~アストラル・ライフ~『~天に召される瞬間、ガイコツ少女に異世界召喚されました~』   作:LUCIOLE

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第十九話 『旅立ち』

 

 エリアはファムをお風呂に入れていた。ご飯の前に汚れを落してさっぱりする事にしたのだ。

 

 

 

 それと、アフィが出て行った後、ずっと判決を待つ囚人の様な顔をしているファムの気分を少しでも和らげてやりたかった。

 

 

 

 「ファムちゃんは、アクフォロンに何しに行くのかな?」

 

 

 

 ファムの頭を洗いながら、旅の目的を聞いてみる。見た目8歳くらいの女の子が行くには遠すぎる距離だ。が、ファムは答えない。

 

 

 

 「はい、流すよ。目瞑ってね~」

 

 

 

 髪を流して二人で湯船に入る。

 

 

 

 「は~、いいお湯だね。疲れが飛んで行くよ~」

 

 

 

 少しおじさん臭い台詞を言ってみる。

 

 

 

 「バスタブが大きくて良かったね~」

 

 

 

 明るく話すが無言のまま反応が無い。

 

 

 

 まだ俯いてるファムの髪を触って本当に綺麗な髪だね。と呟いた。

 

 

 

 顔を上げエリアの方を見るファム。

 

 

 

 「その金の瞳も素敵。木から落ちて来た時はビックリしたけど、こうして見ると何処かのお姫様みたいだよ。きっと笑った顔はもっと素敵ね」

 

 

 

 微笑み掛けるエリアから目を反らすとまた俯いてしまった。

 

 

 

 どうした物かと思ってると、ファムがぽつりぽつりと話し始めた。

 

 

 

 「確かめたい事があって、途中の街や村を巡ってアクフォロンまで行きたいの」

 

 

 

 「確かめたい事って?」

 

 

 

 「誘拐事件、私のお友達も攫われたって・・・だから確かめたくって・・・でもお母様は許してくれなく・・・て・・・ぐす」

 

 

 

 不安が募り泣き出してしまった。

 

 

 

 「そう、分った」

 

 

 

 ファムを抱きしめて、やさしく頭を撫でる。

 

 

 

 「私も一緒にお母さんにお願いしてあげる。さっき居た双子も冒険者で凄く強いんだよ!私がお願いして二人にも着いて来て貰えば大丈夫!お母さんも納得して許してくれるわよ」

 

 

 

 「本当?」

 

 

 

 「ええ!でも、もしそれでもダメって言われたら私がファムちゃんの代わりにお友達の事探してあげる!」

 

 

 

 抱きしめてたファムの両肩を持って体を離すと、約束!と言って小指を差し出した。

 

 

 

 「?」となっているファムに私の国のおまじないなのと言って、ファムの小指に自分の小指を絡ませる。

 

 

 

 「指きりげんまん、嘘吐いたら針千本呑~ます!指切った!」

 

 

 

 指切りをしたファムは少し明るい顔になって自分の子指を見て「針千本?」と訊ねた。

 

 

 

 「そう、私の国の約束をする時のおまじないでね、嘘吐いたら針千本飲ませるぞ~って、」

 

 

 

 まぁ、本当に飲ませる訳じゃないけどね。と説明しようとしたエリアの言葉を「じゃあ針千本用意するね」と笑ったファムの言葉が遮った。

 

 

 

 あれ?もしかして約束破ったら本当に吞まされる?

 

 

 

 先にファムをお風呂から上がらせリリルルに任せて涼はお風呂に入りながら少しエリアの体から出た。

 

 

 

 そのまま、部屋の外に出て宿の周囲を見て回る。最近気が付いたのだが、霊体状態だと姿を消す事が出来る様になったのだ。最初から出来たのか、レベルアップ的なもので出来る様になったのかは分らないが、便利なスキルを覚えたものだ。

 

 

 

 と、通りの角でこちらを窺う人影を見つけた。が、誰かが合流して確認する間も無く何処かに消えてしまった。その後は捜索範囲を広げたが不信人物か見付からなかったので、エリアの体に戻ってのぼせる前に出る事にした。

 

 

 

 アフィが帰って来たのは結局夜遅くの事だった。ファムも帰って来るまで起きてると行ったのだが結局睡魔に負けて、すやすやと寝息を立てている。エリアはファムを自分のベッドに寝かしつけ、エリアの体はソファで寝かせてアフィを待っていたのだ。

 

 

 

 暗い中、部屋に戻ったアフィを涼が出迎えた。

 

 

 

 「お帰り、ご苦労様」

 

 

 

 「!?・・・ただいま」

 

 

 

 アフィはローブを縫いで椅子に座る。涼は無造作に放り出されたローブを綺麗にハンガーに掛けた。

 

