蓮とましろが小さい頃に別れた幼馴染だったら   作:レオ2

11 / 39
こんばんわ。
お待たせしました。ストックが無くなったのでこれから更新測度は下がると思うのでご了承ください。
ぽんちゃんとましろの2日目と3日目,一気にやります。


それからSATO-3さん,高評価ありがとうございます!とってもモチベが上がって嬉しかったです!これからもよろしくお願いいたします!
では!


[ぽんちゃん編] 私が恋した瞬間

『ぽんちゃんとMorfonica』

 

 ぽんちゃんが家に来て2日目,明日にはとうとう蓮達が帰って来ると言う事でましろは少しそわそわしてる。それがぽんちゃんにも伝わったのか2人して一緒に嬉しそうに今日も朝の散歩に行った。

 

 ……ただ案の定

 

「ぽんちゃん待って~!」

 

 ましろがぽんちゃんに振り回されると言う光景がそこにあったのだが。その余りのスピードにましろは泣きかけ,ぽんちゃんはとっても楽しそうに河川敷を走っていた。

 しかし,この3連休はましろにもずっと休みがある訳ではない。彼女もバンドのボーカルとして日々ボイストレーニングとバンドの練習を行っている。自分のあこがれの人の様に,キラキラドキドキしたステージをしたいましろにとってはとても大切な練習だ。ただ,その練習はCiRCLEなどのスタジオか七深の家のアトリエで行うのだが……

 

「ぽんちゃんごめんね,練習には連れていけないんだ」

「きゅうん……」

 

 今日練習しに行く七深のアトリエは自宅から電車で行く距離なのでケージに入れる必要があるし,そもそもぽんちゃんがいたら練習が出来ないかもしれないのだ。

 自分の都合でメンバーの練習を遅らせる訳にはいかない,その為練習の間はお母さんに預けるのである。ましろ母はずっとぽんちゃんがましろについて行くことに不満を持っていたので今日はここぞとばかりにぽんちゃんと遊ぶ気が満々である。

 

「きゃんきゃん!」

 

 しかしぽんちゃんにとってましろはご主人である蓮と似た雰囲気を持つ人間,ましろ母も決して悪い人じゃないのは分かっているがやはりましろといたいぽんちゃんは鳴いて懇願してみる。

 

「うぅ……かわいい」

 

 その懇願にましろのMPは既にレッドゾーンへと入るが,他の皆に迷惑をかける訳にはいかないという理性がまだ残っていた。

 

「ぽんちゃんは私とお留守番だよ~♪」

 

 ましろ母はそう言ってましろの足元にいるぽんちゃんを抱き上げると,ぽんちゃんはしゅんとした様子で落ち込んだ。

 

「そんなに落ち込まなくてもいいじゃない♪」

 

 そう言ってぽんちゃんの頭を撫でるましろ母を複雑な気分で見た後,ましろは靴を履いてましろ母を見た

 

「じゃあ行ってくるねお母さん,ぽんちゃん」

「は~い,いってらっしゃ……あら?」

 

 そこでましろ母のポケットから着信音が鳴り響き,器用にぽんちゃんを片手に抱き上げてスマホを見にあてた。

 何だろうとましろが思ったのも束の間,普段ペースを崩さないましろ母が少し焦ったように声をあげた

 

「え,今日だっけ?! うそ! ど,どうしよう」

「どうしたの?」

 

 余りにも珍しい光景に家を出て行こうとしていたましろの足も止まって聞いてみると,泣きかけながら言った。

 

「今日同窓会だったの忘れてたの~!」

「ええっ?! 夜じゃないの?!」

「それが,地方に行ってる子とかもいるから昼間にする事になったんだって……」

 

 普段ならなんら問題は無いだろう,しかし今はぽんちゃんがいるため下手に家を空ける訳にはいかない。だから道は3つあり,ましろがぽんちゃんとお留守番をするか,同窓会を諦めるか……ましろがぽんちゃんも練習に連れていくかの3つだ。

 ましろの移動手段は電車であり,ペットが乗って良いのかすら把握していない。2人は慌ててそれぞれのスマホで電車にぽんちゃんを連れて良いのかと,ましろはモニカにぽんちゃんを連れて行っていいかと連絡を入れた。

