お待たせしました続きでございます。今回久しぶりに蓮視点が少ないですけどあります。
一応今回1文だけR15ありますので苦手な人はページバック推奨です。ではいざ尋常に!
『すれ違い』
倉田ましろの食生活はかなり偏っていると言わざるを得ない。基本的にピーマンみたいな一般の子供が嫌いな食べ物は大体苦手なのでお肉やじゃがいもやにんじん,玉ねぎといった子供でも食べられるようなものを使ってましろ母は作っていることが多い。
しかし,そう言ったましろがまだ食べられるはずの料理を並べているのにもかかわらずましろの顔色は優れなかった。
「はぁ……」
こうしたため息も今日帰って来てから何度目なのか,最初は数えていたましろ母だったがその数も多すぎてもう数えるのも諦めた。
だから逆に聞くことにした。
「ましろちゃん,凄く元気ないけどどうしたの?」
「……」
ましろは一瞬話そうかと悩んだが,自分でも初めての感情故に言葉にしたかった。箸を置いてどこか自己嫌悪に満ちた表情で話し始めた
「今日ね,蓮君の大学まで行って2人でまた歌の練習したんだけど……全然,音を合わせられなかったんだ」
昨日行った練習の時はほぼ完璧に歌う事が出来ていた筈なのに,今日2人で練習した時は自分でもよく分からない位蓮の声に合わせる事が出来なかった。
あの悪夢を見た時ほどじゃないが,その事実に落ち込みこの日の練習は結局1時間で終わってしまった。
「蓮君も変な眼で見てたし……嫌われちゃったのかな……」
正直ましろの言葉を聞いているだけなら痴話喧嘩にしか見えないのだが,そんな事をストレートに言わないのは親の務め。何なら少し微笑ましくもある。
「どうして音を合わせられなかったの?」
だから先ずはましろ自身にその理由を聞いてみる。ましろは少し眼を伏せて何かを考えた後,重ぐるしく口を開いた。
大学で蓮と那由多が一緒に楽しそうに授業を受けていた事(那由多はそんな事ないがましろには関係ない)。蓮が那由多の事を話す時の表情と熱量が自分と話す時とは違う事。
そして……那由多の事ばかり話す蓮の事。
結論から言うのなら,ましろ母は我が娘ながら結構ハートが重い事に気が付いてしまった。
ましろ本人は気が付いていないかもしれないが,那由多が男だと知っていても尚嫉妬に狂っているのだからましろ母から見てもましろの愛が重いと思った。
(私,育て方どこかで間違えたかな……?)
その愛の重さについそんな事を考えてしまう位には。
「はぁ……」
ましろはましろで蓮に嫌われたかもしれないと考えてしまいまたため息をつく。既に今日だけで30回は超えてそうだ。
そんな彼女を励ます意味でからかう事にした
「ましろちゃんは蓮君の事が好きなんだね」
いつもなら……そう,多分あの悪夢を見る前のましろなら顔を真っ赤になり,否定しながら恥ずかしがるという光景を見せていた筈だった。
しかし
「うん,好き」
「……?!」
投げられたのは肯定の言葉,頬が赤みを帯びているのは変わっていないがそこに宿る言葉は不思議と前の数倍は甘く,芯の宿った言葉だった。というか甘すぎてましろ母ですら一瞬眩暈がした。
「い,意外に素直に認めたわね……?」
だから何とか態勢を整えながら軽くジャブを入れてみると,恋を覚えたばかりの彼女のように小さく頷き口を開いた。
「だって……もう言葉にしないと……頭が可笑しくなっちゃう」
”好き”と,言葉で言わなければ……そうしなければ自分は嘘をついた気になってしまい却って罪悪感が出るし蓮の事を考えまくってしまうもはや”蓮病”みたいなことになってしまっている。
だけど逆に”好き”と言葉を一度呟いてみると,ましろには甘美な囁きに聞こえ頭の中でアドレナリンが放出され恍惚感と高揚感が溢れ出し幸せを感じる。
