蓮とましろが小さい頃に別れた幼馴染だったら   作:レオ2

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おはようございます。
という訳で番外編です。と言っても,本編の2人がくっついて直ぐのお話でございます。
では!


ゴールライン

 蓮君と……恋人になった私と蓮君は函館の某ホテルの……ちょっと豪華なお部屋のベッドで身体を重ねて眠った。

 蓮君の身体はとっても華奢だけど,その中にぬくもりを感じる事が出来て私はまた蓮君の好きな所を見つけることが出来た。函館も2日目……蓮君には今日の夜東京に帰るって聞いているけれど……

 

「え?! 蓮君のお家?!」

 

 朝目覚めて,色々あってぼさぼさになった髪を梳かしてたら蓮君がちょっと申し訳なさそうに言ってきた。

 

「う……うん。その……皆にしろちゃんのこと紹介したくて」

「~~っ」

 

 紹介……まるで婚約者を家族に紹介するみたいで恥ずかしいけれどとっても嬉しい。……あれってプロポーズだったよね? じゃあ婚約者でも……良いのかな? 

 

「うん。私も……蓮君の家族に久しぶりに会いたいな」

 

 私が蓮くんのお家に行くのは11年ぶり……でも、函館に行くってなった時から少しだけ期待してた。

 私と蓮くんは朝食のバイキングを食べたあと、お部屋を少しだけ綺麗にしてホテルをチェックアウトした。

 そうして電車に乗りこんで蓮くんのお家まで向かう。

 

「……」

「しろちゃん大丈夫……?」

 

 顔が固くなってたのを気にしてくれた蓮くんが心配そうに覗き込んできた。

 

「う、うん。大丈夫だよ? その……会うのとっても久しぶりだから緊張しちゃって」

 

 蓮くんが歌うことを大好きになったディスフェスに……私も一緒に連れていってくれた蓮くんのお父さん。私のこといつも暖かく見守ってくれたお母さんとお祖母さん……私が偶に蓮くんのお部屋に泊まりに行った時も邪険にしないでくれた優しい人たち。

 

「みんなしろちゃんに会えるの楽しみにしてるよ」

「そうなの?」

「うん!」

 

 蓮くんは私を安心させるように素敵な笑顔で頷いた。その笑顔に私はころって信じて……胸の中の不安が無くなったのを感じた。

 そうして電車に揺られて蓮くんの最寄り駅で降りて歩いて蓮くんの実家まで向かう。昔はよく通った道のはずなのに懐かしさが込み上げてきて私は微笑ましい気持ちになる。

 

「ふぅ……はぁ……」

 

 そうして……蓮くんのお家の前まで来た私は深呼吸をした。蓮くんはそんな私を安心させるように手を握ってくれて……お家の鍵を開けた。

 すごく……懐かしい。

 

「ただいま」

 

 蓮くんがそう言って家の中に踏み込んで手を引かれて私も玄関に入ったら、とっても暖かい空気が私に纏わりついた。11年前とちっとも変っていない蓮君のお家の玄関……あ……

 

(あれ……私が描いた絵だ)

 

 玄関の廊下の壁に飾られていたお世辞にも上手と言えないような……私と蓮君,それからお母さんやお父さんと蓮君の家族も描いた絵。幼稚園の時の宿題で描いた……あの時の絵だ……。

 確か引っ越す時にくしゃくしゃになってしまうかもしれないからって……蓮君にあげたんだっけ? 蓮君……大切にしてくれてたんだって,嬉しくなって口元の笑みが止まらない。

 そんな時,リビングの方から蓮君のお母さんが顔を覗かせて半年ぶりに会う蓮君をとっても嬉しそうに見て

 

「蓮お帰りなさい! ……あ」

 

 蓮君のお母さんは私にも気が付いたみたいでとっても眼を大きくして……私は心臓の鼓動を高鳴らせながら慌てて頭を下げた。

 

「えっと……その……お,お久しぶりです。倉田……ましろです」

「ましろちゃん!! わぁ……! 本当に久しぶりね!!」

「え……わっ!」

 

 お母さんはそう言って私に凄い勢いで飛びついてきて熱い抱擁をされた。余りの勢いに蓮君と繋いでた手は離されたけれど……お母さんから感じるぬくもりは蓮君にとっても似ていて親子なんだなって思った。

 

