蓮とましろが小さい頃に別れた幼馴染だったら   作:レオ2

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おはようございます!
続きでございます!モニカのバレンタインイベントの設定と状況をちょっと変えさせてもらっていますのでご了承ください。
という訳でデート回です!

それからアズアズさん,高評価ありがとうございます!これからもよろしくお願いいたします!

では!


CiRCLE Thanks Party!! in Argonavis 中編

 CiRCLE Thanks Party!! の開催が決定され,Morfonicaの面々もその準備を行っていた。RAISE A SUIRENのプロデューサーのチュチュから送られてきた音楽を元に個々人が歌詞について何か考えるようにという課題が与えられたのだ。

 それ自体はましろもつくしと一緒に考え送ったから良かったのだが,ましろには違う課題が残されていた。

 

「うぅ……もうちょっと……もうちょっと……」

 

 青と白のエプロンを身に着けて,透子の家でましろはつくしに教えられながら市販のチョコレートを削っていた。今日は2月13日のバレンタイン前日でありMorfonicaのメンバーでバレンタインパーティーに向けたチョコ作りを行っていた。

 今Morfonicaはガールズバトルトーナメント……略してGBTに出場していて,透子が勝ち上がるたびに打ち上げを行っていて今回は3回戦進出記念バレンタインパーティーを行う事になっていた。

 そのパーティーに向けてモニカのメンバーでチョコレートづくりをしようとなっていて,今日がその日なのである。

 

「ましろちゃんちょっと力入れすぎかも」

「え? こ……こうかな?」

「今度は……力を抜き過ぎかな」

 

 つくしはそう言ってましろの隣で自分のチョコを削る。普段からお菓子作りや料理をしているだけあって手際がとてもよく,ましろは感心しながらつくしの作業を見ていた。

 

「つくしちゃん……とっても上手だね」

「私はいつもやってるからね。妹達も私のチョコ,とっても楽しみにしてくれてるんだ!」

 

 それを聞き,ましろも自分のチョコレートを見る。そこにはお世辞にもうまく削れているとは言い難いチョコがあった。

 

(うぅ……これじゃあ蓮君に渡せないよ~)

 

 その余りの煩雑な姿についそんな弱音を心の中で吐露する。

 月の森女子学園は女子高の為,恋人や想い人にチョコレートをあげるという人は実は少ない……というよりもほぼいない。その代わり生徒同士の渡しあいは盛んであり,スイーツ研究会が主催するスイーツビュッフェは毎年大勢の生徒達が開催を楽しみにしている。

 そんな大体生徒間で完結するバレンタインに,ましろは蓮とデートの約束を取り付けて……手作りチョコを渡そうとしている。

 

「大丈夫だよましろちゃん! チョコは気持ち! ましろちゃんが頑張ったら蓮さんもきっと喜んでくれるよ!」

 

 ましろの落ち込みにつくしも気が付いたのか,いつも妹達へ渡す自分の心を語る。ましろはそれを聞いて自分のチョコを見て,深呼吸をした後につくしに向いた

 

「ありがとうつくしちゃん。私……もう少し頑張ってみる!」

 

 このチョコ作りの事が決まった時,当然モニカで唯一彼氏がいるましろはからかわれた。しかし……今はもうからかう人はいない。それはなんと透子ですらそうだった。

 その理由が透子がましろに蓮へ渡すチョコの事を話した時……

 

『シロは蓮さんにも渡すんだろ?』

 

 割かしいつも通りのテンションでましろに問いかけた透子は,いつかのつくしと同じようにカウンターアタックを決められて……

 

『うん……蓮君に喜んでもらうチョコ作るんだ』

 

 とっても幸せそうに顔を綻ばせ,頬も赤くして照れながら言うましろの表情は同じ女であるはずの透子ですら「絵になる」と思ってしまったほどであり……その後に蓮への愛を恥ずかしがることもなく話すましろに少し引いてしまったからというのは内緒である。

 そんな訳で,ましろのバレンタインチョコ作りが終え……とうとうバレンタイン当日になった。

 ましろは先ず午前中にモニカの皆とチョコレート交換会をした後,ましろは急いで蓮との約束の場所へと向かった。

 蓮達が所属しているレコード会社,アポロレコードへと向かう。

 

「えっと……こんにちは」

 

 アポロレコードの事務所がある建物に入り,ましろは受付に行くと既に顔見知りとなった受付嬢が笑顔で迎えてくれた。

 