罪悪感か,頭の中の高揚感か,ましろにとって選ぶのは後者だ。もう好きと認めた方が楽だし,この幸せに満ちるのなら選ばないという選択肢がない。
「これは……相当ね」
恋の病にかかっているましろを治すには,もはや失恋するか……蓮を恋人にするかの二択だった。そしてましろ母としては娘には幸せになって欲しいので当然蓮に恋人になってもらう方が良かった。
「じゃあもう告白しちゃえばいいじゃない」
だからそう言って見るが,ましろは恥ずかしそうに首を振る。
「だって……怖いし……今までの関係がなくなるの……嫌だし……」
蓮の事を好きだとは認めたのにもかかわらず,告白するという選択は怖いようである。言い分がまるで子供だが実際高1は人によっては子供かもしれない。
告白する事で自分と蓮の関係は確実に変わるだろう,それが良い方なのか悪い方なのかは分からないがましろはそれが悪い方になるのを恐れ一歩を踏み出せずにいた。
(……蓮君もましろちゃんの事は好きだと思うんだけど)
ましろ母から見れば,今の蓮だって昔の旦那のようにましろに接しているしそもそも大学生にもなって好きじゃない相手に手を繋いだりはしないだろう……と思うのだがましろはそれが幼馴染だからしてくれていると思っているようである。
そこでましろ母は気が付いた。もう既に2人は両想い……というかましろの愛が重い事は見ていれば分かるのだから後は蓮をその気にさせれば万事解決ではないかと。
そうと決まればさっそくと,ましろ母は席を立ち自分の鞄の中から何やらチケットを取り出してましろに渡した。
「お,お母さん。これは……?」
「それはね……今話題の映画のチケット! 偶々懸賞でペア当たったの! 蓮君と2人でその映画見てきなさい」
「え……? えっ?!」
ましろは慌ててそのチケットの内容を確認して……プルプルと震えながら母親を見た。
「お……お母さん」
「ふふーん♪」
そのチケットは,最近巷で話題のラブロマンス映画。今こんなに落ち込んでいる時だというのに何故これを勧めてくるのか。
「きっとそれを見たらまた一緒に歌えるようになるよ♪」
「そ……そう言う事じゃないと思う」
言葉では否定してみるが,正直この映画を蓮と見れるのなら……存外悪くないと思ってしまった自分を殴りたい。
結局ましろはチケットを母親に返す事も出来ず受け取ってしまったのだった。
★
同時刻,シェアハウスArgonavisで蓮は
「はぁ……」
蓮にしてみれば大きなため息をついていつもはパクパクと食べている凛生のご飯も喉に通っていない様だった。
そんな様子はメンバーからしたら珍しく,あからさまに元気が無い末っ子の話を聞くのは保護者の務め。
「蓮どうしたんだ?」
「元気ないけど?」
結人と航海が一大事とでも言いたげに慌てて聞いた。バンドの顔とでも言うべき蓮のモチベーションダウンは早急に回復させる必要があるのだ!
蓮は悩まし気に2人に言った。
「今日しろちゃんと上手く歌えなかったんだ」
((痴話喧嘩か))
全く喧嘩じゃないがもう蓮の言葉だけで今2人の間でどんなことが起きたのか察してしまうのが蓮とましろの保護者だ。
「しろちゃん,何か怒ってるみたいだったし……僕何かしたのかな……?」
困り切った表情で2人に相談する。結人と航海はお互いに顔を見合わせ,アイコンタクトだけでどうするかを相談する。
いつの間にかましろに対する蓮の感情は外野から見ても恋愛の意味で好きなんだなと見ていたら分かる。その感情の名を蓮が言葉に出来ないだけで,どちらかが告白すれば全て解決すると思った……。
しかし,今のましろは怒っているようなのでその原因から突き止める事にした。
「今日倉田さんとはどうしてたんだ?」
「今日はね,しろちゃんが大学に来てくれて一緒に練習しよって言ってくれたんだ!」
(倉田さんが前よりも大胆になっているね)