「お,お母さん。そんなにしたらしろちゃんがぺちゃんこになっちゃう」

 

 余りの抱擁に蓮君がとってもオロオロして言ってくれているけれど……正直可愛すぎてもっと見たかった。お母さんは抱擁を解いて私の肩に手を置いて顔を見つめてきて……

 

(あの頃と同じだ……)

 

 蓮君の後ろについて回ってた時にも……お母さんはこうして私の事を見てくれていた。私は懐かしさが込み上げてきて笑みを抑える事が出来なかった。

 

「いらっしゃい,ましろちゃん」

「……っ,お邪魔します」

「もう,違うでしょましろちゃん」

「え?」

「昔家に来た時はなんて言って入ってたか,覚えてる?」

 

 昔……私が蓮君のお家に私のお母さんと一緒に来た時や……蓮君に迎えてもらってお家に入った時は……あ。

 その事を思い出した私の体の熱はとっても高くなって……恥ずかしくもなって小さな声で言ってみる。

 

「た……だいま」

「あーっ可愛い──ッ!! おかえりましろちゃん!!」

 

 そう言ってお母さんは11年前に別れた切りの私を温かく迎えてくれた。この「ただいま」は……私何度も蓮君のお家に来てた時にいつの間にかこう言うようになっていて……今にして思ったら他人のお家にただいまってすごく恥ずかしくて,今の今まで忘れてた。

 そんなことは知らないお母さんは私をお家の中に迎えてくれた。

 

「懐かしい……」

 

 家具の配置や内装は少し変わったかもしれないけれど,その部屋の中にある暖かさは何も変わっていなくて……ちょっと感動してる。

 そして……リビングテーブルには蓮君のお父さんがあの頃と変わらない優しい笑みを浮かべていた

 

「いらっしゃい,ましろちゃん。久しぶりだね」

「は,はい! お久しぶりです」

 

 昔はどんな感じで話していたのかあまり覚えていなくてつい他人行儀な返事をしちゃう……けれど蓮君のお父さんもお母さんも余り気にせずにいてくれたのがとっても嬉しかった。

 今日蓮君の祖父母は一緒に出掛けてるみたいで帰って来るのは夜みたい。

 

「あ……しろちゃん」

「? どうしたの?」

 

 私が蓮君や蓮君のお母さん,お父さんと色々話して……その,恋人になった事の話もしていた時に蓮君が思い出したみたいに声を出した。

 蓮君が朝みたいなすっごく申し訳なさそうな顔で向いてきて私はちょっと身構えるけれど,蓮君が言おうとしていた事はそれほど問題なものではなかった。

 

「今日帰るっていうの……実は違うんだ」

「え,そうなの?」

「うん。ごめんね……本当は明日なんだ」

 

 明日……は特に予定もないから大丈夫だけど,どうしてそんな嘘ついたんだろう。私がその事について口を開きかけた時,蓮君のお母さんが割り込むみたいに口を挟んできた。

 

「あ,蓮そろそろ行った方がいいじゃないのかしら?」

「うん! じゃあ2人ともしろちゃんをお願い」

「れ,蓮君どこいくの?」

「それは……まだ秘密」

 

 蓮君はそう言って鞄を持ってどこかに行っちゃった……残されたのは私と……蓮君のご両親。お母さんたちは息子である蓮を微笑ましく見送ったあとも他愛のない話をしてた。東京に引っ越した後のお話だったり,バンドのお話だったり……先月のデュエット大会の話だったり。

 その表情はとっても穏やかで……私のお母さんが私の事をよく見つめる時の表情によく似ていた

 

「東京に行った蓮からましろちゃんにまた会えたって聞いた時,とっても嬉しかったのよ」

「そうなんですか……?」

「もちろんよ。ましろちゃんはどう思っていたのか分からないけれど,ましろちゃんは蓮の妹みたいなものだったからね」

 

 蓮君も……私の事は妹みたいな存在だって最初に言っていて……それが蓮君の感情を気づくことを遅らせていた。もしも……私が幼馴染じゃなくて1人の異性として出会っていたら蓮君はもう少し早く”好き”って気持ちに気が付いてくれたかもしれないって……正直ちょっと思ってた。

 

「蓮も……ましろちゃんが引っ越しちゃったときはとっても落ち込んで歌う事にのめり込んでたから」

 

