蓮とましろが小さい頃に別れた幼馴染だったら   作:レオ2

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おはようございます!
ましろが復帰してからのお話です!息抜きとして書こうとしたら全く文字数は息抜きの文字数にならなかったのはご愛敬,今回は1万3000字くらいです。
それから,一応この作品R15タグは付けているので大丈夫かなとは思いますが最後らへんにR15 的な行動が少しだけ出るので苦手な人はご自身の判断でページバックしてください。

それから,東海さん評価ありがとうございます!これからもよろしくお願いいたします!
では参ります!


[デュエット編] 秘密の味

 ArgonavisとMorfonicaの2バンドによるライブは盛況の内に幕が閉じ,ましろはまた新しい日々のスタートを切った。まだライブの興奮が冷め止まらない中,ましろは自分のベッドに倒れて蓮とやり取りをしていた。

 それは今日の感想だったり,自分達の後にライブをやったポピパの感想だったり……久々にましろは心の底から充実したと思える1日を過ごしていた。

 しかし,爆弾とはいついかなる場合でも爆発するものである。ただやり取りが出来るだけで嬉しいと言うのに,さらりと言われたのは

 

『電話してもいいかな?』

「え……!?」

 

 今まで蓮の方から電話をしたいと言ってきた事は無かったのでましろは突然の不意打ちにドクンッと心臓が鳴り顔に熱が灯り始めてしまう。

 つい殆ど無意識に「うん」と返事して……直ぐに電話がかかって来た。

 

「れ,蓮君どうしたの? いきなり電話したいなんて……」

 

 余りに不意打ち気味の蓮の電話したいに,ましろの顔はほんのりと紅くながらその理由を聞いた。そうすると蓮も恥ずかしいのか,少し覇気にかけた声色で

 

『う,うん。その……しろちゃんの声が聞きたくなって』

「~~!!」

 

 それが蓮なりの心配だったのは分かっている。声が出せないということは歌も歌えない事と同義,今日までそうだったましろの声が……歌がふとした瞬間にまた出せなくなっているかもしれないと心配だったのかもしれない。

 だけどましろは蓮がちゃんと自分の心配をして……声を聞きたいって言ってくれた方がずっと嬉しかった。

 

「私も……蓮君の声聞きたかった」

 

 だからそう言ってみると,蓮はスマホを1枚を隔てた向こうでびっくりしたみたいに息を飲み,少し声を弾ませた。

 

「うん! それから……しろちゃんに相談があるんだ」

「……? どんな相談なの?」

「デュエットで歌う曲……僕達が作らない?」

 

 蓮のその突拍子もない提案は,ベッドで天井を見ながら電話をしていたましろの耳に簡単に入って来た。そして,その言葉の意味を理解した時身体がぶわっと鳥肌がたって思わず起き上がった

 

「え?! 私達で……?!」

 

 2人ともバンドをしてカバーだけじゃなく,自分達のオリジナルソングも作っている身。だから新曲を作ると言う意識のハードルは特別低い訳じゃない。

 だけど新曲は2人だけで作れるものじゃない。作詞は勿論作曲だって大事なもので……作曲はましろにも蓮にも出来ないのだ。モニカの作曲は基本瑠唯が行っているし,Argonavisの作曲は凛生が行っている。

 だから今日特別にしたSTARTING OVERも,このたったの3日間という短い時間の中でこの2人とモニカで編曲を担当している七深がArgonavisとMorfonicaの雰囲気を壊さず,尚且つましろの限界を超えるような編曲を行う事で今日のライブが出来たのだ。

 それをボーカルの自分達が出来るかと言われたら……微妙だった。

 

「うん。カラオケで色々歌ったけれど……やっぱり僕はしろちゃんと2人だから歌える歌を歌いたい! しろちゃんとじゃないと歌えない曲を作りたい!」

「……!」

 

 もしかすると蓮は,昔一緒に歌っていた歌をカラオケで歌ってそんな事を思ったのかもしれない。確かに昔は2人で一つの曲歌っていた。それが今回の事を気にする事になった発端だったのも……蓮はそれに気が付いて,だからこそもう一度2人だけの曲を作りたいって言ってくれたのかもしれない。

 

「蓮君……嬉しい……。うん,作ろう!」

 

 だからいつもはネガティブな事を最初に考えてしまうような事でも,蓮と一緒に曲を作る事が出来るという嬉しさの方の気持ちが勝り,いつにもましてテンションとモチベーションを上げながら勢いのまま返事をした。

 ……作曲の問題が全く解決していないのを返事した瞬間に気が付いてしまい,お花畑が広がっていた頭を現実に戻したましろは慌てて聞いた

 

