第3話でございます。
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LRフェスの詳細が発表された翌日,ましろの通う月の森女子学園でも少し話題になっていた。これもMorfonicaが学校内でもバンド活動を始めたからと思うと,ましろは嬉しいようなくすぐったいような気分になった。
「しろおっはよー!」
そんなましろが校門に入るとどこかご機嫌な透子がましろの肩を叩いた。それにビクッとしながらましろも挨拶し返す。
「あ,透子ちゃんおはよう」
「いや~,昨日はシロから面白い話聞けて楽しかったわ~!」
桐ケ谷透子は,良くも悪くも女子高校生らしくおまけに超人気のインフルエンサー。そんな彼女がいわゆる恋愛に興味示さない訳なく昨日は透子とつくしも加わり根掘り葉掘り聞かれた。
……ただ甘酸っぱすぎてダウンしてしまったが。
「う~」
「ん? どうしたシロ? なんか元気ねえぞ?」
しかし,昨日よりもましろは何故か落ち込んでいる始末。常に元気はつらつ少女という訳では無いが理由もなく落ち込む子ではないので透子は疑問符を出す。だけども飛び出してきたのは想定外の言葉
「蓮君に彼女いたらどうしようって」
「え?」
けれど飛び出してきた言葉は何故か昨日聞いた七星蓮に彼女がいたらどうしようという何だか可愛い悩み……いや本人からしたら不安で仕方がない事なのだろうが透子が少し引いてしまったのには違う理由がある。
先ず第一に,別にましろは蓮と付き合っている訳では無い。だから本来蓮が誰と付き合おうと関係のない話である。
第二に,そもそも今は函館にいるであろう彼の彼女状況を気にするのか分からなかった。
第三,単純に重い。もはや独占欲とでも言うべきましろの感情は透子とて重いと感じた。
「いやまあそりゃあいるかもな」
だから思った事を素直に言うと,ましろが纏っていた負のオーラが増大し心なしか身体にかかる重力が増えたように腰が低くなる。
倉田ましろと昨日見た七星連は幼馴染で,ましろにとっては兄のような存在で一緒に歌ったり色々な事を2人でしていたと言う。それを語らせていた時のましろの様子は見ている側が恥ずかしくなるくらいだった。
けれど別に告白した訳でもなく,ただ小さな約束を交わして離れ離れになったと言う事だ。聞いてるだけなら甘酸っぱすぎて少し顔をそむけたくなるが,それでも友達として応援したくなる。けれど件の男に彼女がいるのなら諦めろとしか言えない。
「まあそんなのミクロンミクロン! もし彼女さんがいたってそれはしょうがないだろ」
「ああああ」
思ったことを言うとましろはさらにさらに負のオーラを増大させる。普段は周りを引っ張る透子も,この時ばかりはどうしようもなかった。
──授業中
ましろとつくしは同じクラスで,つくしは学級委員長なのでその癖とでも言うのか周りの人達を観察する癖があった。
今日も今日とてつくしは教師の話を聞きながら周りを見てみると華やかなクラスメイト達の中に1人,ドヨーンとした黒い雰囲気を纏っている生徒がいた。言うまでもなくましろである。背中越しでも分かる落ち込みようは今までの彼女とは別ベクトルで暗かった
その原因についてはつくしは既に知っている。1限目が始まる前に透子から個人メールが来たからだ。曰く
『やっべ,シロの落ち込みがいつにも増して酷い』
『ちょっと透子ちゃん,ましろちゃんに何言ったの!?』
『なんもしてないって! ただしろがあの蓮? って人に彼女がいたらどうしようって悩んでたから一言言っただけで』
『じゃあなんて言ったの?』
『いや彼女はいるかもなって』
『もー! そんな事いったら落ち込むに決まってるでしょ!』
(ここは学級委員長として,モニカのリーダーとして相談に乗らなきゃ!)