「それでどうしたんだ?」
「それでお話しながらカラオケに行って……何だか……上手く言葉に出来ないんだけどしろちゃんと歌が合わさらなくなって……」
尻すぼみにどんどん声が落ち込んでドヨーンとした。相当な重症だと察したが,これだけでは正直ましろが蓮に怒っている理由が分からない。
以前蓮がスマホを見ずに未読スルーを噛ました時は不安そうだっただけなのに,それ以上の事が起こったのだろうか……。
「蓮,そのお話ってどんな話をしたの?」
航海は蓮の言葉から何か起こりそうな箇所をピックアップし問いかけると,今度は楽しそうに話し始めた
「那由多君のお話! 今日の授業那由多君の隣で受けてたんだけど──」
「ストップストップ!」
那由多トークが始まってしまいそうな蓮を律した結人,そして蓮のその話を聞いて航海もましろが怒ったという理由を察する事が出来た。
確かに……言ってはあれだがましろの独占欲は少々……強いものというのは何度か会っていれば分かる。蓮といる時の彼女はそれが顕著になるから。
「いやでも相手那由多だぞ……?」
だけど結人はましろの気持ちが一瞬分からなくなったのか航海に内緒話でもするかのように聞くが,航海は航海で本当にそれが原因なのか自分の中でもきちんと整理した結果……
「それしかないんじゃないかな……? 旭君の事を話す蓮はある意味倉田さんと話す時よりも楽しそうだから」
それがましろをないがしろにしている訳じゃないのは分かっている。分かっているがましろにはそんな事は分からない。
蓮の相談に乗っているだけで自分が恋愛したわけでもないので結人はその気持ちが分からなかったが,航海は兄がモテモテだったのもあって多少なら分かるのかもしれない。
しかし,それが那由多トークが原因なら案外対処は簡単かもしれない。結局いつもと同じである。
「じゃあ蓮,倉田さんとまた出かける約束をしたら?」
「おいおい,良いのか? だって倉田さん怒っているんだろ……?」
そもそも,常日頃から客観的に見たら怒っているようにしか見えない那由多と何故か会話が成立して尚もメンタルがズタボロにされないのに,今回の蓮はましろが”怒っている”と感じているのだ。
人の怒りに鈍感な蓮が,ましろの怒りを感じること自体がもう珍しい状況だ。
「だからだよ。彼女もきっと今頃は蓮と歌えなくなって落ち込んでいるはず。2人の歌を取り戻すには一度リフレッシュする必要があると思うんだ」
「なるほどな……。一回歌から離れてみるのか」
「歌……歌っちゃダメなの……?」
そんな酷い事があるのかとでも言いたげに言うが,航海は苦笑しながら首を振る
「違うよ。今無理に合わせようとしてもきっと合わない。2人でリラックスする事が出来たらきっとまた合わせられるようになると思う」
その心は
(2人が一緒にどこかに出かけたら2人とも歌がもっと上手くなるから)
という経験則に基づくもの,つまりほぼノープランである。2人の夫婦みたいなやり取りを見るこっちの身にもなって欲しいと思った航海であった。
「分かった。なんて誘えば良いかな……?」
「それは蓮が考えなよ。僕達が言ってもきっと意味がないから」
「そんな……」とでも言いたげに蓮が弱々しく項垂れるという珍しい光景がそこにはあった。
結局蓮は寝る前までましろの事を考えて……
「しろちゃん……出てくれるかな……?」
結局航海を見習ってノープランで電話をかけている。ましろの事を考えて考えて……結局どうしてましろが怒っているのか分からず取り合えず電話をかけるしかなかったのだ。
「……」
数コールしたがましろが電話を取った様子は見れなかった。蓮が固唾飲んでコールが終わる時まで待っていると……
『……蓮君?』
「……! しろちゃん,良かった!」
てっきりましろに何かあったのかと心配していたが,ちゃんと出てくれた事でその不安は一旦なくなり次は一緒にお出かけを誘うのだが……