「ましろちゃんこんにちは! 七星君?」

「は,はい」

「もう少しで終わると思うからそこで待っててね」

 

 そう言って指さしたのはポップなイメージの色合いで構成された部屋で,部屋に通されたましろは少し緊張しながらもふかふかのソファーへと座った。

 そのましろの後を追うように受付嬢がココアを入れて部屋に来た。

 

「はいましろちゃん」

「あ,ありがとうございます」

「ましろちゃん事務所の中くらい帽子取ったら?」

 

 ましろは少し深い帽子を被り,一見するとましろかどうかも分からない程だ。

 この4月にArgonavisがメジャーデビューが決定する大々的な広告が始まる前,蓮は事務所に恋人であるましろの事をあらかじめ知っておいて欲しいと紹介したことがあり,この受付嬢ともその時に知り合いになった。

 勿論バンド活動で恋人を作る事を禁止にする項目なんてこの会社に無かったし,会社も既にデュエット大会でましろの事は知っていたので割と直ぐに受け入れられこうして蓮との待ち合わせの為に事務所を使わせてもらう位にはましろも馴染んでいた。

 

「あ,はい。何だか緊張しちゃって……」

「まあそうだよね」

 

 この受付嬢も,この会社ではバンドも社員も男性の方が多い為か女の子であるましろの事はとっても気に入っていてこうして待っている間の雑談に付き合ったりしている。仕事をさぼっている訳じゃない。

 

「チョコ,作って来たの?」

「はい……! 上手に出来たかは……分からないですけれど」

「大丈夫! チョコは気持ち! 七星君なら喜んでくれるよ!」

 

 つくしと同じことを言ってきて,ましろはクスっと笑ってしまう。その表情の1つ1つが同じ女であるはずの受付嬢から見てもどこか色気が出ていて,微笑ましい気持ちになる。

 

(七星君もきっとこの笑顔にやられたんだろうなあ)

 

 と思った。

 

「あぁ……でも……今日は余り嫉妬を振り回さないでね?」

「え,何をですか?」

 

 何故そんな事を言われるのか分からないましろは首を傾げるが,割と直ぐにその答えは出た。事務所の奥の会議室の扉が開き,出て来たのはArgonavisの面子だった。

 それはいつもの光景なのであるが,ましろが注目したのは蓮の手に握られている箱だった。

 

「あ……」

 

 ましろの姿を認めた結人が「やべっ!」という顔をして,何か理由を付けて蓮の持っている箱を取ろうとしたが時既に遅しだった。

 ましろの嫉妬の炎が可視化されている訳でもないのに,ましろの周囲に黒炎が蠢いているのを見てしまった。

 

「あ,しろちゃん!」

「……蓮君」

 

 ましろの姿を認めてとっても嬉しそうに近づく蓮,反対にましろは声が低くなり相当ご立腹のようである。この後蓮とましろはデートをする予定だとメンバーは聞いていた為,蓮がこの後連れまわされまくるんだろうなと察した。

 

「もう今日は終わりだよね?」

「え……,う,うん」

 

 余りに声が低い為,蓮もましろの様子が違う事にようやく気が付き顔を覗き込み……

 

(うぅ……蓮君やっぱり可愛い)

 

 そんな嫉妬も蓮の心配気な表情……もとい子犬のような表情には意味もなくただただましろは心臓を撃ち抜かれた。そんな蓮を早く独り占めしたくて彼の手を握る。

 

「じゃあ……デート,しよ?」

「うん!」

 

 ましろが一瞬不機嫌になったのはその場にいた蓮以外の人は皆分かっていたが,蓮とましろが幸せそうなので黙っておくことにした。

 そうと決まればとましろは立ち上がったが,思い出したように言った。

 

「あ,蓮君眼鏡」

「え……? しないとダメかな?」

 

 眼鏡をかけるように言うましろだが,蓮は何故そんな事を言われるのか分からず首を傾げる。

 

「いるよ。だってこの前のデート,ちょっとSNSで出ちゃったし……」

 

 実は前のデートで有名になりつつあった蓮が彼女を連れていると少しSNSで話題になった事があり,ましろも透子がそれを見つけてきて恥ずかしく思った。

 そう考えたら……一々誰かの視線を感じながらデートなんてまっぴらだった。

 

「蓮,眼鏡かけてあげなよ」

 

 正直眼鏡だけで誤魔化せるかは微妙な所だが,ましろが蓮に眼鏡をかけてほしい理由が別にある事を航海は知らなかった。

 

「うん。分かったよ」

 

 そう言って蓮は鞄から眼鏡ケースを出すと,そこから眼鏡を取り出しかけた。そうするとあら不思議,眼鏡をかけられていなかったら少しキリっとした印象を受けた蓮だが,眼鏡をかけた瞬間に幼さとあどけなさが溢れ出した。

 そう……ましろが蓮に眼鏡をかけるように言った理由,それは

 

 

(蓮君の眼鏡姿……やっぱり可愛い~!!)

