~アストラル・ライフ~『~天に召される瞬間、ガイコツ少女に異世界召喚されました~』 作:LUCIOLE
翌日、朝から執筆していたエリアは、今日の夕食後に見せ合いましょうと朝食も早々に部屋を飛び出していった。
内務省で必要な情報を得たあと、多少なりとも交流のあった製紙工場やゴマドレッシングを教えたレストラン等で生活に根ざした様々な情報を集めた。更に街中を歩いて、人々の生活を見ながらアイデアを練る。
太陽が頂点を過ぎた頃、エリアは木の陰でパンを食べながら公園で遊ぶ子供達を見ていた。種族の坩堝るつぼの様なこの国の王都である。それこそ様々な種族の子供達が一緒になって遊んでいた。
歌の練習をしている人魚やセイレーンの声が心地良い。一緒に歌っているドワーフの男の子は・・・頑張れ。
空では布で作ったボールの様な物を使って、ラグビーかバスケットの様なスポーツをやっている。参加しているのは有翼の魔人やハーピィ、バードマンに珍しいドラゴニュートが1人混じってる。更に驚きなのは飛翔の魔法を使って参加している人間の男の子が居る事だった。
子供で飛翔の魔法を使えるのはとても珍しい。優秀な魔法使いに慣れる素質と遊びたいと云う努力の賜物だろう。しかも遊びで魔力をドンドン使ってるのだ。自然と魔力の訓練にもなってるし、あの子は凄い魔法使いになるかもしれない。
木の上に居るエルフが下に向かって何か喋っている。その木下に目を向ければ同じく木に登ろうとしているのはホビットの子供だろうか?木にしがみ付いて居るが手足の短さの所為か上手く上れない様だ。
どうやら上のエルフの子はホビットの子を励ましながら、登り方を教えてる様で徐々に上へと登り始め、数分後には一番下の枝に登る事が出来た。
エリアも思わず握り拳を作って応援していた。
そんな風に子供達を見ていると後ろに近付く気配がした。振り向くと、少し離れた所でビクッ!?と足を止めた子供が1人立っていた。
(コボルド!?じゃなくてワーウルフかな?)
見れば指を口元に持っていき涎を垂らしながらエリアを、と云うより手に持っているパンを見ている。
持っているパンを上に上げたり、左右に振ったりするとその子も同じ方向に首を振った。
「欲しいの?」
エリアが聞くと、目を輝かせてブンブンと首を縦に振ったがハッと何かに気が付いた様に動きを止めると今度は首を横にブンブンと振った。
「要らないの?」と聞くと、今度は肩を落して落ち込み、ゆっくりと頷いた。
ぐううう~。
その子の腹の虫が、空腹を訴えている。見ればその子の服は継ぎ接ぎがある。
この国にも貧富の差は有る。しかし、ここは王都だ、全員が裕福と云う訳ではないが飢えに困る程の事は無い筈だ。
エリアはアナライズを唱えてその子を見てみた。
ワーウルフ 男 孤児?
(孤児か・・・?)
この国の孤児院がどうなってるかは知らないが、あの女王が放って置くとも思えないと思ったエリアは話を聞く事にした。
「おいで」と手招きをして、理由を教えてくれたらこのパンを全部あげると言って、事情を聞きだした。
ワーウルフの子供、トゥクはパンに目を奪われつつ色々話してくれた。
事情は簡単で、最近食事の量が減ったのだ。仕方無い事と分ってはいるが食べ盛りの子供だ、どうしても我慢が出来なかったらしい。ただ、他の子も御腹を空かせてるのに自分だけ食べる事に罪悪感を感じたのだ。
「どうして、食事が減ったのかな?」
「エイナが、一番下の子が病気になってお薬が高くて・・・でも司祭様は居ないし、シスターキラファは・・・」
「シスターは?」
「シスターは外に出れないから・・・」
「なるほど、分った。そのシスターキラファとお話がしたいから孤児院まで案内してくれるかな?」
「うん、良いよ」
「その前に、孤児院には何人人が居るのかな?」
「シスターキラファと子供が8人だよ」
「全部で9人か」
「あ!?」
「どうしたの?」
「ボクも入れたら10人だ」
ぷっ!と笑うと、そうかそうかとその子の頭を撫でて「なら、もう少しパンを買い足していかないとね」と微笑んだ。
公園を出てパンとお菓子を買い込んだエリアは王都の北西部にある小さな教会にやって来た。
小さな門を抜けて中に入ると、エリア達に気が付いた子供達がわっと押し寄せてくる。
