蓮とましろが小さい頃に別れた幼馴染だったら   作:レオ2

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こんばんわ。第5話です(((o(*゚▽゚*)o)))。
昨日のグルミクの四コマ見てリリリリとモニカのクロス書こうかと思ったけれど美夢とましろのやり取り書こうとしたら挫折した筆者です。


初めての…

 月の森女子学園,創立100年を超える由緒正しい名門女子高校。在籍者にはお金持ちのお嬢様が多く,そうじゃなくとも何かしらのコンクールで賞を取るようないわゆる一流の生徒が多い。

 つまり,この学園に入学できただけでも”何も持っていない”人物は実はいない。立ち上るお日様の元でとても機嫌よく登校してきた倉田ましろも,その想像力と言葉選びによる天性とも言える作詞の才能はバンドのメンバー全員が認める所である。

 本人は何もないと思っているが,バンドのメンバーはそう思っていない。バンドの誰にも出来ない事が出来るのならばそれは唯一無二の個性であるからだ。

 

「~~♪」

 

 そんなましろにしては珍しく機嫌よく登校してきたのを見てたつくしは,昨夜のあの後蓮に会えたのだと察する事が出来て自分の事の様に嬉しかった。

 ましろのご機嫌はお昼の時も続いてたようで

 

「しろちゃん何だかご機嫌だね~」

 

 Morfonicaのメンバーは時間が合えばお昼の時間を共にする。今日も全員の予定があったので中庭で昼食を取っていると,ましろのご機嫌に気が付いた七深がいつものようにのほほんと言った。

 言われた本人であるましろは自分でも気が付いていなかったのか眼をぱちぱちさせた

 

「え,そうかな?」

「そうだって! シロがこんな嬉しそうな時って結構珍しいじゃん」

「め……珍しいってそんなに」

 

 嬉しそうな顔が珍しいと言われ微妙な気持ちになるが,透子も悪気がある訳じゃないので飲み込むことにした。

 

「何か良い事でもあったのかしら?」

 

 この昼食会にも最初はそれほど乗り気じゃなかった瑠唯がいるのも今では馴染みの光景であるが,もはや昼食会に参加しない事で透子にあれこれ言われるよりも効率が良いと言う事で今ではこうして予定が合えばちゃんと参加している。

 その瑠唯の隣にいるつくしが胸を張って「エッヘン!」とでも言いそうな感じで

 

「ふふーん!」

「なんでふーすけが誇らしくしてるんだよ」

「だって、ね! ましろちゃん昨日のあの後どうだったの?」

「え……?!」

 

 とっておきの話をするようにましろに話を振ると、ましろは頬を紅潮させる反応を見せた。

 

「え、シロマジで何か良いことでもあったのか?」

「えっと……それは」

 

 ましろは透子を直視出来なくなり、視線を行き場の無くなった両手をモジモジとする。けれどもそれで羞恥が無くなるかと言われたらそうでもなく寧ろ熱くなってしまう。

 

「なんだよ教えろよシロ〜」

「私もシロちゃんがご機嫌な理由知りたいな〜」

 

 そう言って透子と七深が内緒話でもするかという距離を詰めてくる。

 ましろは「言わないとダメ?」って視線をつくしに送るが、つくしはそれに気が付かず胸を張ったままである。それだけなら良かったのだが、とどめを刺した

 

「だって蓮さんに会えたんだよね?」

「つ,つくしちゃん」

 

 ましろが慌てるが,つくしはそんな乙女チックに狼狽えているましろを可愛いと思ってしまった。外野は外野でその名前に驚いて透子はましろに聞いた

 

「蓮……ってArgonavisの?! どうやって会ったんだよ?」

「そ……それは」

 

 ましろの白い肌が徐々に紅くなっていき,恥ずかしさが今更ながらに溢れてくる。あれこれ思考した結果頭が追い付かなくなり,終いにはフリーズしてしまう始末。

 それを見たつくしはしょうがないなぁと言いたげに透子たちに話した

 

「昨日ましろちゃんと私で色んなライブハウス回って聞き込みしたんだ」

 

