もしていなかった頃の私ならただ憂鬱になっていただけの夏の終わりはいつしか楽しみなものに変わっていた。

 だって

 

「あ,ましろちゃんおはよー!」

 

 通学路の途中で快活そうな声でかけてきたのはモニカのリーダーのつくしちゃん,つくしちゃんが居なかったら私は今の私になっていなかったと思う。

 

「おはようつくしちゃん」

 

 並んで私達は歩き出す。と言ってももう私の通う学校……月の森女子学園はもう目と鼻の先なのだけど。

 実際,校門の前でよく目立つ金髪の子がこちらを待ち構えていた。

 

「シロ,ふーすけ遅いぞー!」

「倉田さん達は時間通りよ,桐ケ谷さんが早いのよ」

「んだとー!」

「あはは……おはよう,透子ちゃん,瑠唯さん」

 

 金髪の子は透子ちゃん,とっても明るくて学校の中でも人気者の女の子。私とは正反対……。

 透子ちゃんの後ろから現れた黒髪の背が高い人は瑠唯さんって言ってモニカの中ではバイオリンと作曲を担当してくれてる。

 

「おー,なんか盛り上がってますね~」

「わわっ!」

 

 いきなり後ろから声をかけられてびっくりした。後ろにはいつの間にかモニカのベースの七深ちゃんもいて図らずともモニカの皆が集合する事になっちゃった。

 

「あ,七深ちゃんおはよう!」

「ごきげんよう~」

「揃ったのなら早く行きましょう。時間は有限よ」

「うん,そうだね」

 

 そう言って歩き出す皆の背を追いかけて,私はまた歩き出した。

 今は私と一緒にいてくれるモニカの皆がいるから、学校が始まるのも楽しみになってるんだ。

 

 [newpage]

 

 今日の一通りの学業を終えて,つくしちゃんは学級委員長としてお仕事に,透子ちゃんは少し寄り道,瑠唯さんは生徒会のお仕事が少し残っているって事だったから私と七深ちゃんは一足先に七深ちゃんのお家のアトリエに向かってた。

 他愛のないお話をしながら向かってる途中,七深ちゃんが不意に思い出したように聞いてきた

 

「ねえねえ,そう言えばしろちゃんがその付けているぬいぐるみってどこで手に入れたの?」

 

 言いながら七深ちゃんは私の鞄についているストラップが付いている小さなぬいぐるみを見る。少し昔のもの過ぎて色褪せてしまっているけど,私にとっての宝物。小さな青い熊さんのぬいぐるみは私にとってのそれだけの価値がある。

 

「これは小さい頃に貰ったんだ」

「へえ~。とってもかわいいから気になってたんだ」

「うん! とってもかわいいよね。でも,私にとってはかわいい以上に大切な物なんだ」

 

 私はそう言ってその小さな熊さんに触れる

 

『今はこんなのしか渡せないけれど……また会えたらもっと大きなくまさんをあげるよ!』

 

 私は小さい頃……本当に小さい頃,まだ小学生にもなっていない時は北海道の函館に住んでいた。それで家が隣だったお兄ちゃんと一緒によく遊んだり,歌を一緒によく歌っていた。

 でも,お父さんの転勤で私とお兄ちゃんは離れる事になってしまった。その時に寂しくて泣いていた私にお兄ちゃんがくれたのがこのくまさんだった。

 

『これを僕だと思って,それで大きくなったらお小遣い持って会いに行くよ!』

 

 今思えばすごく恥ずかしいセリフ,だけれど当時はとても嬉しくてこのくまさんを大事にすることにした。これをお兄ちゃんだと思って。だけれど私今はもう高校生,流石にお兄ちゃんが会いに来てくれるとはもう思っていない。

 だからせめてこのぬいぐるみだけは思い出と一緒にしておこうと思っている。

 

(蓮君の事……やっぱり好きだよね……私)

 

 今はもう会えない人の事を考えた時,少しだけ胸がキュッとしまって苦しくなっっちゃた。

 

(蓮君のせいだからね……)

 

 とんでもない責任転嫁をしている気がするけど,約束を守らない蓮君が悪いから謝らないもん。

 

「ん~?」

 

 何故か七深ちゃんが不思議そうな目線を向けて来たけど,小さなころからの恋なんて知られたらそういうのが好きな透子ちゃんやつくしちゃんが黙っていないから目線で内緒と伝える。

 ……でもそれはきっと伝わっていない気がする。

 アトリエに着いても七深ちゃんと他愛のない話をしていると,アトリエの扉が開いてつくしちゃんたちが揃って入ってきた

 

「ごめんおまたせ!」

「ほんとごめん,友達とちょっと長く話しちまって」

「桐ケ谷さんはもう少し時間に気を付けた方が良いと思うわ」

 