トゥクと一緒に抱えたパンやお菓子を配って居るとその騒ぎを聞き付けたシスターが顔を出した。
「えっと・・・あれがシスターキラファなの?」
「そうだよ。キラファ御姉ちゃん!」
トゥクが手を振ると、ジッと見詰めていたキラファが姿を現してこちらに近付いて来て、エリアの姿を確認すると歩みを止めた。
驚いているエリアを見詰める。そして、何かを確認するとほっとした様に胸を撫で下ろして側までやって来た。
「いらっしゃいませ。えっと・・・」
「私の名前はエリアと申します。実は先程トゥクと友達になりまして・・・」
事情を話すと、キラファは頭を下げてお礼を言って教会の中へ案内してくれた。
「えっと、シスターキラファ?」
「キラファで良いですよ、エリア様」
「そうですか?ではキラファさん、私もエリアと呼んで下さい」
「分りました、エリアさん」と言って、二人で微笑んだ。
「で、先程私を見て、何かしてましたね?」
「ああ、それはですね私には特殊能力が有るんですよ」
「特殊能力ですか?それ、簡単に話して良いんですか?」
「構いませんよ。私には貴方が悪い人では無い事が分りますから」
「魔眼の1つです。相手のオーラや気と呼ばれる物を見る力です」
と言っても結構曖昧なんですけどね。と笑っている。
彼女の魔眼は相手の気を見る事が出来る。そして集中する事でその気の変化から相手の感情を見抜く事が出来る。この力を使えば嘘や悪意を読み取る事も出来るのだ。
「あ~・・・じゃあ、もしかして・・・」バツが悪そうに言うエリアに、クスクスと笑って「はい、分ってますよ。だから気にしないで下さい」と微笑んだ。流石シスター。エリアは申し訳ないと頭を掻くばかり。
「あと、意識しなければオーラが見えるだけの普通の目なので安心して下さい」と付け加えた。
8つの目と8本の足。そして女性の上半身と大きな下腹部を持つシスターキラファはアラクネなのだ。その中でも小型の土蜘蛛っぽいアラクネである。そして、エリアこと葛城涼は蜘蛛が苦手だった。
家に出る小さいのはまぁ良いが女郎蜘蛛サイズにもなるともうダメである。その事をキラファは心眼で見抜いたのだ。もしかしたらエリアの体に憑依してる事もばれてるかもしれないが、下手に話してぼろを出す訳にも行かないので黙っておく事にした。
何も聞かずに秘密にしてくれるなら、それで良い。(下手に藪を突く事も無いよね)
だから「子供の頃怖い思いをしてからどうも・・・」と、蜘蛛が苦手と云う話に限定した。
「怖い思いですか?」
「突然大人の手の平程ある蜘蛛に体の上を這われました・・・」
両肩を抱いて身震いする。
「あ~・・・それは、トラウマになるかもですね」
キラファの同情がありがたい。
「それから、基本足の多いのはダメになりました」
今度は肩を落してゲンナリとなる。
「ムカデとかですか?」
「正にですね、6本以上で大丈夫なのはエビ、カニとダンゴ虫とかです」
「蜘蛛やムカデを苦手な人は多いので、普通だと思いますよ」
愛想笑いをしているキラファもこれまで、色々言われたのだろう。
「ありがとうございます。以前住んでいた所ではアラクネの方が居なかったのですが、ここではそうも行きませんからね、慣れていかないと」
「慣れですか・・・」少し、エリアを見詰める。
「言い方は悪いかもしれませんが、慣れですね。ただアラクネの方達と蜘蛛は別と認識するだけなので早いかなって、キラファさんを見て思いました」
エリアは歯に衣着せぬ言葉で話した。心眼を持つキラファに表面を見繕っても無駄だろうと思ったからだ。
「ふふふ、なら私がその練習相手になりますね」と悪戯っぽく微笑む。
「え!?」
少し眉を引き攣らせ、身じろぐエリア。
「いつでも、来て下さいね」
そう言ってキラファは扉の前で止まった。
「どうぞこちらへ」
扉を開けてエリアを招く。
「失礼します」
勧められるままに椅子に座ってお茶を用意してくれるキラファを待つ。
応接室の様だが、煌びやかさは無い質素で落ち着いた部屋だ。ただ、所々傷んでるのが見える。
「どうぞ」
出されたお茶で喉を潤してから、エリアは本題に入った。
「子供達が御腹を空かしてる様ですけど、そんなに経営が苦しいのですか?」