 歌にのめり込む蓮君が簡単に想像できちゃって……離れ離れになって寂しかったのは私だけじゃないんだって知られて私は嬉しかった。だって私と蓮君はこの11年間同じことを思ってくれていた。その事を知れただけで私の胸は喜びに打ち震えていて……ちょっと蓮君に依存してるって自分でもわかっちゃう。

 

「そんな蓮がこれからプロの道に行く事になる」

 

 そこで言葉を引き継いだのは私達が歌に興味を持つきっかけをくれた蓮君のお父さん。

 蓮君達Argonavisは来年の4月,蓮君達の学年が上がる頃にアポロレコードっていうレコード会社からメジャーデビューが決まってる。LRフェスや,その後にあった色々な事を経験した蓮君達はプロになるんだ。……なんだか私まで緊張する。

 

「プロの道は僕や妻にも計り知れない険しい道にきっとなると思う」

「本当はね……とっても不安なの」

「え……?」

 

 お父さんは穏やかだったけれど,お母さんはとっても心配そうに瞠目して顔も強張っている。お母さんたちは函館に普段いるから直ぐに蓮君のことでどうにか出来ないからそんな顔をするんだと思う。

 

「蓮がプロの世界に押しつぶされてしまわないか……大人の世界だもの。自分達がやりたい事を必ず出来る訳じゃない。音楽も……それにもしかしたら」

 

 ──恋愛とかね

 

 お母さんに言われて……私は心臓が跳ね上がった。蓮君に告白して,蓮君達のメジャーデビューが決まって,蓮君から告白をされて受け入れて私の気持ちは舞い上がっていたけれど……お母さんの言葉は凶器みたいに私の頭を打ち付けて来た。

 考えたことはあるけれどそんな事を考えたくなくて今まで眼を逸らしてきた事。蓮君はとっても純粋で……だからお母さんが言うようにとっても理不尽なことも立ちはだかると思う。今回,Argonavisの人達が私と蓮君について来る形で帰省したのも……きっと

 

(覚悟を……決める為)

 

 自分達の始まりの場所で,航海を始めたこの場所で何かを感じる為にきっと帰って来たんだと思う。それは蓮君もきっと同じ。

 何かを覚悟したから……私に告白してくれたんだと思う。だったら私も蓮君の覚悟に答えたい。だから……

 

 

「わたしは……何があっても蓮君と……もう離れないです」

 

 

 11年前みたいな喪失感はもう味わいたくない。私は……私は蓮君と離れたくなんて無い。もしまたお父さんとかが転勤とかになったとしても私は絶対に東京に残るし……例え世界が蓮君との交際に何か言ってきたとしても絶対に別れない。

 私はもう……蓮君がいないと生きていけない。

 

「蓮君は……ううん,蓮君達はこれまでも色んな困難を乗り越えてきました。それでも……蓮君が辛いのなら私が蓮君の傍にいます。私のせいで辛い事になるかもしれないけれど……それなら私ももっと強くなって蓮君の枷にならないように……蓮君の事を支えられるように」

 

 私……とっても恥ずかしいセリフを言ってる。彼氏の親に……彼氏の事を支える誓いの言葉……1年前の私なら恥ずかしくて穴があったら入りたくなるほど恥ずかしいセリフ。

 だけど不思議と私に勇気をくれた。

 

「だから……安心してください。蓮君は私が守ってみせますから」

 

 そう言ったら……お母さんはちょっとびっくりしたような顔を見せた後,微笑んでくれた。

 

「ましろちゃん,変わったわね」

「そう……ですか?」

「うん。11年前は自分の意見を言えなくて蓮の後ろについて回ってたもの」

 

 今は後ろじゃなくて……蓮君の隣にいられる。その事が私に力を与えてくれているんだ。

 

「私達は普段ここにいるから……もしも蓮が辛い時,傍にいてあげてね」

「……っ,はい!」

 

 私……認められてるんだ。蓮君の隣にいる事を,蓮君のご両親に。その事実がどうしようもなく嬉しくて返事に力がこもる。

 そんな私を愛しむように見た後,ご両親は立ち上がった。

 

「それじゃあそろそろ行きましょうか」

「え……? どこにですか?」

「それは秘密♪」

 

