デュエット編第二話でございます。
書いている内にこれ一歩間違えたらR18展開に行きそうになってしまいました。
今回のましろの服装はアニメイトコラボカフェから拝借してきました。下にURL貼っておくのでイメージしたいという方は覗いてから是非見てみてください。
https://pbs.twimg.com/media/FpepUsqaIAAsxWW.jpg:large
それから何度か既に言っていますが本作品のましろは基本蓮にぞっこんなので多少恋愛脳感があるのをお忘れなく。
因みに今回1万4000字くらいあるので書いた自分がいうのもあれですが,疲れたら休憩しながら読んでくださいね。
では!!
『蓮とましろとカップルジュース』
商店街のデュエットカラオケ大会の開催が決定され,透子の思わぬ援護射撃によって蓮とデュエットを組むことになったましろ。
とうとう明日に迫った蓮との打ち合わせと言う名のデートに気持ちは高揚し,心臓は高鳴っていた。
「明日はどんな服で行こうかな」
2人きりで出かけるのは実際の所久しぶりだったりするので,ましろは気合を入れて自分が持っている服とにらめっこしていた。
前の時に着たましろ母のワンピースという事も思い浮かばなかった訳ではないのだが,今はもう肌寒くなっていた季節なので流石にどちらかというと半袖のあのワンピースを着るという選択肢はなかった。
じゃあどんな服で行こうかとも悩みどころである。
『今日のしろちゃんの服,凄く似合ってて可愛かった!』
思い出すのは初めて2人きりでデートした時の,蓮の最後のメッセージ。あのメッセージだけであの日の夜はずっとじたばたして……恥ずかしくて……心臓が爆発してしまいそうな位嬉しかった。
「蓮君……清楚な方が好きなのかな」
この前の時の反応を思い出しながらハンガーにかけてある白を基調としたお洋服を取り出し,スカートは水色系統のものを出してあれこれ合わせてみる。そして2時間ほどかけてようやく”これかな? ”という組み合わせを発見したましろはドキドキしながらベッドに倒れた。
(蓮君……可愛いって言ってくれるかな……?)
明日の蓮の反応が楽しみなましろだったが,不意に枕の横に置いてあったスマホが振動したのを見て取ってみると,結人からのLINEが来ていてまた蓮の事かなと思ったましろはメッセージ画面を見ると,1枚の写真が送られて来ていた。
「……蓮君?」
映っていたのは全身が映るように写真を撮られている蓮だった。蓮の表情はどこか困惑している顔で,ましろも困惑していたが次に送られてきた結人のメッセージで合点がいった。
『悪い倉田さん,明日打ち合わせついでに蓮の服を見繕ってやってくれないか?』
そう言われて改めて写真の服を見てみると……さっきは余り気にしなかったのだが確かにちょっと……ダメかもしれない。シャツは少しヨレヨレだし何なら服のど真ん中に『VOICE』とでかでかと書かれているし……もしかしてこの格好で明日来ようとしていたのかもしれないと思うとちょっとびっくりする。
でも,ましろはちょっと不思議に思った。シェアハウスに一緒に住んでいるArgonavisは確かにもう家族と言っても差し支えないほどの関係性を築いている。
そして航海も結人も,どちらかというとお洒落な人間である。わざわざ……いやとっても嬉しいがどうして自分に頼むのか分からず思わずそう聞くと
『一緒にいられる口実が増えるだろ?』
という文面と共に大きくグッドポーズをしたキャラクターのスタンプが送られてきて
「うぅ……本当にわかりやすいのかな……私」
でも,向こうが蓮を貸してくれるのならましろにとって嫌なことなわけがない。ましろは羞恥で指が狂いそうになりながらもお礼を言って,次に男性のファッションを紹介しているページにまで指を走らせた。
明日は本当なら下北沢周辺であれこれ話す予定だったが,ここに蓮の服をショッピングするという目的も加わった明日ならば……
「渋谷位まで……行こうかな」
