という訳でデュエット編最終話です。
短編を挟んだ結果超長くなりました。これはもはや短編とは言い難くなっちゃったのでやっぱり章分けしときます笑。
それから,前回書き忘れていたんですがましろの恰好はガルパの『ホタルの光に見た未来』のましろの衣装です。
https://bangdream.gamedbs.jp/images/chara/card/1627697952010_wmukdr60.png
URLの先がその衣装ですのでイメージしたいって方は見てみてください。
文字数1万6000時位です。
地蔵通り商店街ステージ,デュエット大会はまずまずの盛り上がりを見せていた。歌に自信があるカップルが参加しているだけあってそれなりに客達も湧いたり,カップルでデュエットという光景が面白かったり逆に妬ましかったりで大会委員会が想定していた事よりも様々な感情がステージに向けられていた。
「まあ,祭りのカラオケ大会ならこんなもんだよね」
しかし,この十人十色のステージを観戦していたArgonavisやMorfonicaの面々は彼彼女らのレベルはそれなりに認めるがやっぱり蓮とましろの敵ではないと思った。
それは同じバンドメンバーだからという理由じゃなく,単純に2人の相性と参加者のレベルから見てそう思っただけだ。
「これはシロ達が優勝頂きだな!」
「もう,透子ちゃん気が早いよ」
そんな事を言っているつくしも透子の気持ちが分かるから言葉ではそんな事を言っているが,実際はつくしもましろ達の勝利を確信していた。
何故なら,今彼女達の前で歌い終わったペアが9番目……つまり次はましろ達の出番で最後は彼女たちの曲で締められる。MorfonicaのSNSに載せる用の動画を撮ろうとスマホのカメラを起動させておく
「——さん,ありがとうございました!!」
その間に司会でもあるつぐみが,歌い終わったカップルにお礼を言ってそのカップルは観客に恥ずかしそうに視線を向けながら控室に戻って行った。
その時に女性の方が慣れないヒールを履いていたのか,一瞬コードに引っかかり彼氏がそれを支えるという王女と王子様のようなハプニングが起きつつも概ね順調に進んでいた。
「次はようやく蓮達か」
「ちょっと長かったね」
「ここまででお客さん達も疲れてるかもしれないけれど……」
「七星達ならその程度ハンデにもならないだろうさ」
こういった長い時間行われるライブは中途半端なスケジュールと歌唱では,却って疲れが溜まってしまい最後らへんの参加者を惰性で見てしまう事は実際の所ままある。
今回の大会はプロなんて1人もおらず,アマチュアの大会だからこそそう言った傾向がある事を航海は思っていたが,凛生は何の問題もないと言い張りステージに目を向けた。
「……そうだね」
その理由が彼らの歌唱を信じているのと……自分が作曲した曲なのだからハンデにもならないという意味だと航海だけが察して苦笑した。
「それでは,次で最後のカップルです!! 七星蓮さんと,倉田ましろさんです!!」
つぐみが今日最後の司会だからか,それともましろだったからか少し弾むような声で2人の名前を呼ぶと……
「「……!」」
結人達は観客の空気が一変したのを感じた。
舞台袖から現れた蓮とましろは……何も知らなければきっと夫婦と思ってしまう位に様になっていて,ましろに合わせた訳では無かったが白のスーツというのも,そして大勢の観客が息を飲んだであろうましろのドレス姿にマッチしていて一瞬で商店街がどこかの教会に変貌したような神聖さを身に纏っていた。
「これは……ちょっとびっくりだね」
万里が知っているましろは,普段はおどおどして自分の想っている事を素直に言えないような女の子で正直地味という印象だった。もちろんそれは最初の時の感想で今はもう違うのだが……そう感じたましろと今のましろが本当に同一人物なのかと思う位には美しかった。
というより場所が教会だったら既に結婚式ムードに変わっていたかもしれない。
「ましろちゃーん可愛い!!」
どこからか元気溌剌な女の子の黄色い声が上がりステージにいるましろがボンっと顔を紅く染めて口をパクパクさせているのを見て,やっぱりましろはましろだと再認識した。
さっきのカップルが転びかけたのを見ていたのか,2人はゆっくりとステージ中央に立った。
「お二人とも,本日は参加してくださりありがとうございます。お二人の意気込みの後,曲をかけますね!」
そう言ってつぐみはつぐみは下がり,それを見た蓮が次にましろを見るとましろは緊張しているのか……それとも視界に知り合いのバンド仲間が沢山いるからか口の中が渇いてしまっていた。
だから彼女が治るまでの間蓮は場を繋ぐことにした。
「皆さん,初めまして。七星蓮です。その……今日は彼女……しろちゃんとこんなにも大勢の前で歌える事が凄く嬉しいです!」
その瞬間,ましろの耳に黄色い声が上がったのが聞こえその理由が隣で自分を安心させるために手を繋いでくれた蓮に対しての声だと気が付きようやく意識が覚醒した。
慌ててもう片方のマイクで蓮のMCを繋げた