 

 

 過去に眼鏡をかけて一緒にお茶した時に,ましろは蓮限定だが眼鏡フェチになってしまっていたのである。普段の蓮も勿論好きでたまらないが,眼鏡をかけた彼もまた違う魅力を持っていて恋人になった今では定期的に彼の眼鏡姿を摂取しなければ過ごせない時もあった。

 

「あ,あと帽子も貸してやるよ」

 

 そう言って結人は自分が持っていた帽子を蓮に被せる。そうすると幼さの中に少年らしさを感じてましろは更に悶える。ただでさえ可愛いのに更に可愛くしてどうするのだとましろは叫びたくなり

 

「蓮君……可愛いよぉ」

「倉田さん,心の声が出てるよ」

「あぅ……」

 

 航海に言われて照れてしまうが,仕方がないのだ。

 そうして蓮は変装をして,ましろも帽子を被り2人は事務所を出た。特に予定を決めている訳でもないが,2人は何ともなしに商店街にやって来た。

 

「あ,ミッシェルさんだ!」

 

 バレンタイン当日のせいか,商店街にはカップルもちらほらといる。そんな商店街の中でミッシェルが子供達になにやらミニチョコレートを配っている様である。

 

「蓮君並ぼう!」

「う,うん!」

 

 ましろのミッシェル愛の事は蓮も既に知っている為,大人しくましろと一緒に子供達の列に並んだ。一見すると子供達の列に高校生と大学生が混じるという絵面だが……驚くほどに溶け込んでいた。

 ミッシェル……の中身の奥沢美咲も勿論ましろと蓮の姿を確認して内心で叫んだ。

 

(何で貴方達が並んでるの?! ……倉田さんに付き合わされた感じだろうけど!)

 

 それはもう構わない。そう言った人もいるだろう。しかし問題はそれだけじゃなく,前までならましろが1人並ぶだけだったので良かったのだが今は2人,それもましろは蓮と恋人繋ぎをしている小さな子供には目に毒な状態なのだ。

 

(あーもう! 見てるこっちが恥ずかしくなるんだってば!)

 

 前のCiRCLEにいた美咲は2人のイチャイチャを見て眼をそむけた1人,こんなバイト日和に2人のイチャイチャを何故見なければならないのか。

 そうして美咲……もといミッシェルの前に2人が来た。こうなっては仕方がないのでお仕事ミッシェルモードを発動する。

 

「あ~! 君達また来てくれたんだ~! ありがとう! どうぞ~!」

「わぁ~! ありがとうミッシェルさん!」

「ありがとう!」

 

 しかしましろとてミッシェルが子供達のものと言う事は分かっているのか,少しミッシェルに触ると直ぐに子供達に順番を譲る。なんだかんだ言って幸せそうなましろを見れて美咲もハッピーだった。

 

(倉田さん,頑張れ)

 

 何を頑張るのかさっぱり分からないが,胸の中でエールを送っておいた。

 

「……?」

 

 それを受けたましろは不思議そうに背後を振り返るが,そこには子供達にお菓子を配っているミッシェルがいるだけだった。

 

「どうしたの?」

「ううん,何でもないよ。行こ,蓮君」

 

 その後も2人は様々な場所を巡り,中にはデュエット大会で2人は有名になった事もあってか何故か変装しているのに気づかれてサービスを受ける事もあった。

 2人からすればあのデュエット大会の時点ではカップルじゃなかったので少々気まずいのだが,それを知っているのはつぐみを含めたガールズバンドの面々だけなので素直にサービスを受けた。

 

「わぁっ! 凄いね蓮君!」

 

 山吹ベーカリーでは,バレンタイン限定のチョコレートを使ったミッシェルのパンが売られていてましろがうっとりとしたようにそれを見つめる。

 

「うん! とっても難しそうなのにどうやって作ったんだろう?」

 

 ミッシェルの形が完璧に仕上げられていて,蓮はその製造方法に疑問を出すが流石にお店の秘密なのか2人を案内していた紗綾は苦笑しながら答えた

 

