というわけで後編です。本当は35人の絡みを書こうとしたけれど多すぎてやっぱ無理だったんでいつも通りです()。
蓮とましろのバレンタインデートが少し日が経ち,いよいよCiRCLE Thanks Party!! が近づいて来た。その間にも2人はCiRCLEのイベントの打ち合わせ……という名目で何度か会っていた。
そのくせ2人ともそれぞれのバンドで衰えることなく,寧ろ日々日々刺激しあってあの友希那から見てもましろの声は進化していると言わざるを得ない。
「それにしても……ラブラブだよねえ」
「へっ?!」
合同ライブに向けて打ち合わせを終えたましろと団欒をしていたRoseliaの今井リサが唐突にそう呟いて、ましろはビクッと反応しながら体を震わせた。
「ましろちゃんと蓮さんって傍から見ても相思相愛ってのが伝わってきて良いよね~!」
「そ……そうですか?」
今まで蓮と付き合えたと言う事が幸せ過ぎてそれが周りにどう見えているかなんて気にしなかったが,あのリサがラブラブと形容するほど自分達のお付き合いをしているのかと思ってしまった。
「うんうん。いいねえ青春って感じ。皆女子高だからそう言う話はないんだよね」
月の森女子学園は香澄達がいる花咲川女子学園,リサ達が通っている羽丘女子学園に比べお嬢様学校ではあるのでましろのような少女が少ない。女子高なのでリサ達も当然そうではあるのだが,その色々厳しい月の森で彼氏を作ったましろの方が珍しいのである。
「り……リサさんもその……彼氏が欲しいって思う事あるんですか?」
「うーん,あたしは今は良いかな。Roseliaに全力を出したいからさ。あ,ましろちゃんの事を言ってる訳じゃないからね?」
一瞬何のことか考えたが,リサの論では彼氏がいるましろはモニカに全力を出していないと捉えられると思った事かとなり首を振った。
「大丈夫です。でも……私も蓮君にも音楽にも本気でやりますから!」
前までには余り見せなかったどこか自信が溢れ出しているましろである。こういったましろの変化は他のバンドのメンバーも気が付いていてましろに負けられまいと練習により打ち込む動力源になっているのはましろだけが知らない。
「うん,35人ライブ……絶対に成功させようね!」
「はい!!」
「リサ,ここにいたのね」
ましろとリサが雑談をしていた所に現れたのは友希那である。
「友希那どうしたの?」
リサが時計を見ながら聞いた。今日この後レコーディングがあるからだが,その時間まではまだあるので呼びに来る用事が浮かばなかった。
そんな友希那はましろの方にも向き言った。
「今からArgonavisのリハーサルが始まるそうよ」
「え,それは見に行かないとね」
「……蓮君が来てる」
Argonavisの名前を聞いただけでましろは少し頬を紅くしそわそわし始める。数日前のデートで航海から外でキスを禁止にされてしまったからか,今日リハーサルをする事は聞いていたがいつCiRCLEに入るかまで聞いていなかったのでましろはそわそわしているのである。
「い,行きます!」
勿論蓮に会いたいというのもあるが,Argonavisのライブに参加するのは実はクリスマスの感謝ライブ以来というのもあり純粋に楽しみにしている。
そうしてましろはリサと友希那と共に会場に向かうと,蓮達はそれぞれ音響や位置の確認をしている所だった。会場に来たましろは見渡すだけで蓮を発見し手を振ろうとしたが,蓮が真剣な様子で他のメンバーとCiRCLEのスタッフと一緒に打ち合わせをしているのを見てそっと手を下げた。
(うぅ……我慢……我慢)
蓮を見てみると,数日前に刻んだましろのキスマークは綺麗に取れていて残念だと思う反面,内心安堵もしていた。
周りを見てみるとデュエット大会で彼らの演奏を聴いたこともある他のバンドのメンバーの一部も見に来ていた。よく考えたらプロデビュー前のバンドのリハーサルなんて早々みられるものでもないのでもしかしたら凄い機会なのかもしれないとましろは思った。
因みに他のモニカのメンバーは打ち合わせが終われば用事があるらしく帰ってしまって一人になったましろを見かねてリサが話しかけてきた感じである。
閑話休題
準備が終わったのか,スタッフたちは離れArgonavisのいつもの配置をする。その時蓮は初めてましろに気が付いたのか一瞬頬を緩ませたが,直ぐに真剣な顔と笑顔に変わった。
「よろしくお願いします!」
そうスタッフたちに言うと,結人達も自分達の楽器をかき鳴らし始めた。その音はましろが何度も身体に叩きつけた音だった。
「STARTING OVER!!」
Argonavisにとっても……ましろにとっても再起するきっかけになった曲,いつもならセトリの後半に持ってくることが多いこの曲をやってくれた事にましろは胸がぶわっと震えた。