『……』
「……」
2人は気まずいのか無言タイムに入ってしまった。実際の所蓮には殆ど非はないが,蓮も何となく自分が原因でましろが怒ったのだと思っているから何から話せばいいのか分からなくなった。
そしてそれはましろも同じで……蓮は意を決して言った
「しろちゃん!」
『蓮君!』
「『……え?』」
全く同じタイミングでお互いの名前を呼びあうというまるで恋人のような事をしているがまだこの2人は付き合っていない。
「ど,どうしたの?」
『蓮君の方こそ……どうしたの……?』
「僕はその……しろちゃんとお出かけしたいって思って……」
『……え?』
電話の向こう,ましろは自室でベッドに寝ころびながら聞いたその言葉でばっと身体を起こした。蓮から誘われるなんて思っていなかったし,何より蓮がましろとの時間を歌以外で過ごしたいと言ってきてくれたのは……初めてかもしれない。
それが嬉しくて仕方がなくて……心躍るように返した
「わ……私も,蓮君と……お出かけしたいって思ってた」
言葉が尻すぼみに小さくなっていくが,以前の彼女ならきっと恥ずかしくて最後まで言えなかっただろうそれは蓮の耳にも届き,蓮も今のましろと同じく頬を紅くした。
『じゃあ……いつ会える……?』
「えっとね……」
ましろと蓮はそうして明後日,お互いの放課後に月の森の近くのショッピングモールにある映画館に行く事になったのだった。
★
『蓮とましろと恋愛映画』
約束の日,2人は件のショッピングモールの入り口を待ち合わせ場所にして蓮はこの日の授業が2限に終わった為ましろよりも早く待ち合わせ場所にやって来た。
普段の彼は目立たない事も相まってライブの時以外は周囲の視線を集めていないのだが……
「……」
今の彼は落ち着かなかった。それは自分が着ている服装がいつもとは違うと言う事,そして何故か道行く人が自分に視線を向けているからだった。
(どうしてこんなに見られてるんだろう……?)
今日の服装は結人達に見てもらいながら自分なりにコーディネートした服装,幼さを感じる蓮にはぱっと見合っている様には見えない大人っぽいジャケットとシャツ,だけどもそれが逆にキッチリとした大人にも見えその相反する見た目が周囲の人々の視線を集めるという結果になっていた。
そして理由はそれだけではなく,元々蓮の顔立ちは整っているし世間で言うイケメンには入る。そんな簡単な言葉で済ませる程のものじゃないかもしれないが,俗に言えば彼は女性のタイプに当てはまりやすい。
実際彼が函館にいた頃は1人が好きだったのでほぼ断っていたが,同じ学年の女生徒に遊びに誘われる事も多々あった。
「あの人,なんかカッコイイね……」
「えー可愛い方だよ」
だから自分を見た女性達が自分に対しての感想戦をしているなど露知らず,蓮はそわそわとましろの事を待っていた。いつも彼女と待ち合わせをする時は楽しみという感情の方が大きく上回っていたけれど,今日だけはドキドキの方が胸の大半を埋めていた。
そんな時……
「ねえお兄さん」
「……? 僕?」
蓮に声をかけて来たのは,顔の整い,少しグラマーな女性だった。普通の人ならこの時点で客引きか何かだと思ってさっさと離れるのだが性善説を信じていると言われても可笑しくない蓮なので勿論そんな事はせず……
「そうあなた,これからお姉さんと一緒に遊ばない?」
こんな平日のショッピングモールでポツンと1人でいる顔の良い大学生……悪い人が狙うには十分な条件だった。その女性は蓮との距離を詰め,誘惑するように胸を強調させる。
ただの獣ならきっとほいほいついて行ってしまうような状況,ただの獣ならが付くが
「ごめんなさい。僕人と待ち合わせしてるんです」
(わ……私が眼中に入っていない?!)