「それは企業秘密で……」

「うぅ……ミッシェルさん」

 

 ミッシェルパンを物欲しそうに見つめるましろだが,直ぐに買うとは言えない事情もあった。

 実はましろのお財布事情は蓮と付き合い始めてから少し……ほんの少しだけきつくなってしまい前までは直ぐに買っていたはずのこのパンも,リーズナブルなのは分かっているが直ぐに買うと言えなくなってしまっていた。

 そんなましろのお財布事情を知ってる訳では無いが,蓮はとっても素敵な笑顔で紗綾に言った

 

「紗綾さんこのミッシェルのパン二つください!」

「はーい! ありがとうございます!」

 

 紗綾は慣れた手つきでミッシェルのパンを包むと,紙袋に入れて蓮に渡してお代を受け取った。そんな蓮の事を少し呆けたように見ているましろの様子が面白くて紗綾は微笑んだ。

 

(あれはどっちなんだろうって思ってる顔だね)

 

 この2つが……自分にも買ってくれたものなのかそれとも単純に二つ食べるのか判断がつかなくて困惑顔なのである。というのも,蓮自身がそれほど大食いではないと言う事もあって基本的に朝昼晩でしかご飯を食べないイメージがましろにはあったからだ。

 そうして2人が山吹ベーカリーから出ると,蓮は紙袋から先程のパンを取り出してましろに渡した

 

「はい! しろちゃん!」

「え……? 良いの?」

「もちろんだよ! しろちゃんと一緒に食べたい!」

「……! ありがとう……蓮君」

 

 ましろはミッシェルパンを受け取り,まじまじと見つめる。バレンタイン限定というだけあってチョコがふんだんに使われていて,それなのにミッシェルという原型は保たれていて不思議に思う。

 そうしてパンを受け取った後に,ましろはハッとしパンを片手に自分の鞄に手をかけた

 

「お金……」

「大丈夫だよ,しろちゃん。僕の奢りだから」

「で,でも……」

 

 蓮とは対等な関係でありたいと思っているましろは,それに少し納得できず言葉を濁す。

 

(私は……貰ってばかり)

 

 今,自分が首から下げているネックレスもあの函館で蓮に貰ってましろはそのお返しというものをまだ出来ていなかった。そうじゃないにしても蓮から貰ったものは沢山ありこんな小さなことでまた貰うのも気が引けているのだ。

 

「結人がこういうのは奢ってやれって教えてくれたんだ! だから気にしなくても大丈夫だよ」

 

 悪気がある訳じゃないのは分かっている。蓮はとても純粋に結人が言った事を実行しているだけなのだろう。しかし,ましろが感じている感情は蓮にはまだ感じられないのであった。

 そうして2人はパンを食べながら少しぶらつき,ずっと歩いていたのもあって2人は羽沢珈琲店へと落ち着いた。

 

「いらっしゃいませ! あ,七星さんにましろちゃん!」

 

 既に時刻は夕暮れだったからか,客もまばらになった所に現れた2人につぐみは全く疲れを感じさせない笑みで迎えた。2人は窓側の席に通され,それぞれ紅茶とオレンジジュースを頼み向かい合った。

 

「今日はちょっと歩き過ぎたね」

「うん。足がちょっと……」

 

 今日はほぼノンストップで歩いてデートしていたからか,椅子に座った瞬間に足が限界のように少しぱんぱんになっているのを見てましろは困った顔をする。

 最近ましろは蓮に見合う女性になる! という目標の為,美容や健康と言った事にも気を遣いだし,その中の1つにストレッチやヨガもあるので今日は入念にしようと心で決めた。

 

「あ,そう言えば今日ね皆とCiRCLEで何をするのか決めたんだ」

 

 つぐみがオレンジジュースと紅茶を置いて行ったのを見た後,蓮が思い出したように言ってきたのでましろはカップを手にしたまま不思議そうな顔をした。

 

「そうなんだ。蓮君達はなにをするの?」

「うん。古澤さんがどうせならライブをしようってまりなさんにもかけあってくれて,僕達はしろちゃん達の前にライブをする!」

 

 蓮達が所属するレーベル,アポロレコードの代表の古澤嘉寿樹。ましろが事務所で待ち合わせする際に会った事があり,蓮の事を少し話したのを覚えている。

 そんな古澤も今回のCiRCLEのイベントには乗り気なようで,もしかしたら事務所的にメジャーデビュー前だからNGになってしまうかもしれないと一末の不安を覚えていたましろにとって蓮達もライブするというのは朗報だった。

