~アストラル・ライフ~『~天に召される瞬間、ガイコツ少女に異世界召喚されました~』   作:LUCIOLE

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前半最大の山場です。

戦闘シーンって本当に難しいですね。


第二十二話 『グラージ・ドラゴン』

 

 自分に無関係な冒険者を上手く全員逃がしたつもりだったが、1人恩義を感じていたダリウスがこの場に残ってしまったのだ。

 

 その心根は素晴らしいのだが・・・。 

 

 「・・・」

 

 頭を抱えたアフィだったが、もうどうしようもないので諦めた。と云うか正直これ以上考えるのが嫌になったのだ。時間も無いし。

 

 「ダリウス!」

 

 その言葉に少し怒りの様な色が見える。

 

 「は、はい?」

 

 突然の呼び捨てと迫力に少し驚く。

 

 「今から見る事は他言無用。当然家族にもよ!嫌なら直ぐに走って逃げなさい!」

 

 ダリウスはその言葉の真意を考えなかった。どんな事情が有ろうがここで逃げる選択肢は有り得なかったからだ。

 

 「分りました。このダリウス・グロイド、命に替えてもここでの事は貴方方以外に絶対に話したりしません!」

 

 アフィは溜息一つ吐いて、本当に命貰うからね、と殺気交じりで手を振った。

 

 「リリ、ルル、やるわよ!」

 

 「はい!主」

 

 「はい!ご主人様」

 

 アフィを中心に左右に展開するリリとルル。正面のアフィはダリウスに魔法の加護を何重にも掛けた。

 

 「無理はしない事、私の指揮下に入るなら絶対に生き残りなさい」

 

 「はい!」とダリウスも走り出した。

 

 「相談は終りましたか?逃げたゴミを追いかけないといけないので、さっさと終らせますよ」

 

 まだ、余裕のあるジョンが口元を吊り上げながらグラージ・ドラゴンに攻撃を指示した。

 

 骨だけの尻尾が薙ぎ払われる。ルルとダリウスはそれを躱し、アフィも後ろに飛び退いた。

 

 咄嗟に飛び上がったダリウスは自分に掛けられた身体強化の効果の大きさに驚いた。普通の身体強化魔法、フィジカルブーストはここまで強力ではなかったからだ。

 

 「慢心する気は無いが、これなら少しは役に立てるかな?」とダリウスはジョンに向かってチャージを掛けた。

 

 猪魔人のハーフで有るダリウスは固有スキルを持っていた。チャージ!要は突進攻撃だが、ブーストされたその速度は尋常じゃ無かった。

 

 「この!?」

 

 グラージ・ドラゴンの腕がジョンを庇うがダリウスはそのまま突進して、グラージ・ドラゴンの腕を破壊したのだ。ただジョンの所までその刃は届かず、反撃が来る前に後ろへジャンプしてその場を離れた。

 

 再生能力の有るグラージ・ドラゴンにどれだけのダメージを与えられたかは分らないが、ジョンとグラージ・ドラゴンの注意を引き付ける事には成功した。

 

 グラージ・ドラゴンの右側ではルルが最高威力の炎の魔法を唱え、アフィはターンアンデッドの詠唱に入ってた。

 

 「させませんよ!」

 

 2人に魔法を放とうとするジョンに背後からリリが近付く。

 

 無言のまま振るう剣にグラージ・ドラゴンが反応して残ったもう片方の腕でリリを薙ぎ払った。

 

 リリの攻撃は失敗したが、そのグラージ・ドラゴンの動きにジョンは驚いて魔法の詠唱は止まった。

 

 「インフェルノ!」

 

 「ターンアンデッド!」

 

 2人の魔法が炸裂してグラージ・ドラゴンを撃つ、だがその2つの魔法は当たる寸前でまたも霧散してしまったのだ。

 

 「これは何か、カラクリが有るわね・・・」

 

 アフィは一旦後ろに下がる。

 

 グラージ・ドラゴンがドラゴンゾンビに近い物なら元々高い魔法耐性が有ってもおかしくない。だがこの高さは異常だ。アフィは自慢ではないが魔法には自信が有る。ターンアンデッドも得意な魔法の1つだ。

 

 そんな事を思ってふっと笑いが込み上げた。

 

 そう言えば最近、私の魔法を受け付けなかったのが居たな、と。

 

 「アフィー!」

 

 そうそう、お前だお前。と振り返った。

 

 其処にはファムと一緒に駆け寄るエリアの姿が有った。

 

 「なんでファムを連れて来たのよ?」

 

 「本人の意思だよ。私が責任を持って護るから。それに・・・」

 

 「言っても聞かなかったのね」

 

 「まぁ、面目ない」と頭を掻くエリア。

 

 今、剣も魔法も効かない化け物相手にしているとは思えない和みっぷりである。

 

 「ファム、貴方・・・」

 

 ファムの顔を見たアフィはそれ以上何も言わなかった。

 