若者の街,人が沢山いる所は苦手だけど蓮の服を探すには丁度いい場所かもしれない。それに蓮が住んでいる下北沢から電車で一本と言う距離でもあるから移動も楽だ。
「蓮君……どんな洋服が似合うかな……?」
蓮も既に大学生なのでやっぱり大人っぽい恰好の方が似合うのだろうか……いやでも蓮は何だか子供っぽい所もあるから見た目幼い服でも案外様になったりするのではないか……など色々考えて,明日の事が楽しみにしながらましろは準備を進めた。
★
ちゅんちゅんって,小鳥さんたちの大合唱が私の眼を覚まさせてくれた。
とっても気持ちの良い目覚めをした私は,さっそく支度と朝ごはんを済ませて……今日のお洋服に着替えて1階に下りたらお母さんがビックリしたみたいに目を輝かせてきた。
「あらましろちゃん,すっごく気合入ってるわね」
「う,うん。今日は……蓮君とお出かけだから」
頬の熱をじんわりと感じながら私は脱衣所でもう一度だけ自分の姿を鏡に映して,最後におかしなところがないかチェックした。
麴色のトップスにヒラヒラが着いている黒のスカート……昨日2時間以上かけて組み合わせたコーデでそれなりには自信はあるけれど,蓮君がまたコーデの感想を言ってくれるのか分からなくて少し不安になって私は少し長めに鏡でどんな感じがこのコーデに似合うのか時間も余りないけれどあれこれやってみた。
……学校に行く時はこんなに鏡を見ないのに……
「……? お母さんどうしたの?」
最後のチェックをしてたら,不意にお母さんが鏡の中に映り込んできてビクッとする。でもお母さんは近くの棚にある私が普段あまり使わないヘアアクセサリーの所から青色と白色の布のようなカチューシャを取って私の背後に回って,それを結び始めた
「折角のデートなんだから,少しはいつもと違う髪型で行くのもお母さんは良いと思うな♪」
「え,あ……」
私がなにかを言う前にするすると,手際よく私の髪を整えてくれたのは編み込みに,すっごく可愛いカチューシャで今日の私の衣服にとっても合ってる気がした。
私の髪……長いって訳じゃないから凄く難しいと思うのにこんなに直ぐしてくれたんだ。
「うん,このお洋服にはやっぱこれが一番ね♪」
「あ……ありがとう,お母さん」
「どういたしまして,あとでデートの感想教えてね」
「え,ええっ?!」
付き合っている訳じゃないのに……あ,でも私も昨日はデートって楽しみにしてたから……でもお母さんにその内容話すのは恥ずかしいよ!
「じゃあ行ってくるね」
「はぁい! いってらっしゃい」
お母さんに見送られた私は家を出て下北沢駅まで向かった。電車に揺られて20分位で下北沢駅について駅の改札口まで行ったら……待ち合わせをしてた人がどこかソワソワとして立ってた。
結人さん達に充てが割られたであろうお洋服……ディスフェスの時に着ていた紺色のジャケットに白シャツにパンツ姿の蓮君だ。
ステージでしか見なかった格好だから少しびっくりしたけれど,とっても目立ってから良かった……かも?
「蓮君,お待たせ。待った?」
……このセリフ,よくカップルがしてる掛け合いの台詞って事に後で気が付いたけれど蓮君は私の方を見てとっても嬉しそうに反応してくれた。
「しろちゃん! ううん,僕も今来たところだよ」
(~~っ!!)
まるで恋人みたいな掛け合いに私の心はまた少し熱くなった。
「……」
「ど,どうしたの?」
私が内心で悶えている間,蓮君は私の事をじっと見つめてきて……少し恥ずかしいけれど見られていることに喜んでいる私も確かにいた。
蓮君は私に言われて気が付いたのか,とっても素敵な笑顔で言ってくれた
「今日のしろちゃんもすっごく可愛いね!」
「……!!?」
可愛いって言われた瞬間に,私の中の血がぶわって沸騰したみたいに蠢いて……私の中の情緒が壊れてしまった。
だって……
「うぅ……」
「し,しろちゃんどうしたの? 大丈夫?」
真っ赤になった顔を隠したくて……つい道の往来ということも忘れてその場でしゃがんじゃった……でもしょうがないよ。だって……蓮君の口から”かわいい”って……可愛いって言われたんだよ?!