孤児院の経営は苦しいものという、先入観が涼には有った。ただ、この国のトップはあの女王である。陳情すれば援助もして貰えるのでは?と思うのだが。その事を聞くとキラファは現在の事情を話してくれた。
「確かに女王様なら直ぐにでも救いの手を差し伸べてくれるでしょうが、今回は偶々子供が増えたタイミングで子供の1人が病気になってしまって、出費が重なっただけで既に十分な援助は受けているのです」
「食事もちゃんと3食出してるのですが、食べ盛りの子は物足りない様で・・・」
「ああ、なるほど」
思ってた程逼迫してる訳ではない様で、少し胸を撫で下ろすエリア。
「其れに、援助を受け様にも現在この教会に司祭様は居ないのです」
「司祭様が居ない?」
「はい、前の司祭様は御高齢で隠居しました。最後まで子供たちの事を気にしていたのですが・・・」
悲しみと寂しさの綯い交ぜになった表情を見せる。
「新しい司祭様はまだ見付からないのですか?」
「はい、今教会の方に後任を探して貰ってるのですが、なかなか。もう10ヶ月になります」
「キラファさんが代わりに城に陳情に行くというのは?」
「はい・・・その・・・」
歯切れの悪いキラファのもじもじした態度に何か事情が有るのかと、エリアは「話せない事情が有るのなら」と助け舟を出したが、それは勢い良く断られた。
「そうじゃないんです!・・・そうじゃ、無くて・・・ですね」と、消沈する勢いと共に小さくなる声で「人の目が怖いんです・・・」と言った。
「人の目が怖い?」
確認の為に聞き返すエリアに、頷いて答える。
「その・・・、男の人の目が怖くて」
「男性恐怖症って事ですか?」
エリアの中の涼も男なので、自分の状況を考えると複雑な感じがする。
「何か、好奇の目で見られてるみたいで・・・その・・・」
(あー、なるほど。この世界のと言うか、この国のアラクネに対する心象は分らないが、好奇の目で見る者が居るのだろうか?もしくは自分の様な・・・)と考えると、申し訳なくなる。
「それが嫌で、だんだん怖くなったと・・・」
「はい・・・」
「何か怖い目に有ったとかは?」
「いえ、そう云う事は無いのですが」
「心眼は使ったの?」
「いえ、その結果が怖くて・・・それに沢山居ましたし」
「アラクネという種族自体が嫌われてるなんて事は?」
「いえ、この国でそんな事は無いです」
「訳が分らないね」
ぱっと思い付く事を聞いてみたが良く分からない。
「女の人の反応も同じなの?」
「男の人とは雰囲気が違いますけど、私を見て何か話してる所は見掛けました」
「う~ん」
唸ったエリアが恥ずかしそうに、もじもじするキラファを見て可愛いな~と少し不謹慎な事を思っていたら、その表情を見たキラファが、ハッとなった。
「どうしたの?」と訊ねるとキラファは「その・・・エリアさんが今、他の男の人達と同じ雰囲気だったので」と言い難そうに話した。
それで、エリアは謎が解けた気がした。
「思春期だね~」
ほっこり笑うエリア。
「思春期?」
「そう、男性の目が気になって、過剰反応してるんじゃないかな?」
(放って置いてもその内、平気になると思うけど・・・)とキラファを見た。
「なにですか?」と、身を捩る。
「ううん、多分キラファさんが可愛いから皆見るんじゃないかな?悪い意味じゃ無くてさ」
「かっ!?可愛いって・・・」
顔を真っ赤にして両手で顔を覆った。
「心眼を使っても良いよ」
自信満々にエリアは話を続けた。
「さっき同じ雰囲気って言ったよね、あの時私はねキラファさんは可愛いな~って思ってたの。こう言ってはなんだけど、蜘蛛が苦手な私が言うんだから間違いないよ。キラファさんが可愛いから男性は可愛いキラファをついつい見てしまうんだよ。もちろん女性もね」と言うと、キラファは湯気が出そうな程赤くなって、小さくなってしまった。
「キラファさん?」
顔を覗き込むエリアに、恥ずかしさの余り蜘蛛の糸を顔に吹き付けられ視界を閉ざされてしまった。当然息も出来ないし、エリアの力を持ってしても引き剥がす事が出来ない。
(あれ?もしかして、俺これで死ぬのかな?もう死んでるけど。)
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