 

「うぅ,ましろちゃんごめんね」

「ううん。仕方がないよ。あ,皆から返事来た」

 

 グループLINEには既に七深,つくしと透子の返事が返って来ていて概ね連れてきて大丈夫だよと言う事でほっと胸をなでおろした。あとは瑠唯の返事だが

 

「あ,『練習に支障をきたさないのなら構わないわ』だって。良かったねぽんちゃん」

 

 その後,ましろが乗る小田急線のペットの取り扱いにつてい一通り見た後,ぽんちゃんがArgonavisのメンバーが割り勘して買ったキャリーケースを取り出して,今か今かと尻尾を振って待っているぽんちゃんに聞いた

 

「じゃあ,ぽんちゃん行く?」

「わんっ!」

 

 一度は置いて行かれると思っていたからか,とっても嬉しそうにぽんちゃんは吠えて自分のボストンバックからリードを加えて持って来た。

 

「いこっか」

「ましろちゃんごめんね~」

「ううん。じゃあ行ってくるね」

 

 鞄とキャリ―バック,そしてぽんちゃんという大荷物を持ちながら家を出た。ましろが普段乗っている小田急線のペットが乗る際の記載はキャリーバッグが最大辺70㎝以内,縦横高さの3篇の合計が120㎝以内でペットとケースの合計重量が10㎏までとなっている。

 しかし,蓮達がぽんちゃんを預けに来た時も小田急線を使っていた筈なのでそれについては問題ない筈である。ましろは駅の前でぽんちゃんをキャリーバッグに入れて,念のため駅員さんに聞いた後にホームに入る事が出来た。因みに私鉄のペットを連れて行っていい基準は私鉄によって違うのでもしペットを連れて行きたい場合は各私鉄のページを見る事をお勧めする。

 

 閑話休題

 

 そのままましろはぽんちゃんと一緒に電車に乗り込み,七深の家の最寄り駅まで向かった。その間ぽんちゃんはましろの膝にいて周りの子供達がぽんちゃんに悶絶していたとかしていなかったとか。

 電車を降りて駅から出た後は真っすぐ七深の家まで向かい,アトリエに到着した。

 

「皆ごめん,遅くなっちゃった」

「お,シロが来たな」

「大丈夫だよましろちゃん,あらかじめ聞いてたから」

 

 どうやらましろが着くまで4人で演奏して合わせていたみたいだ。元々ましろが時間通りに出ていたら間に合っていたのだが,ぽんちゃんのどたばたで時間よりも遅く到着してしまった。

 アトリエに来たましろが持っていたキャリーバッグを見て七深は興味深そうに覗き込んだ

 

「お,これがしろちゃんの言っていたぽんちゃん?」

「う,うん。本当に大丈夫だった?」

「大丈夫だよ~」

「そんな事よりも,速く練習を始めましょう。時間は有限よ」

「う,うん!」

 

 ぽんちゃんをソファにおいてあげた後,ましろは皆と合わせるために広間に行こうとすると

 

「きゃんきゃん!」

 

 ここから出して! というようにぽんちゃんが鳴く。それが分かってしまったのかましろは少し困ったように瑠唯を見る。瑠唯はそのましろ視線で何をしたいのか察し,ため息をついた後に言った

 

「練習の邪魔にならないのなら構わないわ」

「あ,ありがとう瑠唯さん!」

 

 一応皆にも確認の意味で目線を送ると,皆も良いよと頷いてくれたのでましろはさっそくぽんちゃんのキャリーバッグを開けて,ぽんちゃんを抱っこしてアトリエの床に降ろしてあげると,ぽんちゃんは新たな場所を興味津々に探検し始めた

 

「かわいい!!」

「貴方達練習するのではないの?」

 

 普段はいない子犬がいたら気になってしまうのは人の性,瑠唯以外の3人がアトリエを興味深そうに歩くぽんちゃんを見ていた。

 

「するよ? するけどちょっと待って」

「なんかシロに似てるな」

 

 つくしが瑠唯に言い訳している間に透子がぽんちゃんを見て思ったことを言うと

 