 

 

 「で、ファムちゃんの親御さんはなんて?」

 

 

 

 椅子に座って天井を見ているアフィに訊ねた。

 

 

 

 「うん、まぁ、」

 

 

 

 アフィにしては歯切れが悪い。

 

 

 

 「今問題になっている、誘拐事件・・・国でも動いていてね・・・」

 

 

 

 答えになっていない様だが、ファムの事に関係が有るのだろう。

 

 

 

 「ファムちゃんの友達も連れ去られたって・・・」

 

 

 

 「そう・・・あの子を連れて行っても辛い思いをさせるだけって言ったんだけどね・・・」

 

 

 

 辛い表情のまま、重い空気に言葉が詰まる。

 

 

 

 沈黙を破ったのは涼だ。

 

 

 

 「やっぱり友達はもう・・・」

 

 

 

 「連れ去られたのが2週間前って話だから、望みは薄いわね」

 

 

 

 「・・・そうか、じゃあ俺達だけで」

 

 

 

 「ううん、あの子の親は連れて行って欲しいって」

 

 

 

 「そんな!?」

 

 

 

 ばっ!?とアフィの顔見たが自分以上に辛そうな表情のアフィに言葉が詰まった。

 

 

 

 「きっとあの子は自分で確認しないと、納得しないし吹っ切れないからって・・・流石親ね、私もそう思うけど」

 

 

 

 納得出来ないというのは分る。自分が同じ立場ならそうだろう。 

 

 

 

 「でも・・・」と涼は下を見た。

 

 

 

 「辛い事だけど・・・あの子もただの子供じゃないからね・・・」

 

 

 

 アフィは複雑な表情をした。同情、哀れみ、諦め・・・。

 

 

 

 「それに、この事件はただの誘拐事件じゃないわ」

 

 

 

 「ただの誘拐事件じゃないって?」

 

 

 

 驚いて再びアフィの顔を見る。

 

 

 

 「子供の誘拐が増えた前後から、新人冒険者の失踪も相次いでるの」

 

 

 

 「え!?」

 

 

 

 新人の冒険者が無茶をして全滅なんて珍しくも無い、しかし判明してるだけでもで10人や20人じゃきかないってのは流石に多過ぎる。

 

 

 

 「それって・・・」

 

 

 

 「何者かが事件を起こしてる。ううん何かを起こそうとしてるのかも」

 

 

 

 「・・・ここでのアフィの用事って、この事件に関係有るの?」

 

 

 

 首をぐるりと回して、魂状態の涼を見る。部屋の光りも無く、窓から入る月と星の明かりだけで照らされる室内にガイコツと人魂が見詰め合う。

 

 

 

 「今は教えない!」

 

 

 

 ジト目になるとそっぽを向いた。

 

 

 

 「ええ~!?なんだよそれ」

 

 

 

 食って掛かる涼だが、アフィは取り合わなかった。

 

 

 

 諦めた涼は、テーブルの上に降り、お互い違う方向を見ながら、ゆっくりと時が流れる。

 

 

 

 「あの子を・・・」

 

 

 

 アフィが不意に呟く。

 

 

 

 「ん!?」

 

 

 

 「あの子を護ってやってね」

 

 

 

 アフィは窓の方を見たままそう言った。

 

 

 

 「俺より、アフィの方が強いだろ?」

 

 

 

 「うん、それでも護ってやって欲しいの。私だけじゃダメかもしれないから・・・」

 

 

 

 珍しく弱気な事を言っている気がするが、その真意は見抜けない。恐らく心の問題なのだろうと思い、自分に何が出来るか全く分らないが涼はただ力強く「分った、任せとけ」と強がりで答えた。

 

 

 

 アフィは体を起こすと「じゃあ、明日は早いから寝過ごすんじゃないわよ」と言って自分の部屋に入って行く。

 

 

 

 少し、気分が晴れた様な顔を見て涼は虚勢も役に立つのだなと思った。まぁ、その後根拠の無い安請け合いを1人落ち込むのだが、それでもアフィが少しでも気が楽になるのなら良いかと自身も体?を休める事にした。

 

 

 

 

 

             ☆

 

 

 

 次の日の朝、アフィはファムと今後の事に着いて話を始めた。

 

 

 

 「ファム、あなたの依頼を受けます。ただ、お友達が居なくなって2週間。流石に時間が経ち過ぎてる……」

 

 

 

 真っ直ぐ、アフィを見詰めるファムがピクリと体を強張らせる。

 

 

 

 「その子の生存は絶望的、それでも行く?」

 

 

 

 絶望的と云う言葉に表情を曇らせ俯いたがファムは拳をグッと握り締めて「行きます!」とはっきり言った。

 