幸い今日は透子と瑠唯に外せない予定があるらしく練習はない。だから時間は沢山ある。そう思って今日の完璧なプランニングを立てていたら、大事な所をノートにとるのを忘れてたしいつの間にか授業も終わってるし、ましろと昼食を取ろうと思っていたらそのましろもどこかに行ってしまった
「もーッ!」
なし崩し的にプランニングが砕け散った事に憤慨しながらつくしはましろを探しに廊下へ飛び出した。
……廊下を走るなと瑠唯に注意されてしまった
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透子ちゃんに蓮君に彼女はいるかもって言われてとっても身体が重い。どこか休めるところないかなって思って周りを見渡したらベンチがあったからそこに座ってため息をつく。そうやって小さい頃の数少ない記憶を取り出す。
『蓮君まって』
小さい頃は,蓮君の後ろをついて回る位は懐いてたと思う。お母さんがどうしても外せない用事があった時は蓮君のお家にお泊りして、蓮君と同じベッドで寝たことだってある。
ずっと蓮君といて,当時はまだ分からなかった人を好きになるって事も今ならよく分かる。あの時にはもう蓮君の事が好きだったんだって。
中学に上がる頃にもまだ蓮君の事が忘れられなくて,他の男の子に夢中になることなんてなかった。……そもそも私が夢中になるのが畏れ多いというか。
でもでも,他の男の子を見てるとやっぱり蓮君の事を思い出して……蓮君と”付き合いたいな”って,そんな事を考えるようになった。
「はぁ」
でも,それが出来ない事もよく分かってる。だって蓮君は函館で,私が今いるのは東京だし。それに蓮君は私の居場所を知らない。何も知らないだけならまだきっとマシだった。このまま蓮君の事を想い続けて、記憶の中の蓮君と触れ合えるだけなら。
でももう知ってしまった。蓮君も私と同じでバンドを組んで,私と同じボーカルで……私以上の大舞台で歌ってその名を広めた事を。
もし……もしも私より綺麗で女性らしさもあって家庭的で……そんな人と蓮が付き合ったのなら勝ち目がまるきりないよ……。
「ましろちゃんいたー!」
また暗い世界に行きかけた私の意識は,元気な女の子の声で現実に戻ってきた。ちょっと息を切らしながら近寄ってきたのはつくしちゃんだった。
お行儀よく隣の席に着いて息を整えてた
「ど,どうしたのつくしちゃん?」
今日はモニカの集まりもない珍しい日の筈なのに,つくしちゃんは何だか一生懸命私を探してたみたい。つくしちゃんは少しいたずらっ子みたいな顔で聞いてきた
「ねえ,今日放課後何か予定ある?」
放課後の予定は……今日は特にない。ポピパさんのライブがあったら絶対に観に行くけど,今日はライブは無いし友達のロックちゃんもあこちゃんも明日香ちゃんも今日はバンドの練習だったり塾があるみたいで1人……。
あれ,私にバンドが無かったらやっぱり1人だったのかな……。
「じゃ,じゃあその蓮って人探しに行こうよ!!」
そんな事を考えた私に,つくしちゃんが天啓とでも言うべき提案をしてくれた。
「え……?」
つくしちゃんは胸を張って名案でしょ! って感じに言ってくれた
「ましろちゃん知ってる? LRフェス」
「う……うん」
そのフェスの名前は昨日のテレビで聞いた時から耳に残ってる。蓮君達が出場するフェスの名前だもん。
「調べたんだけど,LRフェスに出るバンドの人達は皆東京に来るらしいの!」
「え……ライブの時だけ来るんじゃないの?」
スターティングライブは来週の予定だって昨日のテレビは言ってた。だからてっきりそう言ったライブの時だけに東京に来るって思ってた。
「うんうん,バンドの人達は東京でシェアハウスに住むらしいんだ。だから大学も東京の方に編入したんだって」
「それ……本当?」
「ふふーん! 当然でしょ。私はモニカのリーダーなんだから!」
東京に住む……それが本当なら会う事が出来るチャンスが函館の時よりもずっとある。でもシェアハウスの場所を調べる事なんて出来ないと思うし……
「流石にシェアハウスの場所は分からなかったけど,スタジオを片っ端から当たれば見つかるかもしれないよ!」
「そっか……スターティングライブの為にどこかで練習してるかもしれないね」
そう思ったら,なんだか希望が出てきた気がする。胸の中に絡まっていた糸が何だか解けていく気がした。でも……彼女がいる事が分かったらどうしよう……
「で……でも彼女いたらどうしよう」
「その時は私が沢山励ましてあげる!」
全然励ましになってないよつくしちゃん。でも……蓮君を探しに行くのは私にとって青天の霹靂だった。早速私達は放課後、取り敢えず近場のスタジオから回ることに決めた
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東京の空気はなんだか函館よりも少し重く感じたのが僕の最初の感想だった。