 そう言ってご両親と私は揃ってお家を出てある場所に向かった。そこは……サブマリーナ,蓮君達Argonavisの拠点だった。

 中に入ると沢山の人で賑わっていて……ステージにはライブをする為の機器が既にセッティングを終えられていた。

 

「いらっしゃい。あ,蓮君のご両親と……ましろちゃん」

「あ,こんばんわ。今晩は招待してくださりありがとうございます」

「いえいえ,今日は彼らの貸し切りですから」

 

 そう言ってマスターが目線を送ると,机の上にはバイキング形式で沢山のご飯が並べられていてここにいる人達はとっても楽しそうに何か会話をしていたりしてる。

 

「まだ少し時間があるから,先に食べていると良いよ」

 

 マスターはそう言いながらも料理を作っていて,お言葉に甘えて私達はバイキングにありつくことにした。そうしたら様々な人が蓮君のご両親に声をかけていたりしてた。

 万里さんのご両親だったり,凛生さんのご両親だったり……今気が付いたけれどここにいる人たちは多分皆Argonavisの関係者の人達なんだ。

 ……そんな時,お店の奥の扉が開いて皆の視線が集まる。

 

(蓮君……)

 

 つい数時間前に別れた私の彼氏がステージ衣装で現れて,お客さん達が歓声を上げる。蓮君は一瞬私の方を向いて微笑んだ後,マイクを握った。

 

「皆さんこんばんわ。Argonavisです。今晩は集まってくださりありがとうございます!」

 

 その言葉は拍手で迎えられ,私が言われている訳でもないのにとっても暖かくなる。

 

「僕達Argonavisは来年東京でメジャーデビューする事になりました。今日のライブは今まで僕達を支えてくれた人達への感謝を伝える為のライブです! 皆さん,楽しんで行ってください!」

 

 蓮君のMCの途中から楽器の演奏が始まって──

 

 いつか見た希望には 辿り着いたかい? 

 

 あの時と同じ……問いかけるみたいな歌詞から一気に最高点に持っていく蓮君の歌唱は1カ月前のデュエット大会よりもずっと凄くなっていて蓮君の歌から……プロになる覚悟を感じた。

 友達と……”輝く道に辿り着くために”ってどこか曖昧とした私の理由とは違う。本気でこのバンドで生きていく蓮君達の覚悟。

 

(私も……私も何か……)

 

 私は……言葉に出来ない何かを感じた。蓮君は私に告白の返事をしてくれて……そしてその上でこんなに凄い歌を歌っている。

 私は……? 私はずっと……蓮君の返事にそわそわしてデュエット大会の時から成長したのかな……? 

 

(分からない……)

 

 練習はした。何度もモニカの皆と合わせてライブだってしてた。だけど……蓮君の歌を聴いて焦りが出てる。あの時,蓮君は私のままで良いんだって言ってくれて……その支えがあったから私はまた歌う事が出来た。

 あの時ほどじゃないけれど……不安がまた募って来る。

 そんな私の不安を……きっとステージの上の蓮君は気が付かないままライブを進める。ゴールラインから始まってJUNCTION,Steady Goes! を披露して蓮君達の感謝ライブは終わりを告げた。

 歓声がサブマリーナを包んで蓮君達は控室に戻った後,私服に着替えて皆の所に戻ってきて本格的にパーティーが始まった。

 

「しろちゃん!」

 

 蓮君は真っ先に私やお母さんたちの所にとっても素敵な笑顔で戻ってきてくれた。

 

「どうだった? 今日のライブ」

「とっても凄かった。また……上手になってたね」

 

 ああ……ちゃんと凄いって言いたいのに言葉の端が力なく下がった。でも多分蓮君は気が付かない。あの時も私の変化には気が付かなかったから……仕方がないけれど。

 

「……しろちゃん,少し外に行かない?」

「え……?」

 

 私は蓮君に連れられてパーティー会場をそっと抜け出して……真冬の風に当たって身体を震わせた。

 

「は……はくちゅ!!」

「ご,ごめんしろちゃん! 大丈夫……?!」

 

 蓮君とっても心配そうに手を握ってくれて……不思議と私の体温は上がった……気がする。

 

「うん。大丈夫……もっと手,繋ごう?」

「う,うん」

 

 そう言って蓮君は私の手を包み込んでくれてちょっとだけマシになった。そうして私達は外のテーブルを囲んでいる椅子に座って……蓮君が言ってきた。

 

「しろちゃんはしろちゃんのままで大丈夫だよ」

「……え?」

「しろちゃん,あの時と同じ顔してたから……不安をとってあげられたらなって」

 

 うそ……気が付いてたの……? 