凄い申し訳なさそうに蓮が平然と拒否してきた事に,拍子抜けとあまりに色んな意味で無関心な感じで女性は物理的に意識をさせようと蓮の腕を取りほぼ0距離に縮めようとしたが……
「私の蓮君に触らないで!!」
そんなどこか焦ったようで怒っている声色を発しながら,どこからか現れた月の森の制服を着ているましろが凄まじいスピードとパワーで蓮の腕を掴み,呆気に取られている女性を完全に無視し蓮を引っ張っていった
「し,しろちゃん?!」
いきなり現れたましろに蓮は驚きを隠せなかったが,彼女が引っ張る力の方が凄まじくあれよあれよとショッピングモールに引っ張り込まれた。
ショッピングモールに入り少ししたらましろは蓮の手を握りながらようやく振り返った。
「蓮君……私以外の女について行かないでね……?」
もはや隠す気も微塵もない独占欲全開な台詞に”普通”の男なら重いと思ってしまう所。しかしこれまで通り蓮はある意味そうじゃないのはお察しの通り,寧ろ彼女のそんなセリフも先の女性の虚言なんかよりも遥かに甘美的に聞こえ……蓮の心が嬉しいと叫んだ……気がする。
「う……うん。しろちゃん……その……」
この前はごめん……,そう言おうと思ってもまだ自分にはましろが怒った理由が分からない。ただ赦しを貰おうと謝るのは失礼ではないのか……,そう考えた蓮の口は閉じてしまった。
そしてましろはましろで先程の光景が背筋を自分でも可笑しいと思う程に怒りと焦りを感じて戸惑いを覚えていた。
(私……あんな声出して……)
あの女が蓮に触れようとした時,自分でも抑えきれない激情が湧いて身体と口が勝手に動いていた。そして気が付いたら蓮に独占欲全開な台詞を言ってしまっていた。
そんな自分を思い出したくなくて,ましろは心の中で首を振って蓮に笑顔を向けた
「……映画,行こうか」
「う,うん」
気持ちを切り替えて,2人は手を繋いだまま無言で映画館に向かった。2人は大き目なポップコーンとそれぞれドリンクを購入し席へと着いた。
「蓮君は映画とかよく見る……?」
「僕はそんなに。スターファイブの時位かな」
「そ,そっか。私もフェアリーレジェンズの時位かな」
蓮とましろは何げなく会話しているように見える。けれど実際はそんな事なく2人とも一昨日の話は避けていた。どうして自分達の歌が合わなくなってしまったのか,それを解決しない限り大会には臨めないのに2人とも話題に出すのを怖がって無意識的に避けていた。
そしてもう1つ,2人以外のお客さんも当然いるのだが何故か男女で見ている人が多かったからこそ意識してしまい会話もどこか危ういものへとなっていた。
「……」
「……」
そして映画が始まる数分前には,前までは腐るほどあったはずの話題も口に出せなくなってしまい2人は無言に変わってしまった。
さっきまでは繋いでいた手も,今では離れてしまい宙を漂っていた。正直,こんな事態に今まで陥った事がない為2人とも何をすればいいのか……全く分からなかった。
(話したい事……沢山あるのに……)
(何を話せばいいのか……)
((わからない))
そんな2人を映画は待つはずもなく,2人の意識が覚醒した時には既に映画が始まっていた。爽やかなメロディーと共に幕が開けた映像は……はっきり言うと2人には少々刺激が強かった。
映画の内容は,かつて引っ越しでそれぞれ離れてしまった大学生と女子高生の恋愛劇。幼馴染の2人は少年少女時代を共に過ごしていたが,ある日突然家の都合で女の子が引っ越してしまう所から始まった。
2人ともどこかで見たような展開に一瞬困惑したが,やはり内容自体は自分達の群像劇とは違う。大学生の男は普通に上京して東京の大学に通っているし,彼と彼女が再会したのもオープンキャンパスという何とも言えない場所だった……
(私も……もしかして人の事言えない……?)