長い空路を渡って東京に降り立った僕達は先ず、自分達が住むシェアハウスに向かった。そのシェアハウスはとても広々としていてこの5人でこれから住むのだと思ったら何だかワクワクした。
けれど、そんな気持ちも函館から旅立つ前から思っている事により少し元気がないのバレたのかな。結人君にどうしたのと聞かれた僕は、ついに話すことにした。音楽の優劣をつける意味、その先で世界への道が本当に必要なのか分からないと。
当然、今更って声も出た。万里に航海もこの地に来ると決めたからここにいる。凜生は元々野球という勝負の世界にいたからこそ、競い合うことで得られるものもあると言ってくれる。そして、結人は
「Argonavisは俺のバンドじゃない、俺達のバンドだ。俺達一人一人が主役なんだ!」
そう言って僕が出たくないというのなら出ないって僕の意志を尊重してくれた。
ただ、スターティングライブだけはやらせてくれって。僕達がこの東京でも演奏したことを証として残したいからって。だから、本当は今でも練習をしないといけない。けれど僕の様子を見た結人が今日は自由時間にしようと言って解散した。
「はぁ……」
気分が重たい……訳じゃない。音楽の優劣を決める世界にいなかった僕には、このフェスの意味が分からなかった。
「わあ,広いな」
僕がなんとなしに訪れたのは,シェアハウスからほど近い大き目な公園だった。大きな湖を中心に,四方八方に木がたち茂っていて都会なのにとても涼しい。
何だか別の世界に来たみたいだ。
「時間はまだある……か」
結人はまだ焦らなくてもいい,色々な事を見てそれからLRフェスを辞退するかどうか決めたら良いって言ってくれた。その好意に甘える訳じゃないけれど,僕は沢山考える事にした。
このフェスに出ているバンドの目的は多分”世界”。世界はとても果てしない場所で,もしも僕が世界で歌うことが出来るのならそれはとっても素晴らしい事だと思う。でもその為に音楽で勝敗を競うなんて……
僕達の音楽を,Argonvisの音楽を世界の人達に聞いてもらうなんてめったにないチャンスというのは分かってる。それでも『勝負』という事がどうしても頭から離れなかった。
「~~♪」
そんな時,どこからか歌っている声が聞こえた。僕がその方向を見ると,湖を隔てた向こう岸にギターを持ちながら楽しそうに歌う高校生位の女の子がいた。ベージュ色のセーラー服で……変わった髪型の女の子だ。あれは……猫? ……違う,もしかして星かな?
「~~♪」
凄いな……僕は楽器を持ちながら歌う事なんて出来ない。ドラムをしようと練習した時も,とても万里君のようには出来なかった。僕には歌う事しか出来なかった。それなのにあの子はギターを弾きながら歌ってる。純粋に……凄いなって思う。
──どうして,あんな楽しそうなんだろう
今の彼女は誰に聞かせるでもなく湖に向けて歌ってる。観客は誰一人といない,それでも楽しそうに歌ってる。
僕は……気になった。気が付いたらベンチから立ち上がってその女の子の所まで歩いていた。僕が近づく頃にはもう彼女の歌は終わっていて,彼女はとても満足そうに湖を見ていた。
「ね,ねえ」
僕が声をかけると,耳みたいな髪がビクンと震えて振り返ってきた。さっきの歌を聞いた通り,とても元気そうな女の子。僕の方をとても不思議そうに見て首を傾げた
「はい?」
「どうして君は,そんなに楽しそうに歌うんだい?」
僕が抱えた疑問を,ただ言葉にしただけ。それを聞いた女の子はパーッと顔を明るくして答えてくれた
「歌ってるととってもキラキラドキドキ出来るからです!」
キラキラドキドキ……とっても要領得ない答えだけど,彼女が言わんとしている事は僕にも分かる。そうだ……歌は僕の知らない僕を呼び起こしてくれる。歌っているととても楽しい,それがArgonavisの皆とならもっと楽しいんだ。僕が……僕達が音楽に乗せる歌は勝ち負けじゃなくて……周りの人達を楽しませるためなんだ。僕はそうやって
「あのステージで……輝く景色がなんなのか見たいんだ」
唐突にでた僕の言葉を,彼女は首をこてんとして不思議そうに思ってかもしれない。けれど次には「ふふっ」と少し楽しそうに笑った
「え,なに?」
「あ,ごめんなさい。お兄さんと似たような事を言う女の子がいるから少し重なっちゃって」
それが誰なのか分からなかったけれど,なんだかとても親近感を覚えた。
だけれど,僕は次の目的が決まったから彼女と別れる事にする。
「ごめん,僕皆と歌いたくなったから行くね」
「……? はい!」
僕は女の子に背を向けて,夢中で走り出した。
もう夕暮れに差し迫る時間だったけど歌いたい。無性に歌いたくてしょうがないんだ。Argonavisの皆と!