「あ……えっと……倉田ましろです。今日は見に来てくれてありがとうございます! えっと……きょ……今日の為に蓮君と色んな人達の助けを借りて私達の曲を作ってきました! だから頑張ります……!」
ましろはそう言ってステージ端に待機しているつぐみに目線を送り,つぐみはそれに頷いて音楽を流した……筈だった
「「……?!」」
だけどその瞬間流れたのは何かの反響音と雑音だった
「え……なにこれ?」
その余りに不快指数が高い音に蓮は咄嗟にましろの耳を優しく塞ぎ,彼にしては珍しく歪んだ表情を見せた。そのハウリングしたような音と反響音は商店街全体を包み蓮と同じく顔を歪ませる人間が多くいた。
「……! 電源切って!!」
つぐみも耳を抑えながら係の1人に叫ぶと,ようやくその音が止み蓮はましろの耳から手を離した。
「蓮君,だ……大丈夫……?」
観客たちのざわめきを耳にしながらましろは,少し辛そうに自分の耳を抑えている蓮の首筋に慌てて手を触れた。蓮は3秒ほど眼を閉じて深呼吸した後,ようやく手を離してましろの手に自分の手を重ねた。
「うん。ビックリしちゃったけど大丈夫だよ」
「よ……よかった。……ありがとう,蓮君。守ってくれて」
蓮が咄嗟に耳を守ってくれなかったらあの不快指数全開の音を直撃で長い時間受けていた。
「ううん。しろちゃんに何もなくてよかった」
……本当は今蓮の耳は少し遠くなってしまっているが,ましろの口と表情を見て何となく返事していた。そして幸い,この難聴は割と直ぐに治った。
問題はそれではなく……
「すいません,2人とも一度袖に戻っていただけますか?」
つぐみが2人にそう言って慌ててステージに設置されているスピーカーや等の機器を確認していった。
蓮とましろは不安そうに見合った後,つぐみの言う通りステージ袖に戻り始めた。その時に蓮は視線を感じて不意に観客たちを……その中でも仲間達がいる方を探しもせずに直接視線を送り……同じく蓮を見ていたArgonavisと眼があった。
普段は5人で立っているステージに,ましろと2人で立つことが嫌なわけじゃない。だけれど……こんな事が起きた後だけれど,いやこんな時だからこそ蓮は……
蓮のその何かを伝えたい情熱の籠った眼は,確かにArgonavisに届いていた。
2人が袖に引っ込んだのを見て,つぐみは慌ててマイクを持って残っている観客にアナウンスをした。
「お楽しみの所申し訳ございません! ただいま機材トラブルが発生してしまして少しの間だけお待ちください!」
「機材トラブルって……」
万里が元居た席にいたつくしが不安そうに言葉をこぼした。ステージ上ではスタッフさん達が芳しくない顔で色々話をしていた。
「このままシロ達の出番って事になったらなんか不公平じゃね?」
「うん。アカペラが悪い訳じゃないけれど……」
透子と七深も不安を見せながらステージを見ていた。しかし,もしこのままあの機材が今日は使えなくなって新しい機材を用意するといってもお金も新たにかかるし,そもそも既に時刻は夜になる。このままでは最悪蓮とましろのデュエットも無くなってしまうかもしれない。
それを聞いたMorfonicaの背後にいたArgonavisの4人は全員で顔を見合わせて,苦笑した。全員考える事は同じなようだった。
「悪いモニカの皆,ちょっと行って来るぜ」
「え? 結人さん?! 皆さんも?!」
つくしの驚きの言葉を背にArgonavisはどこかに行ってしまったのだった。
控室ではましろが不安そうにモニターでステージの様子を見ていた。その左手には不安を和らげるように蓮の右手も繋がれていた。
そして,何故か蓮のジャケットがましろに羽織られていた。
「どうしよう……機材トラブルだなんて……」
Morfonicaはそれなりに準備に念を入れているので本番での機材トラブルという状況には今まであったことはない。それにカラオケ機器のトラブルなんて出くわしたこともないからどうすればいいのか分からなかった。
このままではアカペラか……最悪自分達のデュエットだけなしになってしまう。元々最後なので後が閊えている訳でもないからだ。
「大丈夫だよしろちゃん。僕達ならアカペラでも出来る!」
だけど隣にいる蓮はそんな不安を感じさせない確かな信頼の眼でましろ見ていて,ましろも少し微笑んだ。きっと1人ならこんな状況になったら緊張や不安で押しつぶされてしまうのに蓮といるだけでそれらが無くなっているのが自分でもよく分かるからだ。
「うん」
ましろがそう返事した時に,袖に入ってきたのは困った顔のつぐみだった。つぐみはましろに気が付くと申し訳なさそうに近づいた。
「ましろちゃん,それから七星さん。ごめんなさい。機材トラブルが直ぐには解決出来なさそうなんです。それに……ましろちゃん達が歌う曲はオリジナルだからスマホをスピーカーに繋げるって事も出来なくて……」
「そ……そうなんですね」
覚悟はしていた事だが,やはり曲を無しでアカペラでやるしかないとましろが心の中で腹をくくった時,隣の蓮が何かを感じてつぐみに言った
「あれ以外の機器は大丈夫なの?」