 LRフェスの事,その出場の為に函館から着てるであろうArgonavisをライブハウスで探し回り昨日CiRCLEで見つけた事。でも自分は妹達がぐずりだしたから先に帰ってその後の事は聞いていない事。

 だから昨日のあの後の事を聞きたいのだけども

 

「き……昨日はお家まで送ってくれただけだよぉ」

「じゃあどんな話したの?」

 

 恥ずかしさと嬉しさで肌を紅くしながらも,それでも幸せそうにしているましろを見て透子は興味津々で聞き入る。

 

「それは……歌の話とか」

「「あー」」

 

 2人にはバンドのボーカルという共通点と言うのがある。だから久しぶりに会う幼馴染との会話がそれになってしまうのは仕方がないのかもしれない。

 しかし! 

 

「久しぶりに会って歌の話かよ!」

「まあ,ましろちゃんと言えばらしいけど」

 

 この2人は青春的な恋バナを期待していたのだが,ましろと蓮はずっとお互いのバンドと歌の事で盛り上がり実際はお互い引っ越した後の事はそれほど話さなかった。それが何ともむずがゆく,つくしはついここが学校であることも忘れていった

 

「じゃあデートの約束は?! 連絡先位交換したんでしょ?」

 

 ここで連絡先を交換していないと言う事は,また蓮に会うのが困難になってしまうと言う事。だからつくしとて連絡先の交換くらいはしていると踏んでこの質問をしたのだが

 

 

「……あ」

 

 

 心ここにあらずと言った様子で,ましろは呆然と呟いた。それにより何だかましろ周りの空気が冷え始めた気がする。普通は悪寒とかによって気持ち寒くなる事があるが,ましろのそれは悪寒とかではなく……”やってしまった”に対する絶望に近い気がする。

 そしてそれはつくしたちにも伝わり

 

「もしかして……連絡先交換してない?」

 

 さっきまでは恥ずかしさと嬉しさで紅潮していた肌が,心なしかどんどん青くなり始めた。

 

「ましろちゃん……うそでしょ?」

「ど……どうしようつくしちゃん!!」

 

 昨日は蓮に会えた嬉しさで彼との会話に夢中になる余り連絡先を交換すると言う,今時の女子高生が簡単にすることをましろは忘れていたのである。

 蓮が函館にいた時に比べれば断然マシな状況だが,それでも連絡先を聞くの忘れると言うのは痛恨のミスでましろは再びネガティブキャンペーンが始まってしまったのだった。

 

 [newpage]

 

 しろちゃんと久しぶりに会って,バンドのをことを沢山話して何だかとてもスッキリした気持ちの中でとうとう僕達のスターティングライブの日がやって来た。

 音楽は優劣をつけるものじゃない,その気持ちはまだ変わっていないけれど僕は今凄く歌いたかった。

 εepsilonΦは昨日のスターティングライブを欠場してしまったけれど,風神RISING!! もFhantom irisもとても凄いパフォーマンスだった。

 彼らの音楽を聴いているだけで,僕もあのステージで歌いたい……早く歌いたくて仕方がなかった。

 溢れ出る歓声,高まり続ける熱気,スターティングライブ2日目のGYROAXIAがステージに上がる時には既に最高潮に高まっていた。

 

「MANIFEST」

 

 MCもなく始まる力強い圧倒的なパフォーマンス,ステージに広がっていた爆発寸前だったエネルギーが……那由多君の歌で爆発していた。

 昨日の2バンドと同じ持ち時間,その筈なのにGYROAXIAのパフォーマンスはそんなのも受け付けない圧倒的で凄まじい演奏だった。

 

「あいつら……北海道にいた時よりももっと」

「流石だよね……音の力だけでお客さんを引っ張っている」

「……フェスにでるなら,あいつらとも戦う事になるな」

「あれに勝てるかと言われたら……いや何でもない」

 

 舞台袖で見ている結人からこぼれる言葉,那由多君達は北海道にいた頃よりも凄くなっていた。

 

(勝つとか,負けるとかやっぱり僕にはまだ分からない。だけど……GYROAXIAや他のバンドを見ていると何だか余り知らない気持ちが湧いてくる)

 

 僕の胸に何かが灯った,その何かは今は分からない。だけれど……歌いたい。那由多君達に負けない位この会場を盛り上げたい。那由多君と同じこのステージで! 