「で,でも作曲はどうするの? 私も蓮君も作詞しか出来ないよ?」

 

 それに蓮に関してはそもそもArgonavisの普段の作詞担当は航海なのもあって,蓮が作詞する事もあれどその頻度は低いし大体航海の補助あり気である。

 そして一番大事な曲の問題,これは2人ともできない。さっそく詰みである。

 

『うん。作詞は僕としろちゃんがして作曲はさっき凛生に頼んでみたら合間で良いなら作ってくれるって!』

「あ……合間で出来るんだ……」

 

 ましろの中の瑠唯が作曲で苦労している所は殆どイメージ出来ないが,それでも自分の歌詞に合わせてアレンジをしてくれる瑠唯にはいつも感謝している。

 そんな瑠唯ですら作曲は本腰入れるというのに,凛生は合間でするというのだ。

 

『俺は天才だからな』

『うん! 凛生の作る曲は皆凄いんだ!』

 

 凛生が作曲してくれるのはありがたいが,それでは2人で歌える曲という曲と言えるのかなと一瞬思ったましろだが,そもそも前2人で歌えていた特撮ソングなんて自分達が作詞作曲をした訳でもないので今更かと割り切った。

 

『でも凛生が先ずはどんな曲にしたいのか教えて欲しいって言ってたから明日僕達の家に来てよ』

「う,うん。分かった……えっ?!」

 

 蓮の言葉に一瞬納得しかけたましろだが,言葉を返しながらその意味を知りびっくりしたみたいに声をあげた。

 

「れ,蓮君達のお家に……?!」

『……? うん。何か変な事言ったかな?』

 

 蓮からすれば偶にましろは家に来ているのだから今更何か思う事があっただろうか……みたいな感じだがましろからしたら違う。蓮が思っている事は間違ってはいない。既に何度か蓮達の家に行った事はあるけれど,それは蓮の迎えだったりぽんちゃんに会う為だったりで実は中に入った事はほぼない。全部玄関先で事足りたからだ。

 

「う……ううん。何でもないよ。時間はいつだったら良いかな?」

 

 家にいるのは蓮だけではない。もしかすると蓮はきちんと他のメンバーがいない時に誘ってくれたのではないかとほんの少し期待して聞くと,お昼からならと返されて2人は約束しもう夜も22時になる所だったので電話を終えた。

 

「おやすみ,蓮君」

『うん。しろちゃんもおやすみ』

 

 電話を終えたましろはいつものようにベッドに倒れ込み,今日の事を思い出して枕に顔を埋めて悶え始めた

 

「蓮君のお家……楽しみだな」

 

 目的は作詞をするというのは勿論分かっているが,またこうして蓮と同じ時間を過ごす事がましろにとってとっても嬉しい事だった。

 ミシュラビのぬいぐるみを抱きしめて,ましろは明日の事に思いを馳せながら眠りについた

 

 

 ★

 

『ましろとシェアハウスArgonavis』

 

 翌日,ましろの姿はシェアハウスArgonavisにあった。普段はArgonavisの誰かがいるリビングには現在ましろの他には蓮と航海,それに凛生とぽんちゃんがいて結人と万里はそれぞれバイトに行っていた。

 リビングのテーブルに4人が集まって,2人の前には国語辞典やましろの好きな小説……フェアリーレジェンズシリーズが置いてあったりした。どれも2人の歌詞作りに使っているものだが……

 

「うぅ……難しい……」

 

 しかし,ましろは1時間ほど歌詞作りを行っていたらとうとうダウンしてしまっていた。

 普段からモニカの作詞を担当している彼女だが,その曲1つ1つも頭を悩ませてきたと言うのに今回は蓮とのデュエット曲。

 いつもモニカの曲を通して自分の世界を展開しているやり方では少しましろにはやりにくかったのだ。

 

「僕としろちゃんの世界観を合わせるのってすごく難しいね」

 

 2人はそれぞれ自分が持つ世界観……蓮は世界観と言うか感じていることをだがその二つを上手く融合させた歌詞を作ろうとしていた。しかし,幻想的な世界観に生きるましろと,現実に起こった事の範疇で自分の心を言葉にする蓮とでは似ているようで似てなかったのだ。

 

「2人とも,その前に大事なことを忘れてるよ」

 

 ここまで何も言わずにぽんちゃんと戯れていた航海が頃合いを見て話しかけて来た。ましろと蓮は疑問符を浮かべた表情で……というかほぼ同じ表情で航海を見て来たから航海は内心少し笑いそうになってしまった。

 