「はい。ダメなのは一番大事なカラオケ機器だけですけど……」
つぐみはこの後の事をこう考えていた。まず代わりのカラオケ機器をどこからか借りてくる。その間に自分達Afterglowがライブに出て時間稼ぎをすると言う方法だった。
タイムスケジュールはずれてしまうがこの際は仕方がないと思ってスマホを取り出し,会場にいる筈の蘭たちに連絡を取ろうとした時それに待ったをかけたのは蓮だった。
「少し待ってくれないかな? もう少しで来る気がするんだ」
「来るって……なにがですか?」
彼女の疑問は唐突に解決する事になった。控室であるテントに入って来た人達を見たことがあったからだ。係の人に止められる声と,「通してくれ頼む!」という声が……自分のリーダーの声が聞こえて来たから。
控室にやってきたのは結人達だった。
「皆! 来てくれたんだ!」
Argonavis,図らずとも全員集合になり蓮が子犬のように喜んだ。
「おまたせ蓮」
「あ,皆さん!」
ましろも彼らが来たことに何となく安心を感じたのかほっと息をついた。そのましろのドレス姿を見て一瞬息を飲んだArgonavisだったが,直ぐに頬笑みに変えた。
「ああ,2人が困ってるって思ってな」
「あ,あのー一応関係者以外は立ち入り禁止なんですけれど……」
つぐみが申し訳なさそうに言うと,結人は首を振り言った
「それは分かってる。だから今から関係者になるならいいだろ?」
「結人,それって!」
蓮が何かを察したのか飛び跳ねる勢いで笑顔を見せ,結人も笑顔で返してつぐみに言った。
「2人の曲を演奏したのは俺達です,俺達で演奏させてくれないか?」
「み,皆さんがですか?!」
「決断は早い方が良いだろう。観客たちの熱ももう冷め始めてしまっている。ここで時間をかけるのは得策じゃない」
「そうそう,元々機材トラブルはそっちのせいなんだからこれくらいの妥協は許してほしいね」
結人の言葉に追撃したのは凛生と万里だった。確かに既に機材トラブルと言う事で純粋に楽しみに来た客はもう萎え始めている。機材トラブル何て客からすれば知った事ではないしイベントにおいて失敗は成功よりも記録に残ってしまう。
ならここで彼らに演奏をしてもらった方が良い……それに演奏がカラオケよりも良いとは限らない。中途半端な演奏は寧ろ蓮とましろのマイナス点になりかねないからだ。
しかし,つぐみの個人の意見ではどうにもできない。自分がこの大会の全てを仕切っていた訳ではないから他の人の意見も聞かなければ──
「いいんじゃないえ~」
「わっ!! 会長さん?!」
つぐみが揺れ動いていたら,そのつぐみの背後から3人のご老人が現れた。この商店街の会長さん達だ。
「わたしたちもオリジナル曲,生でききたいよね~」
「オリジナル曲,いいよね~」
「トラブルはこちらのせいじゃし,演奏会してもらいましょ~」
「あ……ではArgonavisの皆さん。よろしくお願いします!」
会長達の言葉を背に受けたつぐみはすぐさま行動を開始した。先ずは改めて目の前のArgonavisに頼む事,演奏の許可を得たArgonavisと……彼らに助けられる形になったましろと蓮はお礼を言った
「「ありがとうございます!」」
そうしてArgonavisは近くに止めてある車の中から自分達の楽器を,つぐみは30分ほどスケジュールがズレてしまう事と……
★
商店街ステージ,観客席で香澄が不安そうに呟いた。
「ましろちゃん達の出番,大丈夫かな?」
そんな香澄の問に答えたのは,彼女の背後の席を取っていたRAS……RSISE A SUIRENのギターでましろとも友人の朝日六花だった。
「だ,大丈夫ですよきっと! ましろちゃんはきっと歌えますよ!」
その言葉を首肯したのは,ましろがこの大会に出場する事のきっかけの場に立ち会った蘭だった。
「例えトラブルだったとしてもいつも通り全力ですれば大丈夫」
「蘭,とか言って少し不服そうな顔してるぞ」
「巴……」
「ま,蘭の気持ちも分かるけどな」
蘭の隣の隣に座っている巴が辺りを見渡すと,既に機材トラブルで萎えてしまったのか人が最初よりもずっと少なくなっていてこうしてガールズバンドパーティーに参加しているバンドが近くの席に座れるようになるくらいにはもう人がいなかった。
ましろの歌はこれからだと言うのに,機材トラブルで帰ってしまった人達の事を少し不服げに見るのは仕方がなかった。
「でもどうするんだろう,ここから人を呼び戻すって大変だよ?」
そんな疑問を放ったのは今日の仕事を終え,メンバー総出でましろの応援をしに来たアイドルバンド,Pastel*Palettesのリーダー兼ボーカルの丸山彩だった。
一度離れてしまった人を連れ戻す難しさを知っているからこその不安と疑問。それを聞いたハロー,ハッピーワールドのドラムの松原花音が
「ふえぇ……こんなの大変だよぉ!!」
今回の大会はお客さんの投票形式,そもそものお客さんの母数が他の参加者よりも圧倒的にいなかったらその分投票数も伸びないのは当然だった。