 

「しろちゃん達は屋台するんだよね……?」

「うん。私達は輪投げをするんだ。今度景品を皆で見せ合おうって約束してる」

 

 ましろ達ガールズバンド組は35人ライブに向けての練習も同時並行で行っているので結構忙しいというのが本音だが,それでもましろは蓮との時間を大切にしたかった。

 もう直ぐデビューする蓮に会う時間はきっと減ってしまう,だから今の内に蓮との時間を過ごしたいのである。

 

「しろちゃん……?」

「ううん,何でもない。CiRCLEのイベントとっても楽しみだね!」

「う,うん!」

 

 その後も2人は他愛のない話を繰り返していた。と言っても,2人の話は結局最後には音楽の話になってしまうのだがましろはそれが幸せだった。

 自分の好きになれたことを,自分の恋人と語り合える時間がどれほどの幸せなのかそれはましろにしか分からない。蓮も蓮で今までもあったましろと音楽を語る時間が,彼女と恋人になる前よりもずっと楽しく,幸福感に満ちているのを自覚している。

 既に日が暮れ,外が暗くなり始めつぐみが閉店を伝えるまで2人は語り合っていた。

 

「すっかり暗くなっちゃったね」

 

 羽沢珈琲店を出て,2人はましろの家まで向かっていた。……ましろは本当はどこかで蓮と泊まりたいというのが本音だったりするが,2人ともまだ未成年だし親に心配をかけて……もとい疑われるのは少し耐えれないので大人しく帰宅する事にした。

 ましろの帰宅に蓮が一緒という光景は既に珍しいものではなくなり,日常の一部と化していた。2人の手は当然のように握られ,まるで時がゆっくり流れるようにゆっくりと歩き……

 

「その……もう少し一緒にいたい」

「……っ! わ,私も!」

 

 こうして蓮がましろとの別れを惜しんで遠回りして変える事も珍しくはない。既に暗闇に包まれている多摩川へ2人は向かい,いつか2人で座ったあのベンチに座った。

 季節はまだ冬なので寒いが,蓮は函館でましろがくれたマフラーをましろと一緒にくるみ,自然2人はお互いの体温を感じる程近くに身体を寄せ合って暖を取っていた。

 

「しろちゃん……すごく暖かい」

 

 お互いの身体を寄せ合っている2人は,恋人というよりももはや熟年夫婦のようだが付き合い始めてまだ2カ月であることを忘れてはならない。

 

「えへへ……蓮君も,凄くあったかいね」

 

 もっと蓮の事を感じる為か,蓮に身体を預け彼の心臓の鼓動を聴くために耳を胸に付ける。そうすると蓮の鼓動が聞こえてきて,嬉しくてたまらなくて微笑む。

 

「今日……バレンタインだよね」

 

 不意に蓮が口を開いて,今日の事を聞いて来た。そう言った事に疎いと思っていた蓮から今日の事を言ってきた事にましろは驚いたように彼の顔を見上げると,蓮はとっても恥ずかしそうに目線をうろうろさせていた。

 

(こ……これじゃあ凄く期待してる……みたい)

 

 蓮が内心そう考えている間にもましろはへにゃりと顔を歪ませて,首をこてんと傾けてあの嗜虐的な笑みを浮かべる。

 

「ふふっ……蓮君,期待してた?」

 

 ましろは精神的な優位に立っている時は少々「ふふーん!」と余裕を持った態度になる事が多く,それは蓮に対してもっぱら行われていた。

 きっとデュエット大会の前ならましろとて恥ずかしくて顔を真っ赤にするしかなかっただろうが,蓮は既に自分の彼氏で……口約束も入れても良いのなら婚約者。失う心配が何もない為,蓮の可愛い反応を見たいが為にこういった態度になる事多い。

 

「う……うん」

(蓮君可愛いよぉ)

 

 今の蓮は眼鏡をかけているのも相まって童顔が加速していて,そんな蓮が頬を赤くしているのだ。可愛くない訳がない。蓮のこういった表情はきっとArgonavisや自分だけしか知らない。

 ステージの蓮はキリっとしていて可愛いというよりもカッコいいだからだ。そんな蓮の可愛い姿を独占したくて,ましろはそっと蓮の眼鏡を取った。

 

「しろちゃん……?」

 

