~アストラル・ライフ~『~天に召される瞬間、ガイコツ少女に異世界召喚されました~』   作:LUCIOLE

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第十五話 『パスタ』

 

 「子供達を返せ!」

 

 

 

 馬車を追う狼の1頭が咆える。その他にも4頭の狼が馬車を追っていた。

 

 

 

 「くそ、もう追い付いて来るとは」

 

 

 

 馬車の中でリーダーらしき男が呻いている。その馬車の中には3人の子供が横たわり、ピクリとも動かない。

 

 

 

 もっとスピードを出せと御者の男に怒鳴るが、振り切れずにいる。

 

 

 

 馬車にはもう1人乗っていて、後ろから狼に対してボウガンを撃っていた。

 

 

 

 

 

             ☆

 

 

 

 

 

 「あの馬車の中に誘拐されたワーウルフ達の子供が居るみたい」

 

 

 

 サーチアイ。鳥型の闇精霊と感覚を同調させ見聞きした事をヴェルナも見れる魔法だ。因みに形は術者の好みらしい。

 

 

 

 「人攫い!?助けないと」

 

 

 

 ホロロがわたわたと慌てる。

 

 

 

 「どうするの?」

 

 

 

 エリアが聞いた。このパーティのリーダーはヴェルナなのだ。

 

 

 

 「どうするって、もう行っちゃったのがいるしねぇ~」と前を指差した。

 

 

 

 人攫いと聞いた瞬間、アセリアと虎に変身したティナがヴェルナの判断も聞かずに飛び出していた。

 

 

 

 「了解、馬車を横に付けるね」

 

 

 

 エリアも手綱を振って馬車を加速させた。

 

 

 

 ヴェルナは闇の精霊を使って相手の御者の視界を隠して馬車を止める事にした。

 

 

 

 後ろから近付き「止まりなさい!」と静止を促すアセリアにボウガンを向ける男。だがその瞬間にアセリアの背中から飛び出したティナが男に襲い掛かる。ボウガンを自分に向ける男に巨大な釘の様な鉄の棒を投げ付けた。

 

 

 

 2本投げた内の1本がボウガンを握る手の甲に、もう1本が男の顔に当たった。

 

 

 

 痛がる男に蹴りをお見舞いして、ティナが馬車に飛び移ると剣をまっすぐ突き出した男が目の前に居た。

 

 

 

 1回、2回と躱したが3回目の突きは無理そうだったので馬車の外へと飛び出した。その飛び出したティナをアセリアが受け止める。

 

 

 

 「どうせなら私が殿方にこうされたいのですが」と言うと「いや、ケンタウロスをお姫様だっこって、普通無理でしょ?」と軽口を叩くティナを、ふん!と横を向いて後ろに放り出してアセリアは速度を上げた。

 

 

 

 馬車の横に並ぶとランスで馬を繋ぐロープを攻撃するアセリア。それを阻止しようと男が前に出るが、闇の精霊が男の視界を遮った。

 

 

 

 アセリアやワーウルフ達の攻撃に速度が落ちた所にティナが飛び掛り、馬車の中に潜り込む。

 

 

 

 丁度意識を取り戻したボウガンを持った男を踏み付けてもう一度気絶させ、闇の精霊に纏わり付かれてる男の後頭部を殴って気絶させた。最後は御者の男を外に蹴り飛ばし手綱を取って馬車を止めた。

 

 

 

 誘拐犯3人をロープで縛って馬車の外に出してから子供達をワーウルフ達と協力して馬車から降ろす。目立った傷も無く寝ている子供を見てワーウルフ達はやっと胸を撫で下ろした。

 

 

 

 「子供達を助けてくれてありがとう」

 

 

 

 ワーウルフの1人、ロウがリーダーのヴェルナにお礼を言っている。

 

 

 

 「無事で良かったよ。所でこいつ等は?」

 

 

 

 「私達にも詳しい事は・・・、昨日突然やって来て村に泊めてやったんだが、今朝になって子供が居ない事に気が付いて臭いを追って来たんだ」と縛られている誘拐犯を睨んだ。

 

 

 

 と、そこで犯人の1人が気が付いた。縛られている状況に慌ててる。暫く経つと残りの2人も目を覚ました。

 

 

 

 「何故、子供達を誘拐した?」

 

 

 

 ロウが牙を見せて凄む。

 

 

 

 御者だった男が諦めた様に「・・・わかった、全て話す」と、その瞬間3人の体が黒い靄に包まれた。

 

 

 

 「ダメ!」

 

 

 

 エリアが手を伸ばしたが、間に合わず靄は霧散して其処には3人の死体が残った。

 