 

 [newpage]

 

 スターティングライブはLRフェスの前哨戦なのに,私達が今まで参加したどのライブよりも熱気に包まれていた。

 きっと今が真夏だったらもっと暑かったと思う。

 

「こんにちは,Argonavisです」

 

 ステージに上がった蓮君を見ると,また前の様に胸がキュンと弾けて嬉しくて踊ってる。

 

「聞いてください。ここから始まる航海の歌」

 

 さっきのGYROAXIAが目当てのお客さんがとても多くてアウェイ感が強かったけれど,蓮君達はその向かい風さえ力に変えて演奏を始めた。

 胸に響く歌詞。思わずリズムが乗ってしまいそうな演奏……そしてその2つを力強くまとめる蓮君の歌。

 

「凄い……」

 

 GYROAXIAはプロでさえ注目しているバンド,そのアウェイのステージの中ですごくのびのびと,楽しそうに歌っている。まるで私達の上をぷかぷか遊覧してるみたいに。

 最後の曲が終わって,蓮君が息を整えて

 

「Argonavisでした! ありがとうございます!」

 

 歓声があげられて,彼らはバックステージに引っ込んでいく。今日はこの2バンドだけ演奏だから他のお客さん達は係員の誘導に従って出口に歩き始めた。私はその波から抜け出そうとしたけれど人の流れの方が早くて結局フェス会場出口まで流されてしまった。

 

「どうしよう……」

 

 普通なら帰るべきなんだろうけど……蓮君にも会いたいし。でも部外者の私が勝手には入れる訳がないし……取り合えず待ってみようかな。

 人の流れから抜け出して私は舞台袖がある方に向かった。バックヤードとか入れはしないと思うけれど,近くに行くだけならきっと大丈夫……だよね? 

 

「はぁ……」

 

 つくしちゃんから連絡先交換の事を聞いた時,頭が真っ白になった。約束を取り付けたことに浮かれて連絡先を交換していないなんて……。その事で2,3日は落ち込んだけれど今日の事を思い出して何とか学校を乗り切った。

 

「お疲れ様でした~!」

 

 そんな時,バックヤードの所からそんな挨拶の声が聞こえて見てみたらGYROAXIAの人達が出てきた所だった。彼らは各々ライブの感想や反省点を話しながら私の前を通って行った。

 長身の金髪の人が何故か私にウインクしてきたけれど,あれはなんだったんだろう……? 

 でも,GYROAXIAの人があそこから出て来たって事は……

 

「ありがとうございました!」

 

 バックヤードからまた声が聞こえ,その方角を見ているとArgonavisのギターの人と次にベースの人,ドラムの人にキーボードの人が出てきた

 

「蓮,行くよ」

「うん,今行くよ」

 

 ベースの人が中に声をかけると,それに答えて出てくるボーカルの蓮君。蓮君達はさっきのGYROAXIAの人達の様にどこか怖い雰囲気じゃなくてとても暖かい雰囲気で,一緒にいるととてもポカポカしてくる。

 そのポカポカをもっと感じたくて,私は蓮君達に近づいた。

 

「蓮君!」

 

 私に気が付いた蓮君が顔をパーッと明るくして近づいてくる。蓮君にもとって私は会う事が出来て嬉しいんだって分かると,私ももっと嬉しくなる

 

「しろちゃん,見に来てくれたんだ!」

「う,うん!」

「お,蓮の幼馴染か」

 

 ギターの人が気が付いてArgonavisの人達もこっちに来る。……よく考えたら私この前会った時挨拶もしてなかった事を思い出して慌てて自己紹介した

 

「えっと……倉田ましろです。その……この前は挨拶しなくてごめんなさい」

 