「ただいま!」
急いでシェアハウスに戻ると,皆は各々好きに時間を過ごしていた……はずだけど皆自分のギターやベース,ドラムのスティックにキーボードを持って練習していた。
「お,どうした蓮。今日は自由時間だぞ」
「今すぐ歌いたい!」
音楽の勝ち負けの事に納得をした訳じゃない。けれど……それで音楽の楽しさが失われるわけじゃない。それを今すぐに確かめたかった。
僕の言葉を聞いた皆は驚いたように顔を見合わせたけど,直ぐに笑みに変えた
「俺達も同じ事を思っていた」
「今すぐ練習できるスタジオ探すね」
考えていた事は皆同じだったのか,どこかしょうがないなと言いたげに航海がスマホを取り出して近辺の練習が出来るスタジオを探してくれる。
もう時間も夕暮れ,この時間帯ならどこも埋まっているかもしれないと思ったけど航海が気色良い表情でスマホを閉じた
「見つかった。CIRCLEって所が20分後に2時間だけなら出来るって」
「よし,じゃあ行こうぜ!」
そうやって僕達は歌う為に,近くのスタジオまで向かったのだった
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太陽は沈み,もう夜になっちゃった。まるで世界の終焉みたいに周りは街灯しか照らすものがなくなって……なんだか不安になってくる。もう夜の7時を過ぎちゃったし……ここまで付き合ってくれたつくしちゃんに申し訳なくなってくる
「はぁ……見つからないね」
「つ,つくしちゃんもう帰ろう? もう暗いし」
私とつくしちゃんは学校が終わったら片っ端から近くの練習スタジオに行って聞き込みをした……主につくしちゃんが。私は恥ずかしくて固まってしまって動けなかった……。
だけどとても成果は上がらず2人して項垂れて,近くの公園のベンチで休んでいた。
「でも……ましろちゃんは良いの?」
「良くは……ないけど」
私だって蓮君に会いたい。だけど……そもそもまだ東京に来ていない可能性だってあるし,それに都内にいくつもあるライブハウス・スタジオを片っ端から探すなんてとてもじゃないけど無理だよ。
それに……このまま時間が遅くなったら本当につくしちゃんに申し訳なくなるし。
「スターティングライブに行けば会えると思うから」
一週間後にあるスターティングライブ,その時には蓮君は必ずその場に現れると思うから……。
「でも演奏の前に会って気持ちを揺さぶるのはよくないよ。それに演奏が終わった後会えるか分からないし」
つくしちゃんが至極真っ当な反対意見を出してきた。もしもライブの前に私が蓮君にいきなり出会ったらつくしちゃんの言う通りとっても緊張して演奏が乱れちゃう。でも演奏後に会おうとしてもきっとスタッフさん達が通してくれないだろうし。
うう……私もそれは分かってるけど他に方法がないよ。
「そう言えば,まだCiRCLEにはいってなかったよね」
つくしちゃんが思い出したように言った。ライブハウスCIRCLEは練習スタジオも併設している私達がいつもお世話になっているライブハウス。ポピパさんやRoselliaさん,他にも多くのバンドに親しまれているこの辺で一番大きいライブハウスでもある。
「う,うん。取り合えずスターティングライブ会場の近くのスタジオから探そうってなったから」
そう言ったらつくしちゃんは「よし!」って立ち上がった。
「じゃあ最後にCiRCLEだけ見よ! それで今日は終わり,良い?」