「あ,少しわかるかも」

「え? そ,そうかな?」

 

 ましろはその言葉が意外に思った。散歩をする時もとっても元気に走るし,凄く沢山遊ぶぽんちゃんの性格は自分にはそれほど似ていないと思ったからだが

 

「うん。そうだよ」

 

 どこが似ているのか,肝心な部分を教えてもらえなかったがましろがまじまじとぽんちゃんを見ると

 

(やっぱり蓮君に似てる気がする)

 

 自分ではなく蓮の方に似ていると思ったましろなのであった。

 

「……?」

 

 そこでぽんちゃんはましろたちの元を離れ,広間で既に楽譜を準備している瑠唯の元へと向かった。

 

「きゃん!」

「ぽ,ぽんちゃん」

 

 瑠唯は足元に来たぽんちゃんを見ると,ぽんちゃんは見てくれたことが嬉しいのか尻尾を振り忙しなく瑠唯の周り歩いている。

 その瑠唯×子犬という珍しい光景が初めてなのでましろ達4人は固唾をのんで見守っていると,瑠唯はいつものように抑揚が分からない表情で言った

 

「あなたも,練習の邪魔はしなければ好きにしていいわ」

 

 そう言って少し優しく撫でてあげると,ぽんちゃんは嬉しそうに尻尾を振って足踏みした。そんな子犬に優しい瑠唯をびっくりした表情で見ている4人衆を見ると,少し冷たい視線を送った

 

「さあ,早く始めましょう」

「う,うん!」

 

 ましろは慌てて歌詞ノートを取り広間に向かい,つくしと七深に透子もそれぞれの楽器を持って広間に向かい集まった。

 

「それではDaylightから始めましょう」

「うん!」

 

 それが練習開始の合図だった。モニカの練習は基本的に通しでやり後から反省点を振り返るというやり方が主にである。

 モニカの演奏をしている間,ぽんちゃんはびっくりしたように音楽を聴いていたが次第に嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねた。

 一曲演奏を終えると,瑠唯が厳しく言った

 

「貴方達,集中できていなかったわね」

「う,ご,ごめん瑠唯さん」

「ちょっとぽんちゃんがチラチラと移ってミスった」

 

 つくしと透子がやっちまったと言ったように言うが,少し瑠唯の逆鱗に触れた。

 

「ぽんちゃんのせいにしないでもらえるかしら」

 

 ましろはふと思った

 

(あれ,瑠唯さんぽんちゃんに甘い?)

 

 そもそも瑠唯が名前をちゃんづけで呼ぶこと自体が珍しいのだ。いつもはさん付けだから余計に。

 でも,ましろもぽんちゃんがいて集中が出来ない気持ちは分かる。昨日のボイトレの時も,ぽんちゃんがチラチラと視線に入り集中できなかったから。

 

「えっとね,ぽんちゃんをお客さんだと思ってやれば良いと思うよ?」

「なるほど!」

 

 それが昨日のボイトレの時に行きついた考え,ぽんちゃんに歌を聞かせたら嬉しそうにしてくれるので歌以外もあるし何よりも楽しくなってくるのだ。

 

「……最初から合わせましょう」

「うん!」

 

 瑠唯の一言でそれぞれ己の位置につき,先程と違うのは5人の身体の向きがソファーにちょこんと座っているぽんちゃんに向いている事である。

 今日だけのぽんちゃんに送るワンマンライブだ。

 

「ぽんちゃん,聞いて。私達の歌」

 

 そう言ったましろの背後でつくしがスティックでカウントを取り,それぞれの楽器を弾き始めた。

 そうするとソファーにちょこんと座っていたぽんちゃんがメロディーに乗って立ち上がって足踏みをし,嬉しそうに尻尾を振る。

 それを見てテンションが上がった透子はついピックを走らせる。

 6人だけのライブは,日が暮れるまで行われたのだった。

 


 

『私のヒーロー』

 

 私のお家にぽんちゃんが来てから今日で3日目,ぽんちゃんはすっかり定位置になった私のお膝の上で今日もうたた寝をしていてその可愛い姿を惜しみなく晒してくれる。

 