 「あのグラージ・ドラゴン、何かからくりが有って魔法が全然効かないのよね。しかも再生能力も有るし・・・」

 

 「そう」

 

 改めてグラージ・ドラゴンを見たエリアは吐き気をもよおした。

 

 「エリア様?」

 

 心配するファム。

 

 「大丈夫・・・」

 

 心配するファムを後ろに下がらせてグラージ・ドラゴンを睨みつける。エリアはこれ程邪悪な物を始めて見た。

 

 「アフィ、あれは生贄にされた人達の怨念が混ざり、絡み合ってる」

 

 悍ましい光景に顔を歪めた。

 

 「そう、エリア顔どうにかしなさい。ファムが怖がる」

 

 ハッとなり自分の頬をパンパンと叩いて気合を入れ、冷静さを取り戻そうとする。

 

 「ごめんアフィ、前言撤回ファムをお願い」

 

 「どうする気?魔法も武器も効かない相手よ。せめて魔法の完全無効化の仕掛けが分らないと・・・」

 

 「大丈夫、私に考えが有る。これは私にしか出来ないだろうし」

 

 「こちらの為にグラージ・ドラゴンの注意を引き付けてくれているリリちゃんとルルちゃん、それに何故か居るダリウスさんの息が上がってるし」

 

 「・・・分った、勝算が有るのね」

 

 「う~ん。多分」

 

 「多分って、そこは大丈夫って言いなさい!」

 

 バンッ!

 

 背中を叩いてアフィはエリアを送り出した。

 

 「エリア様!?」

 

 追い掛け様とするファムをアフィが引き止めた。エリアを信じなさいと。

 

 

 

 「きゃっ!?」

 

 グラージ・ドラゴンの攻撃が当たって吹き飛ばされたルルをエリアが受け止めた。

 

 「エリア!」

 

 エリアに抱き付くルル。それを攻撃を躱しながら。あ~!あ~!とリリが非難する。

 

 この人達はこの状況でも余裕だな~と、ダリウスも呆れながらも頼もしく思い、その遣り取りを見ながら後ろ足を攻撃している。

 

 「3人共、そのままもう少しだけ引きつけてて!」

 

 ルルを降ろしたエリアはグラージ・ドラゴンに向かって行った。

 

 「グラージ・ドラゴンには物理攻撃も無駄ですよ」と余裕のジョンだったが、エリアの見せた笑みに苛立ちを感じた。

 

 「その女を殺せ!グラージ・ドラゴン!」

 

 エリアはグラージ・ドラゴンの攻撃を躱しながらその巨体に取り付くとグラージ・ドラゴンの腕に掴み掛かり何かを引き剥がす様に腕を引いた。

 

 ジョンはエリアの行動が何を意味してるのか分らなかった。だがその疑問は攻撃を躱しながらも数度繰り返されたその行動の後に明らかになった。

 

 数回行なわれたエリアの引き剥がす様な動きで、グラージ・ドラゴンの体が崩れたのだ。

 

 「なにぃ!?」

 

 ボロボロと崩れ落ちるグラージ・ドラゴンの左腕。エリアが魔法を使った形跡は無い。それどころか先程からの動きもグラージ・ドラゴンに触れてさえいないのだ。

 

 「ば、ばかな・・・!?」

 

 信じられない、いや有り得ない光景に思わず後退るジョン。

 

 無敵の筈のグラージ・ドラゴンの体が崩れた。理由は分らない、分らないが何かが起こった。それを起こしたのは間違いない。この少女なのだ。

 

 魔法でも物理攻撃でもない何かに因ってボロボロと少しづつ崩れるグラージ・ドラゴンが、雄叫びを上げる。

 

 「き、貴様ーーーっ!」

 

 ジョンは絶対の自信を崩され平静を保てなくなった。

 

 台座に刺さった剣を抜き取りエリアに迫るが、その攻撃をリリが受け止めた。

 

 「エリアはそのまま、こいつは私が相手する」

 

 ジョンの前に立ちはだかる美少女剣士がかっこいい。

 

 「ありがとうリリちゃん!」

 

 エリアは尚も攻撃を躱しながらグラージ・ドラゴンから見えない何かを引き剥がしていった。

 

 その時だ、エリアは見覚えの有る少女を見付けた。その少女に手を伸ばした瞬間注意が削がれた。もがき苦しむ少女の手を取った瞬間グラージ・ドラゴンの翼で地面に撃ち付けられたのだ。

 

 「かはっ!?」

 

 バウンドする体。その衝撃で体が動かない。

 

 「今だ!小娘!」

 

 ジョンが迫ってくる。

 

 リリが護りに入ろうとしたが、今度はリリがグラージ・ドラゴンに邪魔をされた。

 

 ルルが魔法を撃つがこれも尻尾で弾かれた。

 

 「この剥離剣で再生魔法でも復活できない様に魂を切り刻んであげましょう!」

 

 迫るジョンそれより早く、白い影がエリアに覆い被さった。

 