(うぅ……私も……歌いたい)
この曲はTIMES CiRCLE以外に蓮とましろが歌える曲なのもあってましろはあの出来事の痕にも実は練習していたりする。
だから今すぐ合わせろと言われれば蓮となら合わせられる自信がある……しかし今回はArgonavisのワンマンなので我慢するしかない。絶対にこのイベントが終わったら一緒に歌おうと決意しながらましろはふと思った
(他にも……蓮君と歌える曲が欲しいな)
TIMES CiRCLEやSTARTING OVER!! も勿論好きでたまらないけれど,他にも蓮と2人で歌える曲が漠然と思ったのである。しかし,蓮がMorfonicaの楽曲をしている所は正直想像が出来ないので必然Argonavisの楽曲かカバー……或いは新曲か。
このイベントが終わったら蓮に言ってみてもいいかもしれない。……問題は
(古谷さん……許可とかいるのかな……?)
今やレーベル所属になった蓮と……作曲の力を借りるのならArgonavisの人にも協力してもらうことになるがそれはプロになる事的に許されるのだろうかと思った。
だけどそれは今は置いておこう。
(蓮君……とっても楽しそう)
度々ツインボーカルの結人と心底楽しそうに目線を合わせ微笑む彼氏の姿に胸がキュンとしまり,歌いたいという衝動が胸に広がっている。
蓮の歌はいつもそうで,落ち込んでいる時,楽しんでいる時,その全てを歌に乗せていて……それがましろの胸を震えさせる。
いつしか夢中になっていたArgonavisの演奏は終わりを告げていたのだった。
★
「しろちゃん!」
Argonavisのリハーサルが終わって,他のバンドの皆さんもそれぞれのやる事をする為に解散して少し寂しくなったラウンジに座って待っていたら蓮君の弾んだ声が聞こえた。
ステージの方から姿を現した蓮君は,さっきのステージの上と違ってほんわかな雰囲気を纏っていて何も知らなかったら同一人物かどうかも分からなかったかもしれない。
……私は当然わかるけれどね?
「蓮君,皆さんもお疲れさまです」
蓮君の後ろからやって来た皆さんにも言うと,結人さん達は爽やかな笑みで応えてくれた。
「倉田さんもお疲れさま。いよいよだね」
「はい……けれど,一度も全員で合わせられないのですっごく不安です……」
私達の35人ライブ……人数が多くなればなるほどリハーサルの日程が合わなくなってしまう。
友希那さん達Roseliaさんもレコーディングとかで合わせられるのは本番と前日だけ。ちゃんと私はついて行けるのかなって……不安。
「大丈夫だよしろちゃん! しろちゃんなら素敵な歌を歌えるよ!」
「……うぅ,そういう所……ずるいよ」
「??」
蓮君にそんな事を言われたら……応えるしかなくなるもん。
「ふふっ……頑張るね,蓮君」
「うん! 僕も盛り上げられるように頑張る!!」
「えへへ……楽しみにしてるね♪」
そう言って2人は笑いあったのだった。
★
そうして──月日はあっと言う間に流れとうとうCiRCLE Thanks Party!! の日が訪れた。それぞれのガールズバンドとArgonavisは朝早くから現場に入り,Argonavisの面々は自分達が使っている機材などのセッティングを終えましろ達Morfonicaも出店である輪投げのコーナーの準備を整えた。
「……」
ましろはつくしが持ってきてくれた置時計を見てどこかソワソワする。もう直ぐ開演と言う事もあるが,午後を過ぎて出店が終わるあたりにArgonavisのライブが始まる。
ライブの間に控室で着替えや,最後の確認をするというのは分かっているがどうしてもライブが楽しみだった。蓮と歌う事はデートでよくあるが,Argonavisのライブとして見るのは久しぶりなのである。
「ましろちゃん,楽しみなのは分かるけれどもう直ぐ始まっちゃうよ」
「えっ! もうこんな時間……」
12時に開演で残り1分程,ましろは深呼吸した後力強く頷き立ち上がった。
「そ……その……皆今日は頑張ろうね!!」
「おぉ……しろちゃんがそんな事言うなんて珍しいね」
七深が言うとましろは恥ずかしそうに頬を緩めたが,おずおずと言った。
「うん。自分でもそう思う。だけど……今日がすっごく楽しみだったんだ!」
今までのましろからは考えられない程はっきりとした言葉,それに一瞬驚いたように見るつくし達だったがその変化を指摘することなくましろに頷き返した。
「うん,頑張ろうねましろちゃん!」
そうしていると,入り口付近にいたまりなから連絡が入り開場すると言う事だった。
こうして,CiRCLE Thanks Party!! が幕を開けた!