 その……蓮君の事はそれなりに鈍感って思ってたからその事にびっくりして彼の顔を見上げたらとっても穏やかな顔で私の事を見てくれていた。

 

「しろちゃん,TIMES CiRCLE歌おうよ」

 

 蓮君はそう言ってアカペラで歌いだした。私は……もう何度も蓮君と歌ったこの曲を意識しなくても勝手に口が動いて彼の声に自分の声を重ねる。

 曲はかかっていないのに……私達の頭の中で流れてくる。そうして蓮君と歌っている間,さっきまであった一末の不安も消えていくのを感じた。

 TIMES CiRCLEを歌い終えた私達はどちらかともなく微笑んだ。

 

「ごめんね蓮君,私また不安になっちゃった」

「ううん。僕も……不安だった」

「え?」

 

 蓮君がそんな事を言うのが珍しくて,ついびっくりして彼の顔を見るとちょっとだけ顔を歪ませていた。

 

「お母さんたちに言われたんだ,プロになってそれを仕事にするには覚悟が必要だって。学生の延長線上じゃダメだって」

 

 それは……そうだと思う。”プロ”を名乗る以上レベルは勿論カリスマ性や色々なことを求められるようになる。

 

「それで……しろちゃんとの事も考えたんだ」

「私の……こと?」

「うん。僕達はこれからプロになる。でも,絶対に成功する訳じゃない。きっと色々な事が起きて……しろちゃんの事も幸せに出来ないかもしれない。路頭に迷わせるかもしれない。それでも……プロになるのかって,お母さんたちに言われたんだ」

 

 これまで蓮君のご両親は,蓮君が歌うこと自体を否定してきたことなんてないしバンドの活動もLRフェスの事も蓮君の好きにさせて来た。

 だけれど……それはまだ普通の大学生の延長線上。バンドを仕事にするのなら……それをお金に換えるというのなら生半端な覚悟では出来ない。

 それでも不安だというのなら……どっちかを切り捨てるのは恐ろしいことだけどきっと合理的なんだと思う。

 

「でも今日のライブで僕は確信した。僕は歌が好きだ! しろちゃんの事も好きだ! だから……僕はプロになる。プロになって……歌もしろちゃんの事もどちらも大事にする」

 

 昨日の夜……なんども言ってくれた”好き”って言葉。今でも聞くたびに心臓が早く震えて……私は蓮君の事が好きなんだって再確認できる。

 そんな蓮君が……私達の将来の事を考えてプロになる決意をしてくれたって知って嬉しいと同時に私もしないといけないんだって……蓮君と一緒の未来を目指す覚悟を

 

「私も……私も蓮君と……蓮君に見合う人になれるように頑張る!」

 

 いつの間にか遠い場所にいた蓮君に……見合う人になれるのか私には分からないけれど,今ここで言葉にした事は絶対に嘘じゃないから。

 

「しろちゃん……その……改めて,僕とずっと一緒にいてくれますか?」

 

 蓮君が言葉にするのをとっても恥ずかしそうに言うのを見て私はつい微笑んだ。蓮君の手を握って……とっても寒いから蓮君にくっつきたいって言い訳で身体をくっつける。

 そうして彼の腰に手を回して逃げられないようにして顔を見つめた

 

「うんっ!」

 

 もう私には蓮君の事しか見えていなくて……逃げられないようした蓮君の顔にそのまま私の顔を近づけて……

 

 

「はーいそこまで」

 

「「——っ?!」」

 

 いきなり聞こえて来た第三者の声に私達は身体を離して声がした方を見ると,そこにはちょっとニヤニヤしてる蓮君のご両親がいて……一気に体の熱が高まって私はカアアと口をパクパクさせて2人を見た。

 

「公共の場でそういうことしちゃダメでしょましろちゃん」

「うぅ……はい」

「蓮も彼女に伝えたい事があるのは分かるけれど,大学生なんだから彼女を抑えてあげなくちゃ」

「う……うん。ご,ごめんなさい」

 

 私と蓮君は昔みたいに2人で怒られちゃった。でも……

 

(しろちゃん……?)