「可愛いなあ,ぽんちゃん」

 

 もう私はぽんちゃんにもうぞっこんだった。今までワンちゃんを飼った事が無かったけれど,この3日間でワンちゃん飼う人の気持ちが少し分かった気がする。

 きっと皆こんな風に癒されて,日々を頑張ろうってなるんだと思う。

 

「昨日は楽しかったね」

 

 昨日は思いがけないアクシデントでぽんちゃんと一緒にモニカの練習をしたけど,ぽんちゃんは私達の音楽に合わせてとっても反応をくれるから皆凄く楽しそうに演奏出来ていたと思う。あの”楽しい”って感覚を忘れないようにしなくちゃ。

 ……蓮君も,よくぽんちゃんに歌を聴かせてるのかな? 

 

「ふふ,ぽんちゃん」

「……?」

「今日の夜には蓮君達が帰って来るよ」

 

 ぽんちゃんにそう言うと嬉しそうに尻尾を振ってくれる。

 朝に蓮君にお電話したら,今日はお昼まで観光してその後新幹線で東京に戻って来るみたい。ライブのお話も沢山出来たら良いな。

 ……でも,ちょっと寂しいって気持ちもある。お家にいる時にぽんちゃんがふと膝の上に来てくれて,疲れが一気に飛んだりもしてたから。それにお散歩も,ぽんちゃんと走るあの時間も今にして思えばとても楽しかったし……

 

「あ,でもぽんちゃん」

「わふ?」

 

 ぽんちゃんは私の少し怒った声に「何だろうって?」感じで見上げてくるけれど……うぅ……可愛い

 

「その……お風呂で身体を舐めるのは余りしちゃだめだよ?」

 

 私の事を心配して愛情表現してくれたのは分かるけれど,その……とっても恥ずかしかったし変な声出ちゃったしそれに……ぽんちゃんは顔も舐めて来たけれど唇だけは阻止してた。だって……

 

「初めては……蓮君が良いから」

 

 そう言って唇に触れてみる……うう……いけない事を考えてるみたいだよ。

 ”そういう事”を一瞬想像してしちゃって何だか恥ずかしくてお腹を見せてくれているぽんちゃんを抱っこしてそのまままたベッドに倒れた。

 

「わん?」

「ふふ,かわいいね」

 

 ぽんちゃんはすっかり私に抱っこされるのに慣れて,今では顔もすりすりしてくれる。Argonavisの人達にとっても甘やかされているのがよく分かる位,とても人慣れしていて甘え上手で……放っておけないのが蓮君みたいだった。

 

「蓮君のこと好き?」

「わん!」

 

 私がそう言ったらとっても嬉しそうに答えてくれた。それが嬉しくてまたぽんちゃんをぎゅーって抱く。ぽんちゃんも嬉しいのかな,さっきよりも体を密着してくれる。

 

「でも……私の方が蓮君の事好きだよ?」

 

 誰よりも……この世界の誰よりも。

 

「わんわん!」

 

 僕の方が好きだよ! って言ってるみたい,でも……この気持ちは誰よりもずっと強く,誰にも負けないもん。蓮君の手を取った,あの日から

 

「ねえぽんちゃん,聞いて? 私と……蓮君の思い出」

 

 私が蓮君の事を好きになった,あの日の事

 

 


 

 

 倉田ましろが4歳の頃,そして5歳の蓮と初めて出会って数日後の事。ましろは久しぶりに休みになった父親と母親と一緒に函館のショッピングモールへと家族で行った。

 当時のましろは……というよりも今のましろもだが少し人見知りの所があり基本的に母親と共に行動をしていた。はぐれないように手も繋いでいた……筈だった。

 

「ママ……どこ~?」

 

 休日のショッピングモールはどこも人が多く,いつの間にか手を繋いでいたはずの母親と父親と離れ離れになってしまっていた。

 見知らぬ人たちに囲まれると言うだけでも普通の小学生でも不安に思ってしまうのに……ましてや大の大人ですら未知の領域には不安を持つ。そんな環境にいたことのないましろにとってその迷子という状況はもはや絶望に近かった。

 

「う……え……えぇーん! ママ……パパぁ!!」

 