★
蓮はその人物を見つけると,とっても嬉しそうに近づいた。
剣呑な雰囲気によく似合う赤のジャケットを着こんでいる旭那由多は,蓮の姿を見ると鬱陶しそうにこの場に連れて来た里塚賢太を睨んだ。
「那由多君!」
「里塚……てめえ」
「さて,俺は航海の所に行ってくる」
「待ちやがれ里塚!」
今日那由多は賢太に偶には違うライブハウスでも行かないか? と誘われて嫌々来た感じだったのにもかかわらず,このCiRCLEのお祭りのような雰囲気を見た時には引き返すべきだったと那由多は思ってしまった。
賢太はまるで忍者のようにスッと姿を消してこのCiRCLEの場でこの春からメジャーデビューが決まっている2バンドのボーカルが図らずとも揃った。
「那由多君来てくれたんだ! とっても嬉しいよ!」
純真無垢を素で行く蓮の笑顔は那由多からは絶対に見られない者であり,相容れない存在だと那由多も認めているが同時に叩き潰し買いがある……本人は認めないだろうが傍から見れば2人の関係はライバル関係のそれである。
「ッ,里塚に連れてこられただけだ。帰る!」
騙されたことに関してのストレスなのか彼本来の機嫌の悪さなのか蓮には判別出来ないが,まるで子犬のように寂しそうな顔をする。
「那由多君,僕達ライブするんだ! だから,ライブだけでも見て行ってよ!」
「……」
那由多が蓮のライブを見たのはあのデュエット大会が最後,それも……那由多にとってましろという異分子がいる状態のライブが最後だ。
お互いプロになったからか,前よりも簡単にライブの予定が決められず今日のCiRCLEの触れ込みももう直ぐメジャーデビューを果たすArgonavisがライブするというもので客寄せもしている。
……ぶっちゃけ既に2人にはそれなりに注目が集まっているが主に那由多の威圧感のせいで声がかけられていないだけである。
「……暇だったらな」
そう言って那由多は踵を返し,CiRCLEの中に消えて行ったのだった。それを見届けた蓮だったが,言葉ほど残念そうな感じは受けない。
帰るのだったらこのまま真っすぐ出て行ったはずだし,那由多は優しいと蓮は思っているからである。
「あ,僕達も準備をしないと……ッ!」
蓮は時計の針を見て控室へと向かった。
CiRCLEのイベントは今回2部に分かれていて,1部目はましろ達がやっているようにCiRCLEの中でそれぞれ屋台だったり,握手会や写真会などそれぞれのバンドの得意とするもので,例えばAfterglowなら出張カフェ,香澄たちのポピパなら出張パン屋などなど,それぞれ自分達のコネクションを全力で使った屋台をやっている。
ましろ達モニカは初めてでもやりやすいという理由で輪投げにしている。
「お待たせ!」
「来たか蓮」
蓮が控室に戻ると,航海はさっきまで兄でもある賢太と何か話していたのかため息をついていたが,大体みんないつも通りだった。
さっきまで皆ガールズバンドパーティーたちが行っていた屋台に遊びに行っていたのだが,時間が時間なので集まっていた。
「今日のライブ,頑張ろう!」
「いきなりどうした七星」
唐突に頑張ろうと言い出した蓮に凛生が不思議そうに聞くと,蓮は笑顔を忘れずに言った。
「ううん,何となく……でも,今日がすっごく楽しみだったんだ!」
勿論Argonavisにとって久しぶりのライブと言う事も勿論ある。だけれど,那由多が見てくれる。そして,このライブはCiRCLEのイベントを盛り上げてましろ達ガールズバンドパーティー達に熱を繋ぐためのライブでもある。
でもそれ以上に楽しみで仕方が無かったのは紛れもない蓮の本心だ。