可笑しくなるなって方がむりだよ……。
「う,うん……。大丈夫……」
呼吸を整えて,数秒して治った……筈の私は少し下を見ながら立ち上がると蓮君は安心したみたいに微笑んでくれた。その笑顔が,私の心をすごく穏やかにしてくれる。
「蓮君,行こ?」
「うん。どこに行くの?」
今日は商店街のカラオケ大会についてって蓮君に話してるだけで場所とかはあまり決めてなかったけれど,最初は無難に……
「どこかでお茶しながら今回の事について先ずは話させて?」
そう言って私と蓮君は電車に乗り込んで渋谷にまで向かった。普段人が多い場所だから本当は余り来たくないのが本音だけど,今日は蓮君の服を見繕うと言う使命もあるからピッタリな場所だと思う。
電車の中で私と蓮君は最近の調子や,バンドの事……それにぽんちゃんの事を色々話すようになった。
「ぽんちゃんってとっても元気だよね。蓮君お散歩のとき大丈夫?」
この前預かった時に体験したぽんちゃんの凄まじいダッシュ……私と同じ位運動が苦手そうな蓮君って大丈夫なのかなって思ってた私の質問に蓮君はどうしてか嬉しそうに首を振った
「ううん。ぽんちゃん足が凄く速くていつも僕が引っ張られちゃうんだ」
「あ,蓮君も? 私もなんだ」
そう言って私達は何だか可笑しくて一緒に笑った。
蓮君曰く凛生さんとお散歩する時は逆にぽんちゃんが疲れていることが多いんだって。
「凛生は函館で甲子園までいったんだ!」
「こ,甲子園?」
夏によくテレビでやってる高校野球の最高峰,プロ入り出来るかどうかの登竜門。そんな大会に凛生さんがいたチームが出場したことがあるんだ……。
「でも凛生は,肩の怪我で野球が出来なくなっちゃったんだ」
そう言って自分のことのようにテンションが下がっていた蓮君を励ましたくて……つい右手を蓮君の膝に置いてる手に触れた。
「でも,きっと凛生さんがそうじゃなかったら今のArgonavisは無かったと思うから……」
でも,普段余りこんなセリフを言わないから途中ですごく恥ずかしくなって言葉に詰まっちゃった……。そんな私を見かねてくれたのか,それとも彼本来の優しさなのか”分かってるよ”って……そんな感じで蓮君の右手も私の右手に触れてくれた。
「うん。分かってるよ。あの出来事がなかったら凛生はきっとArgonavisになってなかった。だから悪い事ばかりじゃないって」
「……。うん。良かった」
「うん!」
「ふふっ」
きっと私達と同じ,これまでしてきた事がなかったらまた会う事は出来なかったんだって思ったら私がしてきた事全部意味があったんだなって,そう思えるんだ。
そうして私達はショッピングモールまでやって来た。
「人,とても多いね」
「うん。やっぱり週末だからかな」
週末のショッピングモールはとても混んでいて,このままじゃ蓮君と離れてしまうかもしれない。というより……徐々に人混みに紛れてしまう。
私は咄嗟に蓮君の手を掴んで,離れないようにした。それにビックリしたみたいに蓮君が眼を大きくして見たけれど
「その……離れないように,ね?」
そうやって言い訳して私は蓮君と手を繋ぐ理由を手に入れた。
蓮君も納得してくれたのか手を握り返してくれて……蓮君の手と私の手がまたぎゅって……恥ずかしいのと同時に嬉しかった。
「あ,ここテレビに出てたところだ」
ショッピングモールでゆっくり出来そうなところを探していたら,この前テレビでやっていたカフェを見つけた。でもあのテレビ,お風呂に入る前に見ていたものだからどんな感じのお店だったのか見れてなかったんだよね……。
「ここ,今入れないかな?」
蓮君もちょっと疲れたのか,外から見える範囲でまだチラホラ席が空いているのをみて聞いて来た。私もテレビに出るようなカフェだから少し気になった
「じゃあ,ここにしよっか」
私と蓮君はそのままカフェに入って直ぐに席に通されて……ちょっと名残惜しいけれど手を離して対面の席に着いた。そうして私はアウターを脱いで席にかけていたら店員さんが来てメニューを持ってきてくれた。
「ご注文がお決まりになりましたらそちらのベルで呼んでくださいね」
「ありがとうございます」
「あ,それから当店のおすすめはこちらになります」
とっても素敵な笑顔で店員さんがおすすめしてくれたメニュー……それを見た私はようやく収まりかけていた熱が再発してしまった。
だって……だって……
(カップルメニューって……?!)
店員さんが指さしてくれたメニューは……色とりどりに盛られたフルーツとブルーサワー色の飲み物でグラスの真ん中にはハート型の飲み口が二つあるストローが刺さってた。
頭が沸騰してくる中で周りの人を見てみたら皆同じものを頼んでいて……皆男女の人達で”そういう人達”なんだって察しちゃった。
3つ隣の人達なんて,すっごく幸せそうに同じストローで飲んでみてる私がいけないことをしてしまっている気になってしまう。
「し,しろちゃん大丈夫?」
「えぇ?! う,うん! 大丈夫だよ!」
手を繋いで入店してきた私達も,店員さんからみたら
(恋人同士に見えた……って事だよね)
実際はそうじゃないんだって分かってるけれど……周りの人からそう見えたならすっごく嬉しい。だって,私と蓮君がお似合いに見えたから……こういうメニューを勧めてくれたんだから……でも
(恥ずかしいよッ?!!)
でもやっぱりあんなラブラブな夫婦みたいな光景を見せられてこのメニューを頼む勇気私ないよ?