アカペラどうこうという問題だけではない。既に最初の時点からましろ達のハンディが凄まじい事になっているのだ。仮にここからお客さんを呼び戻すとしても最初の人数には遠く及ばないだろう。
「あら,花音,全然笑顔じゃないわ! こんな時はましろを待っている間歌いましょう!」
「こころ,歌うのは倉田さんであってこころじゃないよ」
「そんなのは誰が決めたの? 歌っちゃダメなんて周りが決める事じゃないわ!」
「それはそうだけど──」
花音と同じハロー,ハッピーワールドのボーカルにしてリーダーである鶴巻こころと同バンドのDJ……ミッシェルの中身でもある奥沢美咲があれこれ言い合っているの中,彼女達に近づいたのはさっきまでは結人達に譲ってもらった席にいたつくし達だった。
「せ,先輩方こんにちは!」
「あ,モニカの皆やっほー」
リサがそう気安く声をかけると,肩ひじが張ってた状態から少しは緊張が無くなった……が不安が無くなっている訳では無い。つくしはAfterglowやPastel*Palettesが固まっている所に,透子はギターの先生である氷川沙夜とその妹の日奈の元に,七深は同じホラー好きのりみの元にそれぞれ散ってこの事について話していた。
つくしがAfterglowの面子に
「多分ですけど……ステージの方は大丈夫だと思うんです」
「……どうして?」
「それは何となくですけど……でもきっと大丈夫です」
つくしは顔にある熱を誤魔化しながら思い出していた。凄く頼りになるAfterglowのメンバーの後ろ姿を。彼らならきっと何とかしてくれる,そんな気がしていた。
そんな時,商店街全体にかかるような音声と今回の為に始動した商店街のSNSから告知が発表された
『カップルデュエット大会,こちらの機材トラブルで大変お待たせして申し訳ありません。今から30分後の18時からデュエット大会最後の参加者によるデュエットを再開したいと思います』
「あ,つぐみの声だ!」
「30分後って……機材まだ治ったようには見えないけど……」
Pastel*Palettesのベース,白鷺千聖がステージを見るがやはり機材が快復したようには到底見えなかった。しかし,つぐみの放送はこれで終わりではなかった。
『また,機材は現在使用できない状態にあります。なので……』
つぐみの言葉にましろの知り合いである彼女たちの中で緊張が走った。まさか本当にアカペラをさせる気なのか,と。
しかし彼女の言葉は予想をはるかに超えていた。
『最後の参加者,七星蓮さんのバンド……Argonavisの皆さんが演奏する事になりました!』
「「──ッ!!」」
それはまさかのサプライズだった。
本来カップルだろうとカラオケの大会ではあるので演奏をするのは無しの方向性だったからこそ,この発表に周囲にまだまばらと残っていた観客たちはテンションが徐々に上がり始めていた。
「え! 結人さん達来てたの?!」
香澄のそんなビックリした様子を見せるのは当然だった。
「良かったじゃん友希那,ボーカルだけじゃなくて演奏までやってくれるんだって」
「ええ……運が良かったわ」
「これは来たかいがあったわね」
妹の日奈に無理やり連れてこられた形のRoseliaのギターである沙夜も,このサプライズには驚いたと同時に見定めるような表情へと変わった。
『それからまだ会場に残っている人達にお願いがあります。この事をSNSやブログで是非広げていただきたいです!』
「よーっし,任せてよ!」
「シロの事をあたしに呟かせたらこの会場じゃ入りきらなくなるぜ!!」
「私もやっとこー!」
つぐみのお願いに,ひまりや透子,リサが答えそれぞれのSNSで発信されていく。更に元々Argonavisの知名度はあったのもあり凄まじい勢いで拡散されていった。
「良かったね,ましろちゃん」
つくしも自分のSNSを見ながらその反響っぷりに,嬉しそうに笑みを浮かべた。
★
18時……つぐみが宣言したデュエット最後にしてサプライズのようになってしまった蓮とましろのステージ。2人は一応と衣装に着替えたArgonavisの面々と共にバックステージにやって来てましろはこっそり客席の方を見ると──
「へっ?!」
その圧巻の光景に驚きの声をあげた。前列にポピパやAfterglow,Roseliaなどのガールズバンドパーティーに参加したバンドの先輩方と瑠唯以外のモニカが見えたのはもう覚悟出来ていた事だからまだ分かる。
だけど,さっき見た時は人がまばらだったはずの観客席は,いつの間にか溢れんばかりの人で賑わっていて立ってまで見てくれている人達もいてびっくりするのは当然だったかもしれない。
「凄い人だな……」
結人もその人数に思わずそう口走ってしまう位には多くの人がいた。それを見たつぐみは少し自慢げに言った
「会場の人にSNSでArgonavisの皆さんの事を拡散して欲しいって頼んだんです! もちろんましろちゃんと七星さんのデュエットを楽しみにしてた人もいると思いますけど」
今日は最初から相当なフォロワー獲得しているインフルエンサーの透子を始め,それなりに有名人が来ていると言う事を加味した必殺の一手。