 ”誰も”いないという状況に,今まで母親と一緒にいたましろには全く慣れてなく感情が決壊して大きく泣いていた。こう言った時に感情の繋ぎ止めになっているぬいぐるみも今日は母親も父親もいると言う理由で家に置いて来てしまった。心の拠り所すら失ったましろは,道行く人の中でうずくまった

 

「うぅ……」

 

 目の前が全て真っ暗になり,立ち上がる気力すらも湧かなくなってしまった。まだ4歳の女の子にこの状況で立ち上がれと言う方が大分無理があるものだが……”英雄(ヒーロー)”ならきっとこんな時

 

「ど,どうしたの?」

 

 とってもおずおずと,泣いてる彼女に問いかける声。どこかで聞いたような声だがましろはそれ所ではなかった。

 全く知らない場所で,全く知らない人達の波の中で……顔を上げたら知らない世界が広がっているのではないかと思ったましろは顔を上げる事が出来なかった。

 

「ママ……パパ」

 

 心細く呟いた声は人ごみに消えていき……道の往来で座り込んでしまった彼女の手を掴む一つの影。びっくりしたましろは反射的に顔をあげた

 

「あ……」

 

 ショッピングモールの明かりが逆光になって,当時のましろには天界から舞い降りた使者かなにかに見えた……

 

「え……?」

 

 その頭に戦隊モノのお面がついていなければきっとそう思っていた。海のような青色の髪に余りマッチしているとは思えない戦隊モノのレッドのお面。その光景が,ましろの頭に強烈なイメージとして焼き付けられた。

 

「ね,ねえ一緒においでよ!」

 

 ましろの眼もとには涙のあと,ここで語彙力豊富な大人だったら洒落たセリフの1つでも言えたのかもしれないが,当時の少年はましろよりも一つ上なだけ,語彙力という点ではそれほど大差がない。

 だから大の大人が言えば誘拐犯のようなセリフだが,そんなことをましろが知っている筈もなく……1人が寂しくてその男の子の後について行った。

 彼彼女達が着いたのは,ましろがうずくまっていた所にほぼ目と鼻の先にあった何かのイベントスペース,お客さん達が座っている椅子にはましろと同年代の子供達が今か今かと何かを待っていた。

 

「どこ……ここ?」

 

 ましろが不安そうに言うと,連れてきてくれた少年は興奮で頬を紅潮とさせて早口で話した

 

「今日はここでね超夢宙閃隊〈スターファイブ〉のショーがあるんだ!」

「すたー……ふぁいぶ?」

 

 テレビでも動物さん達が映る物しか見てこなかったましろには,少年の言っていることが何一つ分からなかった。だけれど,ましろを引っ張るその手はとっても優しくて……暖かった。

 母親や,父親に抱っこされた時のような安心感が少年から感じる事に気が付いた。

 

(あれ……どうして?)

 

 その”どうして”の答えを,当時のましろは持っていなかった。

 

「超夢宙閃隊〈スターファイブ〉って言うのはね──」

 

 そこから始まる少年の怒涛の作品についての語り。しかし,ぶっちゃけましろは半分も聞いていなかった。少年の口からは当時のましろにはよく分からない言葉の羅列が飛び出していた事もあったが,その事よりも

 

(すごく……たのしそう)

 

 超夢宙閃隊〈スターファイブ〉について語っている少年が,とっても楽しそうに作品について語って,その笑顔がましろには眩しかった。

 少年は語りながらも,ステージショーに用意された椅子にいた人を見つけその人物の元までましろを連れて行った。

 

「お父さん!」

「蓮,どこ行って……」

 

 言葉を詰まらせたのは,言うまでもなく少年……七星蓮が涙を流している女の子の手を引いてきたからに他ならない。しかし,家が隣同士の事もあって蓮の父親も名前は知らないがましろの事は知っていた。

 

「お父さん,この子迷子になってたんだ」

 

 蓮にそう言われた父親は,ましろの顔に合わせるようにしゃがみ優しく問いかけた

 

「お母さんとお父さんがどこにいるか分かるかい?」

 