「色んなメニューがあるんだね」
そんな私の気を知ってか知らずか,蓮君はとっても楽しそうにメニューを見てる。……あのメニュー見えていないのかな? というより,あんな近くでカップルメニュー頼んでる人達いるのに……あ,そうか。蓮君の位置からなら死角になってるんだ。
「しろちゃんはどれにする?」
僕はこれってただのフルーツジュースを指さして私の反応を待ってくれる。やっぱり店員さんがどれを指さしたのか分かってないのかな‥。
でも……うん。まだ恋人じゃないんだし今日は普通のメニューにしよう。店員さんを呼んで私と蓮君はそれぞれ飲み物を頼んで,それを待っている間私は今回の大会についてお話しする事にした。
「えっと……今回のデュエット大会はね」
「その,その前にデュエットって……どんなことをすればいいの?」
あれまで結人さんやεepsilonΦのギターボーカルの二条遥さん,そしてGYROAXIAの旭那由多さんとツインボーカルをした事がある蓮君だけど,こういったデュエットというのは初めてなのでつい聞いて来た。
でも……私も私でそれほど詳しい訳じゃないから聞きかじった事で話す事にした
「えっと……基本的にツインボーカルって思ったらいいんじゃないかな。2人で同じ曲をパート分けして歌うんだ」
「そっか,じゃあいつも結人とやってる感じで良いんだ」
デュエットって大仰な名前だから戸惑うのは少し分かるかも。
「うん。それでその……大会のことなんだけど」
これがすごく難しいと思うんだ。
「今回はカラオケの採点機能とかじゃなくてお客さん達が投票して決める方式なんだ」
「……LRフェスみたいな感じかな?」
LRフェスはライブ後にスマホの特設サイトから得票数でバンドの順位が決まっていたから確かにイメージはそんな感じかな。
「うん。本当ならお客さんの層を見て歌う曲を決めたいんだけど……」
「そっか,今回のお客さんの層はバラバラだから純粋な歌の上手さで決まるんだね」
……でもよく考えたらお客さんに合わせて歌う曲を変えるっていうのは私達のやり方じゃなかったかも。いつも自分達の伝えたい事を音楽に私も蓮君も載せていたと思うから。
「うん。だからその……」
今回のデュエットの出場者はカップル,或いは夫婦の人達……だから多分参加者のほとんどが恋の歌を歌うと思うけど……
「歌う曲どうしようかなって」
蓮君はきっとその事に気が付いていない。だって……私恥ずかしくて”男女”じゃないと出られない大会としか言ってないもん。
カップルが参加条件と男女が参加条件……出る人は変わらないけれどその言葉が持つ意味はかなり違う。だって……一線を越えているか超えていないかの違いはとっても大きいと思うから。
「うん。今僕としろちゃんが一緒に歌える曲は──」
蓮君が続けようとした時,店員さんがお盆を持って私達の所に来て蓮君は口を閉じると,店員さんが素敵な笑顔で蓮君の方にフルーツジュースを置いて,私の前にも飲み物が置かれて──
(……??!)
「こちらフルーツジュースと……フルーツラブジュースでございます」
……私が頼んだものと違うものが置かれて私の頭の中の思考が一瞬停止しちゃった。
私の前には蓮君のフルーツジュースよりも大き目なグラスに入った色とりどりのフルーツに幻想的な景色を連想させる水色の飲み物……極めつけにハート形の飲み口が二つある飲み物だった。
(わ,私こんなの頼んでないよ??!)
慌てて店員さんに言おうとしたけれど,店員さんは凄く速い手際で伝票を置いて戻って行っちゃった……。
「わぁ,しろちゃん凄く可愛いもの頼んだんだね」
「えっ?! いや……そのこれは……店員さんが間違えて」
「え,そうなの? 言わなくて大丈夫?」
とっても心配そうに……ちょっと恥ずかしそうに私の前に置かれたものを見る蓮君。
(蓮君……意識してくれているのかな)
きっと何も思っていないのなら何とも思わない筈のこのカップルメニューだって気にならない筈だし……少し,いたずらしたくなっちゃった。
「ううん。折角だしこのままで良いかな。蓮君」
「なに?」
これを言ったら……どんな反応してくれるかな?
