最初に謝ります,思いっきりエピローグの事を忘れていました。これがないと次話言った時にちょっと違和感あるので先に入れます。
では!
彼女はどこか寂しそうな顔をしながら振り返った。ひらりと翻るスカートが……朝見た時よりもずっと目を奪われて彼女の顔を僕はまともに見られていなかった。
「返事は……まだしなくて大丈夫だよ」
彼女はそう言って繋いでいた手を離して家の扉に手をかけた。
「でも……あれが私の気持ちだから」
彼女は……しろちゃんは大会の前よりも綺麗になっているように見えて,彼女の中に合った気持ちが全面に現れていて僕はまだ戸惑いの方が大きかった。だって……幼馴染で……妹みたいな子だと思っていた女の子からキスされて何も思わない事なんて出来なかった。
しろちゃんはそんな僕を意識するように月明かりに照らされて少しの光沢を纏っている唇にそっと触れて
(……!!)
しろちゃんの唇を見るだけで胸がキュッとしまって平常心を取り戻そうとした僕の心はまたぐちゃぐちゃになってしまった。しろちゃんはそんな僕の反応を妖艶に笑って楽しんだ後,「おやすみ,蓮君」って言って扉の向こうに入って行ってしまった。
彼女の家の前で僕は立ち尽くして……思考がぐちゃぐちゃのまま駅に向けて歩き出した
「……」
今日は本当に激動の一日だった。結人と航海がカラオケしていた時に「運命だ!!」って飛び込んできた日と同じ……ううん,ある意味それ以上の衝撃と困惑が僕の中を満たしていた。
しろちゃんが言った”返事”……それが何のことなのかきっと前までの僕なら分からなかった。
「~~!!」
だけど……しろちゃんと見たあの映画でも似たような事があったから,しろちゃんの言う”返事”がなんのことなのか今なら分かる。それを意識した僕の心臓の鼓動は意識しただけで早くなり眼を閉じればすぐにでも心音が聞こえてしまいそうだった。
「しろちゃんと……ぼく……が」
ふと函館にいる両親の事を思い出した。2人とも僕が大学生になった今でもとっても仲がよくて……バンドをする僕の意志を尊重してくれた。だから僕は東京に来ることが出来てArgonavisの皆と一緒にいられる。
2人とも凄く良いひとで,心から2人の子供で良かったって思える。
だけど──
「しろちゃんと……」
しろちゃんと僕が両親みたいになった所を想像してみてみたら胸の中が幸福感に包まれた。その事に僕自身も驚いてそれを一瞬振り払おうとしたけれど……考えたら考える程昔のしろちゃんの事,そして今のしろちゃんとの思い出が溢れてきた。
「蓮,どうしたんだ?」
思い出に浸って,尽きる事のない幸福感に満たされた僕はシェアハウスにいつの間にか戻ってきていた。結人に声をかけられるまで帰ってきた事に気が付かない位ずっとしろちゃんの事を考えていた
「あ……結人……」
しろちゃんとのキスを観客席から見ていたはずの結人はとっても落ち着いていて,まるで小さな子供に問いかけるように聞いて来た。
「その……しろちゃんの事考えてて……」
「そうか……。ほい」
結人は温かいコーンスープを作って僕に差し出してくれた。僕はそれを受け取ってそっと飲むと,僕の中にあった幸福感が体温の上昇と一緒に募ったを感じた。
そのコーンスープの表面を見ながら僕はこの正体が分からない感情の事を結人に聞くことにした
「最近……ずっとしろちゃんの事を考えちゃうんだ。これって変なことかな……?」
結人は少しビックリしたように見た後,直ぐに優し気に笑ってカップを置きながら言った。
「変じゃないだろ。だって蓮,お前はそれと同じ感情をもう知っているはずだぜ?」
「同じ……感情……?」
僕がしろちゃんに向ける感情……大切な妹みたいな存在……だからどちらかというと家族みたいな人だって思っていた。だけど結人が言っている事は違う感情のこと……。
だけど僕にはそれが何なのかが分からなかった。
「じゃあ蓮は”歌”と倉田さん,どちらしか取っちゃダメって言われたらどうする?」
「そんなの選べないよ!」
だって……そんなの選べる訳ない。僕にとってどちらも大切な物と人で……どちらかが欠けていたらきっと今の僕はいなかった。どちらか1つしか選べないなんて……そんなの耐えられない。
「じゃあ歌はどうして選べないんだ?」
「だって……僕には歌が全部なんだ! 歌がないと……歌がないと僕はきっと僕じゃなくなる!」
「なら倉田さんを切り捨てるしかないんじゃないのか?」
「それ……は……」
結人に言われて僕は矛盾に気が付いた。歌が大切なら……しろちゃんを取らない選択も間違いじゃない。だけど……だけど……
「……。じゃあどうして倉田さんは選べないんだ?」
「だって……しろちゃんは大切な人で……だから……だから……」
「でも蓮,蓮は歌も”好き”なんだろ?」
「……!!」
「そして蓮が倉田さんを選ばない理由も……それと同じ理由だからなんじゃないのか? ”大切な人”……蓮にとって今まで一番大切な”歌”とどちらを取るか選べない位倉田さんの事が──」
「……すき……?」
その言葉を言った瞬間,体の中に燻っていた熱がぶわーって溢れて顔も熱くなってこのまま焼け死んでしまう位頭の中がしろちゃんの事しか考えられなくなっていた。
”好き”って……その言葉一つで僕の心は可笑しくなってしまいそうだった。
「なら,それが蓮の答えなんだろ?」
しろちゃんの事が好き……だから歌とどちらかなんて選べない?