しかし,それだけではこれほど人は集まらない。ましろと蓮,そしてArgonavisの名前を聞いて来てくれた人達が沢山いるんだと。
「今回Argonavisの皆さんはあくまでもサポートバンドなので,よろしくお願いします」
一応の注意事項としてつぐみがそう言うが実際の所ほぼ誰も聞いていなかった。規模的に小さい筈のイベントでも……これだけ自分達の事を楽しみに来てくれた人たちがいるのだから。
「でも嬉しいね。俺達の事こんなに知ってくれてるんだから」
「ああ,東京での活動も無駄じゃなかった」
思わぬところで自分達の活動,その軌跡を垣間見た面々だったがステージを見ていた蓮がメンバーとましろに振り返った。
「皆,円陣しよう!」
「それは良いの? 今回俺達はサポートだよ?」
万里が呆れたように言って見せるが,蓮は大きく頷いた
「大丈夫! この曲は僕としろちゃんが詞を作って」
蓮は凛生を見た
「そして凛生がメロディを作って」
次に航海,万里,結人の順に見た
「Argonavisの協力と,しろちゃんがいたから出来た曲! だからこの曲はArgonavisの曲でも……そしてきっとMorfonicaの曲でもあるんだ!」
「だから円陣したいって?」
「うん!」
とんでもない屁理屈をこねているが,もうこうなった蓮を止める事なんて誰にもできない。今回歌うのは一曲だけだというのに,彼は放っておいたら何曲も歌ってしまいそうだ。
そんなワクワクを押さえつけられない表情を見せた蓮に,まるで末っ子の我儘を聞くように苦笑したArgonavisは目の前に手を差し出し,それぞれの手を重ねた。
そして蓮が最後にましろに目線を向けた
「しろちゃんも!」
「え,う……うん!」
最後にましろの手も重なり,蓮が声をあげた
「よし,行こう!!」
「「アルゴ~ナビス!!」」
その円陣をしてるましろの表情も,ワクワクとドキドキに満ちていた
商店街のステージから見る世界は,今までと何か違うキラキラしたものが見える。それが何なのかを私はまだ知らないけれど,私が今とってもワクワクしているのはきっと本当だ。
私達が現れた瞬間から上がった歓声と,好奇な眼を感じるだけで身体の体温が高くなって,血も沸騰してるみたいな感覚が私を襲っていた。
急遽演奏する事になった結人さん達はそれぞれの楽器をスタンバイする為に,色々していたのを見た隣にいる蓮君が目の前のお客さんに話しかけた
「皆さんこんばんわ。僕は七星蓮と──」
楽器の準備を淡々と見せるだけでは味気がないから,ていう結人さんの提案でバンドマンらしくMCを入れる事にした蓮君と私は言葉を繋いだ。
「倉田ましろです。今日は皆さん,機材トラブルがあった中でもこんなに沢山の人が来てくれて嬉しいです!」
「僕達も皆さんの期待に恥じない歌を歌う事を誓います!」
私はまだMCが苦手……だけど感謝は伝える事は出来る。それに今日は蓮君も隣にいてくれるから凄く気が楽だった。
蓮君の言葉に会場のテンションが高くなっていくのを見て私も胸の中にあった不安が微塵も無くなったのを感じた。蓮君がチラリと結人さんの方を見たら,結人さんがアイコンタクトでもう少し時間を稼いでって言っているみたいに頷いた。
だから蓮君は続きを言った……私の予想外の言葉を
「僕と彼女……しろちゃんは北海道の函館で初めて出会った幼馴染です」
「えっ?! れ,蓮君?!」
余りに不意打ち気味な私達の関係のカミングアウトに心臓が跳ね上がって,顔に熱が灯るのを感じながら蓮君を見ると……とても穏やかな顔をしてた。
そして私の方にも目線を向けて続けた
「だけど……しろちゃんが4歳の頃に引っ越して僕達は一度離れ離れになりました」
そこで私との約束を果たしていなかったことを思い出していたのか,一瞬目を伏せた。だから私はそんな彼の後悔を取ってあげたくて無我夢中でマイクを握った
「でも私達はまた出会えました!」
だから気にしなくていいんだよ蓮君。私はまたあなたに会えて,それだけで嬉しいんだから。
蓮君も私のアドリブに目を大きくしてビックリしたみたいだったけれど,いつも不意打ちにしてくる蓮君が悪いから私は反省なんてしない。この際だからどさくさに紛れて色々言っちゃおう
「蓮君は夢の為に努力し続けて……そんな蓮君の努力がまた私達を出会わせてくれました」
私はお客さんの方じゃなくて,蓮君の方に身体を向けて続けた。きっと今の私は紅くなっていて,傍から見たら熱があるように見えるかもしれない。病気に見えるかもしれない──ううん,病気なんだこれは。
”恋煩い”って病気……治療法は1つだけ
「私が歌えなくなってしまった時も,仲間と……蓮君のおかげで立ち直る事が出来ました」
いつの間にか蓮君の頬も少し恥ずかしくてちょっと紅くなっていてつい嬉しくなった。だから口が勝手に想っている事を話してしまった
「私は……そんな蓮君の事が大好きです!」
本当にどさくさ,きっと今までの私ならこんな何人も見ている中でこんな告白はきっとしなかった。私が変われたのはモニカの皆と……蓮君,あなたのおかげなんだよ?