 顔を合わせたと言ってもやはり大人が怖いものは怖い,いつの間にか蓮の背後に隠れたましろは首を横に振って知らない事を教える。蓮の父親は優しく頷いた後,少し考えるようにしたが頭の中で策が纏まったのか蓮の頭を撫でながら聞いた

 

「蓮,この子とショーを見ていられるかい?」

 

 幸いましろの父親と母親には挨拶しあった事がある為顔は知っている。それにここに来た時にましろの事はまだいなかったことを考えるとそう遠い場所にご両親は行っていない筈。

 

「うん,出来るよ!」

 

 今年で小学1年生になる息子はとても元気よく頷いた。

 

「良い子だ」

 

 次にましろの方を見ると,まだ怖いのかすっかり蓮の背後が板についてしまっていた。それに苦笑した後,2人に自分が座っていた場所を譲ると蓮はましろを先に座らせてから自分も座ると言う紳士的な行動をした事にびっくりした父親だが,兄妹のように手を繋いだ2人を微笑ましく見た後先ずはサービスセンターへと向かった。

 

 ましろは隣で今か今かとショーの開演を待っている蓮に不思議そうに聞いた

 

「どうして……いっしょにいてくれるの?」

 

 道行く人の誰もが自分を助けてくれなかった中,手を差し伸べてくれた蓮。その理由を……知りたかった

 それを聞かれた蓮はとっても不思議そうに首を傾げてから,理由が思い至ったのかましろには眩しい笑顔で

 

 

「だって,泣いてる女の子をたすけるのが男の子(ヒーロー)だ! って超夢宙閃隊〈スターファイブ〉が言っていたから!」

 

 

 ましろが知らない超夢宙閃隊〈スターファイブ〉の台詞,きっと蓮はその中の台詞を実行しただけに過ぎないのだろう。暗い道の中で,1人泣いていたましろを助けるのは蓮にとっては当たり前なのだ。

 蓮はそうしてヒーローの真似をしただけ,だけど

 

「~~っ!!」

 

 その眩しい笑顔に,ましろは何故だか顔に熱が灯ったのを感じた

 

「あ,始まるよっ!」

 

 蓮は飾っていない台詞をましろに聞かせたとは露知らず,いよいよ開演したショーに視線が釘付けになった。ましろも4歳ながら胸の中に灯の正体が何なのか分からないままショーに目を向けた。

 

「「超夢宙閃隊……スターファイブ!!」」

 

 だけれど,やっぱりましろはショーに集中出来なかった。隣ではぐれないように手を繋いでくれている男の子の存在が,とっても興奮したようにヒーローを応援する彼の姿にましろは釘付けになっていた。

 

「わたしのヒーローは……きみだよ」

 

 だから,ショーの歓声に紛れてそんな事を無意識に呟いたましろ……蓮にとってのヒーローは超夢宙閃隊〈スターファイブ〉かもしれないが,ましろにとってのヒーローが蓮になった瞬間だった

 


 

 しろちゃん……起きて

 

「んぅ」

 

 真っ暗な中で自分を呼んでいる声が聞こえて,ゆっくりと瞼を開けたら──蓮君とぽんちゃんがましろの顔を覗き込んでいた。

 一瞬で頭がクリアになって心臓の鼓動が急に加速したのを感じながらベッドから飛び起きた。

 

「れ,蓮君?! え,どうして? え……?」

 

 ましろが状況を飲み込めずにいると,蓮が爽やかな笑みを浮かべていた

 

「おはよう,しろちゃん」

 

 蓮がそんな挨拶をしてくれるが,状況が全く飲み込めず混乱するましろ。そんなましろを微笑ましく見ていた蓮だが,彼に抱かれていたぽんちゃんがするりと抜け出し,ましろのベッドに乗り込むと眠気覚ましのつもりなのかぺろぺろと指を舐める。

 それでようやく覚醒したましろは一瞬で顔を紅く染めた。

 

(み……見られた……私の寝顔……)

 

 ぽんちゃんを抱っこして寝たましろの寝顔は,本人の自覚はないがとっても幸せそうな寝顔を披露していた。別に親に見られる分には構わない。そんなものきっと何回も見ているだろうから,今に始まった事ではない。