歌と同じ位しろちゃんの事が好きだから?
「そう……か」
呟いた瞬間,今まで体の中にあった違和感が消え去ったのを僕は感じて……心が軽くなったのを感じた
★
清々しい表情を見せながら蓮は自室へと戻って行ったのを見届けた結人はソファーに深く腰を掛けてため息をついた。
「ふぅー」
正直結人の気力ももう殆ど持っていかれて今すぐにでも寝たいのが本音だけど,気持ちの整理もしたかった。いつかはこうなるとは分かってはいたつもりだった。
きっと蓮もいつかましろの気持ちに気が付いて遠くない内に恋人になる事なんて。それが嬉しくない訳ない。だけれども……既にメジャーがほぼ決まっているを鑑みれば早計だったかもしれないのも本当だった。
「お疲れ,ユウ」
そんな結人に差し出されたのは,さっき蓮と飲んでいた甘いコーンスープではなく苦みたっぷりのコーヒーだった。その差出人を見ながらそれを受け取った
「サンキュ,航海」
航海が一体いつから見ていたのかは分からなかったが,そんなのは些細なことだ。航海は結人の隣に座り2人してコーヒーを啜る。
「ちょっと苦すぎやしねえか?」
「疲れて寝ちゃいそうだったからね。気を利かせたんだ」
「ほんとか?」
軽口を叩いた後,結人は再びコーヒーを啜るとやっぱり苦かった。
「本当は結構意外だったんだ」
「どうした藪から棒に」
航海はカップのコーヒーを見ながらそれに答えた。
「ユウ,蓮をスカウトした時の事を覚えてる?」
「もちろんさ。あの時はここまで来れるなんて思っていなかったな」
懐かしむように眼を細め,どこか遠くへと目を向ける。航海も一緒に同じ方を向き続けた
「その時にユウが言ったボーカルの条件……蓮は実際は1つ当てはまっていないんだよ?」
「……え? ……ああ,だけど選択を間違ってはいなかっただろ?」
航海がいうボーカルの条件……旅人が水を求めるようにただ純粋に歌の事しか考えていない馬鹿……それが結人が最初にボーカルに求めていた事だった。
だけども,言われてみれば今の蓮はその条件には当てはまらない。確かに歌の事を考えているが……
「倉田さんの事をずっと考える,か」
歌以外の事もよく考えるようになった。言うまでもなくましろの事であり,ましろの存在が蓮のバッドステータスになってしまう可能性だって無きにしも非ずだった筈である。
しかし今日の彼の歌唱はいつもとはどこか違い,ましろと一緒だからこその歌唱をしていた。自分達が知らなかった蓮だった。そしてそれを引き出したのは間違いなく倉田ましろという存在だ。
「……僕達はこれからプロになる。ユウのさっきの”歌”か”倉田さん”かって質問はその時の事を見据えた問でもあったんでしょ?」
「……そこまでお見通しか」
プロになれば必然七星蓮という名前にも価値が現れてファンもこれから多く増えるだろう。それ位蓮の歌唱力は凄く,人柄も含めてきっと人気になっていく。
その時に彼女がいるというステータスがどんな影響を与えるのか,想像は難くない。
「当たり前だよ。ユウの考えている事なんて大体分かるよ」
「そりゃあ怖い。でも……俺達も蓮を……倉田さんを応援すると決めた以上はやるしかないな」
「僕達に出来る事なんてたかが知れているけれどね」
既に空になったカップを見た航海は立ち上がると
「おかわりは?」
「……頼む」
これからのArgonavisの事に思いを馳せて結人はまた一口,コーヒーを啜るのだった
お疲れさまです!
この前Argonavisを見直した時にでたボーカルの条件…僕すっかり忘れて書いていたのでなんか本作品の結人と航海に違和感を持ってしまったのでテコ入れも込めて2人の話もだしました。
そして蓮,結人に諭されて自覚!ここからはグイグイましろに突撃するんだろうな。蓮にとって歌=ましろだからね,仕方がないね。
次から本当にくっつく話です!
では!
恋人になった2人の関係性どんなのが良い?
-
今まで通りましろから蓮に激攻め
-
逆に蓮がましろに激攻め
-
寧ろお互いがお互いに激攻め
-
というか全部やれ