 あの時は蓮君に会えた嬉しさで他の人達が視界からいなくなちゃってて……でも蓮君が私を送るようにしてくれたりで色々してくれたのに何もお礼をしてなかったことに今更ながら罪悪感が出てくる。

 でもArgonavisの皆さんはそんな罪悪感も吹き飛ばすような爽やかな笑みを浮かべてた

 

「そんな事気にしなくて良いんだぜ。俺は五稜結人,このArgonavisのギターとリーダーをやってんだ」

 

 結人さん……とっても大きい帽子を被ってこれが大学生なんだって体現したような人。

 

「ユウの言う通りだよ。僕達はそんな事気にしてない。僕は的場航海,ベースをやってるよ」

 

 そう言ってくれたのは短髪の赤髪の人は航海さん,GYROAXIAにも凄く似ている人がいた気がするけれどあの人よりも雰囲気はとても柔らかく話しやすい人だなって思った。

 

「そうそう,そんな心狭い人間はここにいないよ。あ,俺は白石万里ね。ドラムをやってるんだ。ほら凛生君も自己紹介しなよ」

 

 最初は何だかきのこみたいな頭だと思ってしてまっていた人が万里さん。……あとで謝っておこう。

 

「桔梗凛生だ。キーボードをやってる」

 

 凛生さん,何だかとっても頼りになりそうなお兄さんみたいな感じの人……。この4人が今の蓮君のお友達……。私と蓮君が離れてしまう時は私も蓮君もお友達はお互いしかいなかったのに,今では2人ともかけがえのない友人達がいる。

 

(成長……してるのかな)

 

 人間的な成長,それを私達は感じてるのかもしれない。変われてると良いな,何もなかった私がモニカの皆のおかげで輝く景色を見れるように。

 このままじゃ沈黙してしまう気がしたから,心から溢れる感想を言葉にする

 

「その……今日のライブ凄かったです。何だか身体がふわふわして……まるで果てしない空を船に乗って泳いでるみたいでした」

「船に乗って泳いでる……面白い表現するんだな」

「あぅ……ご,ごめんなさい」

「いや良いんだ。それが倉田さんの個性なんだからな」

 

 そう言ってにかッと笑う結人さん,他にも微笑むArgonavisの皆さん。蓮君がこのバンドにいる理由が少しわかった気がする。

 暖かいんだ,結人さんを中心としたこの空気が蓮君の力の源になってる気がする。

 

「ありがとうございます」

「蓮,お前は倉田さんを家に送ってってやれよ」

 

 ……え? 結人さんが蓮君にそう言って私はまた心臓がビクンと震えてしまった。慌てて結人さんに視線を送ると結人さんは私に向けてお茶目にウインクしてきた

 

(も,もしかしてバレてる??!)

 

 私が蓮君を……少なからず想ってる事。私……そんなに分かりやすいのかなと少し落ち込むけど,それよりも蓮君が送って行ってくれることの方がとても嬉しかった。……私,もしかして凄くちょろい? 

 

「え? 今日僕も料理当番だけど……?」

 

 あ,そっか。蓮君達はシェアハウスに住んでいるから家事は当番制なのかな? 蓮君のご飯……食べてみたいかも。

 

「もう直ぐ暗くなるからな。女子高生1人家に帰すわけには行かないだろ?」

「心配するな七星,今日は俺が代わりにやっておく」

 

 ああう……

 どう考えても皆さん私と蓮君を2人きりにしようとしていてくれて逆に何だか恥ずかしいよぉ。

 結局私と蓮君は再び帰り道を一緒に歩くことになって,また2人きりになれた。

 

 [newpage]

 

 大学生と女子高生が歩いてると言う絵は,人にもよるが凄く絵になるというのが世の常である。LRフェス,スターティングライブ会場から最寄りの駅まで並んで歩いているこの2人も例外ではなかった。

 仲睦まじく,離れていた時間を取り戻すように2人は会話を弾ませる。

 

「蓮君の歌……とっても凄かったよ!」

「ありがとう,嬉しいよしろちゃん」

 