 しかし,好きな人に見られる寝顔は親に見られるものとは結構違う。

 

(うぅ……)

 

 自分の無防備な姿を見せる事は自然界では私を食べてくださいと言っているようなもの! ……まあ人間界では食べるは言い過ぎだが,自分の知らない自分を見せる事という点においては恥ずかしいものの何物でもない。

 そんなましろの胸の内を知らないであろう蓮は首を傾げていたが,人懐こい笑顔で言った

 

「しろちゃん,とっても気持ちよさそうに寝てたよ」

「ああぅ……蓮君,どうしてここにいるの?」

 

 自分の羞恥の熱を冷ます為に顔を手で覆って蓮に問いかけると,蓮はぽんちゃんをまた抱っこしながら答えた

 

「うん。さっき新幹線で東京に戻ってきて,荷物は結人と凛生に万里の3人が先に家に戻って僕と航海がぽんちゃんのお迎えに来たんだ」

「……どうして私の部屋?」

「しろちゃんのお母さんが入れてくれた」

「おかあさん……」

 

 蓮がこの部屋に入れたのは母親のせいということを知って脱力したように1階にいるだろう母親に心で叫んだ。

 

(忘れて……なんて言えないよ)

 

 それを言えば理由を言わなければならないし,その理由に「貴方の事が好きだから恥ずかしい」……なんて

 

(言える訳ないよ!)

 

 ”好き”を伝える事が,こんなに難しいなんて知らなかった。

 音楽が好き,モニカが好き,透子もつくしも,瑠唯や七深の事も好きだと伝えたことはあった。その気持ちはこれからも変わらない。

 蓮が好きと言う事も……でも本人を前にして口にしようとすると鉛の様に口が重くなって言えなくなってしまう。それを言う事で”友達”や”幼馴染”という関係性が壊れてしまう気がしたから。今までの関係が有耶無耶になってしまう位なら……

 

(ずっと……このままで)

 

 少なくとも喧嘩とかしている訳では無いのだからマイナスの関係になる事はない筈だ。下手な事をして失う関係の方が徐々に明るくなって来たましろには耐えがたいものだった。

 

「しろちゃん,どうしたの?」

 

 目の前にはあの日のような心配気な蓮の顔,そこにぽんちゃんも加わりやっぱり蓮も何だか子犬みたいだなって思いながら首を振った。

 

「な,なんでもないよ。下行こ?」

「う,うん」

 

 2人はそう言ってぽんちゃんを連れて下のリビングに向かうと,テーブルに航海が通されていてテーブルにお土産を挟んで談笑しているところだった。

 2人はましろと蓮に気が付いて振り返った

 

「あ,おはようましろちゃん」

「う,うん。あ……航海さんもお帰りなさい」

 

 ましろの母親の微妙な態度はひしひしと感じながら航海もやり切った笑顔で答えた

 

「ただいま。ぽんちゃんは良い子にしてた?」

「はい……! とっても良い子にしてました!」

 

 ぽんちゃんのお散歩やお風呂は大変だったが,やんちゃなぽんちゃんを見るのは癒されたし何より一緒のベッドで寝ると言う小さなころからの密かな夢が叶って総合的にはとっても満足した3日間だった……まあ最終日は殆どお昼寝をしてしまったのだが。

 

「しろちゃんとぽんちゃん一緒のベッドで寝てたんだよ!」

「れ,蓮君!」

 

 蓮に悪気がないのは分かっているが色々誤解を生みそうなワードにましろは慌てるが,ぽんちゃんとましろが一緒のベッドで寝ていたことが蓮にとっても嬉しいのか,まるで尻尾を振って喜びを表しているようにぴょんぴょん跳ねそうな蓮にましろは恥ずかしくてほっぺを赤くして下を向いてしまった

 

「はは,蓮。そろそろ行こうか。ユウがご飯を作って待ってる」

 

 航海がましろの様子に何かを察しながら言うと,蓮は頷きましろに向いた

 

「しろちゃん,ぽんちゃんの事ありがとう。ぽんちゃんもきっと楽しかったと思う!」

「蓮君……うん。私もとっても楽しかったよ!」

 