 

 蓮君は私と握ってる手を見てくる。この手は……昔は離してたけれど今はもうずっと繋いでる。この先も……ずっとだよ? 

 蓮君♪ 

 

 

 ★

 

 

 数年後——某ヨーロッパ国のドームホール,日本にも劣らない熱気に包まれた中でましろは蓮の両親……否,今は義両親と自分の両親,そして

 

「わぁ~!! ママすっごく大きいよ!!」

 

 今回のライブの主役,海外ツアー最終公演にして新たな始まりの日でもある彼らの関係者が招待される特等席で小学校に入学するか同課位の父親によく似た青い髪の少女がピョンピョンと跳ねてその時を待っていた。そんな少女を落ち着かせるために……というよりも見ていたら不安になるからか1人の少女と同い年の少年が慌てて彼女の服をつまんで親の所に落ち着かせようとする。

 

「あ,危ないよ。もう始まっちゃうから……戻ろう……?」

 

 親によく似て強くは言わない……母親の遺伝子がよく出てる白髪の男の子は優しく育っているのである。そんな兄をしょうがないなぁと言いたげに妹は大人しく母親たちの元に駆け寄る。

 

「ありがとうね,お兄ちゃん」

「う……うん! えへへ」

 

 母親に頭を撫でられてへにゃりと顔を歪ませる。それにムッとした少女は私も私もと母親におねだりする。

 

「ママわたしもーっ!」

「もう……2人とも甘えん坊なんだから」

 

 そうして2人の頭を撫でて……その左手薬指にはキラリと煌めく指輪があった。子供達を隣の席に座らせていると,ドームの明かりブラックアウトして一瞬で会場は静まり返って……次に明かりがついた瞬間に目の前のステージに立っていたのは蓮達Argonavis——数年前メジャーデビューを果たし,様々な出来事を乗り越えて世界へと飛び出た若きバンドマンたちだ。

 彼らが現れた瞬間,観客は黄色い歓声を上げそれはましろの隣に座っている子供達も例外ではなかった

 

「パパだーっ!」

「パパー!!」

 

 父親を……七星蓮を見て結局席を立って歓声を上げる2人の子供を見てましろは微笑み,自分もステージにいる自分の夫を見つめる。

 そうしていたら一瞬,蓮もましろの事を見て微笑んだ後,凛とした大人になったと思わせる声で

 

「皆さんこんばんわ。今日は僕達のArgonavisの初めての海外ツアー……最終公演に来てくれてありがとうございます! 結人,航海,凛生,そして万里。この5人で始まった僕達の航海は,色々な波に飲み込まれそうになったこともありました。だけど先輩達やライバル達,家族。そしてファンの皆さんのおかげで僕達はここまで来ることが出来ました! 本当に……ありがとうございます!」

 

 蓮の言葉に会場のボルテージは高まって……ましろも微笑みを浮かべ,彼らのセトリが何なのかまだ何も聞いていないのに一番最初の曲が分かった。

 

「そんな皆さんへの感謝を込めて──ゴールライン!!」

 

 彼ら5人が揃った時の始まりの曲,彼らの原点の曲がドームを覆い隠した時会場のテンションは最高潮へと一気に達したのだった

 

 

 

 




お疲れさまでした!
プロになる人全てが成功する訳じゃない,ましろの事を考えるのなら付き合わず結果が出てから告白するのも実はありだったりもしました。それでも蓮が告白したのは例え不確定の未来でもましろと一緒に生きたいという想いからでした。
という訳で最後はそんな不確定の未来の果てをちょっとだけ書いた感じです。

蓮の両親はオリジナルです。母親はぷちごなびすの描写から仕送りとかはしていると思いますし,父親も割と東京に簡単に行っているので割と寛容だと思っています。
ただプロになると言う事は大人の世界に飛び込むと言う事なのでその時ばかりはきちんと話していると思うので,2人が蓮とましろ,それぞれに問いかけた感じになります。
まあプロ云々の話は那由多と絡めた話を書いてこうと思ってるので楽しみにしてくれたら嬉しいです。

では!!

恋人になった2人の関係性どんなのが良い?

  • 今まで通りましろから蓮に激攻め
  • 逆に蓮がましろに激攻め
  • 寧ろお互いがお互いに激攻め
  • というか全部やれ
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