「まあ,俺達がましろちゃん達の前座って言うのはちょっと思う所があるんだけどね」
万里が正直な気持ちを言うと,結人がふっと笑った後万里に振り返って言った。
「だったら俺達Argonavisが全部攫うくらいのライブをすればいいんだ」
「そう言う事,僕達は僕達の音楽をすればいいんだ」
このイベントの第2部はましろ達ガールズバンドパーティーによる35人ライブが目玉の一つとなっていて正直Argonavisはそのインパクトに負けていると言っても過言ではない。
Argonavisのライブはこの後も何度も行われるだろうし,それに比べれれば35人という今後あるのかすらも分からないメンバーでする合同楽曲は珍しいモノなのは間違いない。
そして今日のArgonavisの出番はガールズバンドパーティーのライブの準備を終えるまでの繋ぎ役,だけどもここにいる全員ただの繋ぎ役で終わろうなどと思っていない。
「そろそろ時間だぜ,蓮」
ステージ衣装に着替え,歌う準備万端の蓮に言うと蓮は頷いた。
「うん。行こう,皆!」
蓮達はそう言ってステージに移動を始めたのだった。
★
第1部でもある屋台組は全ての商品をソールドアウトさせ,前日の雨でズタズタになった看板も音楽でつながった仲間たちの協力により修復した。
それらを終えた少女達はそれぞれステージ衣装に着替えながら本番前の団欒をしていた。
「ましろちゃんこっち向いて」
「う,うん」
ましろもつくしにお化粧されながらこれからの事を考える。出来る事は全部した。チュチュが作った音源を何度も聞いて,何度も自分のパートを歌って身体になじませた。
だから大丈夫だと,自分を振り立たせるように深呼吸をする。
「あ,始まるみたいだよ!」
着替えながら香澄が控室のモニターへ目を向けながら言うと,控室にいた殆どの視線がモニターに移された。そこには円陣を組んでいるArgonavisの姿が見え,凛生が高校球児だったからかそのテンションで声をあげているのが見えた。
デュエット大会の時はましろもあの円陣に加わったが,今回は見送る側,そして受け取る側の人間だ。
モニターの中でメンバーがそれぞれの配置につくと,一気にライトが点火されてステージが明るくなりそれと同時に彼らを迎える大歓声がモニターの中にまで轟いた。
「わぁ……凄い」
ライブが始まる前から多くのサイリウムの光が眩いほどに光っていて,まるで彼らの航海の道しるべみたいとましろは思った。
『皆さんこんばんわ。Argonavisです』
真ん中に立つ蓮が自己紹介をすると歓声はより燃え上がる。その熱気を受けて蓮は嬉しそうにした後,マイクを両手で握ってMCを続けた。
『今日はこのCiRCLE Thanks Party!! に呼んでいただいて本当に楽しかったです!』
『CiRCLEは,俺達が上京してきて初めて練習を行ったライブハウスなんです』
蓮の言葉を航海が繋ぎ,それぞれCiRCLEでの行って来た練習の事,思い出を少し面白おかしく披露していく。もちろん初日にあったましろとの衝撃の再会は話として出る事は無かったけれど,彼らのMCを聞いているとましろの頭の中にも色々な思い出が蘇る。
初めてここで見たガールズバンドパーティーの……ポピパのライブ,それからバンドを組み色々あっても諦めずCiRCLEでのライブを目指してその目標を達成して……蓮に再会する事が出来た。
このCiRCLEが……色々なものを繋いで,誰かの証になった。
今日はその為の感謝のライブ
『このCiRCLEが僕達にとって繋いでくれた場所のように,そしてここが誰かの始まりの場所であれるように……新曲,スタートライン!』