お客さん達の口笛や悲鳴じみた声が聞こえる中で,私は蓮君がぼろを出させない内に言った
「今日の為に,私と蓮君で詞を書いた曲を披露します!」
そう言って蓮君の方を見て,さっきの蓮君と結人さんみたいにアイコンタクトを取ったら意図に気が付いてくれた蓮君はArgonavisの顔を見渡して最後にお客さん達の方を向いた。
「この曲は僕らのこれまでと今,そして未来に歌った曲。何度も起こる巡り合わせの曲,聞いてください──」
「「TIMES CiRCLE」」
★
時の流れ,そして離れていてもお互い想いあい紡いできた時間の中で,再び出会うことが出来た事。これまでの甘酸っぱい思い出を大切にする
時間も空間も超えて,巡り合った時間は決して裏切らない,失われない。
これからの未来の為に,今を2人で生きていく──
(蓮君……やっぱりすごい……,昨日よりもずっと……! 私も頑張る!)
2人の声が,今までにないハーモニーを生み出して観客の熱狂は最高潮を迎えていた。
(しろちゃん……さっきの……ううん,今は歌う,しろちゃんと一緒に!)
その最中でも,蓮はさっきのましろの言葉の意味を考えて一瞬音程がズレてしまう所だったが直ぐに思い直し最高の歌唱を披露する。
お互いの全てを,このお客さん達へと届かせた2人の曲は最期を迎えていた。蓮とましろはお客さんではなく,既に2人だけの世界に入って見合っていた。
「何度離れても 僕は誓うよ また大事なあなたに出会える事」
「私達だけの愛で この先を 一緒に生きていこうね」
彼らの音楽はゆっくりと終了し,2人はいつのまに繋がれていた手を見た後観客の方へと向いた。
「「……」」
一瞬シーンとなってしまった事に,蓮と2人だけの世界に入っていた事がダメだったのかと思ってしまい不安に駆られたが
──キャアア!!
次の瞬間,彼らに放たれたのは商店街全体が揺れる程の凄まじい歓声だった。
「……!」
それを直に受けたましろは蓮の方に興奮のあまり頬を紅くしながら向くと,いつものライブとは違う種類の歓声を感じた蓮も頬を紅潮させましろの方に向き,次にそれぞれの楽器から離れて来たArgonavisに目を向けると皆それぞれグッドポーズを返してくれた。
それに感極まった蓮はましろに向いて頷いて,その意味を察したましろは観客の方に向き2人は頭を下げた
「「ありがとうございました!!」」
これにて,全参加者の歌唱が終わった
★
「あ,結人さん!」
商店街ステージ最前列,つくしが後ろを振り向くとArgonavisの楽器隊がサポートを終えて戻って来た。参加者たちは現在控室に戻り,結人達も解放されそれぞれの楽器を背負いながら観客席に戻ったのだ。
Argonavisがつくしたちに近づく間にも沢山の観客たちが彼らを称えて,少し彼らはこっ恥ずかしくなったが悪くないと思った。
「Argonavisの皆さんのステージ,すっごく良かったです!! なんか私も今すぐ歌いたくなっちゃっいました!」
つくしたちの近くには当然香澄も近くにいて,彼女達も先程の演奏に何かを感じていたのかガールズバンドパーティーに参加していたほぼ全てのバンドの視線を集めるという光景は少し委縮してしまった。
(女の子にこんだけの視線を真正面から向けられるのは初めてだな)
などと思っていたが,結人達は一定の距離を保ちながら返した。
「ああ,何とかなってよかったぜ」
「流石,プロにスカウトされた人達と言った所かしら」
紗夜が隣にいる有希那に言うと,彼女も同感だったのか頷いた。つくしや香澄たちと話しているArgonavisのメンバーを見ながら言った。
「ええ,ボーカルの七星さんの歌も凄まじいものだったけれど……彼らの演奏も間違いなくプロに値する演奏だったわ」
LRフェスを見に行ってはいなかったが,ライブ映像を確認したことはある。東京に来た頃の彼らは確かにLRフェスに出るに値するメンバーだったのは間違っていなかったが……正直技術という一点においては最初はそれほどのものを有希那は感じていなかった。
しかしLRフェスも中断されてから今日初めて彼らの演奏を聴いて考えを改めていた。この短い時間の間で彼らの演奏にはRoseliaにはない何かを感じた。
「でも……」
「……? 他にも何か?」
紗夜が不思議そうに有希那を見ると,今度は蓮とましろが引っ込んで行った控室の方向へと目を向けた。
「今日の演奏は倉田さんも入った事で,普段の彼らとは違うものになっていた気がするわ」
「……確かに,そうかもしれませんね」
普段のArgonavisにはいないましろが入った事で,いつものArgonavisとはどこか違う演奏になっていた事は紗夜も感じていた。
それが悪いものではなかった……それはさっきの大歓声が示している。では何なのかと問われれば答えは分からなかったけれど,今は素直に蓮とましろ,そしてArgonavisの演奏に賛美を送り自分のスマートフォンを取り出した。
有希那が隣から覗き見ると,今回の大会のデュエットの投票ページが開かれていて紗夜は迷うことなく蓮とましろのペアへ投票した。
「湊さんは投票しないのですか?」
自分のスマホをしまいながら問いかけると
「必要ないわ。私が投票しなくてもね」
元々そう言った投票とかをするタイプじゃないのもあるが,その表情は既に蓮とましろの勝利を確信しているが故の余裕だった。
★