 いつものテンションで集まった3人を見て七深ちゃんと苦笑すると,つくしちゃんが少し休憩してから始めようと言った。夏の終わりが近づいているとはいってもやっぱりまだ外は暑くて確かに直ぐに練習をするのはよくないと思った。

 ……でもそれは何だか建前みたいでどこか楽しみそうな表情を隠さずに言ってきた

 

「そうだ! とっても凄いバンドを見つけたんだ!」

「凄いバンド?」

 

 凄いバンド……私の中では香澄さん達のポピパさんやRoselliaさん,After glowさんみたいに色々いるけれどつくしちゃんが言ってくるって事はそれ以外のバンドなのかな。

 つくしちゃんはスマートフォンを取り出して私が飲んでいたペットボトルに立てかける。そしてそのスマホの画面に現れた現れた北海道というワードを見て一瞬どきりとした。

 動画のタイトルは『「北海道のディスティニーロックフェスティバル」のGYROAXIAやべーっ!』というタイトル……なんでこんなタイトルなんだろう? それにしても,ディスティニーロックフェスティバル……この名前どこかで聞いたことがあるような……? 

 皆私の小さな反応には気が付かなかったのか,つくしちゃんが動画の再生ボタンを押す。よっぽどいいカメラとマイクを使っているのか分からないけれどとても鮮明に音声と映像が流れてくる。

 

「すげえ歓声……」

「この規模から見ても,とても大きい野外フェスのようね」

 

 動画から溢れる歓声は,画面越しなのにとてつもない迫力があってまるでお客さん一人一人の声が妖精みたいに飛び出してきているみたい。それも燃えるような赤い妖精……このGYROAXIAって人達の色が赤に見えるからかな……? 

 でもボーカルらしい白髪の人は目つきが悪くて少し怖い。画面越しだからきっとマシなんだと思うけどきっと対面すると固まってしまう自信がある。草食動物は肉食動物を見た瞬間に硬直してしまう。これは生き物としての本能だからしょうがないんだよ! 

 

『俺達の魂を届ける』

 

 ボーカルの人がただそれだけ,MCも何もなくただの一言だけで始まった演奏。『SCATTER』というらしいその歌はとても私達とは真逆のとても重い演奏から始まって……一瞬でこの人たちの演奏に引き込まれた。

 

「……すごいね」

「でしょ!」

「このギター……くううう! 痺れる!!」

 

 この人達の演奏もだけど,何よりボーカルの人達の歌声がとても力強くて胸に来る歌詞もあってとても引き込まれる。

 曲が終わり,観客からのその大歓声が彼らの演奏技術と歌唱力が証明してる。モニカとは全く違う演奏……だけどこの人達の音楽は燃え上がるような炎でお客さん達の胸に火をともすような……凄い演奏だった。画面越しだけど,それがとても伝わる演奏だった。

 

「とても技術の高い演奏ね……けれど私達とは方向性が違い過ぎるから参考に出来そうな部分は少ないわね」

 

 瑠唯さんが演奏を聞いて端的な感想を呟くと,それに反応した透子ちゃんも話し出す

 

「いやいやあのギターとか超かっこよくね?!」

「んー,でも広町的にはちょっとモニカとは会わないかもね」

 

 ちょっと所じゃなかった気がするけど……。つくしちゃんも同じことを思ったのか苦笑してるけど,画面を閉じようとしてスマホに延ばしかけた手がスマホを掴むときにボーカルの人が心から叫んでいるような……心を熱くさせるような声が放たれた

 

『七星蓮!!』

 

「わ,びっくりした!」

 

 つくしちゃんはこの動画を一足先に見ていた筈なのに驚いているって事はこの先は見てなかったのかもしれない……うんうん! そうじゃなくて今この人が言った名前……この名前に私は心当たりがある

 

『いるんだろ……七星蓮!』

「へッ!?」

 

 ボーカルの人がもう一度言った名前に今度こそ身体が反応した。自分でも大きく体をビクッとさせたのがよく分かる。さっきまでのパフォーマンスで高鳴っていた心臓が……さっきとは違う意味で鼓動が早くなって,身体が熱くなってく

 

「ましろちゃんどうしたの?」

「え……あ,えと」

 

『いるならステージに上がって来い……いるんだろ……七星蓮!!』

 

 その心から放たれたであろう叫びは私の中にも突き通って,画面から眼を離せなくなった

 群衆をかき分ける青髪の人が映った時には何かを予感した。観客の中から1人の男性が飛び出し,観客とステージを仕切る柵を足場にして大きくジャンプする人影。ボーカルの人がその人に手を伸ばし,飛び出してきた人も手を伸ばして強引にステージへと着地して……観客側に振り返った

 

「……あ」

 