踏ん切りがついていない私を見かねたつくしちゃんの案。蓮君がいるにせよいないにせよ,今日はこれで終わりにするっていう案は私に光を灯した。
「うん! 行こ,つくしちゃん!」
最後の気力を振り絞って私は立ち上がってつくしちゃんと一緒にCIRCLEに向かった。いつもならポピパさんに会えるかなとか,そんな楽しい気持ちが身体から湧き出てくるけど今日は緊張が身体を満たしてた。まるで果てしない宇宙を船で旅して目的の物が見つかるかどうかの瀬戸際みたいな……そんな感じ。
私達が着く頃には,既にCIRCLEの外に併設されているカフェはシャッターが下りていて中の明かりはついていた。少しの期待とドキドキしていたらつくしちゃんが恐れを知らない足取りでCiRCLEに入っていくから私も入ってく。
チラリとラウンジを見てもちらほらと人はいるけれど蓮君は見つからない。
「あ,いらっしゃいつくしちゃんにましろちゃん」
私達をカウンターの向こうから迎えてくれたのは,いつものように黒のジャケットに白と青のボーダーシャツ,ジーンズって恰好の月島まりなさん。このCIRCLEで働いていて私達がお世話になっている人。
そんなまりなさんが「あれ?」って感じで一旦目の前のパソコンを見てもう一度私達に目を向ける
「どうしたのふたりとも,今日はモニカの予約は無いけど……」
CIRCLEは営業終了の1時間前に予約を締め切るから……もう19時を回った今の時間からは予約は出来ない。だけど私達の目的は練習じゃなくて……
「いえ,今日は練習じゃなくて人探ししてるんです」
そう言ってつくしちゃんは私に目配らせする。私は恥ずかしいけれど,勇気を振り絞ってスマートフォンをまりなさんに見せる。私が見せたスマートフォンにはディスティニーロックフェスティバルで歌っている蓮君の静止画像が映っている。
「あ,あのこの人来ませんでした……か?」
「どうして語尾が小さくなるの」
つくしちゃんがツッコミを入れて来たけど私にそれを返す余裕がなかった。ただ写真を見せてるだけなのにドキドキが止まらなくなってくる。本当は今にも逃げ出したい……だって女の子が男の子を探す理由なんて大人なら皆分かっちゃうから……。
「……ましろちゃんとこの人はどういう関係なの?」
うう……質問を質問で返された。正直に言うのが良いのかな……でも幼馴染って思ってるのは私だけかもしれないし,蓮君が私を忘れていたらただの怪しい人間になっちゃうし。そんな私が悩んでいるのを露知らず
「ましろちゃんとこの人は幼馴染なんです!」
つくしちゃんが一点も曇りない笑顔で暴露しちゃったから私は恥ずかしさの余りその場でしゃがんでしまった。
(うううううう)
「ま,ましろちゃん?! 大丈夫? 耳まで真っ赤だよ!?」
まりなさんの焦ったような声が聞こえてくるけど,自分で言うのも恥ずかしくて私は身体の底からぶわっと灯った熱を逃がす方法が無かった。
「あー,えっと……それでまりなさん。この人って今日来たんですか?」
心身共に紅くなってる私を見かねたくれたのか,つくしちゃんがまりなさんに聞いてくれた。でも,私達は今日だけでも15件はライブハウスを回ったけどどこにも見つからなかった。あれだけ探し回ったのに見つからなかったのにそんな都合よく……
「ええ,来たわよ」
……
──え?
びっくりした私はゆっくりと立ち上がってまりなさんを見ると,まりなさんはどこか愛しむような表情で私を見ていた。
「多分,もう少しで出てくるわ」
……え,蓮君がここにいる?
というより何で?
え? え?