10分後,集計を終えたつぐみがスマートフォンとマイク片手にステージに現れ,次に10組の参加者もステージに現れざわざわとしていた会場の空気がステージに向けられた。
ましろと蓮も一番端っこでその空気をひしひしと感じていた。
「大変お待たせいたしました。これから第一回,カップルデュエット大会の結果発表を行いたいと思います!」
その言葉に観客たちはわああ! と歓声を上げ,つぐみが手を挙げると静まり返った。
「では3位から発表させてもらいます! 第3位は──」
つぐみは3位のカップルの名前を呼ぶと,そのカップルは嬉しいのかよく分からない微妙な反応してしまった。いったいどれほどの票数でこの順位になったのか分からなかったからだ。
勿論そんな事はつぐみも分かっていたのか,獲得票数を見ながら
「票数は……え……?」
その票数の部分を見た時,素っ頓狂な声を素であげてしまったつぐみだったが……彼女は戸惑ったように言った
「え……えっと……20票です」
「……え?」
ましろはついそんな声をあげてしまった。
少なくとも彼らの出番の時は100人を優に超えていた筈,更に今回は配信を見た人も投票が可能になっている仕様の為実際の所その票数は分母に対して少なすぎたのだ。
しかし,ましろは次の瞬間違う意味でショックを受けた
「お,おめでとうございます!! 第3位の景品は今大会の為に作られた商店街のマスコットキャラクターのミッシェルさんのぬいぐるみです!」
何とか取り繕っているが,その端々から感じる戸惑いを隠せていないつぐみだった。
(あ……ミッシェルさんの,無くなっちゃった……)
そして余りの事の連続にましろの反応はどこか淡泊になってしまっていた。その事にましろ自信も気が付いていた。最初はあの3位の女性が持っているミッシェルのぬいぐるみを手に入れるために蓮とこの大会に参加していたのに……自分でもびっくりするほどダメージが無かった。
(あれ……,わたしどうして……?)
ましろにはもう1つ変化があった。今この瞬間も蓮の隣にいてドキドキはしている。だけれど……胸の奥に絡まっていた何かが解けて凄く気が楽になっていた。
それが大会がもう終わりに近づいているからか,それとも……
(蓮君に……告白したから?)
MCという本番前にもかかわらずそのどさくさに紛れてやった告白……蓮は控室に戻った後もその話を出してくれなかったから少し悶々としていたけれど,それとは別にとても晴れやかな気持ちになっている事に気が付いた。
(そっか……私が本当に欲しかったものはもう……)
自室に飾られている自分と蓮の写真……それがこの大会で自分が本当に欲しかったものなんだとましろは察した
「続いて第2位の発表です。第2位は──」
ましろがその事に気が付き,微笑を浮かべている中でも第2位の発表がされていた。
「票数は……えっと……24票です」
その言葉に観客はどよめきとどこか納得したような空気が広がって行った。しかし,そんな事はましろには関係がない。ゆっくりとノールックで蓮と自分の手を絡めその時が来るのを待っていた。
(……しろちゃん?)
さっきの告白の事と言い,今日のましろは普段よりも美しく……大胆で蓮の心臓も一回も休むことなく忙しない鼓動を続けている。
そして……彼女の言葉に嬉しいと思っている自分がいた。
既に2位の人達の景品がどうとか何も聞いていなかった。あるのはただ,彼女と一秒でも長くいたいという想いだけ。
(僕……しろちゃんの事どう思っているんだろう……?)
そしてようやくその疑問を持つことが出来たのだった。
「それでは,第一回カップルデュエット大会優勝者を発表します!!」
そのつぐみの言葉に2人はようやく意識を覚醒させて前を向くと,既に3位と2位のカップルは司会のつぐみの隣に移動していて残っている8組の中から1位が選ばれる。
そして2人が感じていた予感は,意外にもあっさりと感じる程に発表された。
「優勝は……エントリーナンバー10番,七星さんと倉田さんです!!」
その優勝者が発表された瞬間,さっきまでの順位発表が嘘のような拍手喝采が2人を包み,蓮とましろはお互いの顔を見た。2人とも自分達が思っていたよりも余り驚きはなく2人の中にあったのは言いようのない高揚感と何かが終わってしまう焦燥感だった。
「票数は……5……550票?!」
この商店街のキャパはあって100程度,立ち見も含めるなら130人程度……残りは商店街の違う場所から聴いていたか……全てが配信を見た人からの投票。
そうとしか考えられない票数で完全にぶっちりぎりの優勝だった。
その余りの票数差にステージに上がっている他のカップルも唖然とするくらいには……というよりももし次回があったら完全に2人は出禁になる位だ。
「そ……それでは2人とも真ん中にどうぞ!」
「……いこ,蓮君」
「う……うん」
2人はつぐみに誘われるがままステージ中央に暖かな拍手の中やって来ると,つぐみは景品が置かれた台から豪華に装飾が施された封筒をとってつぐみ自身もちょっと恥ずかしいのかほんのりと頬を紅く染めながら言った。
「2人とも,優勝おめでとうございます! 凄い票数差ですけれど,ネットを見てみるとやっぱりあのオリジナル曲がとっても良かったって声が大きかったです」
「ありがとうございます。あの曲は……僕としろちゃんだから歌える曲なんです」
「私もあの曲は蓮君とじゃないと歌いたくないですし……蓮君もきっと同じ気持ちだと思います」