 MorfonicaやArgonavisのような普段の2人を知っている面子からすれば意外なことだが,2人は基本的に人見知りの部類である。ましろは才能あふれる同級生に気圧され,自信を失っていた時もあるが今は普通の自分でもなにか特別な物を見つけるためにバンド活動をしている。しかし根本的な事はまだゆっくりと変化している部分でありこのように年上に,それもぴょんぴょんと跳ねそうな感じでいるのはつくし達からすればとっても意外である。

 蓮に関しても,過去にあった合唱部の一件で人見知りになってしまい歌う事が友達みたいな所があったがましろとはArgonavisのメンバーと同じか,それ以上に距離が近い。どちらかが少しでもバランスが崩れてしまったらましろの顔が蓮の肩に触れ合ってしまいそうになる。

 昔よりも大人になった蓮に,ましろは昔とは違う感情があるのに気が付いて……それを少しでも誤魔化す為に話題を振った

 

「蓮君,凄く大きくなったよね」

「え,そうかな?」

 

 ましろの身近にいる最も背丈が大きいのは八潮瑠唯で,彼女と蓮の身長差はそれほどないんじゃないかと思ったがやっぱり連の方が少し背丈は大きい気がする。

 

「うん。昔よりも……大きく感じるな」

 

 そう言って函館を離れた後の事を思い出したのか,少し表情を曇らせるが不意に隣の蓮の手が視界に入ってきたのを見て隣を見る

 

「蓮君?」

「小さい時みたいに手を繋ごう? しろちゃん」

「……~~っ?!」

 

 ましろは一瞬何を言われたのか分からなかったが,蓮の言った事を認識した瞬間再び肌が紅くなり体温も心なしか高くなった。

 確かに,昔に蓮の後ろをついて回っていた時は手を繋ぐ時もあった。いつの間にかそうしていることが多かったからというのが一番の理由だったが,異性と手を繋ぐと言うのは世間的にどういう時かというのをましろが考える年齢になったからこその体温の高まり。

 

「れ……蓮君。私もう高校生だよ……?」

 

 だから,言葉では抵抗してみる。恥ずかしそうに眼を逸らしたましろを見ればよほどの鈍感ではない限り意識しているというのバレバレではあるのだが……

 

「……? 可笑しいかな……?」

 

 不思議そうに自分の掌を見る蓮,確かにArgonavisの面子と手を繋ぐことはないが繋いでも良いのなら蓮は恐らく遠慮もせずに手を繋ぐ。それが友達であると蓮は思っているから。それに昔はましろと手を繋いでいたから何も変じゃないと思っている。

 ましろは蓮の鈍感さにようやく気が付いたのか,更に頬を紅くして弱々しく抵抗した

 

「そういうところ……ずるい」

 

 意識しているのは自分だけ,でもそうやって無意識に自分の心を揺さぶって来るのが七星蓮という人間なのだ。

 

(手を繋いだら……少しは意識してくれるかな)

 

 だからそうやって手を繋ぐ理由を作り,ましろは蓮が引っ込もうとしていた手をそっと繋いだ。

 ──ドクンッ

 そんな心臓の音が確かに聞こえた気がする。ましろは肌だけではなく耳まで紅くなり傍から見ればゆでだこの様になっていた。

 

「蓮君の手……ちょっと冷たいかも」

「え? そうかな?」

 

 そう言いながら蓮は余った左手を自分のおでこに当て体温を測ろうとするが,自分ではよく分からなかった。不思議そうに自分の体温を測る蓮が可愛くてましろは微笑む

 

「ふふ,でも……蓮君の心は温かいよ」

 

 ──あの時からずっと

 

 函館にいた時,幼稚園にいても友達が出来なかった自分に声をかけてくれた年上のお兄さんとでも言うべき存在は,今やましろにとって長年の心の支えで今もその温もりはこうして左手の先に感じる。寧ろ,今チャージしてると言った方が良いのかもしれない。

 

「……??」

 