「先ずは曲のテーマを決めないと。テーマを決めた方が2人の方向性も合いやすくなるし,桔梗もどんな曲を作ればいいのかイメージしやすいでしょ?」

「俺は天才だからバラバラでも行けるが?」

「君は少し黙ってて」

 

 凛生の事を案じた提案でもあるのにその凛生が行けるとか答えてしまったので漫才のような華麗なやり取りにましろは思わず笑ってしまいそうになってしまったが,確かにテーマを決めた方が楽になるかもしれない。

 基本的にモニカでは瑠唯が作曲したものを聴いて,その曲を聴いて感じた事を歌詞にするというのがいつもの流れだったからテーマを決めてやるという方法はそれほど試したことが無かった

 

「テーマ……どうしようしろちゃん」

 

 蓮はぽんちゃんのようなウルウルした眼で自分を見てきて不覚にも”可愛い”と”抱きしめたい”と,いつもぬいぐるみたちにそうするような事を思ってしまった。

 その邪念を首をぶんぶんと振る事で振り払い,目の前の歌詞の参考の為に持って来た書籍を見る。……いや,実際はもう書籍は眼に入っておらずある事を悩んでいた。

 

(多分,テーマにするなら大会の目的的に”恋”が良いんだろうけれど……)

 

 これが正真正銘のカップルならこんな悩むこともないのだろう。だってカップルなのだから。だけど自分達はカップルではない。カップルじゃなく,そもそも蓮には大会の参加条件がカップルだなんて言っていない。

 多分これが透子辺りなら「じゃああたしら付き合っちゃう?」みたいなことを言ってなんの違和感もなく作詞が出来るのだろうが……

 

(わ,私には無理だよ……?!)

 

 何故か透子が知らない所でましろの偏見にまみれたイメージがされているが,そんな事を考えている余裕はましろにはなかった。そもそも蓮の家にいると言うだけでドキドキものだと言うのにあの蓮と一緒に詞を作っているのだ,どうにかなるなという方が無理だ。

 それに……

 

(わたし……前よりも蓮君の事が好きになってる……)

 

 昨日から感じていた事……いや多分悪夢を見たころが思っていた事。蓮と再会する前よりも想いが強くなっているのは時間が経ち当然なのかもしれないが……昨日からは蓮の事を考えるだけで身体が嬉しそうに熱と一緒に少しむずむずしてしまっていて寝るのが大変だった。

 それに家に来た時から自覚が出来る程のほんの小さな変化だが,蓮と話すときは少しトーンが変わっていたりする。きっと嬉しくて勝手になってしまっているのだ。

 

(私と付き合ってください……って言えたらどんなに楽なんだろう)

 

 はぁ……と内心でため息をつくましろ。こういう時は透子のなんでも一直線な性格が羨ましいと思った。

 

「テーマ……うぅ,難しい」

 

 色々自分に制限をかけてしまったからこその悩み,ましろはますます頭を抱えてしまう。そんなましろの膝の上に先程までは航海と一緒にいたぽんちゃんが昇って来た。

 

「わんッ!」

 

 まるで遊ぼうよ! と言っているようなぽんちゃんに癒され,頭を撫でると気持ちよさそうに耳をたたんでへにゃっとしてくれる。

 それが微笑ましく,まるで蓮みたいだなと思ったましろであるが根本的な問題が解決している訳では無い。蓮と2人で悩むましろだが,そこに航海が苦笑しながら言った。

 

「そんなに難しく考える必要はないよ。例えば……」

 

 航海はそう言ってルーズリーフを取り出し徐に何かを書いて2人に見せた。そのルーズリーフには『ゴール』『スタート』という全く正反対な言葉が書かれていてましろは疑問符を浮かべたが蓮は見覚えがあったのか直ぐに笑顔で答えた

 

「もしかしてゴールライン?」

「そう。これはゴールラインの大まかな”テーマ”。今は簡単な例だから2つしか書かなかったけど,このルーズリーフに2人がそのデュエットを通して何を観客に伝えたいのか……或いは歌いたいのかを片っ端から書いてみたら良いよ」

 

 そう言って新しいルーズリーフを2人の真ん中になるように置いた。2人はそれを書くためには必然肩をくっつく位近づかなければならず……

 

「……!」

「~~ッ?!」

 

 そしてその事実を何故か2人はくっつけた後に気が付いてしまった。蓮はビックリしたみたいだけだが,ましろは外野からでもよく分かる位顔どころか耳まで真っ赤にしていて

 

((分かりやすい)))

 

 と航海と凛生は思った。

 

「僕が大会で伝えたい事……」

 

 そして少しフリーズして何やら悶えてしまっているましろの事に気が付かず蓮はそのままテーマのワードをルーズリーフに書き込んでいく。

 航海が見てみると,蓮が書いた単語は『過去』『現在』『未来』という時間に関係したものが書かれていた。

 