「あ,ましろちゃんが固まっちゃった」
余りにあっさり言われたから本当にそれが本当なのか,そうじゃないのかって考えが頭の中をぐるぐる回って動けなかった。
「ありゃ,取り合えず椅子に座ると良いわ」
そう言ってまりなさんはカウンターから出てきて動けなかった私の手をそっと握り椅子まで導いた。
「もう出てくると思うから,ここでゆっくり待ったら良いわ」
そんなあっさり言われても,会ってどんな話をすればいいのか分からないよ……。いつの間にか向かい側にはつくしちゃんも座って,興奮でほおを紅潮させていた
「良かったねましろちゃん!! 蓮さんいるって!」
「え……あ,うん」
余りに気持ちの整理がつかなくて変な返事をしちゃった。
「ん? なんだろう?」
そんな時,つくしちゃんが自分のスマートフォンをポケットから取り出して画面を付けたら「あっ」って表情を変えた。
「ご,ごめんましろちゃん。妹達がぐずりだしたって」
つくしちゃんには妹がいて,とってもシスコンみたい。つくしちゃん,しっかりお姉ちゃんしてて偉いな……じゃなくて!
それってつまりつくしちゃんは今から帰ってしまうって事で……でももし蓮君がここにいるなら私は1人で会わないといけないって事で……
「じゃあましろちゃん,明日どうなったか教えてね!」
一点の曇りもない晴れ晴れとした表情でつくしちゃんは鞄を持って凄まじい勢いでCiRCLEから出て行ってしまった
(あああああ!!)
頭の中に困惑とこれからどうしようっていう考えがぐるぐる回って意識が持たなくてへなへなと椅子に座りなおして,なんとか落ち着こうと思って周りを見て足元に置いてあった鞄が目に入って膝の上において,それをぬいぐるみ替わりに抱擁する。
「どうしよう……なにを話したらいいの。それにまだ心の準備が……」
きっと外から見た私の様子は顔を真っ赤にしてあれこれ悶えている変な子って見られてるけど,そんな事を気にしている余裕はなかった。
頭の中でパニックなっていたら……練習スタジオの方から男の人達の声が聞こえてきた。スタジオのドアから出てきた所からの会話の筈なのに,その人の声だけはなぜ鮮明に聞こえる
「今日の練習もとっても良かったね」
爽やか,その中にとても芯の籠った優しい声はラウンジにいる私の耳に届いたら……胸の中の点火寸前だった熱がぶわって燃え始めた。
他の人達の声も混じった会話も聞こえなくなって,耳に入って来るのは想い人の声だけ
「……あ」
「でも僕はまだ歌いたいよ!」
「今から他のスタジオ探すのか?」
「ここは東京だよ? きっとどこかにあるよ」
「おまえらしょうがないな!」
「全く,取り合えずチェックアウトしようよ」
スタジオがある廊下から来た5人の男の人,ギターケースを背負ってる帽子を深くかぶってる人とベースの赤髪の人,なんだかキノコみたいな髪型の人に長身の男の人……そして
その人を見た私は,いつの間にか椅子から立ち上がって,両手をギュッと握りしめながら名前を呼んだ
「蓮……君!」
青い髪の人と,その人のバンドメンバーであろう人達は驚いたように私を見てきたけれど……私の眼はもう1人しか映っていなかった。
長い……時間的にはそこまで経っていないけれど体感的にとても時間が長く感じた。私を見て,とっても眼を大きくした蓮君は中途半端に開いていた口を動かした
「しろ……ちゃん?」
私は嬉しさで爆発した
お疲れさまです。
ちゃっかり香澄登場,彼女があそこにいた理由は…ただのご都合主義です!
そもそもArgonavisの東京で済むシェアハウスが下北沢なんですけれど,ましろの家の最寄り駅である和泉多摩川駅から下北沢駅までは小田急線で一本と言う凄い小説書くには良い感じの立地なんですが,香澄の住んでる早稲田らへんと下北沢が少し離れてるので現実的に下北沢周辺に香澄がいる理由が思い浮かばなかった()。
それから,スターティングライブとか色々ありますけれど基本的に相互のメインストーリーには関わりません。
ぷちごなびすとか,ガルパピコみたいな感じです。
では!
恋人になった2人の関係性どんなのが良い?
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今まで通りましろから蓮に激攻め
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逆に蓮がましろに激攻め
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寧ろお互いがお互いに激攻め
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というか全部やれ