「……一緒に飲も?」
「……え?」
蓮君がとってもビックリして私のそれを見る。♡型のストローに二つの飲み口に……そもそも2人で飲む前提のものだからかちょっと多めの量のフルーツとドリンク。
「で,でもそれはしろちゃんが頼んだものだし……」
これを一緒に飲む事の意味を考えたのかな,蓮君が今まで見せた事ない位に顔を真っ赤にして目線がうろうろしてる。それを見た私の心は嬉しくなって……あと少し楽しくもなってきて距離をちょっと詰めた
「わ,私一人じゃこの量はちょっと無理なんだ。ね,蓮君お願い」
初めて異性に対してする”お願い”。ちょっと恥ずかしいけれど……蓮君の方が普段から私に恥ずかしい事言っているんだから偶には良いよね。
蓮君はちょっと口元を震えさせていたけれど,顔を紅くしたまま聞いて来た
「じゃ,じゃあその……いいの?」
「う……うん」
私はそう言ってテーブルの真ん中にその……フルーツラブジュースをスライドさせてストローの飲み口を私と蓮君の方向に向けた……けれど
「……」
「……」
改めてこうして対面してみると……凄く恥ずかしくなってお互い無言でそれを見る。グラスに反射してる私の顔は少し火照っているように見えて,それは蓮君も同じだった。
とっても少し微妙な時間が流れたけれど……このままだったら飲み物がぬるくなって折角の飲み物が台無しになっちゃう……そう思った私は意を決して言った
「じゃ……じゃあせーので一緒に飲も?」
それが私の精一杯の提案だった。
「うん。そうだね……じゃあ……」
私と蓮君は少し身を乗り出してその飲み口に顔を近づけた。
「せーの!」
そう言って私と蓮君はそのストローに一緒に口を付けた。
(~~!?)
そうしたらさっきまでテーブル一つ分離れていたはずの蓮君の顔が直ぐそこまで近づいてきていて,私はその少し幼さを感じさせる蓮君の顔に胸がキュンってして……また体の熱が吹き上がってきて頭がもうどうにかなってしまいそうになった。
(蓮君……かわいい)
歌っている時の蓮君は目元がキリリとしてて表情も凛々しいものになってその姿もとってもカッコいいけれど,こうしたプライベートで見せてくれる気が緩んでいる表情を……こんな近くで見ることが出来るなんて。
「……んぅ」
何だか見合っているのが恥ずかしくなってゆっくりとストローから口を離したら,蓮君も全く同じタイミングでストローから口を離して凄く恥ずかしそうに呟いた
「何だか……味が分からないね」
「う……うん。そうだね」
蓮君の言う通り蓮君の顔がずっと近くにあって……何だか恥ずかしくて実際に私もこの飲み物の味が全然わからなくて……蓮君の顔に見とれていたんだ。
(私って……凄く簡単だよね)
再会しただけでこんなに蓮君に熱を出して……でもこの気持ちがある時が一番私が私らしくいられる時間なのかもしれない。
「ね,もう一度一緒に飲も?」
「う……うん」
そう言って私達は凄く濃厚で……甘い時間で……まるでこの世界に私と蓮君だけがいて,2人で同じものを飲んでる事に私は幸せを感じていた。
きっと……これからもこうやって蓮君と同じ時間を過ごせたらいいなって……改めて思ったんだ。
『試着室危機一髪!!?』
カップルメニューならぬものによってましろと蓮は今日がデュエット大会の打ち合わせということを忘れ、とても甘酸っぱい時間を過ごしていた。
「……」
「……」
さっきまでの甘美な時間の余韻なのか2人とも無言ではあるが、チラチラとお互いを見て不意に目が合ったら2人して目を逸らす。
そのくせましろの左手と蓮の右手は繋がれているのだから不思議ではある。
そこでましろは思い出したように話しかけた
「そ、そうだ蓮くん。一緒に服見に行こ?」
「え? 服……?」
「うん。ダメかな……」
「ううん。じゃあ行こっか」
そうしてましろ達はショピングモール内にある服屋へとやって来た。取り敢えずましろは蓮に自分で選んでみてくれる? と頼んだ。
ましろも女の子なので人並みにはオシャレには気を遣うが、蓮はオシャレには疎く、その蓮が自分で選んできた服は
「あ……ああ」
蓮の事が好きという色眼鏡を取っても正直ダサ……似合っていなかった。
何故かデカデカとHEROと描かれたTシャツに派手な赤色のマフラー……何がどうしてこうなったと言わんばかりに絶望的に蓮のセンスが無かった。おまけに選んできたズボンもダボっとしているもので,ちょっとチャラそうな人が着たら似合うであろうそれも蓮が着る所をイメージしたら絶望的なダサさだった。
「れ、蓮くん。ステージ衣装とかいつもの服ってどうしてるの?」
「えっと……衣装は万里が考えて今日は結人がこれにしとけって」
どうして結人にこの格好なのかと思わない蓮はとても純粋なのだった……。
実は蓮、ましろとの初デートの時の無難な服装も凜生と航海のコーディネートだったりで大切な時の服装は毎回メンバーの誰かにこれにしておけと言われてそれを素直に着ている。
(うぅ……蓮くん、すっごく純粋に選んできたからダサ……じゃなくて似合ってないって素直に言えないよ)