「どうして時間に関係してる事を?」

 

 この三つの単語自体はSTARTING OVERにもあるが,蓮がテーマの候補として掲げたからにはそれなりの理由がある筈である。

 

「うん。今の僕があるのはArgonavisの皆や今まで出会って来た人達,支えてくれた人達……それにしろちゃんのおかげだから」

「れ……蓮君」

 

 この前も同じことを言われたばかりだが,改めて言われると胸がキュンとしてしまう。しかし,蓮の言葉はここで終わりではなかった。

 

「そしてこれからの未来でも……しろちゃんとも一緒に未来を見てほしいって思ったんだ」

「……え?!」

 

 蓮は自覚なしかもしれないが,蓮の頬も少し紅くなっている。言っている内に照れくさくなったのかもしれないがそれ以上に赤くなっているのはましろの方である。ましろという名前が嘘みたいに真っ赤になっているのを見れば彼女が何を想っているのか一目瞭然……というかましろじゃなくても今の蓮の言葉は……

 

(七星,そのセリフはもうプロポーズじゃないか?)

(蓮ってほんっと無自覚だよね。倉田さんも可哀そうに)

 

 一緒に未来を見てほしい……これが作詞の場面じゃなくてプロポーズに最高なロケーションでこんな事を言われたら全ての女性がプロポーズと勘違いする事だろう。実際ましろの脳は今蓮の事で一杯だったのでそんなロケーションじゃなくともこの蓮の言葉がプロポーズに聞こえてしまった。

 そして実際はプロポーズではない,天然無自覚な蓮の行動に振り回されているましろの事を少し同情の眼で見ておいた。

 

「え……えっとその……こちらこそ……お願いします……」

 

 頭が熱で可笑しくなってしまいそうなままましろは何が何だか訳が分からなくなって,何故か蓮の方に向き直り江戸時代かと思わせるような動きで頭を下げて蓮のプロポーズっぽいプロポーズを受けてしまう始末。

 

「倉田さん,蓮はそういう意味で言ったんじゃないと思うよ」

「……! え,あっ?!」

 

 航海の言葉に正気を取り戻したましろは慌てて姿勢を戻し,自分の行動が恥ずかしすぎて手で顔を覆ってしまった。

 

「航海,そういう意味って……?」

「蓮もいつか分かるようになるよ」

「???」

 

 蓮は自分がプロポーズじみた言葉を言ったとは思っていない様である。そもそもこの男,ましろの家にCDを届けに行った時もリーダーの結人のように「運命だ!」とましろに言ったばかりである。男から男に言う分にはまあ深い意味にとらえる事はないであろうあの言葉も異性にいう時には別の意味を持つ。実質蓮は何度かましろにプロポーズをしてるのだ! 

 

 

「しろちゃん顔真っ赤だよ? 大丈夫?」

 

 

 そんな蓮のましろへのダイレクトアタック炸裂! ましろの情緒は決壊寸前まで行った! ……すでに壊れている気がしたのは気のせいだ! 

 

「だ,大丈夫……だよ?」

 

 ようやく覆っていた手をどけたましろだが,やはり隠しきれていない位には真っ赤だった。この付き合いたてほやほやみたいなカップルみたいなことをしていると言うのにこれでまだ付き合っていないのだから驚きだ。

 というよりもこの光景を見せつけられている航海は蓮への保護者欲よりも……

 

(何だか……少し胸やけがする)

 

 高校生の恋愛かと思われるくらいの光景にそんな事を思ってしまった航海……まあましろは高1なのだが。しかし,2人ともこのままでは埒が明かないかもしれない。元々2人のサポートをする為に家に残っていた自分と凛生だが,むしろこの2人の場合は

 2人だけにして思いの丈をぶつけた方が良いのではないかと考えた。

 

「じゃあ僕達はちょっと出かけてくるよ。ちょうど読みたいシリーズの新刊が出たんだ」

 

 航海はさらりと凛生にアイコンタクトを取って,凛生も航海の意図を察したのか頷いた。

 

「俺も晩御飯の材料を買ってくる。その間2人で詞を進めといてくれ」

「うん! 分かったよ!」

「……は,はい」

 

 いつの間にか現実に戻っていたましろがこれから蓮と2人きりになると言う事で再び夢の世界へ旅立ちかけてしまったが,なんとか理性で抑え込み2人を見送って……家の中には自分と蓮,それから膝の上で丸くなっているぽんちゃんだけという状況にあの試着室の一件を思い出してしまって少し上ずった声で言った

 