 そう言ってましろは蓮に抱かれているぽんちゃんの頭を撫でると,気持ちよさそうに眼を閉じて身を委ねていた。

 

「ぽんちゃん,また会おうね」

 

 その言葉にぽんちゃんは「わん!」と答えてくれたのだった

 


 

『蓮とぽんちゃん』

 

 シェアハウスArgonavisの蓮の自室にて,蓮はいつのまにかベッドに潜りこんできたぽんちゃんと一緒に写真を見ていた。それは今回の大阪のライブフェスの写真,スタッフさん達が撮ったものやファンの人が取ってくれたものを貰った物だ。

 フェスの中の屋台やステージ,そしてGYROAXIAの映像。観客を圧倒する音楽を披露し続けた旭那由多……蓮の目標の1人でライバルだ。

 

「那由多君,今回もすごかったなぁ」

 

 彼らのパフォーマンスが忘れられず,この後の自分達も彼らに負けじと盛り上げた。

 自分達のライブの映像を見るとお客さん達もとっても盛り上がってくれているけれど,こうして俯瞰してみるとまだ甘いと思ってしまう所が見つかり明日からの練習も……いや寧ろ今から歌おうかと思った

 

「……歌いたい」

 

 そう小さく呟いてぽんちゃんを膝に置いた蓮は歌い始めると,ぽんちゃんもそのリズムに乗ってぴょんぴょんと跳ねる。それが嬉しくて蓮の歌は結局彼の就寝時間まで歌われた。

 こう言った蓮の唐突なライブはシェアハウスArgonavisでは日常茶飯事なので凛生はいっそ蓮の為にカラオケ機器を買っても良いのではないかと思った事すらある(尚,万里がしっかりと監視しているため実行はされていない)。

 しかし,蓮の活動時間は大体夜の22時まで。その時間になると自然と眠くなってしまい疲れた子供の様にベッドに入り込み,もう一度だけ今回の写真を見て……手を止めた

 

「あ……」

 

 それは今日の写真,大阪の観光名所の写真ではなく……ましろとぽんちゃんの寝顔の写真だった。とっても幸せそうなましろの写真。

 ついスマホで撮ったそれは,蓮の心臓の鼓動を早くした。

 

「ぽんちゃん,どうしてしろちゃんの顔を見ると嬉しくなるんだろう?」

 

 11年前はそんな事を感じた事も無かったはずなのに……今年のましろの懸命な捜索の末に2人はまた出会う事が出来た。あの頃のまま……ではない。

 2人とも成長し,蓮は大学生に,ましろは高校生になった今大体の人が2人を見て思うのは”恋人”なのかなと言う事。だけれど蓮はそんな事を考えたこともなかった。

 

「わん……?」

 

 そんな事をぽんちゃんに言われてもぽんちゃんには分からない。だけど,ぽんちゃんは蓮の顔がどんな顔なのか知っている。ぽんちゃんは嬉しそうに布団に潜り込み,頬が紅くなっているご主人のほっぺをぺろぺろと舐める。

 

「ぽんちゃんどうしたの?」

 

 だって,蓮のその表情は今日蓮との思い出を話してくれたましろと全く同じ顔だったから。

 

「わん!」

 

 ぽんちゃんは何となく,ましろと蓮が一緒になってくれるのではないかと思い嬉しそうに答えたのだった




お疲れさまです。
という訳で,ましろが蓮の事をあれこれ考えるようになった時のお話を書かせていただきました…。
迷子のましろを助けたという理由,ましろにとってのヒーローが蓮だったっていうお話です。
…まあぶっちゃけこの小説書き始めた時には出会いの事なんて何にも考えてなかったんですが,流石に4歳からずっと好きっていうのも理由なしじゃ弱いと思ったのであれこれ考えた結果今回のお話が出来ました。レッドの仮面をつけた蓮はぷちごなびすから持ってきました。

ましろも蓮もその内イチャイチャし始める…はず?

ではでは!

恋人になった2人の関係性どんなのが良い?

  • 今まで通りましろから蓮に激攻め
  • 逆に蓮がましろに激攻め
  • 寧ろお互いがお互いに激攻め
  • というか全部やれ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。