 

 

 「今のは一体・・・」

 

 

 

 驚くロウに呪いが掛かってたみたいだねとヴェルナが呟いた。

 

 

 

 エリアは頷くしか出来ず、他の者も何も言えず得体の知れない不気味さを感じていた。

 

 

 

 「・・・兎に角このままには出来ないね」

 

 

 

 エリアが言うとその後の行動は早かった。アセリアに近くの町に走って貰い衛兵を呼んだ。ロウには残って貰って事の顛末を話して、証人になって貰っている。

 

 

 

 エリアは呪いの残滓でも無いかと探ったが、何も得る物が無くこの事件は終った。

 

 

 

 3人の死体と呪いで口封じをされた事、人攫いをした事、馬車が街道を北に向かっていた事、手掛かりはこれだけである。

 

 

 

 「後は衛兵に任せて、私達は帰りましょう」

 

 

 

 これで、ヴェルナ達との冒険は終わり。すっきりしない気持ちを持ってエリアはベルタへと帰り着いた。

 

 

 

 

 

           ☆

 

 

 

 

 

 ベルタに帰って来た翌日、エリアは港町カリエで手に入れた小麦粉を早速使う事にした。

 

 

 

 教えて貰った配合で小麦粉に水、塩、卵を入れて混ぜて捏ねて行く。本当なら捏ねる機械が欲しい所だが今は人力だ。まぁ、力だけは有り余ってるし人並み以上だ。

 

 

 

 均等に捏ねたタネを冷暗所で小一時間寝かせる。あれ?違ったかなと曖昧な記憶を頼りにパスタ作りが進んでいく。

 

 

 

 寝かしたタネを薄く延ばす。製麺機など無いので薄く延ばした生地に打ち粉をして折り畳み、大きな包丁で蕎麦の様に細く切っていった。

 

 

 

 先ずは切れ端を沸騰したお湯に塩を入れた鍋に入れてみる。

 

 

 

 大きな鍋の中、舞う切れ端を取り出しては硬さを確認、取り出しては確認を繰り返して思ったより時間が掛かったがパスタは丁度良い硬さに茹で上がった。

 

 丁度良いと言っても葛城涼はアルデンテは好きではなかったので、本物に比べれば軟らかいのだが。

 

 

 

 調理を横で見ていたララに切れ端を1つ渡して食べて貰う。

 

 

 

 「どう?」

 

 

 

 「面白い食べ物だとは思います」

 

 

 

 微妙な反応。まぁ、それはそうだろう、だって麺だけだもの。

 

 

 

 次が本番、細く切ったパスタを茹でる。先程の茹で時間を参考に丁度良い頃合を狙って茹で加減の確認、もう少し茹でて半分を取り出した。

 

 

 

 其処から更に茹でて残りも取り出す。

 

 

 

 2つの茹で加減のパスタをララに試食して貰う事にした。

 

 

 

 「こっちが本場風、こっちが私の好みの茹で加減なんだけど・・・」

 

 

 

 ララは両方を少しづつ食べ比べ、唸ったあともう一度食べてフォークを置いた。

 

 

 

 「どちらもの食感も良いとは思います。なのでどちらでも良いと思います~」

 

 

 

 「イタリア人には怒られそうだけど、私好みでやらせて貰おうかな」

 

 

 

 方針も決まりエリアは満足気。

 

 

 

 「ただ、このままだと味気無いです~」

 

 

 

 アーハート家の台所を預かるララは申し訳無さそうに、だが的確な感想を述べた。

 

 

 

 「ああ、これには色々なソースをかけたりして、味付けをして楽しむ物なんだよ」

 

 

 

 エリアは今度はパスタをフライパンに入れて炒め混ぜ合わせた物を出してきた。

 

 

 

 「こっちがにんにくと唐辛子を使った物で、こっちが豚の干し肉を焼いた物に卵とミルクとチーズを使った物だよ」

 

 

 

 エリアは2つのパスタの具材を用意していた。ナンちゃってペペロンチーノとカルボナーラだ。

 

 

 

 「胡椒が有って助かったよ~」

 

 

 

 昔、胡椒は貴重品でヨーロッパでは金と同じ価値が有った、なんて話を聞いた様な気がする。だからこの世界でも貴重品なのかと心配したが多少高いが普通に流通していた。

 

 

 

 「どちらも美味しいです~」

 

 

 

 試食したララも満面の笑みだ。

 

 

 

 「しかし、私達だけで頂いて申し訳ないですね~」

 

 

 

 依頼に出ているリリルルに申し訳ないと表情を曇らせた。

 

 

 