「つ,続きしようか」

「うん! しろちゃんの言葉,聞きたいな」

「わ……私の言葉……?」

 

 そう呟いて目の前に置かれたルーズリーフを見る。そこには先程蓮が書いた過去現在未来という単語。その意味はもう聞いたが,果たして自分が伝えたい事を言葉に出来るのかと自問自答した。

 

(私は……私が蓮君と歌いたい事は……たぶん同じ)

 

 自分だって蓮の言葉を聞けばこの3つの単語じゃなくとも『出会い』や『仲間』あたりは出て来たと思う。この二つがましろの人生を彩ってくれているから……そしてその中には勿論蓮もいる。

 いや,モニカのメンバーと出会えたのと同じ位……もしかしたらそれ以上に運命的な出会いだったと思う。だからましろにとっての先導者の1人。

 シャーペンを手に取り,自分もルーズリーフに思っている事を書き込んでいく。

 

「えっと……星,運命,それに……こ,恋?!」

 

 ましろが書いた最後の単語に蓮は思わずビックリした声をあげてましろの方を見た。ましろは相変わらず真っ赤なままだったが,決心したかのように蓮の方に向いて言った

 

「その……蓮君。わたし1つ嘘ついてたの」

「え……? な,なに?」

「デュエットの参加条件……男女じゃなくて……か……カップル……なの」

 

 羞恥で頭が可笑しくなりそうな中ましろが思った事……それはこの曲を『蓮と出会い,そしてそこから始まった人生で感じた事。そしてこれからの明るい未来』の事を歌いたい。蓮とじゃないと歌えない歌なら今はMorfonicaの倉田ましろとしてじゃなく,1人の少女として……恋の歌を歌いたいと思った。

 それで蓮が自分のことを意識してくれるのかは分からないけれど,でもこの大会で蓮と歌ったという記憶が……思い出が欲しいと思った。その為に不自然にテーマを誘導するよりも,真正面から言った方が良いとましろは思ったのだ。

 

「か……カップル?」

 

 ましろの言葉をリピートした蓮はその意味する所を理解したのか,今のましろと同じように耳まで真っ赤にして彼女を見ていた。

 

「だ……だからそう言う意味を持つ歌詞も……あった方が良いんじゃないかなって」

 

 きっと透子ならさらりと告白するんだろうなとましろは思ったが,自分にそんな事を今いう勇気はない。だからこうやって遠回しにアタックする。少し気が弱い彼女らしいやり方ではあるが,だからこそ守ってあげたくなるのがこの七星蓮という男だ。……普段はどちらかというと守られている側の人間ではあるのは気にしない。

 

「そ……そうなんだ。うん,良いと思う」

 

 蓮は拒絶する事も出来たはずだが……そんな選択肢なんて微塵も浮かんでこなかった時点で彼の感情がどういったものであるのかは一目瞭然である。

 蓮は参加条件である”カップル”という所の敢えて触れず,次にましろが書いた星という単語を指さした

 

「じゃあこの星は──」

 

 そこから2人は歌詞の事を沢山話し始めた。最初はましろが言ったカップルや恋といった事に少しぎこちなさを感じた蓮だったが,やはり歌の事になるとそこの持つ意味について考えはすれど”歌として”伝えると言う事にする事で蓮のスイッチは入って行った。

 

「うん! 蓮君のこれって──」

 

 そしてましろも最初は騙していた事に少しの罪悪感があったが,楽しそうに話しを始める蓮を見ていつしかましろも心の底から曲を作る事を楽しみ始めた。

 

「しろちゃんこれとっても良いよ! じゃあ僕は──」

 

 最初の2人の中にあった何かの感情は音楽()に託し,ただ純粋に楽しく歌詞を作っていた。きっとその光景自体に甘酸っぱさはないのかもしれない。幼馴染特有の空気感もないし恋人のような掛け合いもない。ただそこにいるのは音楽がただ好きな2人の男の子と女の子だけで,自分の本音と心を晒しだしていた2人だった。

 

(あ……そっか……)

 

 そうしてましろはある一つの答えに辿り着いた。自分が蓮の事を好きな理由……恋とは何か……そんな哲学じみた話。

 今こうして2人して同じことをして,2人で同じ大好きなものを作っているこの時間がきっとかけがえのない物で……こんな時間がいつまでも続いてほしい。

 この人とならずっとこうしていたい。

 2人だけの世界で同じものを見ていたいと思える事が”恋”なんだと……ましろは頭ではなく心で理解した。

 

(私……蓮君とこうしてずっと──)

 

 窓から差し込んでくる光が2人に降り注ぎ,木漏れ日のような光で2人を照らしてまるでそれは2人だけのスポットライトのようだった。

 そして──

 