 今日眼鏡をかけるように言ってきたましろが眼鏡を取った事に蓮は疑問を浮かべまくるが,次にましろが取り出したものを見てドキリとする。

 それは包装されたチョコレートで,ましろはとっておきのものを開けるように包装を解きチョコレートを露にした。ハートの形をしたチョコや,星の形をしたチョコなど2人を象徴する形をしたチョコレートがいくつもあった。その内の1つを取ると,ましろはそれを蓮の口元に持って言った

 

「はい,あーん」

「~~っ!!?」

 

 固まってしまった蓮をましろはとっても愛しむように見つめる。ドキドキと心臓の鼓動が止まらなくなり……それでもましろを困らせたくなくて蓮は──

 

「あ……あーん」

 

 小さく口を開き,ましろが持っていたチョコに近づくとましろはチョコを蓮の小さな口に入れた。とっても恥ずかしそうに蓮は咀嚼して一言……

 

「凄く……美味しくて……甘い」

 

 そう感想を言われ,ましろの胸はキュンと高鳴り顔を歪ませずにはいられなかった。そうして蓮に対してのネジが一本飛んだましろは,周囲が既に真っ暗で人通りも少ないことを確認した後言った。

 

「もっと甘くなる方法……知ってる?」

「も,もっと甘く……?」

 

 蓮の拒否権は無いのか,ましろはチョコを一つまみすると蓮の口にではなく,自分の口に入れた。

 

「しろちゃ……んっ?!」

 

 戸惑った声を出した蓮の言葉は続かなかった。

 

「ん……ちゅ……んっ」

 

 何故なら,自分のチョコレートを口に頬張ったましろが蓮の顔に手を添えて逃げられないようにして彼の唇へ口づけをしたからだ。最初は何か言おうとしていた蓮だったが……

 

「んっ……う」

 

 途中ましろの口元から溶け出していたチョコレートが蓮に口内に入ってきて,その甘美な感触とキスしてることによってどんどん頭が蕩け始め何を言おうとしたのかすら忘れてしまった。

 

「はぁ……あ……んっ」

 

 お互いの口の中でましろのチョコレートが行き来しあって,溶けきるまで2人は交わって……ようやく唇を離す頃には2人の口元はお互いの唾液で少しべちゃべちゃだった。

 

「しろ……ちゃん」

「蓮……君,もっと……したい」

 

 余りに急なましろの口撃に蓮のHPは既に0だった。だけど,そんな蓮の事をもっと独占したくてましろはまたチョコを頬張ると蓮の口内を蹂躙し始めた。

 

(蓮君は私の彼氏なんだから……良いよね♪)

 

 そういう体裁の元2人の影は暫くの間重なっていたのだった。

 

 

 ★

 

 

 ましろとの濃厚な時間を過ごし,幸せそうな蓮はそのまま下北沢のシェアハウスに帰って来た。

 

「ただいまーっ!」

 

 そんな蓮を迎えたのは当然Argonavisのメンバー

 

「おう,お帰りれ……ん?」

「お帰……り?」

「蓮君おかえ……」

「七星帰ったか」

 

 凛生だけは普通だったが,凛生とて蓮の変化には当然気が付いていた。なまめかしく光っている口元もそうだが,普段はましろが編んだマフラーをして隠れている首元が晒されていて……そこに濃いと言わざるを得ないキスマークが付いていたからだ。

 帰りの電車ではマフラーをしていたから気が付いていなかったのかもしれないが,家に戻ってきてマフラーを外したら露になったそれは蓮とましろの関係値をいやでも突き付けている様だった。

 

 その夜,蓮と沢山キスが出来てご満悦なましろのスマホに一件のLINEが来た

 

『蓮と外でキスするの禁止。破ったらしばらくデート禁止になるよ』

「ああぅ……」

 

 その事に絶望したましろは,これから濃いキスは絶対家の中かホテルでしようと決めたのだった。……濃くなければバレないと思って隠れてするようになるのは変わらなかった。




お疲れさまでした!
ましろ,キス禁止令。尚守らない模様。あと色々情緒壊れて外だろうが遠慮なくイチャイチャしてる。
ましろの攻めが止まらなくて作者的にお互いに激攻め出来るのだろうかと思ってしまっている。因みに日付的にましろの誕生日が近い…でもそうするとCiRCLEのイベントを後半に持っていけないので恐らくまた別の話にします。

では次回後編です!

恋人になった2人の関係性どんなのが良い?

  • 今まで通りましろから蓮に激攻め
  • 逆に蓮がましろに激攻め
  • 寧ろお互いがお互いに激攻め
  • というか全部やれ
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