「し,新曲?!」
余りに不意打ちの新曲にドキッとしたましろは声をあげると,画面の中の蓮がどこか憂いを帯びた表情で詞を紡ぎだした。
その曲はArgonavisがプロになると決めた覚悟の曲,5人のこれまでの苦労や悲しみ,辛かったことやぶつかり合った過去……それでも諦めずに挑み続け,ディスティニーロックフェスティバル,ライブロワイヤルフェスを得てそれからもスポンサーが打ち切られても,バラバラになりかけても何度も何度も奇跡を集める曲。
それぞれのソロパートも今までのArgonavisにはなかった曲調でましろは一瞬にして虜になってしまった。
『想いのカケラ集め 今も煌めく 星を目指そう』
演奏を終え,最初は曲に合わせて憂いを帯びた表情だった蓮はいつの間にか穏やかな表情を浮かべて……次の瞬間モニターがぶっ壊れるんじゃないかと思う程の大歓声が控室に響き渡った。
「す,すごい」
「……悪くない」
モニターに釘付けだったましろの隣でも蘭がふっと笑って蘭なりの最上級の誉め言葉を放つ。
「マジかー,あたしらのハードルもすっごい上がっちゃったね」
リサも以前デュエット大会の時に聴いた時よりもArgonavisの演奏技術が桁違いに上がっているのを感じていた。元々あの時点でプロにスカウトされるだけあって上手かったが,今日の彼らは1つどころじゃないレベルアップを果たしていた。
そしてこの大歓声が彼らの結果であり,まだ彼らの曲は1曲目でまだこれから熱が高まる。その熱を受け取る自分達は彼らに答えなければならないのだ。
「関係ないわ。私達は,私達の音楽をするだけよ」
「友希那……うん,そうだね」
しかしリサの心配を友希那が一言で解かしていると,画面の中の彼らはその大歓声を身体で受けて5人で微笑んだ後,蓮が続けた。
『皆さん! まだ……まだ終わらないですよね!』
蓮が会場に聞くと,それに答えるように歓声が上がる。
歓声を嬉しそうに受けた蓮は他のメンバーにも目配らせをすると全員が頷いた。
『VOICE』
Argonavisの持ち時間は30分だけだが,彼らの音楽は間違いなくこの会場にいる全ての人間に刻み込まれたことだろう。
ましろ達はそんな彼らの歓声が聞こえるところまで移動すると,その叩きつけるような歓声がましろの胸を震わせた。袖に来たましろを蓮は見つけると,そろそろ時間というのが分かったのか最後の曲にかかった。
「STARTING OVER!!」
リハーサルでも見せたArgonavisのSTARTING OVER,だけどもその衝撃はリハーサル以上のものに仕上がっていた。この日の為に各自がそれぞれ考えて来たであろうアレンジや心底楽しそうに歌う蓮の表情を見てましろの中で”歌いたい”という衝動が巻き起こる。
そして……演奏を終え蓮達はステージから降りてきてガールズバンドパーティーの面々を見た。流石に少し蓮は息を切らしていたがましろを見るとぱぁと顔を綻ばせた。
その姿を見たましろも心音を早くすると,真っ先に蓮に駆け寄った。
「れ,蓮君! とっても……凄かった! 私……まだドキドキしてるッ!」
嘘偽りのないましろの感想に後ろでは香澄や他のメンバーも同調する。その声を受けて蓮は嬉しそうに頷いた。
「うんっ! 僕達はやり切ったよ,だから……次はしろちゃん達が見せてよ!」
「……ッ! うん!」
蓮からのエールを受け取ったましろは,彼女にしてみれば珍しくそっと掌を見せると蓮もましろのしようとしている事が分かったのか自分の掌を出した。
パンっ!