 

 

 「どうして其処まで」

 

 

 

 エリアはファムを見た。

 

 

 

 「あのね、私ね、その子とケンカしちゃったの。どっか行っちゃえって言っちゃったの。あの子が居なくなったのは私の所為なの・・・」

 

 

 

 込み上げて来る涙を堪える様にぐっとスカートを握り締める。

 

 

 

 「だから自分で助けて、ごめんなさいを言うの。たとえお母様の言い付けに背いても」

 

 

 

 アフィに向き直ったその目は真剣そのものだった。

 

 

 

 ファムが諦めてくれるという淡い期待は崩れ去った。

 

 

 

 「ファム、あなたの事は基本エリアが面倒見ます。良い?」

 

 

 

 「・・・はい」

 

 

 

 「よろしくねファムちゃん」

 

 

 

 「はい、エリアおねえちゃん」

 

 

 

 ファムの小さな手と握手をする。軽く力を込めて安心させる様に。

 

 

 

 「じゃあ朝食を取って来なさい。そしたら出発よ!」

 

 

 

 アフィは手を叩いて出発準備が始まった。

 

  

 

 

 

         ☆

 

 

 

 

 

 宿を出た一行は先ず冒険者ギルドに寄った。アフィが話を聞いてる間、リリルルがフロアの様子を窺う。

 

 

 

 程なく、アフィが帰ってくると情報交換してギルドを後にした。

 

 

 

 5人は馬車で王都を出て一路ベルタを目指す。ファムはベルタや道中の村で情報を集めるつもりだったらしいがアフィは一直線にアクフォロンを目指した。

 

 

 

 「私の聞いた情報では、消えた冒険者達は子供の依頼者からアクフォロンの南のケルケリオン山脈での依頼が多かったの。特にハイネルセン村近くの仕事を請けたパーティが多いわ」

 

 

 

 「子供の依頼者?アクフォロンって!?」

 

 

 

 リリの顔を見るとリリも頷いてる。

 

 

 

 あの子供が関係者・・・と顔を顰めた。

 

 

 

 「子供の方には理由なんて無いかもよ。大人に言われるがままかもしれないし、単にお金で雇われてる可能性も有るわ」

 

 

 

 「本当は子供じゃないかもしれないしね」

 

 

 

 ルルが悪戯っぽくファムを見て付け足した。

 

 

 

 エリアとリリが見たのは見た目は間違いなく人間だったのだが、そう言う事も有るのか。とエリアはルルを見ると頷いて肯定した。

 

 

 

 「あくまでも仮定の話。今は情報が少な無すぎる」

 

 

 

 リリは前を見据えたまま手綱を振るう。

 

 

 

 休憩もそこそこに走り続けて数日、馬の疲労も顕著になって来た頃ベルタの街が見え始めた。と、街の方からハーピィが1人飛んでくるのが見えた。

 

 

 

 「やはり、アフィ様御一行ですね!」

 

 

 

 馬車に並んで飛ぶハーピィ、ティセはこれをと手紙の入った筒を渡すと。替えの馬を用意してますと行って、街に戻っていった。

 

 

 

 「手紙には何て?」

 

 

 

 「ベルタとアクフォロンのギルドから2パーティづつ、4パーティが先にハイネルセン村に向かってるそうよ」

 

 

 

 「なら、私達より早く村に着いて、子供達を助けてるかも知れないって事?」

 

 

 

 少しだけ、少しだけ希望が見えた気がした。

 

 

 

 「そうなるわね、でもねファム・・・」

 

 

 

 アフィは最悪を考えてるのだろう。最年長としての辛い責務だ。

 

 

 

 「分ってます」

 

 

 

 そう答えるが期待せずには居られないといった感じだ。

 

 

 

 「ところでファムは随分エリアに懐いたわね」

 

 

 

 腰に手を当てて、アフィが呆れてる。

 

 

 

 これまでの道中、ずっと思い詰めた顔をしていたが、片時もエリアの腕から離れなかったのだ。それはエリアが御者をしていた時も変わらなかった。

 

 

 

 リリルルは対抗して、リリは反対の腕にルルは背中にとへばり付いていたが、アフィに怒られ今は離れている。

 

 

 

 ファムは俯くだけで何も云わない。この妙な空気に耐えられずエリアは「兎に角街に行こう」と馬を走らせた。

 

 

 

 着いたベルタの街で馬を交代させてる間に食料と水、後ポーションを少し頂いた。

 

 

 

 「よろしくお願いします」

 

 

 

 頭を下げるベルタの冒険者ギルド職員メメイを置き去りに、馬車はケルケリオン山脈に有るハイネルセン村へ急ぐのだった。




最後まで読んでくれて本当にありがとうございました。

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