ましろが蓮を見上げると,蓮もましろの言葉に同調するように頷いた
「これからもその……しろちゃんと色んな時間を過ごせたらいいなって思います」
LRフェスとかのインタビューと勝手が違うからか……それとも単純に恥ずかしいだけなのか蓮はそう言って口を閉じた。
「七星さん,倉田さん,改めて優勝おめでとうございます! それで……その……実は優勝したお2人にはしてもらいたい事があって……」
「……? なにをするんですか……?」
ましろが不思議そうに問いかけると,つぐみも何かを吹っ切ったのかマイクを握りしめ言った。
「優勝賞品を渡す前に……”キス”してください」
ざわざわと蓮とましろの事を見ていた観客たちが……次の瞬間呆気にとられたからかシーンと静まり返ってしまった。そしてそれは蓮とて同じで,一瞬つぐみが何を言っているのか分からなかった。
「え……き……す?」
そう呟いた蓮の顔は今までに類を見ないほど真っ赤に染まった。それもその筈でキスとは本来それこそカップルがする行為であり自分とましろは……一応幼馴染でカップルと言う訳では無い。
だからこそましろからカップル限定と聞かされた時は戸惑って……その事を受け入れてましろと2人で歌う為に参加した。
「はい! キスです!」
蓮とてその言葉の意味を知らない訳じゃない。たったの二文字に込められている甘美で背徳的な響きを持つその言葉を耳にするだけで背中がぞわりと鳥肌が立ち,動揺が襲って来た。
(でも……しろちゃんは幼馴染で……)
彼女とはただの幼馴染……そんな彼女とキスするなんて今まで想像も……したことがないは嘘だが実際にしようと思った事はない。
そして女の子にとってのキスはきっと男の自分が思っているよりも遥かに重い意味を伴っているのを蓮は何となく感じていた。だからこそ……ましろの表情を伺おうと隣を見たら
「……ッ?!」
繋いでいたはずの手は何時の間にか離されて,その華奢な両手は蓮の首に回されて13,4㎝ほど下にあったはずのましろの顔に視界が覆われて……
「……んっ」
瞬間,自分の唇とましろの柔らかい唇が磁石のようにくっついて甘美な感触と0距離に等しい彼女の身体から感じる甘い匂いに蓮の頭は一瞬にして思考がぐちゃぐちゃになった。
(……?! しろ……ちゃん??!)
既に観客の悲鳴じみた声なんて入ってこなかった。ただ2,3秒位の……ましろとのキスの方が遥かに濃密で時間が忘れてしまう位に何が起きているのか分からずただただましろとのキスを……勝手に身体が感じていた。
「……はぅ」
そして……本当に体感3分位ずっとキスしていたように蓮には感じていたが実際には3秒間の長いようで短いキスを終え,ましろは恍惚とした顔を蓮に見せていて
「……ッ!!」
一瞬で心が可笑しくなったのを感じた。
今すぐ彼女を抱きしめたいという衝動に駆られ,心の中に芽生えた妖艶なましろがその衝動に身を任せろと言ってきた気がした……が,蓮は何とか……本当になんとかその衝動を抑え込み口をわなわなと震わせてましろにだけ聞こえるくらい小さな声で
「どう……して……?」
恋人同士がすることを……恋人じゃない自分達がした事に戸惑いとそれを何の躊躇いもなく行って見せたましろに問いかけると彼女もまた蓮にだけ聞こえる声で
「言ったでしょ? 蓮君の事が好きだから」
恥ずかしさの一片も見せない彼女の告白は,蓮の心の在処を定めたのだった
お疲れさまです!
多分人によっては不完全燃焼の終わり方ですねごめんなさい。
つぐみが初回の時にましろを止めようと思った理由,それは優勝者はキスする事になるからでした!あの時点で(今もだけど)2人は付き合っている訳でないのも分かっていたから止めようとしていたけれど結局2人は…というよりもましろがしちゃったよねーって話です。
2人のオリジナル曲『TIMES CiRCLE』,命名作者で今回のお話ではどちらかというとArgonavis feat.倉田ましろ from Morfonicaになります。つまり逆もあると言う事ですね(いつやるんだ)。
本文にも書いたので由来は別に話さなくてもいいんですが,要するに何度も自分達は出会って,何度でも2人で生きてこうねーみたいな曲です。尚,作者作曲は全く出来ないのでイメージPrayとハーモニー・デイを足して割った感じです。
票数が550票なのはメタ的な話では蓮の誕生日とましろの誕生日を数字で並べて足し算しただけです。3月31日と2月19日,331+219で550です。
はい,そういう訳でデュエット編は完結です!次回からアンケート第一位になったくっつく話に突入します!!…多分2,3話で終わるけど。
楽しみにしてもらえたら嬉しいです!ではでは
恋人になった2人の関係性どんなのが良い?
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今まで通りましろから蓮に激攻め
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逆に蓮がましろに激攻め
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寧ろお互いがお互いに激攻め
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というか全部やれ