 蓮は何を言っているのかいまいち掴めていなかったが,ましろがご機嫌なので良しとした。

 2人はその後,最寄りの駅から電車に乗り込み揺られる。人がひっきりなしに入ってきて2人は自然距離を詰める事になる。というか手を離してしまえば蓮の属性”迷子”が発動しあっと言う間に離れてしまう事にな

 

「あ,しろちゃんごめん。ちょっと詰めるね」

「う,うん」

 

 もう少しで最寄りだが,人の勢いは止まることなく蓮は,出入り口のドアを背にしているましろにそういって更に少し詰める。距離が近づくと言う事は

 

(あ,蓮君の匂い……凄くいい匂いがする)

 

 蓮から発せられる香りも感じる事になる。

 現在Argonavis は共同生活を送っているので当然シャンプーなどは皆同じものを使っている。しかし,ましろが感じた蓮から漂う香りはどこか特別に感じてしまった。

 しかし,香りを感じてそんな事を考える何てそれでは……

 

(わ,私がいけない子みたいになってる)

 

 人の香りを感じて紅くなってしまうなんてそれではまるで変態ではないかと思い直したましろは,落ち着こうと深呼吸をする。……でも深呼吸をしたから余計に蓮から発せられる何かいい匂いがましろの鼻孔を刺激した。

 

(~~っ!!)

 

 満員電車だから,他の人の汗のにおいとかも混じっても良い筈なのに,蓮のにおいだけはどうしてか分かってしまう。

 

(む……昔は一緒に寝た事だってあるから大丈夫……だよね)

 

 一体全体何が大丈夫なのか分からないが,昔も同じことをしていたと自分に言い聞かせて平常心を保つ。そう,今では某バンドのボーカルにもよく抱きつかれるのだ。昔の幼馴染がほぼ無意識に体を預けてくるのなんて大丈夫なは……

 

「わわっ?!」

「……??!」

 

 電車が急に揺れて蓮がましろに抱きつくような形に倒れてきて,ましろの顔が熟れたトマトの様に紅くなる。「ぷしゅー」と効果音が付きそうな感じで

 

「ごめんしろちゃん,大丈夫?」

 

 蓮は慌てて身体を離すと,ましろは首を縦にぶんぶんと振り慌てて言った

 

「う,うん! 大丈夫……だよ。あ,次だよ蓮君」

 

 そう気丈に言っていると,ましろの最寄り駅に到着した。身体に立ち上る熱を少しでも逃がしたくて蓮の手を引きながら電車を出た。

 

「しろちゃんどうしたの?」

 

 その普段は見せなかった強引さに蓮は戸惑うが,一番戸惑っていたのはましろである。

 

「な,なんでもないよ? 蓮君行こ?」

 

 そう言って2人はまた歩き始めるが,少し微妙な空気になる。

 蓮は蓮でましろが少し強引になった理由が分かっていないからだし,ましろはさきほどからの蓮のメンタルアタックに精神がやられているから電車に乗る前に比べたら言葉数が少なくなる。

 そうこうしている時に2人はましろの家まで辿りついた。

 

(どうしよう……ついちゃった。まだ……一緒にいたいのに)

 

 そう思って蓮を見ると,蓮もましろの事を見ていてつい目線を逸らした。お互いに。

 そんな時思い出したように蓮が気を取り直すように言った

 

「そ,そうだ。しろちゃん」

「……?」

「連絡先交換しようよ」

「……」

 

 自分が学校行っている間気にしていた事を,別に察してもいないだろうに言ってきてくれる。あの時初めて話しかけてくれた時の様に

 

「蓮君は変わってないね」

 

 それがましろには嬉しかった。背丈や歌に対する情熱はあの時以上に高まっているいるけれど,七星蓮という人間の温かさはこれっぽちも変わっていない。

 ちゃんと,自分が知っている七星蓮なんだと。

 

「??」

 

 ましろの言葉の意味が分からなかった蓮は眼を白黒させて疑問符を出しまくるが,その様子がとても大学生に見えなくてつい微笑んでしまう。

 

(蓮君,かわいい)

 

 可愛いものに目が無いましろ,自室には蓮がくれたぬいぐるみを含めても結構な数のぬいぐるみが揃っている。そんな普段から可愛いものに囲まれているましろから見てもこのようにおどおどしている蓮は可愛く見えた。