 「大丈夫、パスタは乾燥させれば長持ちするから、残りを外で干して置こう。それに小麦粉もまだまだ有るからまた作ればいいしね」

 

 

 

 久々の懐かしい味にエリアも舌鼓を打つ。

 

 

 

 「で、どうかな?カルボナーラはダメだけど、ペペロンチーノはホウさんの出店で作れると思うんだけど?」

 

 

 

 「これなら大丈夫ですよ~、ホウさんも大喜びです~」

 

 

 

 ララの太鼓判を貰ってエリアは力無く椅子にもたれ掛かったって良かった~と安堵の声を上げた。

 

 

 

 

 

 後日、ホウとリリルルの3人にもペペロンチーノを振る舞った。

 

 

 

 ホウの反応も上々でパスタと少量のマヨネーズをお祭り迄に用意する事でホウもOKしてくれた。

 

 

 

 が、常時お店に置きたいと言う申し出は、大変なので丁寧にお断りしました。

 

 

 

 

 

        ☆

 

 

 

 

 

 「あれ?」

 

 

 

 エリアは朝早く家の横に作られた鳥小屋に来ていた。10羽程度のニワトリが飼われているのだが、今日は1つも卵を産んでなかったのだ。

 

 

 

 「こう云う事もあるか」とエリアは今日の乾麺作りを諦めて、1人街に行く事にした。

 

 

 

 先ずは冒険者ギルド、其処にはヴェルナ達が居てこの間の人攫いの話になった。

 

 

 

 「結局、黒幕は分らないままだったそうよ」

 

 

 

 アセリアが凄く残念そうに教えてくれた。

 

 

 

 「私も気になって、他の冒険者に聞いたんだけどね。どうも各地で人攫いが出てるみたい」

 

 

 

 ヴェルナはすっきりしない気持ちで空の皿をフォークでカチカチと突いていた。

 

 

 

 「人攫いってそんなに頻繁に行なわれてる物なの?」顔を顰めるエリアに「いえ、ファニール王国ではそんな事ないんですよ」と手の平をふるふると振ってホロロが否定した。

 

 

 

 「何かが起こってるのかもしんないね~」

 

 

 

 遅れてきたティナが欠伸をしながらやって来た。

 

 

 

 「ティナ!?」

 

 

 

 だらしない身嗜みを注意しながらアセリアは遅れた来たティナの首根っこを摘み上げ「もう!こんなに遅れて、さっさと行きますわよ。ではエリアさん失礼します」とギルドを出て行く。まるで子猫の様に摘み上げられたティナもにゃ~んと言いながらエリアに手を振っていた。

 

 

 

 「これから仕事なんだ。気になるし私ももう少し調べてみるよ」

 

 

 

 エリアの肩を叩いてヴェルナも出て行く。その後ろをお辞儀をしてからホロロが追いかけた。

 

 

 

 「なんの話だい?」

 

 

 

 4人を見送るエリアに不意に話しかけて来たのはホウだった。

 

 

 

 「ホウさん、ギルドに居るなんて珍しいですね」

 

 

 

 「商品の搬入よ。こっちに用事が有った序にね」

 

 

 

 そう言ってエリアの向かいに座る。

 

 

 

 「で、何の話?」

 

 

 

 顔を近付けてくる。

 

 

 

 エリアは少し下がりながら、人攫いが横行しているらしいと云う話をした。

 

 

 

 「ああ、本当みたいだね、この間ザルザザが子供を狙った人攫いが多いって嘆いていたよ」

 

  

 

 ザルザザらしいと思いつつ、子供が狙われている事実に顔を顰めた。

 

 

 

 「でもザルザザの話だとファニールの各地、後デリフォス法国やクオリオン王国でも起きてるらしい」

 

 

 

 「エリトリアの近くでも、ワーウルフの子供が狙われてました」

 

 

 

 「なるほどね、でも今の所これはお国の仕事だね」

 

 

 

 「はい・・・」

 

 

 

 立ち上がると下を向いたエリアの頭をポンと叩いて、無茶するんじゃないよ、と言ってホウはギルドを出て行った。

 

 

 

 エリアも掲示板の依頼に一通り目を通してからギルドを後にする。

 

 

 

 次に食事処を回って何か新しい料理のアイデアは無いかと眺めて周り、最後にバザーに寄って食材、特に香辛料を物色して門へと向かった。

 

 

 

 そこで、もう顔なじみの門番のゼルトにも人攫いの話を聞いたら、既に国としても動いてるという話を聞いて少しだけ、ほんの少しだけ安心したエリアだった。

 

 




最後まで読んでくれて本当にありがとうございました。

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