メンバーがやんわりと蓮のコーディネートを考える理由が分かってしまったましろ。
そして結人がましろに蓮の服を投げた理由も何となく分かってしまった。
「これかっこいいなあ……これにしようかな」
蓮はこの似合っていない服に本気で惚れ込み買ってしまうタイプの人間だと……きっと1人で買いに来た時とかには酷いことになる予感しかましろは感じなかった。
元々蓮はそれほど服装に執着がある方じゃないのは分かってはいたが,まさかここまでだとは思っていなかった。
「れ,蓮君それもいいけどこういうのもどうかな?」
そう言ってましろが差し出したのはシンプルな白のシャツ,蓮が今インナーとして着ている服にも似ているが内側が綿みたいになっていて寒くなるこの時期にはピッタリなものだと思ったのだ。
それに蓮は下手に文字が大きく付いている服とかの装飾がされているものよりも,こういった単色の服装の方が似合う……というのがましろの見解だった。
「わぁ,これあったかいね」
「だ,だよね。あ,こういうのもどうかな……?」
ましろは更に近くのハンガーにかかっていた薄い水色の服と,更に近くにあったコートを取って蓮に見せた。
「うん,凄く良いと思う!」
(どうしてこれを良いって思えるのに選んでくるものはそういうのなんだろう……)
ましろも自分が透子のようにファッションセンスがあると思っている訳では無いが……いわゆる普通と思う位にはセンスはあるつもりだ。
そんなましろが選んだ服を見て良いと思えるのに,どうして自分が選ぶ服は良いとは言えないのだろう。
「あ……でもそんなに沢山買うの……?」
蓮が自分で選んでいる間もましろもそれなりに蓮に似合うと思った服を抱えてきていたのだが……その量が結構多くて蓮は困惑していた。
ましろは恥ずかしそうにしながら言った
「そ,そういう訳じゃないけど……蓮君の服探すのが楽しくなっちゃって……」
「どうして楽しくなったの?」
ましろは高校生になり基本的に自分の服は自分で買うようになったが,今日みたいに誰かをコーディネートすると言う事は今までになかったので……大好きな人の人を探す事がこんなに楽しい事だなんて知らなかったのだ。
蓮が自分の選んだ服を着る……そう考えただけであれこれ想像して結果的に結構な量を持ってきてしまったのだ。普段自分の服を買う時はこれの4分の1くらいの量しか見ないのに。
蓮の問に素直に答えるのなら「貴方が私の選んだ服を着るのが楽しみだから」になる。流石にそんなメンヘラチックなセリフをいう気にはなれなかったので咄嗟に誤魔化した。
「うぅ……それは……そ,そんな事よりも折角だから試着しようよ」
多分,ここでファッションが面倒な男性は面倒くさがるのだが蓮はファッションに疎いだけで面倒とは思っている訳では無いので素直に頷いて2人は試着室へとやって来た。
そして最初にさっき勧めた白シャツと……後から持って来た黒のズボンを蓮に渡して蓮はカーテンの向こうに消えてしまった。
(蓮君……楽しみだな)
自分が選んだ服を着る……そう考えただけで胸は高鳴り血流が早くなった気がした。……というよりも
──ススッ……
そんな感じの音がカーテンの向こう側から聞こえてましろは不意にこのカーテンに向こうに上裸の蓮がいると考えてしまい……勝手に1人で顔を紅く染めてしまった。
(わ,私何考えているの?! そんなの想像しちゃダメだよ!)
と自分に言い聞かせてみるが,蓮の事を考えないと決めれば決める程逆に考えて行ってしまう始末。ましろがそう考えている間にも衣すれの音が聞こえていけないことを想像してしまうましろ……彼女の耳に不意に見知った声が聞こえて来た
「絶対似合うよ!」
「えー,そうかな。ちょっとふーすけには合わなくね?」
その特徴的なあだ名を聞いた瞬間,ましろの頭は真っ白になってしまい少し姿勢を低くして周囲の様子を伺うと……
(つくしちゃんに……透子ちゃん?!)
何故か同じバンドメンバーである2人が同じ服屋にいてましろはつい座り込んで彼女たちの視線に入らないようにした。さっきとは別の焦りの意味で心臓の鼓動が早くなってしまい頭の中で高速思考した
(ど,どうしよう! 見つかったらきっと……)
そうしてましろは見つかった場合のデモンストレーションを行う事にした
『お! シロじゃん! どうしたんだ……って蓮さんじゃん!』
(それで何だかんで蓮君の服を透子ちゃんが見積もる事になって……)
展開されるましろワールドで蓮は
『透子さんが選ぶ服,どれも凄いよ! 最初から透子さんに頼めばよかった』
『いやーそれほどでもありますけどね』
そんなイメージをしてしまったましろはそのイメージを取り払うように頭をぶんぶんと振って
(見つからないようにしないと……蓮君が取られちゃう……)
そもそも,皆自分以上に素敵な女性なのだ。こんな想像だけが取り柄の自分と彼女達が恋敵になってしまったら勝てるビジョンが全く浮かばない。
その為には先ずは見つからない事が先決と考えた。
(お願い……このまま出てって)
必死に胸の中でそう願っていると,その願いが通じたのか……
「じゃあ試着してみる!」
(えええっ?!)