 

「うん,交換しよ!」

 

 そんな蓮をもっと見ていたいから,ましろの携帯にまた一つ連絡先が増えたのだった

 

 [newpage]

 

『初めてのチャット』

 

 ルンルン気分で部屋に戻って来たましろ,火照った体のまま制服から私服に着替えてさっそく先程登録した蓮とのチャットをしようとスマホを手に取る。しかし,そこで気が付いてしまった

 

「最初って何送ればいいんだろう?」

 

 モニカ結成時にメンバーと交換した時は,透子が率先して色々会話を繰り広げてたから自分から初めてチャットを送った事がそれほどない。

 でも何事も最初は大切,ここで何か変な事を言おうものならこれからの付き合いも変になってしまうかもしれない。

 色々考えた末,最初は当たり障りない話から始めようと思ったが吉日さっそくフリック入力しようと心臓の音を高鳴らせながら動かそうとし……

 

「ましろちゃーんご飯よ~」

「きゃあああ!!」

 

 いきなり部屋に入って来たましろ母に驚いて,持っていたスマホを背後に隠しながら振り返った。そこには「あらあら」とでも言いそうなましろ母が手を顎に添えていた。

 

「ましろちゃんどうしたの?」

「な,何でもないよ。ご,ご飯だよね。直ぐに降りるよ」

 

 ましろは母がこちらに来てもばれないように背後のスマホをあれこれ弄るが,見えていない事と何故か近づいてくる母親に焦ってどんな操作をしたのかすら忘れた。

 

「なにか隠してる?」

「何でもないってば!」

 

 少し強めに言うが,ましろの顔は既に真っ赤だし,冷汗も沢山出ている。そんなましろを見れば大体の事は察してしまうのが母親というもの。

 実はましろ母はましろが蓮に会った事はつくし経由で知っているので何となく察して掴みどころのない笑みを浮かべて踵を返した。

 

「は~い♪」

 

 お茶目にウインクしながらましろ母はましろの部屋から出て行った。母の足音がリビングまで行った事を確認したましろは,大きく深呼吸した後にベッドに仰向けにダイブする。

 

「び,びっくりした。お母さんノック位してよ……」

 

 普段からノックをしていないと言う訳では無い。ましろが部屋に引きこもってしまった時とかはノックするが,今はそこまでじゃないからこそノックをしなかったのだろう。

 それはそれとして,母に晩御飯にお呼ばれしたので蓮への初メッセージは後にしようかと思いながらスマホを見ると……

 

「……えっ?!」

 

 何故かまだ1文も刻まれていない筈のメッセージアプリの画面の右端から大きく吹き出しが出ていて内容は「ああうもはえなえあつえわヴぁんひお……etc」とかいう意味の分からない文が投下されていて,ましろの頭は真っ白になった

 

「え,どうして……?」

 

 そこで思い出すのがさっきの出来事,そもそもスマホの画面をホームに戻そうとして指をフリックさせたり色々弄った覚えはあるが……そもそも焦りに焦ってどんな操作をしたのかすら忘れた。

 その結果,謎の文章が投下された訳である。

 さっきまでは真っ赤だったのにも関わらず,今度は真っ青になったましろは既読がついていない今の内にメッセージを消そうと慌てて画面を触れようとした時! 

 

「……あッ!」

 

 軽く絶望した声が部屋に響いた。

 ましろがメッセージを消そうとした直後,自分がこのメッセージを送った時間が示されている所の上の部分に”既読”という二文字がついてしまったからである。

 

 はてさて,この先どうなりますことやら




お疲れさまです。
ましろ、意外にも積極…的?
蓮って実際好意に気がついたら凄そうだけど気付くまでが大変そう。
(*´∇`)ノ ではでは~

恋人になった2人の関係性どんなのが良い?

  • 今まで通りましろから蓮に激攻め
  • 逆に蓮がましろに激攻め
  • 寧ろお互いがお互いに激攻め
  • というか全部やれ
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