「ただいま……ッと」

 

 偶々シェアハウスの前でArgonavisの蓮以外が揃って家に最初に入った結人が見たのは,机の上に広げられている小説や辞書に2人して何かを沢山書いていたのかルーズリーフが何枚かあり……。

 

「ユウ,どうしたの……あぁ,そういう事ね」

 

 同じタイミングで入って来た航海が訝し気に結人に問いかけたが,直ぐに目の前の光景を見て納得した。背後にいる凛生と万里にも静かにするようにジェスチャーをしてから皆でリビングに入り蓮とましろの方を見ると

 

「……すぅ……すぅ」

「……しろ……ちゃん」

 

 2人は肩を寄せ合って,ましろは頭を蓮の肩に乗せて,蓮は頭をましろに乗せ2人とも健康的な寝息を立てていて眠っていた。2人とも何故か寝れていなかったのかと思う程深く寝ていて起こすのが気が引けたと言うのが一つの理由と……

 もう蓮だけではなくましろの保護者みたいな気分も出来つつあるArgonavisのメンバーは満場一致で同じことを思った。

 

「凄い幸せそうに寝ているね」

「七星も倉田もここ最近切羽詰まっていたからな」

 

 ましろは悪夢に悩まされた一週間を過ごしていたし,ここ3日間は蓮もましろの事を考えすぎて余り寝れていなかったのはメンバー全員が知る所。そして蓮は急遽決まったライブの為にまた凛生と航海に止められてしまう位に練習していた事もあって2人とも疲れが溜まっていたのかもしれない。

 

「見ろよ,2人の手」

 

 結人がそう言って航海が2人の触れ合っている部分を見ると,2人ともどちらも離れないように強く握られていて2人のやり切った表情と幸せそうな顔も相まって何だか結人達まで幸せな気分になった。

 幸せな人は自分を見せるだけで周りも幸せにしていくのだ。

 

「……あ」

 

 2人の末っ子のような存在をしょうがないなぁと言いたげに見ていた航海だったが,2人の前にあるテーブルにある1枚のルーズリーフを見つけ,2人を起こさないようにそっと拾い上げ……ふっと微笑んだ後にそれを凛生に渡した。

 それを受け取った凛生は一通り見た後に航海と同じように微笑んだあと,少し挑戦的な笑みを浮かべた

 

「……これは合間にする訳にはいかなくなったな」

「それは最初は手を抜こうって思ってた事かい?」

「まさか,俺は熱くなれるものにはいつだって本気だ。ただ俺の心に火が付いた,それだけだ」

 

 軽口を叩きあい,凛生は晩御飯の材料が入ったマイバッグを台所に置きさっそく自室へと向かった。これから作曲するのだろう。あのゴールラインの作曲をたったの1晩で行った凛生の事だ。スランプがあったとは言えそのスランプを乗り越えた彼ならば凄まじい曲を作ってくれることだろう。

 

「ちょっともったいないなって思っちゃうね」

「ん? 何が?」

 

 航海がその事を思い思わず口に出た言葉を万里が拾い聞くと,航海は微笑みながらお互いに身体を預けて眠っている2人を見て言った。

 

「今回のデュエットは録音したものを使わないとダメだから……2人が詞を付けた曲を色んな人の前で演奏してみたかったって思っただけだよ」

「あー,そっか。その気持ちは分かるかも」

 

 2人が書いた歌詞は一言で言うなら”恋”の歌だった。しかし,恋と括るには収まらない幻想的な世界と心が2人が書いた詞から感じた。そしてそんな歌詞を2人が歌うのならそれを演奏してお客さんに披露したいと思うのはバンドマンとしては当然の感情だ。それも2人の詞に凛生が曲を付けるのだ。演奏したくないなんて口が裂けても言えない……そもそもいうつもりも微塵もないが,それ位の気持ちなのだ。

 

「俺達,曲の収録は手伝うけど本番で演奏する訳じゃないもんね」

 

 いくら楽譜と歌詞があっても,音がなかったら意味がない為蓮からは曲の収録をして欲しいと頼まれているため全く演奏しないと言う事はないが,やはり本番でやってみたかったというのが航海と万里の感想だ。

 

「ま,でも蓮から頼みなんだ。2人とも頑張るぞ!」

「分かってるよユウ。さっきの桔梗じゃないけど,手は抜かない」

「当然だよね。蓮君の晴れ舞台だし,上手くいけばArgonavisの宣伝にもなるしね」

 

 経済隊長万里,金になりそうなことには眼がない。今回の大会で何かしらの金銭を得られる訳では無いが,2人が……というよりも蓮が大会に出る事である経済効果を見込んでいる様だ。