 「え?」と突然の事に驚くエリアにその白い影が「エリア様は私が御守りします」と確かに言った。その声は紛れも無くファムの声だった。

 

 突然の事に、唖然とする中。1人歓喜に体を震わせている者がいた。

 

 「これは!これは、これは、これは奇跡か!我が神は私を見捨てなかった!この場面にまさか王女が現れ様とは!」

 

 エリアに覆い被さった白い子龍を見て、ジョンは歓喜した。

 

 グラージ・ドラゴンがジョンに覆い被さる様に護る中、1歩、また1歩とファムとエリアに近付く。

 

 リリとダリウスの攻撃ではジョンまで届かない。ルルとアフィの魔法は覆い被さるグラージ・ドラゴンに掻き消される。

 

 アフィには別に手が有ったが、今の状態では全員を巻き込む為使えない。

 

 エリアの体は動かず、ファムもエリアを護る為動こうとしなかった。

 

 「ファムちゃん、私は大丈夫だから逃げて!」

 

 エリアの言葉も聴かず動こうとしない子龍のファム。

 

 迫るグラージ・ドラゴンにファムはブレスを吐くが、骨の翼で弾かれてしまう。

 

 「この、動け!なんで動かないんだよ!」

 

 エリアは指先一つ動かすのがやっとの中で、ファムを護る方法を必死で考えた、考えに考えて、とんでもない方法を思い付いた。

 

 これは完全に賭けである。失敗すれば自分もファムも魂を切られて終わりかもしれない。だが悩む時間は無かった。

 

 遂に目の前まで来て剣を振り上げ醜く顔を歪ませ笑うジョン。

 

 「これで終わりですよ~!」と剥離剣を振り下ろした。

 

 もうダメだと誰もが思った瞬間、ボヨンと云う間抜けな音がした。

 

 見れば剥離剣が弾かれたのだ。

 

 「なっ!?」一番驚いたのはジョンだ。

 

 「何故!?」と言った瞬間剣が腕から離れた。すっぽ抜けた様にクルクルと上空へと飛んだ乖離剣はピタリと回転を止めるとグラージ・ドラゴン目掛け一直線に飛んで行き、一気にその体を貫いた!

 

 そして、その勢いのまま「ばかな!?」と叫んだジョンの胸までも貫き、そのまま地面に刺さったのだ。

 

 「ぎゃああああああ・・・・・・!」

 

 串刺しとなったジョンの断末魔の声が響き渡る。

 

 何が起こったか理解出来ず固まるアフィ達。そんな中、最強を誇ったグラージ・ドラゴンに異変が起こった。動きを止めてたその体が崩れ始めたのだ。

 

 ボロボロと崩壊するグラージ・ドラゴン。そして最後には骨の山が出来上がった。その山も風に吹かれまるで乾燥した砂山の様に森の中へと散っていく。

 

 後にはエリアを守って蹲る白い子龍が居るだけだった。

 

 「エリア!?エリア!?」

 

 リリが駆け寄り白い子龍の下を覗き込む。ルルも子龍の体を退かそうと力を入れるが全く動かない。

 

 其処にアフィがやって来て子龍の頭をペチンと叩いた。

 

 「いた~い」と首を上げる子龍にアフィは「ほら、早く退きなさい!エリアが潰れちゃう」と言った。

 

 慌てて後ろに下がる子龍は小さくなってファムの姿に戻った。

 

 「あのお嬢さんだったのか?」とダリウスが驚く。

 

 人の姿になったファム、リリ、ルルがエリアにしがみ付く。

 

 「エリア!」「エリア!」「エリア様!」

 

 3人にガクンガクン揺さぶられる姿は滑稽だった。

 

 「うわ~、何か首がもげそうだな?」

 

 リリ達の後ろで涼の声がしたが其処に涼の姿は無かった。ダリウスが居る為、姿を消してるのだ。

 

 「涼!?」

 

 「はい、今戻るよ」

 

 人魂モードの涼はへろへろと飛んで行って、ゆっくりとエリアの中に入っていった。

 

 その状況を見えてはいないが、アフィは感じ取っていた。

 

 「うう~ん、やっと動く様になったか」

 

 首をクキクキ動かしながら起き上がるエリアに3人が同時に抱き付いた。

 

 やれやれと云った感じで見ていたアフィがゆっくりと歩み寄り、終ったの?と聞いてきたので、親指を立ててエリアは微笑んだ。

 

 そして、リリ、ルル、ファムから離れるとファムに目線を合わせた。

 

 エリアの真剣な表情にドキリとするファム。

 

 「ファムちゃん、余り時間は無いよ」

 

 エリアはファムの目の前で、そっと閉じていた手を開いた。其処にはゆらゆらと揺らめく人魂が1つ浮いている。

 

 その人魂はゆっくり目を開けると1人の少女の姿に変化した。

 

「・・・・・・・・・・」

 

 森の中、少女の泣き声が収まるのをエリア達は、ただ黙って見守るのだった。

 

 それは少女が一つ大人になる儀式の様だった・・・。

 




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