このお店の試着室は2つあり,その内の1つは蓮が使っていて隣のもう1つの試着室はまだ空いている。つまり……2人はここに来ると言う事なのだ。
今は幸い服たちに紛れてましろが見えていないが,ここから隠れるのは至難の技。それにもし2人が来た時に蓮の試着が終わり出てきた暁なんて
(考え得る限り最悪な事態……?!)
ましろの勝利条件は2人に蓮も自分のこともバレない事,しかしそれは絶望的でつくしと透子は既にそこまで来ていて……
「しろちゃんどうか──」
最悪か最高かは分からないタイミングで蓮のカーテンが開き,蓮がましろに感想を聞こうとしていたら言葉途中で止まり何故か蓮はましろと一緒に試着室の中へと逆戻りしていた。
「……え?」
驚愕している蓮を他所に凄まじいスピードでカーテンが再び閉め切られた。ビックリした蓮は自分の胸に顔色を紅くしてちょっと荒くなった息を整えているましろに何かを問いかけようとして
「しろちゃ……んっ?!」
ましろは慌ててその色々コンプラ的にアウトになりそうな状態のまま右の掌で蓮の口を閉ざさせた。変な声を出した蓮の声を聴きながらましろはそのまま外の声に耳を澄ました
「あれ,今なんか蓮さんいなかった?」
その透子の声にドキッと心臓を跳ねさせたましろだが,まだバレていないと考えて身を潜めていた。
「そう? 気のせいじゃないかな?」
(お願い……早く終わって)
ましろの祈りが今度こそ通じたのか「そうかー」と言って透子は試着室の前に待機した。隣の試着室ではつくしが入ったのが音で分かり,ましろはようやく一息つくことが出来たのだが……。
(……?!)
でもましろは自分が今蓮の胸に飛び込んで,試着室と言う狭い密室で蓮と密着している事に気が付いた
(わ,私蓮君の……か……身体に飛び込んで……)
そもそも男性の試着中に試着室に飛び込むなんてただの変態である。これが2人が全く関係のない関係性で,多分これが逆の立場なら……いやこの状況もだが大分問題でどちらかはあっと言う間に牢獄行きだ。
蓮は自分の胸で悶えてしまっているましろについ問いかけた
「しろちゃ……」
だけどましろはもう一度蓮の口を掌で塞ぐと,聞き取れるかどうかの位な声量で言った
「あ,あまり大きな声出さないで」
そう言って蓮の口を抑えていた掌をどかすと,ましろが声を出さないでと言った理由は全く分からなかったが何だか必死なましろを見て何となく彼女に合わせた。
「う,うん。どうしたの?」
「えっと……バンドのメンバーが直ぐそこにいて……それで恥ずかしくなって……」
「……どうして?」
蓮からすれば素朴な疑問である。
同じバンドのメンバーがいるのなら隠れる必要はないじゃないかと思うのは一般的には正しいだろう。しかし,そこにはましろの感情は入っていない。
ましろが蓮といる所を見られたくないのは……からかわれるのもそうだが一番の理由は……
(蓮君との時間……取られたくない)
そんな彼女本来が持っていたちょっぴりの独占欲と,この胸を駆け巡る感情を他の人達に見せたくないから。
こんな顔を見せるのはきっと世界でたったの1人だけ……
ましろは無言で……耳まで真っ赤にした顔で蓮を上目遣いで見た。
(……!)
そんな今まで余り見たことがなかったましろの”女性”としての異性の姿に,蓮の心臓もましろと同じように鼓動が早くなる。
そしてそれは身長的に蓮の胸辺りに顔を埋めているましろにも伝わった。
(蓮君……心臓がドクンドクンって鳴ってる……私で興奮してくれてるのかな……?)