 

「それは良いけど,2人はただの七星蓮と倉田ましろとして出るのを忘れないでよ?」

「分かってるよ。……ていうよりも,今更だけど2人が出たら優勝間違いなしでしょ」

 

 と万里は冷静にツッコんだ。

 これまで色々あったが忘れがちだったが,実はミッシェルのぬいぐるみが何位で貰えるのかはまだ分かっていないのだ。だから2人は目的のものを手に入れるために何位に入れば良いのか話し合ったことなんて無いし,2人とも”2人で”歌える事の方が嬉しすぎて忘れているが,2人を知っている面子から見ればただの商店街のデュエット大会なら新曲がなくとも無双だったのではないかと思っていたのだ。

 

「まあ蓮も倉田さんも,そこら辺はどう思っているんだろうね」

 

 ただ,ミッシェルのぬいぐるみが手に入らなくても案外ましろは満足すると航海はそんな気がした。彼女にとっては蓮と同じ場所で,隣で歌えるだけできっと幸せなのだろうから。

 

「わん?」

「ぽんちゃんそこにいたのかい?」

 

 3人で話していたら,ましろと蓮に挟まるようにして寝ていたぽんちゃんが目覚めてテーブルの下を通って三人の元にお帰りと駆け寄ってそれぞれが普段のように……ただし蓮とましろを起こすことなく過ごした。

 まるで翅を近くにあった星で休めている蝶のような光景を航海が写真に収めたこと以外は。

 

 

 

 ★

 

『お姫様の秘密』

 

 

 シェアハウスArgonavisで歌詞を書いていたましろは,同じく一緒に歌詞を書いていた蓮とArgonavisのメンバーと晩御飯を食べた。

 凛生が作る料理はどれも絶品で,最初は遠慮していたましろだったが直ぐに凛生の料理に夢中になっていた。それにましろはあのArgonavisの雰囲気が好きだった。

 メンバー全員が暖かくて,一緒にご飯を食べているだけなのに自分の心の中にあった疲れが飛んでいっていた。まるで家族のような繋がりがましろにそう思わせたのである。

 そして,凛生は曲は1日で作ると言う事だったので今日は一旦解散する事になりましろは蓮に家まで送られた。

 

「蓮君,送ってくれてありがとう」

 

 いつも──いつもこの時には既に寂しくなって,蓮と離れたくないという想いがあるのだが……今日は特別その想いが強くなっていた。

 本当はずっと手を握っていたいし,お話もしていたいし,触れ合っていたいしで欲張りハッピーセットなのだ。それをしないのはそうすると蓮がきっと困ってしまうから。

 

「ううん。僕もしろちゃんとお話しするのは楽しいから」

「それなら──」

 

 もうちょっと一緒にいよ? ……そう途中まで出かけたが直ぐに引っ込めた。もう夜の20時を越えている。蓮はまだここからまたシェアハウスに戻らなければならないのでここで引き止めるのは結人達が心配する事になるから諦めたのだ。

 

「どうしたの……?」

「ううん,何でもない。……蓮君」

「なに?」

「寝る前のこと……覚えてる?」

 

 少し恥ずかしそうに聞くましろにドキッとしながら蓮はましろのいう寝る前の事を思い出そうとしたが,歌詞が完成してましろと話している内に眠気に耐えられなくなってそのまま寝てしまったので何も覚えていなかった。

 

「ううん。……僕なにか変な事した?」

「ううん,違うよ。覚えてないなら……大丈夫」

 

 どこかほっとしたような……でも逆に残念そうともとれる表情を見せたましろは,次の瞬間には笑顔で玄関に通じるドアノブを掴んで蓮に振り返った。

 

「じゃあ……またね,蓮君!」

 

 笑顔なんて生温い,天から遣わされた天女のような彼女の微笑は蓮の頭の中に刻み込まれることになった。

 

「う,うん。またね,しろちゃん」

 

 蓮に手を小さく振りながらドアの向こうに消えたましろは,そのまま母親に帰った挨拶をした後に自室へと戻っていつものようにベッドに腰掛けて近くにあったぬいぐるみを抱きしめて……2人が,というよりも蓮が寝てしまった時の事を思い出した。

 2人で作った歌詞が完成して,2人で余韻に浸っていたら蓮が寝てしまった時にそれは起きた。

 

(蓮君が隣で寝てる……)

 

 歳よりも幼く見えるほどのあどけない寝顔は,不思議とましろに”お姉ちゃん欲”というものを際立たせた……というのは冗談で実際はその蓮の寝顔と言う破壊力に理性が壊れてしまう所だった。