2人はそうしてハイタッチしてステージ裏に,そして35人はステージに向かったのだった
★
CiRCLEのイベントが終了し,それぞれが片づけを終わらせた後CiRCLEでは打ち上げが行われていた。
と言っても,Argonavisの面々は多くの女子中高生と一緒にというのは世間体的にアウトな眼で見られるので丁重に辞退しArgonavisは近くのファミレスで打ち上げを行っていた。
「それじゃあ,イベント終了お疲れさま!」
「「乾杯ッ!」」
結人の音頭でメンバーはグラスを傾けてドリンクを飲んでいく。といっても,蓮はまだ未成年だしArgonavisの中で蓮が誕生日を迎えるまではお酒を飲まないと決めているので全員ただのジュースである。
「いやー,俺達のライブ大成功だったな!」
結人がとっても機嫌よく自分達のライブをそう評する。それを聞いた航海はオードブルを食しながらどこか呆れたように結人を見ていたが,結人の気持ちも分かるのかふっと笑った。
「反省点もあるけどね……でも,今の僕達が出来る事は全部したライブだったよ」
「うんうん。まあ俺達のかかればこんなもんよ」
「白石酔ってるのか?」
「ノンアルコールだよ?」
全員オレンジジュースやコーヒーといったものなので酔う訳がないのだが,ライブの興奮が冷めないのか饒舌に話す万里を酔っているのかと勘違いするのも無理はない。
そんな彼らを見て蓮は嬉しそうに微笑む。
「どうした蓮?」
「ううん,何でもないよ。けど……」
「けど?」
「すっごく楽しかった!」
嘘偽りのない蓮の言葉をまるで末弟を見るような眼でメンバーは優しく見て,同調するように頷いた。
今日のライブは本格的にプロになる前の広告の意味合いもあったけれど,Argonavisにとって挫折を越える為の一歩だった。あのスタートラインはその為に作った新曲であり,覚悟だったのだ。
そうしてArgonavisの団欒は和やかに進み,蓮もご飯を食べ終えたころ蓮のスマホにLINEが入った。
「あ,しろちゃん……」
ホーム画面で差出人がましろなのを見てとっても出たい衝動に駆られるが,今はArgonavisの時間だと自分に言い聞かせるがそんな困った様な顔をしている蓮を見て誰からメッセージが来たのか察した結人が言った。
「別にスマホ出しても良いぞ蓮」
「あ,ありがとう!」
この前ましろにはキス禁止令が出てしまったばかりだが,蓮はそんなこと知らないのでとっても嬉しそうにスマホでましろとやり取りをする。
ましろの方も打ち上げは皆楽しそうに行われているらしく,モニカの写真や他のパーティーの写真が送られてくる。
『しろちゃんの写真は?』
だけども,その写真にましろが映っていないのを見てついそんな事を言うとましろ側は何か恥ずかしかったのか少し時間が空いた後送られてきた。
香澄とましろ,そしてロックの3ショットである。ましろの事だから1人で映っている写真はないのかなと内心首を傾げて楽しそうだねと送る。
それにましろはミシュラビのスタンプで「うん!」と返すと,蓮も嬉しくなってArgonavisの様子も書いてみる。
万里と凛生はいつもの様に沢山食べてた事,航海は最近栄養学でも学んだのかちょっと細かい事も気にしている事,結人はそんなメンバー達に今日の事を面白可笑しく話している事。
「蓮楽しそうだな」
「うん! しろちゃん達がとっても楽しそうなんだ!」
そう言って蓮はましろとのやり取りをメンバーに見せると,同じく今打ち上げしているガールズバンドパーティーの面々の写真を見てArgonavisもふっと笑みを浮かべる。
こうしてMorfonica以外と関わったのは初めてだったが,準備の時間も合わせてそれぞれのバンドの事も聞けたし普段は出来ない体験が出来たという意味では本当に楽しかったと思う。
最初は香澄とかはArgonavisもCiRCLEで打ち上げしようと言っていたのだが,こういう写真を見ていると混ざってみたかったという気持ちも正直少しある。
そんな嬉々としてましろとのやり取りを見せていると,その蓮のスマホに通知が入り反射的に航海達が見ると当たり前の如くましろからで,蓮はスマホを航海達にスマホを向けているのに気が付いていないがその内容は
『今度2人で打ち上げ,したいな』
「「……」」
こう言うやり取りを普段2人はしていると一応知っている身だが,こう改めて見てみると何とも言えない気持ちになる。それを唯一感じていない凛生が蓮に通知の事を言うと,蓮はとっても恥ずかしそうに頬を紅くしながらましろに返事しようとするが,ここ最近の空いている日というのが何時なのか分からない蓮は思わず把握しているであろう航海を見ると,蓮が考えていることを察したのかはぁと1つため息をついた後に次の日曜なら仕事も何もないと教える。