しかし,よく考えればましろと蓮も再会したのはライブハウスだったのでそう考えればまだ大学で再会するという方が現実的なのだろうか……。
そんな事を考えている間にも物語は進む。男が一人暮らししている部屋に女が遊びに行ってR18すれすれな一悶着があったり,2人で遊びに行ったり……
「「~~??!」」
見ているだけで身体が不思議と熱くなってしまい,頭の中がぐちゃぐちゃになり始めていた。
2人の甘酸っぱいやり取りに身体の触れ合い,そして女性の男性の周りの女子大生に対しての嫉妬等々……。濃厚なやり取りは一般で公開していいような映画ではなかった。
シチュエーション自体はありきたりかもしれないけれど,俳優や女優の演技も相まって身体の火照りがどんどん激しくなって行ってしまった。
そして……恋愛映画と言えば定番かもしれないキスシーンをましろは恥ずかしくて手で顔を覆いながらも魅入ってしまった
(キ……ス)
心の中で呟いただけというのに,身体の火照りは激しくなり鼓動も可笑しくなっていく。
そしてスクリーンの俳優と女優も……本当のカップルのように身体を密着させ一種の神格化さえ感じさせてしまうほど情熱的で激しいシーンは……本当になぜR指定を付けなかったのかと思う位に”いけない”と思わせるシーンが多々あった
そして……
──ちゅ
そんなリップ音が聞こえた……スクリーンからじゃなく
(い……いま……う,うしろから聞こえ……)
その事実に,スクリーンで繰り広げられている少し長めのキスシーンも相まって本格的に体の熱が爆発したように高くなっていく。
結局,ましろは映画の内容が入ってこなくて記憶に残ってしまったのは情熱的なキスシーンとそこに至るまでの甘すぎて砂糖を吐いてしまいそうな位の俳優と女優のイチャイチャだけだった。
★
『和解と一歩』
多摩川に流れるせせらぎを聞きながら2人は帰り道を歩いていた。といっても結局2人の足はあのベンチに向いて,どちらかともなく並んで座っていた。
2人とも、あまりに激しいストーリーと演技に固まってしまって示し合わせた訳でも無いのに一緒にモールを出て、同じ道を歩き今に至る。
「その……」
しかし、ようやく決心がついたのか蓮の方から声をかけた
「は,はい……!」
だけどもましろは何故か肩を大きくビクッと震わせ,耳まで真っ赤になりながら反応した。その驚きように蓮もビックリしたが,彼女が何故そんなに驚くのか……何となく理由が分かるからこそ何とも言えない。
2人が纏う雰囲気は,一昨日までのどこか微妙な雰囲気ではなく甘く,溶けてしまいそうな位の甘美な雰囲気で……蓮は不思議と今なら上手く歌えそうな気がしていた。
「しろちゃん,あの映画を見て思ったんだけど歌いだしの部分を──」
蓮はが話す内容は結局いつもとそれほど変わりない事だった。彼が好きな歌の事,自分達が歌う新曲の事。それは前までならましろも一緒にあれこれ話す事で……一昨日は出来なかった話。
「あ,それじゃあ──」
だけれど,結局そう言った”いつも通り”の会話が一番楽しんだとましろは気が付いた。きっと蓮は特撮が好きで,歌が好きで……那由多の事も好敵手として好き。
その好きの気持ちが彼の言葉から伝わって……どんどん自分まで楽しくなっていく。
(そっか……私,蓮君に素敵な笑顔を向けられる旭さんの事をライバルって思っちゃって……)
前までは眼が曇っていて分からなかった。今自分と歌の事を話してくれている蓮の顔も……きっと蓮が今この瞬間だけ自分だけに見せてくれている表情なんだと。
この胸にある黒い感情は……きっと蓮と結婚する事になったとしても消える事はない。これからも絶対に誰かに嫉妬してしまう事もあるだろうし……それを止められない気がする。
だけども,今蓮が見せてくれているこの笑顔は……今だけは自分のものなんだと考える事が出来たら……とっても嬉しかった。
「「~~♪♪」」
2人は星空の下で何度も声を重ねていたのだった。
『蓮の変化』
しろちゃんと一緒に映画を見て,その映画から湧いたフレーズやインスピレーションを盛り込んだ歌を歌って,しろちゃんをお家に送った僕はシェアハウスに帰ってご飯とお風呂に入って自室に戻って来た。
今日のぽんちゃんは航海と一緒に寝るみたいでずっと航海の膝の上で寝転がっている。