 不意に出た言葉は驚きだっただと思う。記憶の彼よりも顔立ちはとても大人びていて,印象にとても残っている青い髪は間違いなく……

 

『こいつは名前は七星蓮。Argonavisってバンドのボーカルだ。次のステージはArgonavis,こいつの歌を聞いてやってほしい』

 

 白髪のボーカルの人はそう言って自分が持っていたマイクを彼に押し付けるように渡してステージ袖に行った。周りでびっくりしているバンドの人達を見ると,これはあのボーカルの人がアドリブでしていたんだと思う。マイクを託された人は力強い瞳を宿した後,観客に向けて話した

 

『Argonavisです。一生懸命演奏するので僕達の音楽を聞いてください!』

 

 そこで映像が切れた……どうやらこの動画主は元々GYROAXIAを目当てにしていたらしいからか単純に容量が足りなくなったからなのか……でもそれ以上に私にとって衝撃的だったのは

 

(蓮……くん)

 

 想い人が……思わぬところで姿を現したことだった

 

 [newpage]

 

 倉田ましろは4歳位の時,北海道の函館に住んでいた。今の様に東京に落ち着くまでは転々していたと母親は言っていた。北海道は東京に転勤になる前の最後の地だった。

 

「ママ~」

 

 小さい頃のましろは既に人見知りの傾向があったのか,常に母親についていた。母親が近くにいなかった時は安心する為にぬいぐるみをギュッと抱きしめて不安を消していたと思う。

 そんな性格だったからましろが母親に連れられて公園に来たとしても誰かと遊ぶことなくずっと母親を抱きしめているか,ぬいぐるみを持っているかだけだった。

 

「ね……ねえ遊ばないの?」

 

 そんなましろに声をかけてきたのは公園にいた男の子,空の様な青色の髪に幼い顔立ちはどこか安心感を憶えた。

 けれども人見知りなのでましろは当然後ろに隠れて母親の背後からひょこっと覗きながら首を振る

 

「そ,そうなの? じゃあ……ぼ,僕と遊ぼう?」

 

 どこかおどおどした男の子,それでも勇気を出してくれたのが分かったのか邪険にするのは何だか嫌だなと思った。けれども見知らぬ人には変わりないので母親に助けを求めるように見上げた。

 母親はにこりと笑いましろの頭を撫でながら男の子と目線を合わせる

 

「ぼくも今1人なの?」

「うんうん,お父さんと一緒」

 

 言って男の子は公園のベンチにいる人を指さす。母親が少し頭を下げるとベンチにいる男も頭を下げる。

 

「ごめんね,ましろちゃんとっても恥ずかしがり屋さんなの」

「そうなの?」

 

 男の子は背後に隠れているましろを覗こうとするが,それを察したましろも隠れ蓑術を強化する。

 

「また今度誘ってくれるかな?」

「う,うん。分かった」

 

 そう言って男の子はベンチにいる男性の元まで走っていく。ましろはましろで公園にいるのは少し気まずいのか母親の服を引っ張り,母親もましろの内心を察したのか2人は公園を後にした。

 これが倉田ましろと……七星蓮の初めての邂逅だった。

 

 [newpage]

 

 しろちゃん……ましろちゃん!! 

 

 懐かしい記憶が溢れてきて思考が止まっていたみたいで,背中を大きく揺さぶってきたつくしちゃんによって私は現実に戻ってきた

 

「え?! あ……つくしちゃん」

「どうしたの? そんな顔を紅くして」

「へッ?! あ,赤くなってなんかないよ!」

 

 言いながら自分の頬に手を添えると心なしか普段よりも熱が高い気がする。きっとそんなのは見ている皆にも分かっている。

 

「しろもしかしてこの蓮って人の事知ってるのか?」

 

 透子ちゃんが面白がってさっきの動画の一部分を止めて拡大したものを私に見せてきた。

 彼の顔を見た時また心臓がドキってして鼓動が早くなったのが自分でも分かっちゃう。身体の底から灯る熱はもう自分ではどうする事も出来なかった。

 

「おー,これは恋する乙女の顔ですなあ」

 

 お願いだからとどめを刺さないで七深ちゃん。ほらつくしちゃんも透子ちゃんも獲物を見つけたみたいな顔になって……この後私は蓮君との関係を四人に教える羽目になってしまった

 

 




お疲れさまです。
見てくださってありがとうございます。見てもらった通り,基本的にましろ→蓮です。その為ましろが好きな方にとって違和感がある所があるかもしれませんがその時は是非感想などで教えてもらえると嬉しいです。
では明日の夜も更新いたします。
よろしくお願いいたします

恋人になった2人の関係性どんなのが良い?

  • 今まで通りましろから蓮に激攻め
  • 逆に蓮がましろに激攻め
  • 寧ろお互いがお互いに激攻め
  • というか全部やれ
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