「♪♪」
さっそく約束が出来たのか,蓮はとっても楽しそうにスマホを見ている。付き合い始めて喧嘩の1つもした事がない2人だが,日が経つごとにバカップルになりつつあるのは気のせいだろうかと航海は思ってしまったのだった。
そうしてArgonavisは打ち上げを終え,下北沢に戻ると各自の部屋で休み始めた。
「ここの部分,もっと出しても良かったかも……」
蓮は今日は一緒にいるぽんちゃんと一緒に今日のライブのアーカイブを見ていた。航海が言うように反省すべき点は確かにあって,それをこうして振り返るのが蓮にあった新たな変化の1つだった。
そうしてライブを振り返っていると,CiRCLEのホームページに流れて来たガールズバンドパーティーの35人ライブの様子も配信されていて,それを蓮がタップすると合わせたのが当日だけと信じられない程の完成度を誇っている「CiRCLE Thanks music!!」が流れる。
「……凄かったなぁ」
そして画面の中で常にましろが映っている訳でもなかったが,偶に映るどのましろも心底楽しそうに歌っていて見ている自分も歌いたくなる……そんな曲だった。
蓮がアーカイブを見ていると,不意に蓮のスマホが着信し驚いたぽんちゃんはスタッと立ち上がったけれど,蓮はそんなぽんちゃんの頭を撫でながら電話に出た。
相手は当然……
『蓮君,こんばんわ。今大丈夫かな……?」
「うん! 大丈夫だよ,しろちゃん」
ましろである。
『今日のArgonavisのライブ,とっても凄かったよ!』
「あ,ありがとう。しろちゃん達の35人ライブもとっても凄かった! 僕も……いつかLRフェスに出た皆と一緒にライブしてみたいって思ったんだ!」
『えっ?! LRフェスって……25人……?』
去年のLRフェスに出たのはArgonavis,GYROAXIA,Fantôme Iris,風神RISING!! ,そして……εepsilonΦの5バンド……だけども正直ましろはArgonavisとFantôme Irisと風神RISING!! は一緒にライブするイメージが出来なくはないが,GYROAXIAとεepsilonΦが一緒にしてくれる所は正直想像が出来なかった。
「うん! とっても難しいかもしれないけれど……しろちゃん達のを見てやりたいって思った!」
『……そっか。ふふっ,私達ので蓮君がそう言ってくれて……嬉しい』
今までは自分が背中を見て追ってきた身だからか、こうして自分達がした事で蓮にやって見せたいと思わせた事はましろにとって嬉しいことなのである。
『……蓮君』
「どうしたの……?」
いきなりましろの声色が少し恥ずかしげなものに変わったからか不思議そうに問いかけると、電話の向こうで恥ずかしそうにしながらも言った。
『……好きだよ』
「……ッ! ぼ、ぼくも」
いきなりの告白に蓮の頭の熱が高まるが、直ぐにそう言い返すとましろも嬉しそうに沈黙し始めた。
蓮の告白の返事を脳裏に浮かべて余韻に浸っているのである。
『今日のね──』
そうして余韻に浸る事を終えたましろは今日の事について話し始めた。
蓮も部屋の電気を消し、スタンドライトを付けるとぽんちゃんを抱えながらベッドに横になる。
同じ時間、ましろも同じようにベッドに横になりながら蓮に電話をしていて2人の長い電話は2人が寝落ちするまで行われていたのだった。
お疲れさまです!
久しぶりに1万字超えましたが、最後は思い出振り返りながら2人して寝落ちです。
君が見たステージへの事前予約が開始していよいよだなあと思いながら見てます。
ましろとストレイストレイドの絡みも書いてみたいしで割と楽しみです!
ではまた次回!次回は前ゴールラインの話あたりで書いたましろと那由多の話にしようと思います!
恋人になった2人の関係性どんなのが良い?
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今まで通りましろから蓮に激攻め
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逆に蓮がましろに激攻め
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寧ろお互いがお互いに激攻め
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というか全部やれ