でも……僕はぽんちゃんの事を考えている余裕が全然なかった
「しろちゃん……」
ベッドに倒れこんだ僕は,枕で顔を抑えながら今はここにはいない彼女の名前を呼んだ。そうしたらドクンドクンって心臓がとても苦しそうで……嬉しそうに鼓動する。
きっと今僕の顔はとても赤くて……頭が可笑しくなってしまいそうだ。
「身体が……熱い……」
気が付いたら僕は歌の事じゃなくてしろちゃんの事をずっと考えていた。
今日はどうしてかしろちゃんの事しか頭に浮かばなくなって……河川敷にいた時はそんな事なかったのに……しろちゃんと別れてからずっとしろちゃんの事を考え続けてる。
「何だろう……この感じ……」
歌の事を考えれば考える程……逆にしろちゃんの笑った顔が頭に浮かんで鼓動する。僕の身体はそれに反応するみたいに熱を生み出し……下半身に血が熱くなったのを感じた。
今まで体験したことがない情欲の嵐が僕を襲ってきていた。
「はぁ……」
今すぐしろちゃんの事を考えるのを止めないと……身体がどうにかなってしまいそうだった。きっとそうなったのは映画のあのキスシーンを見たから……。
「~~っ!」
あのシーンを見た後にしろちゃんの健康的で桜みたいに綺麗な唇を見た時……本当に頭がぐちゃぐちゃになって咄嗟に歌の話で逸らさないときっと僕は衝動と欲望に身を任せてしろちゃんに──していた
「だ,ダメだよ。そんなことしたら……」
彼女の同意も何もなくそんな事をしたらきっと今までの全部が壊れてしまう。僕達は幼馴染……幼馴染なんだから。
明日からはきっと普通になれる。うん,きっといつも通りの僕に戻ってるよね。
僕はそんな事を思いながら目を閉じた。
──朝起きてどうしてか布団が少し濡れてた
『ましろの友情』
蓮君とのデートを終えて,私はいつもの様にベッドに倒れ込み今日一日の事を思い出していた。最初は蓮君と映画を見る事に不安があったけれど……結果的に見てよかったって思えた。
蓮君とのいつも通りが大切なものなんだって改めて認識出来たから。
「ふふっ♪」
私は今日の思い出を一通り言葉にしたのを見て,机の上にあるものを取ってベッドに戻った。蓮君のイメージカラーの青色の毛絲と棒針2本,それからとじ針とはさみ。
ここ最近は作る気力がなくて手を付けていなかった作業……イヤホンで私と蓮君の曲をかけながら編み始めようとしたら……
ピコン!
「……? 誰だろう……?」
こんな時間にLINEが来たことにびっくりしながらスマホを見たら,透子ちゃんと七深ちゃんからだった。
『シロー! 明日アトリエ来れる?! マジヤバいの作っちゃったんだけど!』
『とーこちゃんの言う通りこれは傑作だよ~』
「……傑作ってなんの事だろう?」
ここ最近はモニカの練習が終わったら直ぐに蓮君の所に行っていたから……最近は余り皆と色々お話できていないな……。明日は本当ならまた蓮君と練習だけれど……うん。決めた。
「大丈夫だよ。時間は少ないかもしれないけど……て送信」
直ぐに既読が付いて返事が返って来た。私も透子ちゃん達に返事を返して,合間に蓮君にも少し時間をずらす事を連絡する。
スマホをベッドに放り投げて,私はまた毛絲とかを手に取って私と蓮君が奏でるリズムと曲に乗りながら一本一本長い時間をかけて……私は蓮君に上げるためのマフラーを編んでいった。
お疲れさまでした。
蓮ってアニメでもゲームでも異性に対しての反応がほぼないので独断と偏見になるのですが一度も自分でしたことないんじゃないかなー…って思ったので自分でも戸惑っていました。文字通り歌が恋人みたいな所あると思うので余計に。
そして前に今の蓮のようになってしまったましろは反対にご機嫌になり透子たちと何やらするそうです。
ヒント:透子と七深と言えば・デュエット大会は好きな服でOK辺りかな。
まあ…普通にアトリエシーンはダイジェストになるのですが。
そう言えばましろの声優さんが仮面ライダーに出演と言う事でそろそろ蓮とましろが特撮トークする所でも入れるか(いつだよ笑)
さて,いよいよ次回は本番編です。もしかしたら前後半に分けるかもしれませんが,楽しみにしてもらえたら嬉しいです。
では!
恋人になった2人の関係性どんなのが良い?
-
今まで通りましろから蓮に激攻め
-
逆に蓮がましろに激攻め
-
寧ろお互いがお互いに激攻め
-
というか全部やれ