 恐らく,その時ましろの理性が壊れてしまったらきっと抱き着いて一緒に寝ていただろうし……それだけで済むのか甚だ疑問だ。既に蓮の恥ずかしがりながら困った顔を見て嗜虐的な事をしたことがあるましろである。抱きつくだけで済むか微妙だった。

 

「わぁ……可愛いなぁ」

 

 最近は蓮の事を考えるたびに罪悪感と自己嫌悪に駆られていたので,こうして蓮と一緒にいても良いんだと自分を赦せるようになってましろの蓮に対するネジは一本どこかに飛んでいた。

 蓮の顔をしばらく見て悶えていたましろは,自分のその細くしなやかな指でそっと蓮の唇に触れた。無褒美であどけない表情でいつもよりも甘美的に見える蓮の唇を見て……”いけない”事を考えてしまったましろ。

 

(今なら……誰もいない……よね?)

 

 自分の膝の上でぽんちゃんは丸くなっているが,まさか日本語で航海達に『ましろちゃんがご主人になにかしてた!』なんて言うはずがないのできっと大丈夫……いや全く大丈夫じゃないが

 

「蓮君……好き……だよ……」

 

 そう聞こえるか聞こえない程度の小声でそう言って,ましろの指は蓮のほっぺへと移り代わりにましろの顔が……唇が蓮の顔に近づいて──

 

 

「~~ッ!!」

 

 

 その時の事を思い出したましろは,体温を急上昇させてまたそっと自分の唇にそっと触れた。「お洒落しな」と透子がくれたリップによって少しのテカリがあるその唇は情欲を誘う力を持つが今日の蓮には少し意味がなかった気がする……。

 だけど確かにこの唇で自分は振れた。

 

 

「蓮君の……ほっぺだけど」

 

 

 ここにモニカがいたら透子とつくしと七深は「ズコーっ!」っとコケていたかもしれない。実際にましろが自分の唇を落とした場所は蓮のほっぺであり唇同士を……キスをした訳ではなかったのだ。

 

「すごく……柔らかかったな」

 

 唇を触れた時間はほんの3秒ほど,だけどましろには無限の時間に感じて……ただただ幸せを感じていた。これでもましろは勇気を振り絞った方であり成長していると自分で思っている。

 きっと前の……STARTING OVERを歌っていなかった自分ならこんな事出来なかっただろうと思う。昨日からましろの中で何かの鎖が解き放たれて少し開放的になっているのかもしれないと自己分析していた。

 ……何故それが自己分析出来たのかというと

 

「ん……」

 

 ましろは火照った自分の身体にそっと触ると少しぴくっと反応し,次に心臓部分に少し触れた。自分でもドキドキと高鳴っているのが分かって……自分の女性としての場所が少しうずいてしまったのが分かってしまった。

 昨日もなってしまったその現象に,ましろは急いで邪念を振り払おうとした。

 

「……だめ。蓮君のほっぺにキス出来たんだから……欲張っちゃだめだよ……私」

 

 そう自分自身を説得し何とか自分に襲い掛かって来た情欲を抑える事が出来たましろ……彼女が今日新たに抱える事が出来た「ほっぺにキスした」という秘密はきっとこれからも守られていく事だろう。

 ……そのキスだけがましろの蓮に対する秘密なのかは,この先誰にも分からないままに

 




お疲れさまでした!
という訳で,ましろと蓮は新曲で大会に挑みます!オリジナル曲をやっちゃダメなんて言っていないんでね,大丈夫でしょう(1番だけでも詞を作ろうか悩んでる作者)。

そしてましろ,壁を色んな意味で乗り越えたからか徐々に大胆になり始めています。最後が一応R15か所ではあります。まあ自分でもR15に入るか入らないかの微妙なラインだとは思っているのですが明言じゃなくて連想させてしまう以上はR15かなと。

ましろは一体蓮の事を考えながらなにをしかけたんでしょうかね(すっとぼけ)。
という訳でぽんちゃんの話辺りから察してもらってる人いると思いますが偶にこんな描写普通にしますのでよろしくお願いいたします。R18やるかは全く決めてないです。

次話は大会本番!…の予定なのですが,一応今回のお話入れても物語上で大会まであと2週間はある計算なので短編を入れる余地は全然あるので期限は短いですけどアンケートします。
短編いれるか,短編をダイジェストにしてさっさと大会本番まで行ってくっつく話に移るかの二択です。期限は明後日の20時位にします。じゃんじゃん投票していってください!

ではでは!

恋人になった2人の関係性どんなのが良い?

  • 今まで通りましろから蓮に激攻め
  • 逆に蓮がましろに激攻め
  • 寧ろお互いがお互いに激攻め
  • というか全部やれ
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