そうでなければ蓮の心臓がこんなに嬉しそうに跳ねていることはない。ましろと密着し,彼女の吐息や髪の毛……その他もろもろの感触が蓮の男としての感情が湧き出て来たと言う事の筈だから。
そう思ったら……ましろの中に少しの”いけない”嗜虐的な思惑が出てしまった。
「ん……」
「し,しろちゃん!!」
ましろは自分の影がカーテンの隙間から出ないように……という体裁で自分の身体を押し付けるようにして更に蓮との距離を詰めた。
もう距離なんて殆どない……というかもう身体の殆どが密着している。函館で別れる前ですらこれほど密着したことはない。
そうしてましろはまた蓮の心臓の音に聞き耳を立てると,さっきまでよりも更に忙しなく心臓の鼓動が激しくなってましろも更に嬉しくなってしまう。こうして蓮が大人しい性格なのを良い事にましろは蓮の心臓の音を楽しみ始めた。
(蓮君の鼓動……さっきよりも早くなってる……嬉しいな)
きっと昔の蓮なら……”近所のお兄ちゃん”としての蓮ならこんな事になっても優しく頭を撫でて……でも心臓の鼓動はいつも通りだっただろう。
あれから2人とも”大人”に近づいて,蓮は勿論ましろの身体も当然大人の女性らしくなっている。それに反応してくれたと言う事は自覚があるかは別として少なくとも”異性”としては見てくれていると言う事だからだ。
ここまでしても蓮に何の反応もしなかったらそれはショックだったが……現実は自分に反応してくれている蓮でましろにはそれが今日一番嬉しかった。
最初はつくしと透子の視界から逃れるために無我夢中でこの試着室に飛び込んだが……こんな嬉しい反応をしてくれる蓮を見れたのなら
(最初はどうしようって思ったけど……今は良かったと思えるな)
そう1人で微笑んでいるましろを見て,蓮は困惑の方が多くはあったが今まで見た事ないましろの顔を見る事が出来て嬉しいと思っている自分もいた。
(しろちゃんの身体が……当たって……)
最初はましろが選んだ服を試着しているだけだったのに,なにがどうしてこうなったのか分からないほどのスピードでましろが試着室に飛び込んできて……自身の柔らかい二つの果実を自分の身体に当ててきていることに,自分がそうしようと思っている訳では無いのに勝手に心臓がドキドキしてしまう。
そしてその事はとっても恍惚な表情を浮かべ,目を閉じて耳を自分の心臓部分に当てているましろには丸わかりで……バレてしまっているからこそ
(だ,ダメだ……そんなにドキドキしたら)
ディスフェスやLRフェス……大舞台のライブの前のドキドキとはは根本的に違う心臓の高鳴りは蓮に困惑といけない情動が溢れ出させてしまっていた。自分の好きなもの以外には理性と欲望を律する事が出来る蓮が……ましろには律する事が出来なくなり始めていた。
だから鼓動がましろに伝わっていると分かっているのに,その高鳴りがもっと激しいものになっていく。
「えっと……いつまでこうしてたら良いのかな」
その高鳴りを少しでも誤魔化す為に,この状況がいつ終わるのか問いかけるとましろは胸の中で少し動いてまた上目遣いで蓮を見つめて言った。
「透子ちゃんとつくしちゃんが離れるまで……かな」
蓮からすればここで隠れる意味なんて殆どないのだが,ましろが必死に隠れようとしているのと……蓮もこの時間が悪くないものだと思ってしまったので……
(もう少しだけ……いいかな?)
蓮も自分にそう言い訳してそっと……ましろの身体を抱きしめて,ましろはいきなりの抱擁にビクッとしたが次の瞬間にはへにゃっと気が抜けた表情を見せ蓮に身を任せて……透子とつくしが服屋さんから離れる時間にして数十分もの間小さい試着室で2人きりのドキドキの時間を過ごして……また一つ,2人の距離が縮んだのだった。
お疲れさまです!
試着室危機一髪…色んな意味で危機一髪なんですよね…筆者的にもコンプラ的にも笑。
まあ,ましろみたいな素敵な女性に身体密着させらえたら鈍感な蓮君も反応しちゃうよねって感じです笑。おまけにましろの上目遣い炸裂です。
2人がイチャイチャしている間に隣の試着室ではつくしが自分のイメージにそぐわない服を着て透子に「やっぱむりじゃね?」と言われてつくしはハムスターのように頬を膨らませて「むーっ!」と言っている事でしょう…この温度差よ。
因みに蓮とましろのデュエットのイメージが少ししにくいという方向けにただ音声を合成しただけですけれど2人が「メリッサ」を歌っている動画があったので参考程度に見るのもいいかもしれません。ただガチで声を出しただけなのでハモリとかそういうのは殆どないのでただの参考です。
https://youtu.be/jiUdjk-pexk?si=qoCYzuvcTnBVfe6V
では次回にてお会いしましょ~。ではでは。
恋人になった2人の関係性どんなのが良い?
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今まで通りましろから蓮に激攻め
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逆に蓮がましろに激攻め
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寧ろお互いがお互いに激攻め
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というか全部やれ